時系列はvol.0 最終話の数分後です。
最終話に入れようとしたけど、長くなり幕間になりました。
お気に入り登録、評価をしていただきありがとうございます!
誤字報告もしていただきありがとうございます!
感想も頂きありがとうございます!
やる気が湧いてきます!
~ソロモンちゃんねる~
ミサキ「ヒヨリが『親分』と書かれたTシャツを着ていて、どこで売ってんのよと思っていたら、その後ろから殿下が『子分』と書かれたTシャツを着て歩いてきた。それでいいのアリウス?」
「今後の方針を話しましょう」
そろそろお暇しようとしていた矢先、ワタシにリオ会長は言った。
今後の方針とは、何のことを言っているのだろうか。
ミレニアム全体の方針のことを言っているのだったら、ワタシにそれを話すのは違うと思う。何せワタシは、学園の中枢たるセミナーどころか、部活にすら参加していない。言うなれば帰宅部のようなものでしかない。
そんな人間に、ミレニアムの今後なんて話すものじゃない。
何があっても責任取れないよ?
「……先生の件よ」
どうやら顔に出ていたのか、会長は具体的な内容を口にしてくれた。
先生。
つまりは、突然現れた大人の人。ワカモを無傷で鎮圧してみせた男の人。
今のところ、それくらいしか情報はない。
「それで、リオ。方針と言ったが、どうするつもりだ? よもや、件の先生とやらを拉致して来いと言うまいな?」
「バカを言わないで。そんなことしたら、最悪キヴォトス中の学園と戦争になるわ」
それもそうだ。
先生が担当顧問をすることになった、連邦捜査部シャーレと言う部活は、失踪した連邦生徒会長が立ち上げたモノだと、リオ会長から簡単な説明だけど聞いている。
細かいことは、何となくしか把握していないけれど、要はどこの学園だろうが自由に活動が出来る、中立な立場の機関だということだろう。
そんな部活の担当顧問を攻撃、ないし拉致なんてしたら最後。
連邦生徒会や、他の学園から眼の敵にされてしまい、学園間の戦争に繋がるかもしれない。
それは良くない。本当に良くない。
戦闘は愉しい事だけど、戦争なんて全く愉しくない。
うんうん、と一人納得しているワタシに、珍しくリオ会長は意見を求めてきた。
「貴女は先生をどう見るの?」
「どう見る、とは?」
「信用できると思う?」
「さてな。直に視た事も話した事もない故、何とも言えん」
そう、とだけ言うと会長は考え込んでしまう。
今の口ぶりを考えると。
「貴様は信用してないようだな?」
「えぇ」
「何故だ?」
「得体が知れないから」
何とも会長らしい、率直な回答だった。
自分の目で見てないし、どんな人間かもわからない。ましてやそれを考慮したうえでも、会長の意見は変わらないだろう。得体が知れない。それが会長が下した、先生の評価だった。
考えすぎな気がする。けど、会長の心配も理解は出来る。
いきなりキヴォトスに現れた大人。
どんな人かもわからないのに、組織として完全に中立な立場にあると言われても、いきなり信用なんて出来る筈もない。加えて会長は、その辺りシビアだ。感情論ではなく、実際の行動や実績を見て、判断を下す事だろう。
その点を言えば、先生はまだ何もしていない。ワカモを無傷で倒した、得体の知れない大人。それくらいしか知らないリオ会長は、そう結論付けるしかない。
ワタシとしては、先生がどんな人であれ、何でもいいとは思っている。
騙してきたとしても、後から叩き潰せばいいのだから。
でも、リオ会長はそうは思わないみたい。
信用出来ないから、懐に入られ何をされるかわからないから、自分一人が損害を受けるわけではなく、ミレニアム全体に関わってくる話だから。
これが上の立場の責任感と、下で自由に好き勝手している者の意識の違いなのだろう。
ふぅ、と会長は息を吐く。
これしかないと言わんばかりの口調で告げる。
「先生への接触は、ユウカに任せることにするわ」
「唯一、先生に会っているからか?」
「えぇ。彼女なら、先生にも警戒されないでしょう」
何だかスパイみたい、と思いながらワタシは問いを投げる。
「これまでの話を早瀬会計に伝えるのか?」
その問いにリオ会長は、いいえ、と首を横に振って。
「言わない方向でいきましょう」
「理由は」
「顔に出ると思うから」
なるほど。
確かに、早瀬さんはそういった、腹芸が出来ない性格かもしれない。
あまり話したことはないけれど、裏表がない感じがする。あとは世話焼きというか、そんな感じ。
「貴女も先生とは接触禁止――――とまでは言わないけど、極力会わないように努力してちょうだい」
「……何故だ?」
怪訝そうな調子で聞いてしまった。
それはしょうがないのです。ワタシだって興味があります。もしかしたら、先生はキヴォトスで数少ないまともな大人かもしれないし、何よりもあのワカモを無傷で鎮圧した人だ。それはもう、滅茶苦茶興味があるのです。
今だって我慢しているんだよ?
なのに、極力会わないようになんて、それは酷と言うものですよ会長。
会長はワタシの顔をジッと見て。
「納得してないみたいね」
「理由による」
拗ねるように言うワタシに、会長は重たい口調で言った。
「貴女という戦力をあまり知られたくないからよ」
「……ほう?」
会長、その口ぶりは。
「貴様、先生と事を構えるつもりか?」
「そうなるかもしれない、と考えているだけよ」
リオ会長は決して、楽観的な性格じゃない。
常にミレニアムの事を考えているし、私には考えもしない遠く広いナニかまで見ている気がする。
用意周到といったらいいのかな。何事も失敗した後のことまで考えて、被害を最小限に止めるように、立ち回っている。そんな動きをしていると思う。
となると、会長が考えている事は察しが付く。
会長は、最悪、会った事もない、信用も信頼も出来ない、先生と戦う事も、視野に入れている。
それは考えすぎな気もするし、極論である気もする。
けど、学園の頂点に立つ立場としては、それくらいで丁度いい気もするし、ワタシには判断が難しい問題だった。
「慎重な貴様らしい事よ」
「貴女が楽観的過ぎるのよ」
そう言われると何とも言えない。
現に、今だって先生と戦う事になろうと、そのときはそのときだと考えているワタシがいる。
でも実際問題、考えても仕方ないことでもある。
「不服?」
「まさか」
ハッ、とワタシは鼻で笑い、会長の意見を後押しするように言う。
「余はミレニアムの生徒である。貴様の方針に異を唱えるものか。存分に、余を使いこなして魅せろ」
「そう」
ワタシの言葉に会長は満足そうに頷いて。
「一つ問題があるわ」
「問題とは」
「貴女が、目立つ事」
「ぬ?」
そこまでいうと、リオ会長は改めて問題を突きつけるように。
「貴女のことだから、先生に眼をつけられる可能性がある」
「何をバカなことを。余がまるで問題児のような言い草ではないか」
誠に遺憾なのです。
ワタシは割と、普通だと思うのです。人を不良生徒のように言うものじゃないと思う。確かに、ちょっとだけ、夢中になると周りが見えなくなることもあるかもしれないけど。
リオ会長に無言の抗議を始める。視線で、不満たらたらであると、ワタシは異を唱える。でもどうやらワタシの必死の訴えは届かなかったようで。
むしろ受け流されるように、これでもかってくらい露骨に、深く深くため息を吐かれてしまった。
そしてトドメの一言。
「自覚なしなのが、一番厄介ね……」
「ぅぅ……」
聞こえないくらい小さく、ワタシはうめき声を口の中で洩らした。
呆れた感じで言われたのが、個人的にダメージを加速させている気がするのは、多分気のせいじゃない。
キテいるのです心に。グサリと深々と。容赦なくグリグリと。
ワタシの心は曇天模様。晴れ間など皆無な曇り具合。
対照的に、会長は梅雨知らず。淡々とした口調で続けて言う。
「貴女に目立つな、なんて注文するのは無理な話。いいえ、無理というよりも無駄ね」
「えー、そこまで言う貴様ー?」
「……一つの小さなトラブルを、百の大事にする天才だもの貴女。そんな人に大人しくしていろなんて、無駄といわずになんというのかしら?」
ンンンン、正論。
なんて理論武装。心当たりと今までのやらかしがあるせいで、何も言い返せない。
「そこで、一策講じてみたわ」
腕を組み、どこか誇らしげに、何やら興奮した調子で、リオ会長は口を開いた。
無表情であるので、もしかしたらワタシの気のせいかもしれないけど、何だかいつもよりもテンションが高い――――気がする。
「要は貴女だと先生にバレなければいいのよ」
「簡単に言ってくれる。なんだ、別人になればいいと?」
「似たようなモノね」
「まことか?」
別人になるなんて、具体的にどうやって。
整形でもするのだろうか。それは無茶な、と言えないのがミレニアムの凄いところ。ここなら、顔を作り変えるくらい、朝飯前な気がする。しかも後遺症とかも一切なしで。
「……余、整形は厭だぞ」
「言ったでしょ、似たようなモノだって。貴女がオウヒだとわからなければいいの」
「話が見えぬ。結論を言え」
そうして、おもむろに、満を持して。
会長はあるものを取り出して、机の上に置いた。
それは機械の頭部だった。
見た目は、なんだろうこれは、なんとも形容し難い。
眼らしきものがあり、口らしきものがある。その口らしきものには赤色の口紅が塗られて、頭部の右上には赤色のリボンらしきペイントが施されている。あと何だか、全体的な彩りが赤い。
なんだろうこれは。
本当になんだろう。
果てしなく混乱しているワタシを余所に、会長は淡々としているものの、どこか朗々とした口調で。
「私が開発した、貴女専用のフルフェイスアーマー。その名も『コンサバティブちゃん』よ」
「うわっ、クソダ――――」
思わず反射的に。
クソダサい、といいかけるも何とか踏みとどまる。
だって、会長の様子を見ると、だ。なんか凄い自信に満ち溢れているんだもの。というか、無表情だったから気付かなかったけど、やっと気付いた。この人、この一策を講じてみた辺りから、凄いこれを披露したくて堪らなかったみたい。
あまりにも自信満々。
そんな人に、クソダサいなんて。現実を突きつけるなんて人の心がなさすぎる。
本当のことでも! コンサバティブちゃんとやらがクソダサくても! デザインが終わっていようと! ときにマジレスは人の心を傷つけるのだから!
――と、ここまで思考するのに一秒もかかってない、筈だ。
まだ挽回は効く筈。クールに対応しようアーちゃんみたいに。キュートに誤魔化そうムーちゃんのように。あの二人のように、ワタシもこの状況を切り抜けるんだ――――!
「――――クネス可愛いと思う余。うん、凄いソーキュート」
なんだろう、ダークネス可愛いって。なんだろう、ソーキュートって。自分でもわからない。何が言いたいのか、ワタシはわからない。
「フフッ、ありがとう。貴女ならそう言ってくれると思ったわ」
対するリオ会長はご満悦。
とっても満足気に、そして得意気に、微笑をこぼす。
というかワタシ、会長が笑った顔初めて見たんですけど。もっとあると思うの、そういうシチュエーション。それがこんなクソダサいデザインを褒めただけで見れるなんて。いいや、褒めてすらいないのに。
ごめんなさい、会長。
その子の良さ、ワタシには全然わからないよ。
「それで、リオ。それは、その。フルフェイスアーマーということは、頭から被るのか?」
「えぇ、そうよ」
「頭から?」
「頭から」
やだなぁ。
だって、しっかりダサいんだもの。
「それに、多様な機能が搭載されているわ」
不安しかない。
こんな見た目だ。凄い微妙なモノだったらどうしよう。
「もちろん、防弾仕様」
「うん」
「変声機能に望遠機能、暗視スコープはもちろん」
「ほう?」
「防毒機能搭載。花粉すら寄せ付けないわ」
「おぉ??」
「キヴォトスの天気、株価、渋滞情報からSNSまで、閲覧可能」
「それからそれから?」
「人工AIも組み込んでいるわ」
「うっそ、本当!?」
「おまけに、アバンギャルド君にそっくりよ」
「うんうん――――え、なんだって?」
「アバンギャルド君にそっくり」
「アバンギャルド君」
そっくりとは、このフルフェイス防具――――コンサバティブちゃんとそっくりということだろうか。
しかし、アバンギャルド君とは何者?
「貴女にはまだ見せていなかったわね。アバンギャルド君とは、私が開発した殺戮破壊兵器の名前よ」
「殺戮破壊兵器?」
「殺戮破壊兵器」
すっっっっごい、物騒なんだけど、アバンギャルド君。
そんなのとそっくりなの、コンサバティブちゃん。そんなの被るの、天上院オウヒちゃん。
厭なんですけど、本当に。
「人工AIはトキの思考パターンを組み込んだモノになっているわ」
「トキって、あのトキちゃんのか?」
ワタシの脳内で、両手でピースしているトキちゃんの姿が思い浮かべていた。
えぇ、と頷いて会長は肯定して。
「最初は私をモデルにしたAIを組み込むつもりだったのだけど」
「だったのだけど?」
「トキがどうしても、自分の人格にしてくれって聞かなくて」
仕方ない子ね、と。
やれやれ、と会長は首を横に振るけど、凄い軽く言うけど。物凄いことをやっている気がする。この人何気に、AI技術軽く作り出してない? どうなってるの技術力。
これが、ミレニアムのトップの力なのか。
そう考えると、ちょっとワクワクしてきた。見た目はクソダサいけど、他にはどんな機能があるんだろう。
「リオっ、他にはないのか? コンサバティブには他にはどのような機能が――――」
「コンサバティブちゃん、よ」
「……コンサバティブちゃんにはどのような機能があるのだ?」
「そうね……」
リオ会長は少しだけ考えて、ハッ、と思い出したかのように。
「自爆装置がもちろんあるわ」
「どうして?」
物騒なんですけど。
なんで自爆装置なんて。ワタシ、デスゲームでもやらされるの?
きょとん、と。
眼を丸くさせてリオ会長は、どうしてそんなことを聞かれたのかわからない、といった口調で。
「自爆装置は浪漫でしょ?」
「んー、ロマンだったかー」
あちゃー、ロマンだったかー。
頭が痛くなる。
色々といいたい事はたくさんある。
何をする度にワタシはこれを被らないとならないのか、とか。これは逆に目立つのではないか、とか。やっぱりデザイン変えないか、とか。本当に色々とある。
とりあえず。
「リオ、余の言いたい事は一つだ」
「なに?」
ワタシの言いたい事。
件のコンサバティブちゃんを持つ。驚く程、軽かった。材質は何で出来ているのか気になったけど、今は置いておく。
口らしきものには赤色の口紅が塗られて、頭部の右上には赤色のリボンらしきペイントが施されている。あと何だか、全体的な彩りが赤い――――。
それを視て、改めて告げる。
「余、赤よりもピンクがいい」
そうだ。
赤はカッコいい。だったら可愛いピンクの彩りがいい。
そっちの方が可愛いのだから――――。
△コンサバティブちゃん
フルフェイスのヘルメット。アバンギャルド君の妹みたいなもの。
というか、アバンギャルド君の頭部。口紅もあるし、リボンのペイントもあるから、実質女の子。
無駄に多機能なのはリオ会長が凝ってしまったから。あれもこれもと機能が追加していく(現在進行形)
アイアンマンヘッドみたいなデザインにも出来ただろうに。天は二物を与えなかった。見た目が壊滅的にクソダサい。
人工AI搭載。トキみたいな性格というかまんまトキ。構ってくれないと自爆する。
自爆装置があるのはロマン。ロマンかー。
後々にピンク色になる。そっちの方が可愛いとはオウヒの言葉。可愛いかな?