~ソロモンちゃんねる~
トキ「なまむぎ」
オウヒ「なまむぎ」
トキ「なまごめ」
オウヒ「なまごめ」
トキ「なまたまご」
オウヒ「なまたまご」
トキ「なまむぎなまごめなまたまご!」
オウヒ「ままむみまままままままま!」
リオ「何をしているの?」
ヒマリ「早口言葉の特訓らしいです」
リオ「……貴女は出来るの?」
ヒマリ「当たり前です。清楚で可憐な病弱美少女でありミレニアム最高の天才清楚系病弱美少女ハッカーの私に出来ない事なんてあまりありません」
リオ「えぇ、今ので分かったわ(凄い早口ね)」
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ホシノがアビドス高等学校から去ってしまい、カイザーPMCから襲撃されてから翌日。
私は各学園を奔走していた。
全ては、アビドス砂漠に構えている、カイザーPMCの基地からホシノを救出、その協力を要請するために私は各学園に足を運んでいた。
ゲヘナとトリニティに状況を説明したが、ハッキリ言うと手応えはない。
それも当たり前といえる。キヴォトスで先生として赴任してから、私には実績が少なく、協力してもいいものかどうか、迷っているといったところだろう。
何せ、事を構える相手がカイザーPMC、つまりはキヴォトスでもトップといっても差し支えない大企業――――カイザーコーポレーションだ。
ここで介入してしまえば、最悪カイザーコーポレーションと抗争になってしまうことだってありえてしまう。それは各学園も望む所ではない。
彼女達の判断は間違いじゃない。
むしろ、一つの学園を統治する者として、話を聞いてくれただけでも温情があったほうだといえる。
戦争の火種となりえる話を持ってきた私を、門前払いもせずにしてくれただけでも、彼女達は優しい。
そして、私はもう一校、ゲヘナとトリニティとは違う学園に足を運んでいた。
先のアビドス自治区をカイザーPMCが襲撃した際に、手を貸してくれた生徒――――錠前サオリと白洲アズサが所属する学園『アリウス分校』。
この学園については、私も話を聞いている。
なんでも、トリニティで迫害を受けた学園で、突如として表舞台に姿を現した学園、らしい。
内紛が絶えない学園だったけど、現在の情勢は落ち着いたものであり、全ては他校でもあるミレニアムの生徒が力で治めたおかげ、とのことだ。それ以上の事は、私には分からなかった。排他的な学園なのか、あまり外部へ情報が漏れないようになっている。
何かを学ぶ学校としては、まだまだ不十分な事が多い印象だけど、学園としての機能は果たしているといえる。
聞いていた話よりも、治安は平和そのもの。生徒の顔を見ても活気に満ちており、とても内乱が頻繁に起きていた学園とは思えない。
私が通されたのは、アリウス分校の生徒会の一室。
大きな円卓の机の前に座り、私はこの一帯を武力で治めたミレニアムの生徒――――天上院オウヒと対面していた。
おなかの前で手を組み、足を組んで、彼女は玉座に座っている。
その姿が、どこか堂に入っており、違和感がまるでない。紅い双眸は私を注意深く観察し、剣呑な威圧は暴君のそれといえる。
でも。
「――――貴殿がシャーレの先生か」
有無を言わせない口調。
だがその姿に、私はどこか違和感を覚えた。まるでその姿を演出しているような、本当の彼女の姿ではなく、何故か仮面をつけているような印象を覚える。
そして、その後ろに控えている五人の生徒の姿。
面識があるサオリやアズサの他に、初めて見る生徒の姿。アリウス分校の生徒会長でもある秤アツコ、槌永ヒヨリ、戒野ミサキの姿があった。
彼女達の視線。
明らかな疑心、若干の嫌悪、露骨なほどの警戒が色濃く眼に宿っていた。
きっと、私が知らない所で、彼女達は私に――――いいや、大人という存在に何かされたのだろう。
何故、私がそんなことがわかるのか。
デジャヴがあった。彼女達ほど、はっきりとした敵意はなかったけど、顔は笑っていながら私に警戒心を緩めなかった生徒を、私は知っている。
最初、というよりもここに来るまで、私は気付けなかったけど、アリウスの生徒達の疑心や敵意で、今になってやっと気付けた。その生徒は――――ホシノも過去に大人に利用されていたから、私を警戒していたのかもしれない。
思わず拳を握り締める。
どうして、ホシノが、アリウスの生徒達が、大人の思惑に振り回されなければならないのか。
大人とは、そうじゃない筈だ。子供達の未来を、後進のために道を作り、良くも悪くも見本となるのが大人の筈だ。
それに、ホシノと約束したんだ。
私が、大人として、何とかする、と。そのためなら――――。
「……シャーレの、如何した?」
“あっ、ごめん。なんでもないよ”
急に黙った私に、怪訝そうな眼でオウヒは、そうか、と一言応じた。
そうだ。
あのときこうしていればとか後悔しても、意味がない。
今も、準備を進めているアビドスの娘達のためにも、囚われているホシノを助けるためにも、私に出来る事をやらなければ。
“君が、オウヒでいいのかな? ミレニアムサイエンススクールの”
「如何にも。余が天上院オウヒである」
ククッ、と笑みを浮かべて彼女は続けて。
「こうして貴殿と顔を合わせるのは、初めてだな」
“え?”
「ん?」
実の所、これが初めてではない。一度だけ、私も彼女もお互いを見たことがある。
その場所は柴関ラーメンにて、便利屋68、ゲヘナの風紀委員会、そして私やシロコの前に、彼女は現れている。とはいっても、あの時のオウヒはオウヒではなく、変な――――いいや、個性的な被り物をしていたし、『世界征服推進部ソロモン』と名乗っていた。
とはいっても、私も最初からソロモンがオウヒだとわかっていたわけじゃない。
私が連邦生徒会長に託された端末『シッテムの箱』のメインOSであり、私の秘書と言ってくれている娘、アロナから聞いている。
アロナ曰く、解析妨害機能を備えていましたが私には効きません、とのことだ。
暴いてはダメなやつだったのではなかろうか。オウヒだってオウヒの事情があって、あの個性的な被り物をしてソロモンなんて名乗っていたわけだし。
現に、オウヒはバレてないと思っていたようだ。
彼女は不思議そうに首を傾げて。
「そこはかとなく、奇天烈を見るような視線。……初対面よな?」
“あ、あぁ! そうだね、君と会うのは初めてだよ!”
「で、あろうとも」
うんうん、とオウヒは満足そうに頷いて。
「して、シャーレの。此度は何用で参った?」
“アリウスに、お願いがあってね”
「ほう、願いか。しかし、ふむ……」
オウヒは私を上から下まで視線を向けて、腑に落ちないような表情でジッと見つめる。
居心地が悪い。どこか値踏みされているようで、観察されているようでもある。
“どうしたの?”
「いやなに、余の聞いていた貴殿の人物評と、実際の貴殿の振る舞いに、誤差があった故、驚いただけの事」
“私はどんな風に言われていたんだ……”
「それはおいおい、語るとしよう。少なくとも
それは誰からなのだろうか。
気になる、凄く気になる! でもオウヒはそれ以上、その話題に触れるつもりはないのか、彼女は、さて、と言葉を区切ると。
「その願いとやらも、大方の見当はついている。カイザーの木偶に囚われている、最後のアビドス生徒会の救出要請、といったところか?」
“ど、どうしてそれを……”
「ククッ、侮ってくれるなシャーレの。全てを聞かずとも、断片的な情報さえあれば、造作もないこと。それこそ手に取るように分かる、というものだ」
意地悪く笑みを浮かべて、オウヒは改めて私を見つめた。
紅い双眸は真っ直ぐに私を見つめて。
「改めて問おう。貴殿は余に――――いいや、我らアリウスに何を望む?」
欺瞞など許さない。
暗に視線がそう語っている。
でも、私にはそのつもりなんて、毛頭なかった。
私に出来る事なんて、限られている。力もなく、腹芸なんて以ての外、私に出来る事はただ一つ――――想いを口にする事だけ。
“アビドスを、ホシノを、助けるために力を貸して欲しい。お願いだ”
「で、あろうとも」
そういうと、オウヒは玉座から立ち上がる。
足を運ぶのは窓際。そこからは、アリウス自治区を一望できる景色が広がっていた。オウヒはそれを見据えながら。
「貴殿は、アリウス分校のことを、どれほど耳にしている?」
“……過去にトリニティから弾圧を受けて、キヴォトスの表舞台から姿を消した学園”
「相違ない。貴殿の言うとおり、我らはキヴォトスから姿を消していた存在だ」
だが、と言葉を区切り。
「見るが良い、アリウスはここまで復興する事が出来た。貴殿も、アリウス自治区の活気を見たことであろう?」
“あぁ、みんな笑っていた。幸せそうにね。それも君の力によるものかい?”
「間違えてもらっては困るな、シャーレの。ここまで来たのは、余の力ではない。アリウスの生徒共の努力によるものだ。歯を食いしばり、諦めずに、必死に生きたからこその結果である」
そこまで言って、オウヒは振り返る。
私に再び視線を向けて、まるで試すような口調で、自嘲するような声色で。
「分かるか、シャーレの。アビドスほどではないが、我らとて他校に手を貸せるほどの財力も、人手も、何もかもが足りぬのだ」
オウヒの言うとおり、アリウス分校は決して豊かとは言えない。
情報だけでしか、私は知らないけれど、彼女達は持ち前の戦闘技術で何とか財源を保っている。トリニティのような資源もなく、ゲヘナのように生徒数が豊かとは言えず、ミレニアムのような技術も持っていない。
アリウス分校がやってこれたのは、それこそ身を削り、必死に傭兵仕事に努めたからだ。それで何とかやっていけるような現状と言えるだろう。
彼女の紅い視線が語る。
伊達や酔狂で手を貸せない、と。
当たり前の事だ。
彼女達は悪意があってそういっているわけじゃない。彼女達には守らなければならない存在がいて、守らなければならない場所があるのだから。
これは天秤であり、優先順位の話でもある。
どちらに比重が重くあるか、何を優先にすべきなのか、といった単純明快なことだ。
言うまでもなく、彼女にとってはアリウスこそが、何よりも重いもので、何よりも優先すべきことなのだ。
でも、これは交渉じゃない。
彼女を弁舌で騙し、理を説いて、協力させるモノじゃない。私に出来る事なんて、ただ一つ。
“君達の事情はわかる”
「……どうする、シャーレの。貴殿はどうやって、余達を協力させようとする?」
“オウヒは思い違いをしているよ”
「ほう、余が何を見誤っていると?」
“その口ぶりだと、このやり取りが駆け引きみたいじゃないか”
「違うと?」
“うん。言ったでしょ、私はね、お願いしに来たんだよ”
私は立ち上がり。
“お願いだ。出来る限りで良い。ホシノを救う協力をしてくれないか”
息を呑んだのは誰のものだろうか。
わからない。
何せ私は視線は床に。私は腰を曲げて――――オウヒに頭を下げているのだから。
そうだ。
私がするのは交渉じゃない、お願いすることだけだ。
心のうちを、彼女達に曝け出すように、自分の想いを口にする事しか出来ない。
見ようによっては情けない姿かもしれない。
大人が子供に頭を下げるなんて、と見下げ果てる人もいるだろう。
でも私はそうは思わない。頭を下げることは、情けない事じゃない。真に情けないのは、プライドが邪魔をして、下げるべきときに下げられない者のことだ。
「――――――――」
オウヒは何も言わない。
情けない姿の大人を見て、幻滅しているのか。それとも、私を見下しているのか。頭を下げている私には、分からない事だ。
数秒か、それとも数分か。
長いようで短い沈黙が続く。
「貴方は、いいや、貴殿、は……」
オウヒは何とか言葉を紡ごうとした調子で。
「……連邦捜査部S.C.H.A.L.Eは連邦生徒会の直轄。やろうと思えば、強権行使が可能な立場だ。それをしないのか?」
“しない”
「何故だ?」
“私はお願いをしに来てるんだよ。それにね、生徒を無理矢理従わせるなんて、先生のするべきことじゃない”
「――――――――」
そして二度目の沈黙。
もちろん、私が頭を下げたところで、彼女達が協力してくれるとは思わない。
私に出来る事があれば、なんでもするつもりだ。彼女達に報酬だって払おう。それこそ、『大人のカード』を使ってでも――――。
「面を上げられよ」
“あぁ”
言われた通り、私は顔を上げる。
今度は。
“――――え?”
私が言葉を失う番であった。
いいや、驚いているのは私だけじゃない。控えていたサオリ達も眼を見開き、息を呑んでいる。
オウヒも私と同じように――――頭を下げていた。
長い黄金の頭髪は垂れ、もしかしたら私よりも深々と頭を下げているのかもしれない。
サオリはいの一番に、必死な口調で。
「で、殿下! 何を……!?」
“そ、そうだよオウヒ! 何をしているの!?”
私も続いて声を上げるが、オウヒはサオリを片手を上げて制し、頭を下げたまま。
「先ずは謝罪を。――――ごめんなさい、貴方にそこまでさせるつもりはありませんでした。貴方に頭を下げさせるまで追い込んだのは、ワタシの落ち度です」
その声色はとても穏やかなもの。
先程と違った口調で、威圧が籠められていないものだった。そして、本気で悔いているようでもある。
あまりの変わりように私は少しだけ呆気に取られて、慌てながら。
“い、いいから、そんなことしなくていいから! 顔を上げて!”
「はい……」
そうして、彼女は顔を上げた。
でもそこにいたのは、王としての彼女。私と対話していたときのオウヒがいて、暴君としての顔つきのまま鋭い声で。
「忠告だ、シャーレの。貴殿は先程、何をしようとしていた」
“何って……”
思い当たる節があるとすれば、大人のカードを使って、彼女達の望む報酬を用意しようとしていたことくらい。
どうやらそのことだったようで、オウヒは眉間に皺を寄せて。
「
“……君はこれが何なのか知っているの?”
「知らぬよ。ただ
“そうか。うん、オウヒは優しいね?”
「貴殿は何を言っている?」
“だって、会って間もないのに、私のことを心配して注意してくれたんでしょ?”
「……今、貴殿に倒れられてはキヴォトスが混乱し、余達も困る。ただそれだけのことだ」
“そういうことにしておくね?”
見透かされて恥ずかしくなったのか、それとも私の見当違いな言葉に怒っているのか、オウヒは頬を紅く染める。言葉が見つからないようで、口を何度か開閉し、それから溜息を吐いて呆れた口調で。
「貴殿と話していると、調子が狂うな」
“私は楽しいけどね。君とお話し出来て”
「――――っ! も、もう一つ忠告だ。浮ついた言の葉ばかり並べていると、いつか刺されるぞっ」
暴君の顔なんてどこにいったのか、ムキになりオウヒは叫ぶようにそう言うと、玉座にドカッと勢いよく座り。
「
“えっ、それって……!”
「察せよ。……もう言わない」
「あーあ、殿下拗ねちゃった」
クスクス、と笑みを浮かべてアツコが私に近付いて。
「最初からね、殿下は先生に協力するつもりだったんだよ」
“そうなの?”
「うん。どんな人か確かめてから、だったけどね。ごめんね先生、試す真似をして」
“ううん、いいよ! みんな、ありがとう! オウヒも!”
見えなかった闇に、一筋の光が差し込んだようだった。
自然と、私は笑みを零して、アリウスの生徒達とオウヒに礼を述べる。
サオリは拗ねているオウヒに見惚れて。
アズサはサムズアップをして応じてくれて。
ヒヨリは満面の笑みを私に向けて。
ミサキはお礼なんて、って言いながら照れ臭そうにそっぽを向く。
アツコはオウヒの方へと視線を向けて微笑み。
肝心のオウヒといえば。
「ふん……」
私の方へと視線を向けずに、手を振ってくれていた。
△「全てを聞かずとも、断片的な情報さえあれば、造作もないこと」
全部ヒナから教えてもらっているくせに。
要は見栄。嘗められないように。
△「――――――――」
まさか頭を下げるとは思わなくて言葉を失っている。
キヴォトスでは見た事がない、大人の姿。
~少し後~
オウヒ「にしても、ヒナの嘗めた発言はなんだったのか。全然、侮ってこなかったぞ」
先生“ん、なんのこと?”
オウヒ「いや、貴殿がゲヘナの生徒を嘗めたと……」
先生“え、舐めたけど”
オウヒ「え?」
先生“しゃぶりついたけど”
オウヒ「え?」
先生“イオリの足を”
オウヒ「あぁ、舐めたってそういう――――え?」