~ソロモンちゃんねる~
アツコ「ねぇ、殿下。意味が分かると怖い話していい?」
オウヒ「……えっ、怖い話?」
アツコ「道を歩いてたら、赤い手袋が落ちてました」
オウヒ「待って、アツコ。余、まだやっていいって言ってない」
アツコ「よく見たら、中身も入ってました」
オウヒ「怖っ! いや、意味が分かるとじゃない。いきなり怖い!」
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ワタシが
今となっては、朧気となっている昔の記憶。
思い出そうとしても、思い出すことの出来ない過去。
それはまるで、葉っぱを食べる虫食いのように、その箇所だけ記憶がなく、思い起こす事も出来なかった。
それだけ、今のワタシと、過去の
別人のようで、ワタシにとっての過去は、他人事のように捉えてしまっている。
でもどうしてかな。
コイツのことだけは、目の前に立っている黒よりも黒く、墨よりも黒い。コイツのことだけは、鮮明に思い出せるのは、どうしてだろうか。
ワタシを未だに『アヌ』と呼び、親しげに話しかけてくる。その癖に、用済みだと言わんばかりに――――突如消えた黒いコイツ。何年も、ワタシの前に現れることはなかった癖に。
昔と変わることなく、ワタシが思い出せる記憶の姿のまま、コイツはまた突如として現れて。
「お噂は予々。随分と暴れていらっしゃるようですね」
「そうだけど、オマエに関係あるの? いきなりワタシの前から消えた、オマエなんかに」
「そうですね、一片もありませんとも」
ワタシの言い分に、黒いのは肯定すると。
「学校はどうですか? 成績は?」
「関係ないでしょ」
「お友達は出来ましたか?」
「別に」
「ちゃんと食べていますか?」
「答える義理はない」
質問が矢継ぎ早に飛んでくるが、意図が読めない。
何のつもりなのか、ワタシは苛立ちを隠そうともせずに、自分でも分かるくらい不機嫌な声で。
「これって尋問? ワタシがオマエに答えると本気で思っているの?」
「……これは手厳しい」
諸手を上げて、降参、といったジェスチャーを取る。
コイツにとっては、場を和ませるために取った行動かもしれないけど、ワタシにはそれが癪に障った。
ワタシは両腕を組む。
うっかりはずみで、愛銃を抜かないための拘束も兼ねている。
「それで、何の用? オマエと違って、ワタシは忙しいのだけど」
「アナタの顔を見たくなりましてね」
「なに、それ……」
取ってつけたかのような理由。
コイツのことだ。きっと本心じゃないに決まっている。何かを打算的に考えて、他人を利用し、用が済んだら切り捨てる。コイツはそういうヤツだ。ワタシにもそうしたように、他人にもそうするようなヤツだ。
故に、警戒心を緩めない。
活かせるモノが少ない、過去の経験を踏まえて、ワタシはコイツの一挙手一投足を警戒し続けて言う。
「さっさと目的を言いなよ」
「本心なのですが、それではアナタは納得しないのでしょうね」
「当たり前でしょ」
「……そうですね、強いて挙げるなら」
そういうと、コイツは愉しげに。
「先程、アヌが話していた内容に、私達が注目している人物達の名が挙がりましたので声をかけました」
「私達……?」
私、ではなく、私達、とコイツは言った。
それはつまり複数形。今のコイツは、単独で何かを成そうとしているわけではなく、仲間もしくは利害が一致している何者かと、組んでいるということになる。
コイツはそれを隠す事もなく、堂々とした口調で。
「『ゲマトリア』。それが現在、私が所属してる組織の名です」
「聞いた事がないけど?」
「一応、秘密組織ですので。我々の目的が目的ですし、表立って行動するわけにはいかないのですよ」
コイツの目的、それは変わっていないのであれば、それはつまり――――。
「まだ崇高だのなんだのって、研究しているわけ?」
「そうですが、アナタは思い違いをしている」
一拍を置いて、口を開く。
「それは手段であって、目的ではありません。私達の目的は、別にあります」
「……ワタシが、『いずれ天上に至る存在』になるっていうのと、関係はあるの?」
「…………」
朗々とした口調だった癖に、どういうわけかコイツはここで口篭る。
言葉を選んでいるかのように、何かをはぐらかすように、伝えるのを控えるように、黙っているようにも見えた。
「……もう、アナタには関係のないことです」
もう関係がないのだから首を突っ込むな、とコイツは暗に語る。
確かにそうだ。
今更、コイツと会話するのだって気分が悪いというのに、何をワタシは聞いているのか。
早々に会話を切り上げるべきだ。突然ワタシの前から消えて、そしてまた突然ワタシの前に現れたコイツに、これ以上時間を使うのだって勿体無い。
突き放す言い方だって、別にどうでも言い。
それなのに、どうしてだろうか。何故ワタシはこんなにも――――苛立っているのだろうか。
「それで、共通の人物達って誰?」
「一人は小鳥遊ホシノさんです」
「……アビドスの最後の生徒会」
「それと、キヴォトスに存在する『最高の神秘』の持ち主でもあります。今は、カイザーPMCの基地にて収容されていますが」
「……まさかオマエ、カイザーと手を組んでいるの?」
「流石アヌ、話が早いですね。えぇ、組んでいますとも。ホシノさんを捕らえ研究するために」
「……見下げ果てたよ。あんな連中と手を組むなんてね」
「これが一番良い手でしたから。ゲマトリアとしてではなく、
口元に笑みを張り付かせて――――いるようにも見えた。
コイツは愉快そうに笑みを浮かべて。
「ホシノさんの神秘を研究し、そして――――カイザーを潰すためには、ね」
「……………………は?」
眼を見開いて、口を開けて、思わず黒いのを見つめてしまう。
コイツが何を言ったのか、本気で分からないし、理解も出来なかった。
カイザーを潰すといったのか?
どうして、手を組んでいる癖に、潰そうとしているのか、ワタシには理解が追いつかない。
「オマエ、何を考えているの?」
「アヌ、覚えておいて下さい。大人は時として、嫌悪している者とも笑顔で、握手をしなければならない時があるのですよ」
「答えになってない。オマエは何を――――」
考えているの、と言葉が続かなかった。
ワタシの懐から、端末が鳴り出して、意識をそちらに向けてしまった。
その隙を突かれて、対面していた黒いアイツは消えていた。
そして、去り際。
「もう一人は、シャーレの先生です。彼は素晴らしい、私が一杯食わされました。彼とはこれからも、競い合う事でしょう」
「……っ! 待て、待ちなさい! また消えるのか、またオマエは、ワタシの前から消えるのかっ!」
「……それでは、アヌ。アナタの行く末が、輝かしい未来である事を願っています」
「待っ――――」
て、とその先の言葉が続く事はなかった。
また消えた。あの時のように、突然と。何も言わずに、何も理由を話さずに、掲げる目的すらも言わずに、またワタシの前から――――消えた。
苛立ちが晴れることはない。
これがどういう感情なのか、未だにワタシにはわからない。
奥歯を噛み締めて、眉間に皺を寄せて、両肩を震わせて、両手を握り締める。
分からない、ワカラナイ、どうしてワタシはこんなにも、苛立っているのか分析が出来ない。
それでも時間は止まってくれない。
ワタシですら説明できない感情を抱いたまま、物事は勝手に進んでいく。
深く息を吸って、深く息を吐く。
この感情は、他人に八つ当たりしていいものじゃない。ワタシ個人的なものであり、ワタシで解決しなければならないモノ。
端末から着信は未だに鳴り響いている。
電話口の人に悟らせないように、冷静にならないとならない。
乱れていた心が落ち着いていくのを感じる。
そしてワタシは懐から端末を取り出して、通話するために耳に当てて、画面に映っていた名前を声に出した。
「……どうした、アツコ」
『殿下、今大丈夫?』
「問題ない。それで、どうした?」
うん、と言葉を区切りアツコは単刀直入に用件だけを言う。
『アリウスにシャーレの先生が来てて、頼みたい事があるから殿下に会わせてほしいって』
△黒いの
言わずもなが、クックックと笑うアイツ。
ブルアカ本編でも変わらずに、ゲマトリアの目的も変わっていない。
オウヒのことをアヌと呼び、世話をしていた人。ある程度の家事も出来る。豪快な男メシが得意。
ベアおばのことを、あまり良く思っていない。
~少し前の裏話~
黒いの『電話にて、失礼します。今回の護衛任務、お疲れ様でした。報酬は指定された口座に振り込ませていただきます』
アル「あの、本当にいいのですか? 私達、何もしてないのだけど……」
黒いの『いえいえ、助かりましたとも。本当にありがとうございました。流石、あの娘の――――失礼。こちらの話でした』
アル「は、はぁ……」
黒いの『そうそう、良い結果を残してくれたので、追加報酬も払わせていただきます』
アル「え、どうして? 本当に何もしてないのですが……」
黒いの『そういわずに、是非受け取っていただきたいのです。とはいえ、貨幣ではなく、情報なのですが』
アル「情報?」
黒いの『えぇ、きっと貴女方も興味があるものかと』
アル「……聞きましょうか」
黒いの『カイザーが狙っている標的。その人物が貴女方の馴染み深い生徒でしたので、お耳に入れようかと』
アル「それって……」
黒いの『天上院オウヒといえば分かりますか?』
アル「――――なんですって?」
アルちゃん社長がアビドスに協力していた理由。
ブルアカ本編よりもやる気満々。報酬? いらないからカイザーぶっ潰そうぜってなってる。
カヨコ曰く、あそこまでキレてる社長はみたことない。