こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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 ~ソロモンちゃんねる~
 アツコ「もう、なんで殿下は自分のことを棚に、棚に……、こう、ヨイショ、ヨイショって……」
 オウヒ「棚に上げてか?」
 アツコ「そう、それ」
 ミサキ「惜しかったね」

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 ※※ミカ推しの方々、本当にごめんなさい※※
 


第3話 トリニティ事変

 

 

 ――――私は人よりも、あまりにも恵まれていた。

 

 それは物心がついたときから自覚していて、産まれたときから約束されていた。そして、これからも私が不自由になることはないだろうという確信があった。

 私が声を一つ上げたものなら周りは聞き入り、私が立ち上がれば周りも立ち上がり、私が歩けば取り巻き達も一緒に歩く。

 

 まるでお姫様。

 誰もが愛し、誰もが大事にして、誰もが私に注目する。

 蝶よ花よと大事にされて、その扱いは物語のお姫様のようだけど、これは私の人柄を見て、慕われた上での反応じゃない。

 

 私がパテル派を将来率いるから。

 そのために、周りは私のことを大事にしていた。

 ある人は私に気に入られようとして、ある人は私を利用しようとして、ある人は私の威を借る狐のように。

 

 それぞれ、思惑があって、純粋に私という個人を見ているわけじゃなかった。

 皆が皆、自分のために。そのためだけに、私という存在を利用しようと、私の周りに集まっているだけに過ぎなかった。

 

 その点だけ言えば、ナギちゃんは本当の意味で、自分の立場というものをわかっていたようだ。

 褒められようと冷静に、有頂天にならずに優雅に、驕らずに謙虚に、表面上は笑って受け流していた。

 

 

 対する私は、何も解っていない。

 当時はまだ、私だって子供だったし、仕方ないと思う。今になって思えば、周りの人達も露骨だった気がする。

 気付けたのは、道理を弁えてきた今だから。当時の、子供の頃の私は本当の意味で、うぬぼれていたのだと思う。誰もが私のことを好きで、何をしても許される存在なのだと、本気で思っていた。

 

 それこそ本気で自分のことを、お姫様だと思い込んでいた。

 あまりにも大事にされて、まるで鳥かごで飼われる鳥のように。

 脱線する事のない将来を約束されたレールは、一方通行しか走れない電車のように。

 

 でも私はそれでもいいんじゃないかな、って思うんだ。

 だって、鳥かごの中は自由がないけど、外敵から守ってくれる。

 だって、整えてくれた道だって、そこから外れなければ将来が約束されている。

 籠の中にいれば傷つくことがないし、舗装された道はとても進みやすい。

 

 なんて、明るい未来しかない将来設計なことか。

 私はこのまま中学生になって、高校生でパテル派のリーダーをやりつつ生徒会長になって、そのまま大人になって不自由のない生活を送るのだと思っていた。

 

 

 でもそれは、打ち砕かれる事になる。

 調子に乗っていた私は容赦なく、守られていた鳥かごを破壊され。

 世の中を舐めていた私は粉々に、整備された道を破壊される事になる。

 

 忘れもしない。忘れる事なんて出来ない。忘れた日はない。初めて私が挫折を味わったあの日。

 

 退屈な日だと思っていた。

 朝起きて、学校に通って、いつもと代わり映えのない日になると思っていた。

 授業で、模擬戦を始める、って聞いても心が動く事はなかった。あまりにも退屈で、お昼ご飯のことを考えていたことを覚えている。

 

 

 模擬戦なんていっても、誰も私に怪我させる人なんていない。

 私はみんなに愛されているから。他校の生徒で、しかも私よりも年下で、眼を見張るような黄金の色の髪の毛。この子も皆と同じように私のことを――――。

 

 

 ――――え?

 

 

 衝撃。遅れてやって来る鈍痛。

 何が起きたのか、私にはわかっていなかった。

 

 模擬戦の相手を見る。

 黄金色の、“その子”の顔を見る。

 周りがざわつくのが、耳に入る。私の名を呼ぶ声が聞こえる、黄金色の“その子”を罵倒する声が聞こえる、私を案じる声が聞こえる。

 

 それらに答える余裕はなかった。

 初めての感覚、初めての対応、初めての――――敵意。

 

 私は咄嗟に、考えるよりも早く、黄金色の“その子”に飛びかかっていた。

 頭に血が上っていたんだと思う。あの時は自分でもわからない。ただひたすらに、目の前の子も同じように痛みを与えないとって思った。

 

 

 それで始まる取っ組み合い。

 もう最悪だった。痛いし、汚れるし、血は出るしで本当に最悪。

 でもどうしてだろう。黄金色の“その子”は――――愉しそうに嗤っていた。

 意志のなかった眼は爛々と輝かせて、つまらなそうだった口は嬉々として、“その子”だって痛い筈なのに凄く愉しそうだった。

 

 綺麗な黄金色の瞳。

 何て綺麗な瞳なのだろう。

 それは私しか映っていなかった。

 真っ直ぐに、ただ私しか、視えていなかった。

 “その子”はそんな意図はなかったと思うけれど、“その子”は初めて――――私のことを視てくれたと思う。

 

 でもそれは永遠じゃない。

 私は倒れ“その子”を見上げて、“その子”は倒れた私を見下ろした。

 

 大丈夫、だとか。

 怪我はない、だとか。

 ごめんね、だとか。

 私を案じる声はない。

 

 ただ残念そうに、私を見下ろしていた。

 最低だと思わない? 普通は心配する声をかけると思う。

 だけどあまりにも、悲しそうにするものだから、私は悪い事をしたんだって、初めて思ったんだ。

 “その子”にとって、今までの野蛮な行為はとても愉しいもので、それを私が終わらせちゃったんだって。

 

 それが、私と“その子”の、最初の思い出。

 絶対に忘れない、私の最初の挫折。

 絶対に許さない、私を最初に見てくれた子。

 

 思い出の中の“その子”は、あっ、と言いながら。

 

 

『ごめん、大丈夫?』

 

 

 うん。

 それってさ、最初に掛ける言葉だよね――――??

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はナギちゃんから連絡を貰い、急いでトリニティに戻っていた。

 あと少し待っていれば、“その子”に会えたというのに。本当に残念だけど仕方ない。本当に仕方ない。何故なら電話口のナギちゃんは――――。

 

 

「――――――――」

 

 

 ――――凄い、怒って、いるのだから。

 

 

 凄い、ってレベルじゃない。

 怒鳴るとか、話す口調の語気が強くなっているとか、それが原因でわかったわけじゃない。

 静かに、ただ静かに。無風の凪のように、淡々とした口調で、ナギちゃんは話していた。私とナギちゃんは付き合いが長いし、怒られるのだって初めてじゃない。だからこそわかる。

 

 ナギちゃんが今、もの凄い、怒っている事が。

 

 

 現在、私とナギちゃんは対面するように、テーブルを挟んで座っている。

 私の前には紅茶が置かれており、ナギちゃんも優雅で作法に乗っ取ったまま紅茶を飲んでいる。テーブルの上には、ナギちゃんの手作りの洋菓子があった。

 

 これだけ見ると、いつもの風景。

 この場に居ないセイアちゃんを除けば、いつもの私達ティーパーティーの話し合いの風景だった。

 

 そう。

 ここだけを切り取れば。

 

 

「――――ミカさん?」

 

「……はーい」

 

 

 ニッコリ満面の笑み。

 でも声は冷たく、有無を言わせない、凄みがあった。

 

 目なんて合わせられない。

 少しでも逃げるように逸らして、なるべくナギちゃんの方を見ないようにしていたけど。

 

 

「――――ミカさん」

 

 

 わーお、本当に怒っている。

 と、おちゃらけているものの、私はかなり怯えているし、ぶっちゃけ限界に近かった。

 

 ぶるぶる、と。

 嵐が去るのを待つ無力な人のように。ジッ、と時が過ぎるのを待っていただけど、大嵐(ナギちゃん)はそれを許してくれないみたい。

 

 私は意を決して、観念するように。

 

 

「はい」

 

「ミカさんがこちらを見るのに、5分もかかりました」

 

 

 それはもう、嫌味っぽく。

 そういうところ、性格悪いと思うよナギちゃん――――って言えるわけがない私。

 だって怒られるし。言われても仕方ない事をしたし、甘んじて受け入れるよ。

 

 

「なにか?」

 

「べっつにー?」

 

 

 でも顔に出ていたみたい。

 精一杯の反抗と言わんばかりに、私は再びそっぽを向いた。

 

 ナギちゃんが呆れ混じりの溜息を吐いているのを感じて。

 

 

「それで、どういうつもりですか?」

 

「なにがー?」

 

「ミカさん」

 

 

 おっと、これ以上ふざけていい空気じゃないね。

 これ以上やったら、本気で怒られちゃう。

 

 私は慌てて、ウソウソ、とおどけた調子で。

 

 

「アリウスの件だよね?」

 

「それ以外に何があるんですか」

 

 

 ですよねー。

 とはいっても、ナギちゃんが怒るのももっともだ。

 私の勝手な行動によって、ナギちゃんが今やろうとしていることが台無しになる可能性があるんだから。

 私としては、そこまで一生懸命になることかな、って思うけどナギちゃんには重要な事みたい。

 

 ナギちゃんの怒りがこの程度で済んでいるのは、多分相手が私だからだ。

 付き合いの長い、幼馴染といっても過言ではない仲の私だから、この程度で済んでいる。もしこれが、セイアちゃんとか他の人だったら、この程度で済まないと思う。

 

 そうはいっても、怒っていることには変わりない。

 大きく息を吸って、深く吐いて、落ち着いて深呼吸するようにナギちゃんは努めて冷静であろうとしていた。

 

 

「ミカさん、何を考えて交換留学などと。その前に、アリウスを叩き潰したいって言ってませんでした?」

 

「んー、それはそれ、これはこれ。“アイツ”がいるのは気に入らないけど、アリウスの娘達には関係ないことだから」

 

「……ところで、アイツとはどなたですか?」

 

「それは内緒だよっ☆」

 

 

 ナギちゃんに渾身のウィンクをするけど、どうやらお気に召さなかったみたい。これでもかって深い溜息を吐かれてしまった。

 釈然としないけど、本題に戻すね。

 

 

「交換留学を提案したのは、アリウスの娘達と仲良くしたいから、かな?」

 

「仲良く、ですか?」

 

「そうそう。アリウスを力尽くでトリニティ(うち)に統合させようって言ってる娘達がいるでしょ? その娘達もアリウスの生徒さんと仲良くなれば、物騒な事も言わなくなるんじゃないかなーって」

 

 

 私の提案に、ナギちゃんは難しい顔で、言いにくそうに。

 

 

「……ミカさん、その考えは大変素晴らしいものです。友人として、誇らしいと思います。ですが難しいかと」

 

「そうかな?」

 

「えぇ、率先して声を上げている方に問題があります」

 

 

 ナギちゃんは私を説得するように、親身になって説明をしてくれた。

 

 

三分派(われわれ)よりも劣るとはいえ、彼女の発言力は侮れない。アリウスの方々を招いたとしても、穏便に済むとはとても思えません」

 

 

 それは暗に、反対であると、ナギちゃんは語る。

 

 今のティーパーティーのホストはセイアちゃんだったけど、身体が弱く入院しているため臨時でナギちゃんがホスト役を担っている。

 となれば、彼女が首を縦に振らないと、交換留学はなかったことになってしまう。

 

 ナギちゃんは、私とは違って聡明な娘だ。

 プライドと誇りを重んじる他のトリニティ生なら今更なかったことになんてしないけど、ナギちゃんはそうではない。断るために心から謝罪し、必要とあれば頭も下げるかもしれない。

 広い視野で、物事を平等に天秤に掛けて、後ろ指を指されることになろうとも、トリニティの益となることを選択する。

 為政者の才能が、ナギちゃんにはある。

 

 今回の交換留学の件だってそう。

 未だに火種が燻っているトリニティに他校生、しかも問題となっているアリウスの生徒を招くなんて、トリニティ内部で騒乱の元になりかねないと考えている筈。

 事実そうなのだから、ナギちゃんは決して首を縦に振る事はないだろう。

 

 となれば、無理矢理にでも、ナギちゃんを納得させるしかない。

 

 

「そっかー、良い考えだと思ったんだけどなー」

 

「……何度も言いますが、ミカさんの考えは素晴らしいです。ですが今回は――――」

 

 

 慰めようとしてくれた言葉を、私は遮るように。

 

 

「――――ナギちゃんが私達に秘密で動いていたアレの手助けにもなると思ったんだけどなー」

 

「――――っ」

 

 

 ぴたっ、と。

 ナギちゃんの表情が固くなるのを観察する。

 

 アレ、とはナギちゃんのアキレス腱。偶然耳にした、ナギちゃんへの有効なカード。

 この反応を見るに、セイアちゃんにも内緒だったみたい。カマを掛けてみたけど、まさかセイアちゃんにも話を通していないとは思ってもみなかった。いいや、話すつもりだったけど、その前に私に指摘されて焦った、かな?

 

 人には優先順位がある。

 ナギちゃんにとっては『アレ』であり、私にとっては『アリウスとの交換留学』。

 その二つは噛み合っていると、ナギちゃんを説得して納得してもらわなくちゃいけない。

 

 ナギちゃんは持っていたティーカップを置いて、慎重な口ぶりで私に問う。

 

 

「……ミカさん、アレとは?」

 

「エデン条約、だっけ? ゲヘナなんかと仲良くしようっていうやつだよ」

 

 

 ナギちゃんが固執している『アレ』――――それこそが『エデン条約』と呼ばれているゲヘナと結ぶ事になる平和条約。

 色々と建前と理由をすっ飛ばして、噛み砕いて言うと、トリニティとゲヘナで仲良くして、全面戦争を回避しようという決まりだ。

 

 私個人としては大反対。

 誰が好き好んで、ゲヘナなんかと仲良くなろうと思うんだろう。

 

 嫌だけど、本当に嫌だけど。

 これを利用しない手はなかった。

 

 

「ミカさんは反対ですか?」

 

「うん、大反対。でも、ナギちゃんのやろうとしていることは立派だと思うし、応援してあげたいし、手助けもしたいと思っているよ」

 

 

 半分本当で、半分嘘を織り交ぜた言葉。

 ナギちゃんは私の反応を見るように、慎重に言葉を選びながら。

 

 

「手助け、とは何をするおつもりですか?」

 

「その前にさ、ナギちゃんはこの条約が成功すると思っているの? ちなみに私は失敗すると思っているよ」

 

「……理由をお聞きしても?」

 

「だって相手はあのゲヘナだよ? 条約を結んだところで、難癖付けて喧嘩を売ってくるに決まってるよ。もしかしたら、条約が締結されるその日に騙し討ちしてくるかもしれないし」

 

 

 ナギちゃんもその辺り、可能性として考慮していたからか、黙って私の話を聞いていた。

 同意もしないし、否定もしない。曖昧な反応を保っている。

 

 その上で、ナギちゃんは私に問う。

 

 

「策があると?」

 

「策ってほどじゃないよ。これは提案。トリニティやゲヘナの他にもう一校巻き込んで、私達を監視させたらいいんじゃないかなーって思ったんだよね」

 

「……どちらにも属さない、第三の中立校ということですか」

 

 

 ナギちゃんはそういうと、合点が行ったというかのように続けて言う。

 

 

「トリニティとゲヘナ、どちらかが問題を起こしても、中立校が被害に遭っている学園に味方をし、二対一の構図を作る。中立校は抑止力も兼ねているというわけですね」

 

「さっすが、ナギちゃん。話が早いねー!」

 

「ミカさんの意図はわかりました。件のアリウスに中立校の役目を担ってもらうために、今から交流を深めていく。そのための交換留学ということですか」

 

 

 半分は正解、半分は間違っている。

 アリウスに交換留学を持ちかけた理由は、そのためじゃないけど、今は黙っておく事にする。

 アリウスの娘達と仲良くしたいし、ナギちゃんの手助けをしたいのも本当。でもそれだけが、全てじゃないから。

 

 

 ナギちゃんは納得するように頷いて。

 

 

「しかし、意外でした。ミカさんがそこまで考えているなんて……」

 

「ちょっと酷くないー?」

 

 

 でも自覚はあるんだよ。

 だって、私ってここまで考えて動く性格じゃないし、性に合ってない事くらい自覚している。

 

 今だって、凄いストレス感じているもん。

 

 

「……アリウスの方々は承諾してくださると思いますか?」

 

「せざるを得ないと思うよ。あっちだって、トリニティとゲヘナに目を付けられたくないでしょ」

 

 

 私はそういうと、席を立つ。

 言いたい事は言った。これ以上長居しても、ボロがでるかもしれない。後のことはナギちゃんに判断してもらうしかないから。

 

 

「それじゃ、私はもう行くね。後はナギちゃんの判断に任せるよ」

 

「一つだけ、よろしいでしょうか?」

 

「なぁに?」

 

 

 ナギちゃんはジッと、私を真っ直ぐに見つめる。

 それはとても真剣な顔で、私の本心すら見透かすような、澄んだ瞳だった。

 

 

「貴女はアリウスの方々と仲良くしたいと言いました。同時に、私の手助けもしたいと言ってくれましたね」

 

「うん、それが?」

 

「敢えて問いますが、ミカさん――――貴女の本心は、どちらですか?」

 

 

 思わず顔に出そうになる。

 さすが、付き合いが長い、私の幼馴染だ。

 

 言うなれば、どちらも本心であり本気だけど、もう一つ隠している事がある。それこそが、私の本当の気持ち。

 それを悟らせないように、私は笑顔を作り、誤魔化すように。

 

 

「――――どっちも、本心だけど?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きた心地がしなかったよ……」

 

 

 あれからナギちゃんと別れて、私はトリニティの中庭にあるベンチに腰掛けていた。

 整備された綺麗な花壇。いつもは他のトリニティ生徒の姿がある場所であるのだけど、今は運良く私しかいなかった。

 

 今だって心臓はバクバク、頭はズキズキする。

 前者はまるで悪い事をしているかのような緊張感から、後者はナギちゃん相手に考えながら喋っていたから知恵熱みたいな。

 本当になれないことをするものじゃない、って改めて痛感するよ。

 

 

「でも、これで……」

 

 

 可能性が出てきた事に、私は小さくガッツポーズをしてしまった。

 

 

 今まで、ナギちゃんに言った事は全て本心だ。

 アリウスの娘達と仲良くしたいし、ナギちゃんの手助けも出来ればしたいと思っている。でもそれ以上に、もう一つ伝えていない目的があった。

 

 それこそが、アリウスの立場の確約。

 今回、エデン条約にアリウスを中立校として組み込む事ができれば、どの学園もアリウスに安易に手を出す事は出来なくなる。

 手を出したものなら、トリニティとゲヘナを敵に回すようなものだから。

 

 トリニティは立場を重んじ、ゲヘナは恩を売るために、中立校であり同盟校でもあるアリウスを守るために行動を起こすに違いない。

 

 そうすれば、アリウスの立場はより確実なものとなる。

 いきなり表舞台に現れた正体不明の学園から、二大校の後ろ盾がある中立校となり、キヴォトスにその名が広まる事だろう。

 

 そうなれば、アリウスも安泰。

 アリウスの王として、“アイツ”も心配の種が一つ減るに違いない。

 

 そうなれば。

 そうなれば、そうなってしまえば。

 

 

「えへ」

 

 

 頬が緩む。

 来るべき光景を妄想して、私は思わず。

 

 

「えへへ」

 

 

 だらしなく笑ってしまった。

 もしかしたら――――“アイツ”に褒められるかもしれない。そんな未来を想像しちゃった。

 

 でも直ぐに、頭を横に振る。

 ブンブンと勢い良く。そんな素敵な未来を吹き飛ばすように。

 

 

「いやいや、いやいやいや。それはないっしょ。本当にないでしょう本当に」

 

 

 そもそも、何がアリウスの王なのか。

 いきなり現れたと思ったら、そんなことになっていたなんて聞いてない。会いにきてくれてもいいと思う。

 だから、ナギちゃんに前に言った叩き潰したいっていうのも本当だ。会いに来てくれなかった八つ当たりでもある。

 

 

「でも、そういうところも……」

 

 

 こちらの思い通りにならないところがまた。面白いというか、なんというか。こちらの予想を遥かに超えてくるのが、良いというか。

 

 

「ゲヘナの二人とまだ付き合いあるのかな……」

 

 

 ポツリと、思わず出てしまった気になっていたこと。

 

 “アイツ”に嫌がらせをしていた娘達に()()()()をして、解決したから話しかけようとしたら、いつの間にか仲良くなっていたゲヘナの二人。

 しかもよりにもよって、一人は角が生えている。

 ゲヘナの風紀委員長といい、もしかして角フェチなのだろうか。

 

 

 私は今までゲヘナを何となく嫌っていたけど、考えてみたらあの辺りから決定的に嫌うようになっていたかもかもしれない。

 私の方が先に知っていたのに、後から出てきたゲヘナに“アイツ”を取られていた。それが私のゲヘナ嫌いを決定的にしたというかのように。

 

 

 私の方が先に仲良くなっていた筈なのに、そうなれば今頃一緒にトリニティに通っていたし、ナギちゃんとも仲良くなっていた筈だし、三人揃って幸せに学園生活を送っていたはずだ。

 

 

「はぁ……」

 

 

 溜息が出る。

 そうはならなかったんだよ。だからこのお話はここでおしまいなの。

 

 

 本当に落ち着かない。

 “アイツ”のことを考えると、出会った頃のことを思い出す。

 私の価値観を壊し、思い通りにならない存在が居る事を教えられて、力でわからせてきた“アイツ”を。

 

 

 

戦いとか野蛮な事はしたくないけど、“アイツ”が愉しそうにしているから努力した。頑張って強くなった。もう一度真っ直ぐと、あの綺麗な瞳で見られたいから。

 

 その為に、柄にもない事だってやる。苦手な政治のお話だってナギちゃんとする。アリウスのために、“アイツ”のために何でも頑張れる。

 

 

「……違うもん。“アイツ”のためじゃないもん」

 

 

 精一杯の反抗。

 口ではそういうものの、どうしても“アイツ”にもう一度会いたいから。

 

 交換留学、私が行きたいけど無理だよね流石に。ナギちゃんが良いっていうとは思えない。

 でもいいんだ。アリウスに行く口実が出来るから。

 

 この気持ちが愛情からくるものなのか、友情からくるものなのか、それとも愛憎からくるものなのかわからない。

 でも兎に角、お話がしたい。“アイツ”が望むなら戦ってもいい。それくらいには、私は“アイツ”に夢中みたいで。

 つまりは――――

 

 

「アイツに、早く、会いたいな……」

 

 

 

 

 





 △聖園ミカ
 オウヒに価値観をぶっ壊されて、おもしれー女って言う方。
 基本、ブルアカ本編な性格なのだが、オウヒが絡むとステータスが2段階くらい上がり頑張っちゃう系女子。
 自分と戦うオウヒが本当に愉しそうで、自分のことを見てくれたから、また戦ってもいいから見てもらいたい。だから強くなるねっ☆ って変な努力をしてしまった。
 褒められるためなら苦手な政治も頑張っちゃう。
 本人にはツンデレ。影ではドロアマ。所謂、ツンデロ系女子。若干ヤンデレも入ってる。


 △『ごめん、大丈夫?』
 おもしれー女ってなった原因。
 運命構図みたいになってる。

 
 △ナギちゃんの表情が固くなるのを観察する。
 またナギサ様の胃が大変な事になってそう

 
 △“アイツ”に嫌がらせをしていた娘達におはなし
 ミカはスゲェよ


 △いつの間にか仲良くなっていたゲヘナの二人
 真の意味で、許さんぞ陸八魔アル。
 そして、覚えて居ろよ浅黄ムツキ。




 
 
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