こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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 ~ソロモンちゃんねる~
先生「いいかい? 会話のテクニックの一つに、イエスバット法というのがある」
オウヒ「うん」
先生「簡単に言うと、相手の意見に反対や反論するのではなく、『なるほど君の言う事も分かる、しかし……』といったように一旦譲歩して――――」
オウヒ「イエスと言うまでバッドで殴るのだな?」
先生「違う違う、そうじゃない」






第17話 そして彼女達は産声を上げた

 

 

 

 

 

 

 カイザーPMC理事は明らかに狼狽していた。

 耳からは部下達の嵐の如き報告――――現在戦場と化している、アビドス砂漠のカイザーPMC基地の戦局が入り。

 眼には報告と相違ない戦場の風景――――圧倒的な戦力を誇り、多勢に無勢であったにも拘らず攻めてきたアビドス高等学校の生徒――――アビドス廃校対策委員会に蹂躙される現状。

 

 

 理事は小刻みに、自分でも分かるくらい、鋼鉄の身体を震わせていた。

 それは怒りで、困惑で、嫌悪で。彼自身、制御が出来ないほどの負の感情が波となって押し寄せていた。鉄をも溶かすかのような、煮え滾った殺意を、今も戦闘を続けている対策委員会の面々に向けられていた。

 

 真っ直ぐ、ただ真っ直ぐに。

 先の未来に不安など抱いてない、何も考えてないかのような青臭い眼。

 こちらの都合など構うことなく、損得勘定など度外視した感情のまま、何度何度も嫌がらせをしたのに諦めない往生際の悪い姿。

 そんな子供の姿を、理事はただ見つめていた。

 

 

 理事には理解が出来ない。

 どうして、終わった筈の、アビドス廃校対策委員会の連中が、シャーレの先生の姿が、どうしてここにあるのか。

 

 アビドス高等学校を手中に収めた、カイザーコーポレーションへの腹いせだろうか。

 そうであれば、合点がいく。子供が考える事だ。感情のまま動き、後のことなど考えずに行動する。それが子供の生態である。

 

 しかし。

 

 

 ――にしても、なんだ。

 ――奴らの眼の輝きは。

 ――まるで、希望に満ちているかのような……。

 

 

 破れかぶれの衝動的な行動とは思えない。

 それに、報告ではシャーレの先生の姿も確認されている。

 

 アビドス廃校対策委員会だけならまだしも、あのシャーレの先生が何も考えなしに付き合うとは思えない。

 ならば、可能性として挙げられる事といえば。

 

 

 ――まさか、小鳥遊ホシノの奪還か……!?

 

 

 ありえない。

 それはありえない。

 

 いくらシャーレの先生が協力しているとはいえ、小鳥遊ホシノの場所を把握出来るわけがない筈だ。

 情報が洩れている可能性も低い。ここに捕らえていると知っている人間は限られており、社内の人間も極僅かしか知らされていない。カイザーの人間が裏切り、情報を流すなど考えられない。

 

 となれば、カイザーの人間ではなく、この件に関わっている外部の人間の仕業となる。

 

 

 ――黒服か!?

 

 

 理事の脳内には、黒い大人の姿。

 自身を黒服と称し、ゲマトリアという組織に属している者の姿が過ぎった。

 

 だが、それこそありえない。

 黒服が裏切り、情報を流すことこそありえない。黒服の目的は、小鳥遊ホシノの神秘の解明と探求。

 戦力として、小鳥遊ホシノを欲しているカイザーコーポレーションとも利害が一致していた。だからこそ、得体の知れない者であっても、手を組む事が出来た。

 

 

 だからこそ、見抜けなかった。

 利害が一致している程度で組んでいるからこそ、理事は見抜けなかった。

 人間とは感情の生き物だ。例え、お互いの利が一致していようとも、()()()()()()()とは限らないのだから。

 

 利益しか追い求めていなかった、理事に分かる筈もない。

 笑顔で握手をする人間の腹の内が、ゲマトリアとしての目的の他の、黒服個人の私欲を、理事に見抜ける筈がなかった。

 

 決して大局を見据えたものではなく、本当に個人的な憤りによる刹那的感情。

 ――――カイザーコーポレーションが一人の少女を害そうとしたことへの、報復によるものなど誰が見抜けるだろうか――――。

 

 

 ――この際、誰が裏切り者でもどうでもいい!

 ――やるべきことなど決まっている。

 ――目障りなアビドスの小娘共と、シャーレの先生を叩き潰す。

 ――これ以上に、優先すべきことなどない!

 

 

 理事は抱いていた疑心を、思考の隅へと追いやり、苛立ちを隠そうともせずに命じる。

 

 

「何をしている馬鹿共がっ! 相手は四人と無力な大人一人、数はこちらが有利なのだぞ! 包囲し磨り潰せ!」

 

 

 理事の指示に間違いはなかった。

 いくら、アビドス高等学校の生徒が精鋭揃いで、個々の錬度が高くとも、小鳥遊ホシノ程ではない。数の暴力には無力であり、それは先生の卓越した指揮能力が相手になろうとも関係がない。数で拮抗していない現状では、必ず限界は訪れる。

 

 カイザーPMCは、それを待っていれば良いだけのこと。

 体力が尽き、弾薬も補充する事叶わず、倒れるそのときを、カイザーPMCはただ待っていれば良かった。

 

 個人が国家に勝てないように、どうやっても少数側には限界がある。

 

 ならばどうすれば、勝利出来るだろうか。

 簡単な事だ。

 

 

「ほ、報告します!」

 

「なんだ?」

 

「北方より、武装した中隊規模の軍勢を確認しました!」

 

「北方だと? そちらには、対デカグラマトン大隊がいた筈だが」

 

「それが……」

 

「映像を出せ!」

 

 

 少数が勝利するにはどうすればいいか。

 策もないのなら――――相対する敵と、相応の戦力を用意するしかない。

 

 

 理事、部下のカイザーPMCの眼に、中継映像が飛び込んできた。

 報告通り、その数は中隊規模。これまた報告通り、全員が武装をしている。しかし、カイザーPMCの軍隊ではなかった。

 

 急に現れた、正体不明の軍隊。

 いいや、正体不明というには早計過ぎた。

 全員、装備品のどこかに校章が施されていた。

 

 カイザーPMCの何人かは、その校章に見覚えがあった。

 一人がそれを見て、呆然と呟き。

 

 

「髑髏に薔薇、背景の王冠……」

 

 

 更に一人、軍団の名を口にした。

 

 

「アリウスだ……」

 

 

 隊列を崩さず、まるで命令を待つ猟犬のように。

 正体不明の軍団――――アリウス分校の生徒達は、カイザーPMCの基地を見据えている。

 

 その有り様は、不動の山のよう。

 指示があるまで動く気配すら見せない。並大抵の錬度ではないことが、映像越しからも推察出来た。

 

 異様な光景。

 目的が分からない。

 突如として湧いて出てきた、アリウス分校の生徒達に、カイザーPMCはひたすらに困惑していた。

 だが彼の疑問は、直ぐに答えとなって、思い知らされる事となる。

 

 

 不動を誇っていた、アリウスの軍勢が割れる。

 それは左右に、まるで主の道を作るように割れ、その道を傲岸不遜に踏破する()()を理事とカイザーPMCの連中は認めた。

 

 黄金は笑みを浮かべていた。

 風にたなびく腰ほどの長い金色の髪。口元を引き裂くように、その紅い双眸は爛々と輝いている。アリウスの軍勢を率いながら、ミレニアムの制服に身を包み、その両肩に羽織っている軍服コートは新しい砂塵によってはためいていた。

 その右手には白金の銃、左手には黒鉄の銃が握られていた。

 

 アリウスが、そして黄金が、敵なのか味方なのか。

 そんなこと、考えるまでもなかった。

 

 黄金が、映像を中継しているカイザーPMCのドローンを発見するや否や――――黒鉄の銃から弾丸が放たれた。

 寸分違わず、放たれた銃弾はドローンに着弾し、映像はそこで途切れる。

 

 

 宣戦布告。

 拝謁を許可していないかのように振る舞い、面貌を見ることすら赦さないというかのような振舞いは、正に暴君のそれ。

 

 呆然とするカイザーPMC。それは理事も同じであった。

 その中、憎悪を籠めて、黄金が映し出されていた画面を睨み付ける一人。

 黄金の名を――――『アリウスの王』と呼ばれる生徒の名を口にする。怨嗟の念と共に、吐き出された名は――――。

 

 

「天上院、オウヒ……!」

 

【挿絵表示】

 

 

 

 それはかつて、彼女に蹂躙された者であった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「手が空いている者は、手伝えと言ったが……」

 

 

 そう言ってワタシは辺りを見渡す。

 そこにはアリウス分校の生徒の顔があった。

 

 その数は精々、中隊規模。

 ゲヘナやトリニティ、それにミレニアムといった、キヴォトス三大学園と比べても圧倒的に少なく、学園の生徒数だけでいえば下から数えた方が早い規模。それがアリウス分校の実態だった。

 

 他校と比べて、戦闘に長けていようと、それは長所にはならない。

 装備の質も悪く、生徒数だって劣っている。他校がその気になれば、アリウス分校はたちまち潰される。その程度の戦力しか、ワタシ達にはなかった。

 

 そう、その程度の数。

 アリウス分校は精々、中隊規模の生徒数しかいない。

 

 つまり、ここに集っているアリウス分校の生徒は――――。

 

 

「……よもや、ほぼ全員来るとは思わなんだ」

 

 

 ――――ここに、ほぼ全員、隊列を組んで集っていた。

 

 アリウスの生徒の主な活動内容は、授業の他には、アリウス自治区のインフラ整備、傭兵を請け負った事業など、主に体が資本となる仕事ばかりだ。

 つまり、ここに集った生徒は非番であったり、仕事の合間を縫って駆けつけてくれたり、休憩中であったりと様々なもの。

 

 うん、何だか申し訳なくなる。

 でもね、ワタシも言わせてほしい。だからね、休みたい人がいると思ったからね、手が空いている者は、って言ったんだよ。それが皆来るってどういうこと?

 

 対して。

 

 

「何を仰いますか」

 

 

 ワタシの後ろに控えていたサオリが、何故か胸を張って自信満々に。

 

 

「殿下から下知を賜ったのです。全員参陣するのは当然です」

 

「で、あるかなぁ?」

 

「えぇ。中には、傭兵の仕事がどうしても外せなかった者もおりますが……」

 

 

 ワタシが、()()と言っていたのはそういうことだった。

 中には、参戦を見送ったアリウスの生徒もいる。でも仕方ない事だと思うよ。先に予定が入っていたのに、こっちを優先にするのは良くない。ドタキャンは良くないよドタキャンは。された側はとても悲しくなるし、請け負った仕事はやり通すのがカッコいいってもんだ、ってシヴァさんが言ってたし。受けた仕事はしっかりやらないと。

 

 そういうわけで、ここにいるのは、アリウスのほぼ全員。

 アッちゃんがアリウス自治区を離れるわけにはいかないし、財務など裏方を頑張ってもらっているミサキにもし何かあったらアリウスは終わるので、二人にはアリウス分校でワタシ達をバックアップしてもらっている。

 

 

「姫ちゃんとミサキさんの分まで、頑張ります!」

 

「ほう、張り切っているなヒヨリ」

 

 

 意外なものを見た。

 ヒヨリが食べ物以外で、頑張るなんて口にするとは思ってもみなかったから。

 

 彼女は照れ臭そうに、えへへ、と笑い。

 

 

「もちろんですよ。ここでいっぱい働いて、殿下行きつけの柴関ラーメンを食べに行ける、って考えただけで……」

 

「誰も行くとは――――よだれ、よだれ垂れてる! ヒヨリ、垂れてる!」

 

 

 なんて呑気な顔なのだろうか。

 これから、カイザーPMCと一戦交えるとは思えないくらい。

 

 そんな空気は伝播するようで。

 ワタシ達の会話を聞いていたアズサは眼を輝かせて。

 

 

「えっ、終わったら殿下とラーメンを食べに行けるの?」

 

「いや、余は一言もそんな事言っては――――」

 

「楽しみだな……!」

 

 

 眼が輝いている。

 それはもうキラキラと。否定なんて出来ないほど、アズサが眼を輝かせている。

 

 この件が片付いたら、本当に行く流れではなかろうか。

 いや、全然行っても良いし、ワタシだって皆と美味しいラーメンを食べたいけどね。問題なのは、この人数でシヴァさんのお店に押しかけていいものなのかどうかなのよ。いいや、ダメに決まっている。何せ人数が人数だ。迷惑になるに決まっている。

 

 どう収拾をつけたものか、とワタシは考えていると、見かねたミサキが呆れ混じりに通信越しに。

 

 

『どうするのこれ?』

 

「アイディア募集中である」

 

 

 ひとまず、置いておくとしよう。

 目の前の状況こそが最優先。終わった後は、終わった後に考えれば良い。

 

 

「ミサキ、状況を知らせよ」

 

『先生とアビドスの連中はカイザーPMC基地を踏破中って感じ』

 

「彼奴らの援軍はどうなっている。余達だけか?」

 

『それがゲヘナとトリニティが力を貸しているみたいだよ。とはいっても、うち等みたいに、部隊を展開しているわけじゃないね』

 

「と言うと?」

 

『トリニティはアビドス砂漠で演習って言い訳をして、遠くからアビドスの連中を榴弾砲撃部隊が援護射撃。ゲヘナは風紀委員数名が手伝いに来てる、って感じ』

 

「風紀委員か。その中にヒナはいるのか?」

 

『……いるけど』

 

「ならば問題あるまい。ヤツだけでも十分過ぎる」

 

 

 カイザーPMC如き、ヒナだけで戦えると思う。

 連中の厄介なところは、数が多いこと。ただそれだけだった。前に戦ったから断言できるけど、彼らには突出した個の武力がない。個々の連携は、眼を見張るものがあるけれどそれだけの存在だ。

 数が多いってだけで、蟻を脅威に感じないように、ヒナくらい強かったら包囲したところで焼け石に水。直ぐに食い破り、カイザーPMCを蹂躙するに違いない。

 

 それは、ワタシ達の目の前で展開している、カイザーPMCの軍隊も同じ。

 規模で言えば、大隊くらい。確か、『デカグラマトン大隊』とか言われてた。情報はそれくらいしか分からないけど、大したことがない連中だと思う。

 

 

『ふーーーーん?』

 

「ん?」

 

 

 何やら不満そうなミサキの声。

 何があったのか、疑問に思いながらワタシは問う。

 

 

「どうしたミサキ?」

 

『別に? 殿下っていつの間に、ゲヘナの風紀委員を名前で呼ぶようになったの?』

 

「一戦、交えた辺りからだが、それがどうかしたのか?」

 

『別に?』

 

 

 そうは思えないけど。

 滅茶苦茶、不機嫌なんですけどミサキちゃん。

 

 ヒヨリは、ふふっ、と楽しそうに笑みを零して。

 

 

「殿下が他の娘と仲良くしてて、ミサキさん拗ねてるんですね。可愛いですね」

 

『……ヒヨリ、おやつ一週間抜きね』

 

「えぇぇぇ!?」

 

 

 うわぁぁん、と泣き始めるヒヨリを、アズサが頭を撫でて慰め始める。

 

 今更だけど、緊張感がないね、君達。

 そういうワタシもなんだけど。

 

 

「殿下」

 

「どうした、サオリ」

 

「――――命令を」

 

 

 命令も何も、相手はカイザーPMC。

 デカグラマトン大隊がどれほど錬度が高い軍隊なのかわからないけど、連中をアビドスの生徒達と先生に近付かせないための足止め、それがワタシ達の役割。数だけが多いって言っても、彼女達にとってはそれだけで脅威になり得るから。

 

 所詮は足止め。

 本気で戦わなくても良くて、適度に戦力を削り、こちらを無視できない程度に小突いてやればいいだけの簡単なもの。

 

 そんな軽い気持ちだった。

 命令するまでもない。その程度の、気持ちだった。

 けど――――。

 

 

「――――」

 

 

 振り返る。

 ワタシの視界には、アリウスの生徒達の姿があった。

 サオリはいつも通り、真っ直ぐにワタシを見つめている。いつの間にか泣き止んでいるヒヨリは張り切っているし、アズサもワタシを見て頷いている。

 

 彼女達だけじゃない。

 アリウスの生徒達も、ワタシの顔を見つめていた。

 ――カズコは未だにワタシを前に眼を逸らして緊張している。

 ――オリエもワタシを見ているけど、挑戦的な表情を浮かべている。

 ――カナは初めての実戦だからか緊張している面持ちで。

 ――ユキエはここでもボーっとしているし。

 ――クミはそんなユキエのフォローに回る事だろう。

 他にも、個性的な、それにとても優しい、アリウスの生徒達の姿が、そこにはあった。

 

 苦楽を共にした。

 ワタシは頭が良くないから、彼女達の名前と顔を全員覚える為に頑張ったし、アリウス復興のために一緒に汗を流した。

 

 年増を倒して、直ぐに平和になることなんてなくて、みんなやり場のない気持ちが暴走して、ワタシはそんな彼女達と戦って戦って戦った。

 決して、楽な道じゃなかった。何度もぶつかって、傷つけて傷つけあって、それでも彼女達はワタシを『殿下』なんて呼んで慕ってくれている。

 

 彼女達は、こんな顔じゃなかった。

 誰も彼もが澄んだ目をしているけど、最初はこうじゃなかった。誰もが淀んで、絶望して、諦めていた顔だった。

 

 それなのに今では、誰もが前を向いて、未来を見据えている。

 それが、そんな当たり前かもしれないことが、ワタシは嬉しくって、自然と思うがまま口にしていた――――。

 

 

「――――諸君、時が来た」

 

「余に付き従う、アリウス忠臣諸君」

 

「余と苦楽を共にした、アリウス同志諸君」

 

「余が一騎当千の兵と信仰せし、アリウス戦友諸君」

 

「この一戦より、世界(キヴォトス)は知る事となる。アリウスの帰還を、我々の帰還を!」

 

「存在しない者と見なされていた我々は、この時より他校の干渉を受ける事となるだろう」

 

「余計な指図、余計な世話、余計な世辞に、見え透いた欺瞞」

 

「しかし、臆する事はない。地獄の底に居たのが我らだ。これ以下の地獄はなく、余と同志諸君は這い上がってきた」

 

「この戦いは通過点に過ぎぬ。我々が前進するための障害物にもならず、我々が進撃した際に蹴り飛ばされる小石程度に過ぎない」

 

「同志諸君、ゲヘナに披露しよう、我々の武力を」

 

「トリニティに見せ付けてやろう、我々の統率力を」

 

「カイザーの木偶共に思い知らせよう、我々の破壊力を」

 

「そして、シャーレに知らしめよう、我々の存在を」

 

「ここは死地に非ず! 我々の止まる場所はここに非ず! 我々の進む道を阻み邪魔するものは、押し潰し、叩き潰し、粉砕せよ!」

 

 

 右手に持つ“リク”を天に突き上げる。

 それと同時に。

 

 

『―――――――――ッッ!』

 

 

 それは歓声なのか、怒号なのか、歓喜なのか。

 声にならない声が、アリウスの全員の口から、解き放たれていた。

 

 自分達がここにいることを証明するかのように、自分達を忘れていた連中に思い知らせるかのように、忘却の彼方に追いやられていた事を許せないというかのように、アリウスの皆が声を張り上げていた。

 

 ワタシはそれを背にする。

 ビリビリ、と背中で彼女達の声が、空気の壁を叩く。

 

 

「往くぞ、撃鉄を起こせ――――」

               「――――闘争を始めよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不味い、テンションが上がって変なことを言っちゃった。

 

 だって、何だか感動したんだもん。

 シャーレが救援要請してくるまでに成長して、あのゲヘナとトリニティと轡を並べて、自信満々なアリウスの娘達の顔を見て、何だか嬉しくなっちゃったんだもん。

 

 凄い、変なこと言ってた気がする。

 凄い、偉そうな事を言ってた気がする。

 凄い、キャラじゃないことをやった気がする!

 凄い、黒歴史になる予感しかしない!!

 

 

『……テンションに身を任せるからこうなるのです』

 

 

 あっ! 貴女はコンサバティブちゃん!

 ワタシの腰にぶら下がっているコンサバティブちゃん!

 光学迷彩で他の人に見えなくなっているコンサバティブちゃんじゃないか!

 

 

『情緒がおかしいことになっていますね。恥ずかしい黒歴史を刻んだんだから、当然の事か』

 

 

 何だかテンションがローじゃない?

 

 

『妙な電波を受信していますので、その分析で忙しいのです』

 

 

 妙な電波って?

 

 

『不明です。注意してください、マスター』

 

 

 注意って、何に対してさ?

 

 

『発信源は、この砂漠の地下からです。語りかけてくるような、馴れ馴れしくって気持ち悪っ。なにこいつ、自分の名前しか言わない』

 

 

 何てヤツ?

 

 

『――――ビナー、そう名乗っています。本当に気持ち悪っ』

 

 

 ……口が悪いなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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