こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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 斜ケさんより賜ったイラストを頂いて、兵隊の筆が暴走した話です。
 ヨロシクお願いします!


 
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番外編 オウヒ「錬丹術研究会のお茶?」①

 それはとある、昼下がりの午後。

 

 アリウス分校の復興作業も一段落を終えたオウヒは、休憩も兼ねて生徒会室に足を運んでいた。

 

 その足取りは軽いもの。

 肉体労働の後とは思えないほど、オウヒの表情は朗々とし、どこか明るくて、口元には笑みを浮かべていた。

 嬉々として、何やら楽しみであるかのように。このために働いてきたと言わんばかりに、ご機嫌な様子で、アリウス分校の廊下を歩く。

 

 

「~♪」

 

 

 鼻歌まで奏でているオウヒは、誰が見ても機嫌が良い、と判断を下す事だろう。

 現に、今の彼女は機嫌が良かった。それもそのはず。

 

 

「働いた後の甘みって、本当に最高だよねぇ。このために、今日も頑張りましたワタシっ!」

 

 

 機嫌がいいのは、そんな理由だった。

 秤アツコが言っていた「ナギサさんからロールケーキを貰ったから、作業が終わったら皆で食べよう」という言葉に、オウヒは労働に全力を注ぎ終わらせてきた。

 

 結局は食欲。

 何事も、食欲に勝るものはない、とオウヒは持論を展開する。

 

 すれ違うアリウス生とも軽く挨拶を交わし、目ざとくその手にもっているモノにオウヒは注目する。

 その生徒の手には、一切れのロールケーキ。恐らく、アツコから配給されたモノであるとオウヒは分析する。

 

 なんて美味しそうなのだろう、と。

 涎が出るのを我慢して、アリウスの生徒とすれ違う事数分。

 オウヒはやっとの思い──歩く事数分───で、アリウスの生徒会室の前へと立つ。

 

 逸る気持ちを抑えて、オウヒはドアを開ける。

 そこにはエプロン姿のアツコの姿。片手には、ロールケーキを切り分ける作業をしているためか、包丁を片手に立っていた。

 

 そして隣には、サオリの姿。

 笑みを浮かべてロールケーキを頬張っている姿が、どこか珍しくオウヒは思わず笑みを零す。

 

 それに気付いたのか、サオリは慌てながら立ち上がり。

 

 

「へ、へんふぁ……!」

 

 

 口にいっぱいのロールケーキが入ったまま、サオリはオウヒに声をかける。

 

 そんなに慌てなくても良いのに、とオウヒや苦笑を浮かべて応じる。

 

 

「良い、楽にしていろ」

 

「ふぁいっ!」

 

 

 ハイ、と言いたかったのだろう。

 モグモグと咀嚼しながら、サオリは直立の姿勢を崩さない。

 

 その真剣な表情、しかしモグモグとロールケーキを頬張り、鼻先にはクリームがついている。

 なんともミスマッチで、可愛らしい有様に、オウヒは軽く笑みを浮かべて。

 

 

「しかし、サオリよ。其方、相も変わらず愛い奴よな?」

 

「どういう、意味でしょうか……」

 

「何だ気付いてないのか。だが、ふむ……」

 

 

 ちらり、とアツコに視線をオウヒは向ける。

 サオリの後ろで、彼女の視線に入らない位置で、アツコはしーっと唇の前で人差し指を立てるジェスチャーをする。

 

 なるほど、とオウヒは頷いた。

 サオリがロールケーキを食べ初めて、どらくらい経っているのかわからないが、彼女は鼻先にクリームが付いているのを知らないらしい。

 それほどなまでに、夢中で食べて、ロールケーキのに舌鼓をうっていたようだ。甘露の味、という奴なのだろう。

 

 それがおかしくて。微笑ましくて、なんとも幸せそうで。

 オウヒは満足そうにサオリの様子に頷いて。

 

 

「なんて可愛い奴なのだ。よしよしをしたいが、自重するとしよう」

 

「かわっ……!?」

 

 

 ぼんっ、と音をたてるように、羞恥のあまり顔を真っ赤に染めるサオリを肴に、オウヒは生徒会室に設置されている円卓の机の前に座る。

 

 アツコは微笑を浮かべて、一切れのロールケーキを乗せた小皿をオウヒの前に置いて。

 

 

「そうだね、サッちゃんは可愛いから」

 

「姫も何を言ってるんだ……!」

 

 

 困惑しながらも、異議を唱えるサオリ。

 その鼻先にはまだクリームが付いていることから、オウヒとアツコの笑みは増すばかり。

 

 わけがわからない、と憤るサオリを横目に、アツコはオウヒにお茶を出した。

 

 

「ん?」

 

 

 そこでオウヒの視線が、サオリから出されたお茶に移る。

 なんの変哲もない、湯飲みに入ったお茶。だけど妙な気配を感じて。

 

 

「アツコ、これは何か?」

 

「山海経から輸入したお茶だよ? 飲んでみて美味しかったから、淹れたんだけど、殿下ってお茶苦手だっけ?」

 

「苦手ではないが……」

 

 

 何やら厭な予感がする、と口の中でオウヒは呟いた。

 香りも良く、大変おいしそうなお茶だった。でもどこか、何やら、厭な気配も同時に嗅ぎ別けていた。

 

 だが出されたからには、飲まないと礼を失する、とオウヒは判断し湯飲みを持つ。

 厭な気配を感じたが、自分の気のせいであると、お茶と一緒に飲み込むことを選んだようだ。

 

 何よりも、美味しい、とアツコは評したのだ。害などあるわけもなく、そんなものをアツコが出すわけがない。

 そうオウヒは自分に言い聞かせて、湯飲みに口付け、お茶を飲んだ。

 

 そして、その直前に、オウヒの耳には。

 

 

「なんでも、錬丹術研究会お手製のお茶で、若返りの効果も────」

 

 

 あるんだって、とアツコは言いそびれる。

 

 ピタリ、と。

 アツコは時が止まったように、体を硬直させる。

 

 それはサオリも同じだった。

 二人とも、身体を停止させて、ある一点を見つめる。

 

 少しだけ目を離しただけだった。

 オウヒから二人とも、少しだけ目を離しただけだったのに、居る筈のオウヒの姿は消えていた。

 

 同時に椅子に座っているのは。

 

 

「…………?」

 

 

 ちょこん、と。

 ぶかぶかのミレニアムの制服と軍服コートを着た幼女が一人。

 

 突如現れた幼女は、目をぱちくりとさせて、辺りを見渡す。

 だいたい歳は五歳くらいだろうか。

 

 今の自分の状況を飲み込めずに、首を傾げて、何者かを探すように。

 

 

「黒いあの人はどこでしょうか?」

 

 

 キョロキョロ、と辺りを見渡して、まだ硬直しているアツコに視線を止めて。

 

 

「もし、そこの貴女。このあたりに、全身が黒くて、クックックって笑う、明らかに怪しい人をお見かけしませんでしたか?」

 

 

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、理解しました」

 

 

 どこか感情が希薄で、なおかつここでは誰よりも冷静で、黄金の頭髪の幼女────天上院オウヒは頷いた。

 未だに状況が飲み込めないアツコとサオリを差し置いて、幼女と化したオウヒはあくまで冷静な口調で己のみに起こったことを、事実として述べる。

 

 

「若返りの効果、なのでしょうね。ここまで劇的に変わることは先ずありえないのですが……」

 

 

 悩ましい、と言うかのように小さく溜息を吐くオウヒに、アツコはいやいや、と否定するように。

 

 

「若返り、って……。私も飲んだよ?」

 

「そこは個人差があるのでしょう。我が事ながら、なんて単純なのでしょう。呆れるばかりですね」

 

 

 しかし、と呟いて。

 

 

「記憶の退化ではなく、認知の退化であって良かった。()()()()()()()()ではなく、()()()()()()()()()()()()()()であるのなら、生活に支障をきたす事はないでしょうから」

 

「どう違うの?」

 

「記憶の退化であれば、今の子供の頃のワタシは、貴女達を覚えていないでしょう。しかし、認知の退化は違います。ワタシの感性が子供に戻っただけで、貴女達が誰なのか覚えています。つまり、記憶として経験した事が残っている、ということです」

 

 

 まぁ、他人事のようなものなので記憶というより、記録と評した方が近いのですが、と幼女と成ったオウヒは語る。

 

 その口調はどこか本当に他人事のようで、長い付き合いであるアツコも目の前に居るオウヒと、今まで見てきたオウヒが同一人物とは思えなかった。

 

 所作もどこか優雅なそれ。

 いつもの傲岸不遜に不敵な笑みを浮かべるオウヒからは想像付かない、深窓の令嬢のような振る舞い。

 まるで貴族階級の生まれの血筋の人間と話している。そんな錯覚すら覚える。

 

 つまりは────違和感がハンパない。

 

 どこをどう成長したら、深窓の令嬢が、アリウスの戦闘卿になるのだろうか。

 

 アツコは困惑しながらも、恐る恐ると言った調子で。

 

 

「本当に殿下なの……?」

 

「えぇ、ワタシですよ。あぁ、どうか疑わないで。アッちゃんにそんな顔されると、ワタシも悲しくなるというものです」

 

「うん、ごめん────えっ? アッちゃん?」

 

 

 耳を疑うような単語にアツコは思わず聞き返し、オウヒはその反応を見て疑問に思うも。

 

 

「なるほど、理解しました。口に出していなかったのですね。我ながら度し難いです。言葉が足らないというか、なんというか。そういうところまで、似なくても良かったでしょうに」

 

「どういう意味?」

 

「いいえ、お気になさらず。黒いあの人のダメっぷりと、自分の情けなさに呆れていただけです」

 

 

 呆れるように小さく溜息を吐くオウヒに、当たり前の問いをアツコは投げる。

 

 

「元には戻るの?」

 

「何とも。元に戻るのは、数分か。はたまた数日か。数年だって考えられます。こればかりはわからない────」

 

 

 そこまで言うと言葉を止めて、ふふっ、と鈴がなったような綺麗な笑い声。

 

 訝しむアツコに、気にしないで下さいと笑みを浮かべたまま。

 

 

()()()()()()()が何もわからない、というのが可笑しくて。えぇ、万能など考えものですね。わからないことが、ここまで新鮮だとは思いもしませんでした。手放したワタシが羨ましい」

 

 

 さて、とオウヒは席を立つ。

 今となっては身体が小さくなり、ぶかぶかとなってしまったミレニアムの制服を引き摺り。

 

 

「ジッとしているのも勿体無い。探検と参りましょう。アッちゃん、案内をお願いします。サオリは抱っこを────まだ固まっていますか。無理そうですね」

 

「しょうがないよ。私だって、まだ状況を飲み込めないから」

 

 

 未だに固まっているサオリを見て、残念そうにオウヒは見上げて、アツコ苦笑を浮かべる。

 

 状況を素直に受け入れろ、というのが無理な話しだ。

 突如として、子供の頃の状態に戻り、感性まで子供に戻っているオウヒを見て、冷静で飲み込めとはなんとも無茶な注文なのか。

 

 どうしたものか、とオウヒは悩んでいると。

 

 

「失礼します。ロールケーキを貰いに来ました。アツコさん、私の分は─────」

 

 

 ドアを開けて、入ってくるや否や、アリウスの生徒─────梯スバルはオウヒを見て。

 

 

「わ、我が君が、幼女になっているぅ!?」

 

 

 秒速理解とはこのことなのだろう。

 なんでわかったんだ、とアツコが問いを投げる前に、オウヒはうんうんと満足気に頷いて。

 

 

「流石ですねスバル。なんと頼もしいのでしょう。頼りになりますね」

 

 

 さぁ、とオウヒはスバルに両手を広げて、見上げながら。

 

 

「抱っこしてください、スバル。探検に行きますよ」

 

 

 

 





 改めて、斜ケさん(@syakenoi)より、天上院オウヒ(幼女)と黒い保護者のイラストを賜りました!
小さい頃のオウヒです。幼女のオウヒです。一番可愛かった頃のオウヒです。
 隣にはあの黒い保護者もいます。

 
【挿絵表示】



 小さい頃は黒いフリフリの服を着ていました。

 今は着ません。フリフリの服が嫌いって訳じゃなくて、黒色が嫌ってだけです。
 なんででしょうね?(すっとぼけ)

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