こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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Vol.1 幼年期の終わり
ことのはじまり


 

       ――――これは誰の記憶なのか。

                 まず貴女は疑問に思うことだろう――――。

 

 

 

 その疑問も当然と言える。

 何せ、この記憶は貴女のものではなく、見覚えがない光景である筈だ。

 

 ならば誰の記憶なのか、ということになる。

 しかし、それを答えられる人間はいない。いいや、()()()()()と言った方が正しいのかもしれない。

 

 何故なら、この記憶の主たる『彼女』は、その神秘と共に、過去の記憶の大部分を捨て去っている。

 不要と判断した零れ落とした記憶と記録。自ら捨てた天上に至る資格と共に、二度と『彼女』は万能を手にする事はない。

 

 いいや、もしかしたら。

 自身に施した三度の枷。それを解せばあるいは、再び届くかもしれない。

 ――――謝罪する。これは貴女には関係のない話であった。

 

 

 

 視点を戻そう。

 貴女は二人の人物が対面していることを認識する。

 一つの部屋。机と椅子。それからソファーがある。そんな質素で簡素な部屋。窓から日差しが差し込むのを見て、貴女はこの部屋は地下ではなく地上にあり、時刻も夜ではなく昼なのだと認識する。

 

 一人はスーツを着た者。

 人として形容していいのかわからない人型のナニか。

 それは何よりも黒く、墨よりも黒く、闇よりも黒い。極めて異質な者だった。

 

 

 対するは黄金。

 頭髪も光り輝いた金のそれ。ヘイローなる天輪も金色。

 眼を見張る黄金。だが貴女が何よりも注目したのはその眼だった。金輪のような、黄金なる双眸。まるで太陽を髣髴とさせる、しかし果てしなく虚無であったそれには、何も映しはしない。

 

 

 黒は言う。

 

 

『これは取引です。貴女の身は私が保証しましょう。その代わり――――』

 

『――――アナタに協力しろ、というのでしょう』

 

 

 黄金が遮る。

 『彼女』は説明を不要と判断したのだろう。

 

 

『ワタシは構いません。元より、ワタシに選択肢などない。この世界において、異物であるワタシは存在を証明しない限り、消える運命なのですから』

 

『……クックックッ、そこまで理解されているとは思いませんでした。やはり貴女の神秘は、私が知るモノとは違うようだ』

 

『神秘――――なるほど、理解しました。この世界に存在する力ですか』

 

 

 黄金は黒を一瞥して。

 

 

『アナタのソレは、神秘とは違う。それはafx外sagaのtxa。……いいえ、違いますね。この世界でその力を言語化するのなら――――』

 

 

 黄金は一拍置いて。

 

 

『そう、『契約』。なるほど、この世界には様々な概念があるのですね』

 

『……』

 

 

 契約。

 それが黒のもう一つの武器である事を、黄金は容易く看破してみせた。

 

 

『身構えないで下さい。アナタは承知していた筈です。ワタシの力は()()()()()()だと。承知の上で、アナタはワタシを拾ったのでしょう?』

 

『……失礼、そうでした。素晴らしい、本当に素晴らしい』

 

 

 黒は本当に楽しそうに笑っているように見えた。

 貴女にはそれが、新しい玩具を与えられた子供のように見える。

 

 

『では、確認します。私が貴女に衣食住を提供する代わりに――――』

 

『――――アナタの研究に、ワタシが協力する。えぇ、異論はありません。ここに、『契約』は成りました』

 

 

 ただの口約束に、貴女は感じる。

 それが、二人の間にどれほどの効力があるのか、貴女には理解が出来ないだろう。

 

 

 

 

 

 これが始まりだった。

 この世界に、斯様な不要なモノを、認めた瞬間だった。

 

 許してはならない。

 それは不純物である、ノイズである、雑音である、不要物である。

 

 主役は既に存在する。

 配役に空きはない。

 端役もとうの昔に埋まっている。

 『彼女』の座す椅子などどこにもありはしない。

 

 この世界において、『彼女』の居場所などない。

 この物語において、『彼女』を語ることなど許されない。

 この箱舟の中では、『彼女』の存在を認めてはならない。

 

 我々は、必ず、アレを打倒する。

 あの黄金を、必ず抹消する。

 『契約』で存在を証明しようとも、必ず滅ぼしてくれる。

 

 貴女にはまだ理解出来ないだろう。しかし理解せずとも良い。

 我々の言葉は意味を為さない。我々は思念体。本体から漏れ出た、感情の残滓に過ぎない。思念だけが集まっただけの、消える存在でしかない。

 

 しかし、どうか。

 予言の貴女よ、どうか聞いて欲しい。

 これは我々の一方的な宣戦布告。返す言葉を必要としない、我々の一方的な嫌悪である。

 

 

 我々は宣言する。

 必ず我々は、我々の本体は、必ずや『彼女』を――――。

 

 

『では、『天上のアヌ』よ。これからよろしくお願いします。出来る事なら末永く、お付き合いしていただきますよう』

 

『えぇ、黒いアナタ。ワタシがワタシである限り、アナタの探求にお付き合いしましょう』

 

 

 ――――彼の者を、『天上のアヌ』を抹消してみせよう。

 

 

 

 

 

 

 

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