こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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 ~ソロモンちゃんねる~
 とあるカフェにて
ヒヨリ「あれ、殿下じゃないですか?」
ミサキ「……女に言い寄られている(イラッ)」
アツコ「任せて」
サオリ「アツコ、なにを……?」

アツコ「殿下、二股してたの? 他の生徒には興味ないって、浮気しないって言ってたのに、嘘つき!」
オウヒ「」

ヒヨリ「姫ちゃん、走り去っていきましたね」
アズサ「平和だったカフェが一瞬にして修羅場になった。やるな、アツコ」
サオリ「アツコ!?」


 感想、評価、誤字報告ありがとうございます!
 ここすき、もして頂いてありがとうございます。最近になって、ここすきの見方が分かりました!


 


第15話 人の上に立つという事は

 

 アッちゃんから連絡を貰った後、ワタシは直ぐにアリウス自治区へと足を運んだ。 

 ヒナから情報を貰っていなかったら、多分、というか絶対、ワタシは混乱していたに違いない。そういう意味でも、ヒナには感謝しないとならない。本当に彼女にはお世話になりっぱなし。今度しっかりお礼しないと。

 

 向かうまでずっと考えていた。

 内容は勿論、シャーレの先生相手に、どうやって立ち回ろうか。

 ヒナの情報通り、きっと彼がやってきた理由は、自主退学したアビドスの生徒会だった生徒――――小鳥遊さんを救出するために手を貸して欲しいといった内容なのだと思う。

 

 ヒナの言うとおり、アビドスには他校に助けを求めるほどの余裕も伝手もない。

 今回だって、か細い縁を頼りに、先生はやってきたのだろう。先のカイザーの暴走を鎮圧する為に手を貸した、その程度の縁を頼りに、アリウスまで先生は遠路はるばる足を運んだのだろう。

 

 あまりにも必死だ。

 でも笑うことなんて出来ない。それだけ先生もアビドスも余裕がなく、正に藁にも縋る気持ちで来ているのは想像がつく。

 

 出来る事なら、ワタシだって協力したい。

 でも、余裕がないのはアリウスだって同じだ。何だったら、少し前まで学園として機能していなかったアリウス()()は、アビドス高等学校よりも厳しい状況にある。

 とてもじゃないが、他校のいざこざに手を貸せるほど、余裕なんてない。

 

 ともすれば、最悪ワタシだけ出張る事になるのだが、一人で出来る事なんて限界がある。

 ワタシ一人で暴れればいいということじゃない。ヒナの前情報通り、先生の目的が救援要請であれば、ワタシ一人程度の力なんて取るに足らないモノ。カイザーを相手にするのなら数が必要になり、個の力なんて無に等しい。

 

 

 

 どうしたものか、と考えながら歩く。

 その後ろにはアッちゃんの姿があった。

 ワタシ達二人は、アリウス分校校舎の廊下を歩き、アッちゃんに問いを投げる。

 

 

「シャーレはどこにいる?」

 

「生徒会室で待って貰ってるよ」

 

 

 対してワタシは、そうか、と相槌を打って今後をどうするか考えていると。

 

 

「どうして先生が来たと思う?」

 

 

 アッちゃんは不思議そうに呟いていた。

 ワタシはヒナから前もって、先生が奔走している、と聞いているから何も思わなかったけど、アッちゃんからしてみたら先生の来訪はあまりにも唐突な出来事。彼女が疑問に思うのも無理はなかった。

 

 

「十中八九、先のアビドスの件であろうな。ゲヘナにも、シャーレのが訪れたという情報がある」

 

「アビドスの件って、昨日のカイザーの?」

 

 

 あぁ、とワタシは言葉を区切り。

 

 

「ゲヘナは兎も角として、我らのような取るに足らぬ勢力にまで声をかけるとは、随分と切羽詰っていると見える」

 

「もしかしたら、トリニティにもお願いしに行ってるかもね」

 

「カイザーと事を構えるには、アビドスだけでは戦力が足りぬのだ、是非もあるまいよ。キヴォトス中を東奔西走とはご苦労なことよな?」

 

 

 ククッ、と笑みを零してワタシは続けて言う。

 

 

「シャーレのが来訪した理由は、先のアビドスで争いの引き金となった、自主退学した最後の生徒会の救出要請に他ならぬ」

 

「救出って、その言い方だとどこかに捕まっているみたいな言い方だけど……」

 

「真実、捕らえられている。アビドス砂漠にある、カイザーPMCの基地にな」

 

「なんで殿下が知っているの?」

 

「ヒナに聞いた」

 

 

 単純明快な答えに、アッちゃんは納得して。

 

 

「そっか。つまりは人助け、ってことだよね?」

 

「大雑把に物事を捉えるのであれば、そうなるな」

 

 

 人助け、なんて聞こえようによっては美しい言葉だけど、内容が内容だ。

 

 小鳥遊さんを助けて、終わりというわけではない。カイザーPMC及び、カイザーコーポレーションは健在であり、アビドスと一緒に目を付けられたら、アリウスは本当の意味で終わる事だろう。

 ゲヘナとは違い、学園の規模は小さく、生徒の数だって圧倒的に少ない。真正面からやり合える程、アリウスは戦力が整っていない。

 

 このまま、アビドスに手を貸したら最後、一緒に潰されてしまう可能性だってありえてしまう。

 それだけは避けたい。人並みの生活が出来るまで立て直す事が出来たのは、アッちゃん達が全力を尽くして頑張ったから。それを無になんて出来ない。

 

 手を貸すか、それとも見放すか。

 道理を沿うか、理無いと眼を逸らすか。

 

 

「……殿下はどうしたいの?」

 

「そうだな」

 

 

 出来る事なら手を貸してあげたい。

 小鳥遊さんだってきっと、大人に騙されているんだと思う。そうでもなきゃ、自主退学なんて真似はしないと思うし、何よりもカイザーに捕まっているという事実だけでも明白だというのに、あの黒いのだって絡んでいるんだ。

 まともな状況じゃなかったのは容易に想像がつくし、ワタシは小鳥遊さんのことを全く知らないけれど、助けることが出来るのなら、ワタシ程度の力でよければ手を貸してあげたい。

 

 

「……現状、余達には味方が少ない。交換留学を提案して来たトリニティの――――ティーパーティーの聖園ミカの狙いも読めず、同盟相手と評するにはあまりにもか細い縁だ。故に、ここでシャーレに一つ貸しを作るのも一つの手だとは思うが」

 

 

 問題は、件のシャーレの先生がそこまで恩を感じてくれる存在かどうか。

 

 今回の救出要請だって、シャーレが後ろ盾、傘となってくれれば、ありとあらゆる指摘に言い訳が出来る。

 何せ、シャーレは――――連邦捜査部S.C.H.A.L.Eは連邦生徒会の直轄とはいえ、完全な中立組織だ。カイザーコーポレーションがどんな難癖をつけてこようとも、連邦生徒会の直轄組織からの要請だったからそれに応じただけ、と何だったら連邦生徒会に非があるように言い訳がつく。

 

 でもそれも、シャーレの先生が保身に走る大人であったのなら、ご破算となってしまう。

 自分はそんなこと言ってないとしらを切り、逆にカイザーと一緒になってこちらを非難し、キヴォトスにいる大人のように――――利用し搾取してくる人物であったのなら、話は別となってくる。

 

 

 それだけは、あってはならない。

 もう二度と、アリウスの娘達に、大人になんかに、搾取されてほしくない。

 これまでたくさん、彼女達は苦しんで、悲しんで来たんだ。もう幸せになってもいい筈だ。

 ただ笑って、たくさん幸せになって、昔の記憶なんて忘れるくらいに、幸せにならないと嘘だ。

 

 

 アッちゃんだって、そうだった筈だ。

 苦しんできた筈だ。でもどういうわけか――――。

 

 

「それじゃ、もし先生が助けて欲しいって言ってきたら、助けてあげるってことだね?」

 

 

 微塵も感じさせないように、もう一度大人という生き物に利用されるかもしれないというのに、何気ない口調で言う。

 

 アッちゃんはワタシのように考えなし、って娘じゃない。

 アリウスを今まで纏めてきたのは彼女だし、ただ暴れるだけのワタシと違って、思慮深い娘だ。ワタシが気付いてない可能性にだって、気付いている筈。

 

 でも、アッちゃんは口に出さない。

 ただワタシの決断を、肯定してくれる。

 

 

 ワタシは立ち止まり、振り返る。

 そこにいたのは、急に立ち止まり振り返るワタシを疑問に思っているアッちゃんの姿。

 可愛らしく首を傾げて、ワタシを見ている。その姿には、ワタシにはない高貴な気風――――つまりはカリスマ性があった。

 

 

「アツコよ、貴様はそれでいいのか?」

 

「なにが?」

 

「アリウスの生徒会長は貴様だ。なのに余が決めてしまっていいのか? 貴様とて、思うところはあるだろう」

 

「……うん、不安はあるよ。先生がマダムと違うとは限らない。あの人のように、私達を利用して、最後には見放す。そんな大人かもしれない」

 

 

 でも、とアッちゃんは言葉を区切り、力強い言葉と共に。

 

 

「私達の王は殿下。殿下の往く道は、私達の進むべき道でもあるの」

 

「……余にはわからんな。サオリといい、貴様といい、どうして余に付き従ってくれるのか」

 

「何でって、決まってるよ。殿下は私達を助けてくれたから」

 

 

 何を今更、とクスクスと可愛らしく、鈴の音がなるような声で綺麗にアッちゃんは笑う。

 

 でも違う、違うんだよ。

 ワタシは首を横に振り、アッちゃんの言葉を否定する。

 

 

「何度も言っているが、余は何もしておらぬよ。貴様達が道を作り、貴様達がその道を歩き、あらゆる苦難と苦労の末、ここまでやって来た。そして、いつしかシャーレが助力を請うまでにアリウスは成長した。それは貴様達の尽力あってこそだ」

 

 

 そうだ。

 ワタシは何もしていない。

 アッちゃん達が頑張ったから、それでもと歯を食いしばって、諦めなかったから、今のアリウスはあるんだよ。

 

 

「余がしたことといえば、気に入らぬ年増を撃ち倒しただけ。ただそれだけに過ぎず、その程度の事。荒れた地を整備し、娯楽をもたらし、アリウスに活気を与えたのは貴様達だ。他校に比べると、まだ豊かとは言えぬが、全ては貴様達の偉業によるもの。真の意味で、余は何もしておらぬ。……助けたなどと、誰が言えようか」

 

「そんなことないよ。殿下は私達のことをずっと見てくれてたでしょ?」

 

 

 アッちゃんは微笑を浮かべて、ワタシの片手を包むように両手で握り締める。

 壊れ物を扱うように、花を愛でるように、慈愛の笑みを浮かべて。

 

 

「一緒に考えてくれて、一緒に働いてくれて、一緒に笑ってくれた。投げ出さないで、時間を作って、わざわざ私達の様子を見に来てくれた。私達のことを、誰も見てくれなかった私達のことを、殿下はずっと見てくれていた」

 

 

 そんなこと、とワタシは言いかけるがアッちゃんはやんわりと首を横に振って。

 

 

「殿下は、それだけ、って言うけど私達は何よりも嬉しかった。マダムが――――あの人が支配する世界で、誰も私達を見つけてくれなくて、全ては虚しいって諦めてた私達を、殿下は拾い上げて、あの人が支配する世界を壊してくれた。世界はこんなにも広いんだって、私達に――――私に教えてくれた」 

 

 

 アッちゃんは、だから、と言葉を区切り。

 

 

「私達は殿下に付いて行く。貴女の見る世界を、私達も見たいから」

 

「……その先が破滅だとしてもか?」

 

「うん。その果てが、地獄だとしても、殿下と一緒にいれれば、私達にとってはそこは天国――――ううん、そこは理想郷(エデン)になるんだよ」

 

 

 そういうと、アッちゃんは私の手を離して、数歩後ずさりニッコリと満面の笑みを向けて。

 

 

「それに、殿下がいる限り、アリウスを好きにさせないんでしょ?」

 

「――――――――」

 

 

 思わず、ワタシはポカンと口を開く。

 そうだ、確かにワタシは言った。自分で言ったんだ。ワタシがいる限り、この地は好きにさせないと、ミサキとアッちゃんに言った。

 

 自分で言っておいて、何を弱気な事を言っていたのか。

 何が破滅だ、そんなことを起こさせないと、自分で言ったばかりじゃないか。

 

 

「あぁ、そうだ、そうだとも。余が吐いた言であったな」

 

 

 噛み締めるように、その言葉を反復するように、ワタシは自分のうちに刻み付ける。

 好きになんてさせない。ここまで頑張った、アリウスの娘達に報いるためにも、この地を好きになんてさせない。

 

 それがワタシの義務、なのだと思う。

 ワタシの勝手で、何もかもが狂ってしまったかもしれないけど、彼女達の王様をやるには不相応だし、何もかもが足りてないワタシだけど、彼女達の傘くらいにはなれる筈。

 

 つまるところの、いざとなったときのために、責任を取る人間。

 

 

「赦せ、アツコ。余らしからぬ、情けない問いであった」

 

「大丈夫だよ、私と殿下だけの秘密。何だか嬉しい」

 

「なんだ、それは」

 

 

 ワタシは苦笑を浮かべる。

 アッちゃんと共通の秘密を持てるのは、ワタシも嬉しいけど、それがワタシの情けないモノだというのは素直に喜べない。

 

 何はともあれ。

 

 

「さて、シャーレと対面する。先ずは」

 

「先ずは?」

 

「――――試す。シャーレの出方を見てから、決めるとしようか」

 

 

 

 

 





>>アリウス
 割とオウヒに対して激重感情を抱いているのが判明。
 特に、ミサキとアツコの二人。
 ミサキは何だかしっとりしているし、アツコは矢印がクソデカ大きい。
 でも、オウヒもオウヒで、アリウスに対して自分に出来ない事(学園の復興など)をやっていて、彼女達を尊敬している。いざとなれば、自分が責任を取って腹を切る程度には入れ込んでいるのでお互い様。
 自分達が敵わなかった大人をぶっ飛ばしたオウヒに脳を焼かれて、自分には到底出来ない事を力を合わせてやっているアリウス達には幸せになってほしいと願うオウヒ。
 お互いの脳を焼いているのでした。







 
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