~ソロモンちゃんねる~
ミサキ「殿下と皆で回転寿司に行ったんだけど、席に着く前に殿下が「寿司を楽しみたいのであれば決して余の下流には座るなよ」って言い始めたの最高にロックだと思った。サオリなんて感動して泣いてたし」
言葉を選ばずに言うと、今の私は機嫌が悪かった。
それも先の、会合が原因だと、自覚している。
会合。
つまりは、ミレニアムサイエンススクールの生徒会長――――調月リオとの秘密裏の会合。
どうして公ではないのかというと、この時期に三大学園の一つと話し合いをしているなんて、ゲヘナの耳に入ったものなら面倒になると思ったから。
ゲヘナをなるべく刺激せずに、
ミレニアムとの会合があることは、私達ティーパーティーしか知らされておらず、シスターフッドにも、救護騎士団にも、正義実現委員会にも知らされていない。理由としては、どこから情報が洩れるかわからないから、ってことなんだけど、ゲヘナなんかにバレてもいいんじゃないか、って私は思っているのだけどナギちゃんはそうじゃないみたい。
本当に考えすぎだと思う。
ゲヘナに難癖つけられるのは腹立つし、ムカつく事ではあるけど、文句を言ってきたらそれはそれ。少し分からせてやれば良いだけだから。
――――というのが、私の意見なんだけどナギちゃんには言わない。
だって、怒られるから。パテル分派の代表としての自覚がないだとか、ティーパーティーとしてもっと政治を学ぶべきだとか、お説教が始まるに決まっているから。
なので私は黙っている事にした。
お説教の後にはナギちゃん主催の勉強会が約束されているから。
ミレニアムとの会合は滞りなく終わった。
口を挟みたかった、反対したかった、力の限り拒否したかった。
でもそれはナギちゃんが許してくれなかった。私が何か言うたびに「ミカさん」って冷たい声で言うし、最後には昔みたいに「ミカ」呼びだったから。……怖かったわけじゃないよ、本当だよ?
「ミカさん」
「……なーに?」
自分でもビックリするくらい可愛くない声。
ムスッ、と如何にも不機嫌ですといわんばかりの声色。まぁ、隠すつもりはないけど。
これは当て付けのようなもの。
私の意見なんてガン無視で、ミレニアムの生徒会長の意見ばかり聞いて、その通りにしたナギちゃんへの当て付け。
我ながら子供みたい。
ナギちゃんはため息を吐いて、呆れた口調で。
「機嫌を直してください」
「だって全然喋らせてくれなかったじゃん」
「当然でしょう」
ミレニアムと会合した理由。
それは――――。
「貴女、天上院オウヒの身柄を渡さないつもりだったでしょう」
――――トリニティの部活の一つ、救護騎士団で治療をしているアイツの身柄の引き取りだった。
先のアビドスにて彼女は大怪我を負った。
その治療をする為に、私が全てを手配して、ヒフミちゃんにお願いしてトリニティまで搬送してもらった。
最初は私も驚いたけど。アイツが命に関わる怪我をするとは思わなかったから。もちろん、私は慌てていない。的確に指示を出し、右往左往することなく、迅速に対応したよ。
「あの時のミカさんの慌てようときたら」
「…………」
訂正します。
はい、慌ててました。それはそうでしょう。こんなことになるのなら、私も行けばよかったと思った。そうすれば、アイツにも良いところ見せられたし、何よりも――――アイツに怪我なんてさせること、なかったから。
話題を変えよう。
そうでもしないと、私は恥ずかしくて死んじゃうから。
「ミレニアムの生徒会長も急すぎじゃない? 全治一年だよ一年。もう少しここで療養していてもいいと思うんだけど」
「問題ないでしょう。翌日には歩き回っていたと、ミネ団長から伺っています。彼女の回復力も、リオ会長は織り込み済みだったみたいですし」
それが気に入らないんだよね。
アイツのことなら何でも知ってますみたいな。
「ミカさん」
「なにー?」
「ここで、彼女を引き渡さない選択はありえません。彼女はミレニアムの生徒、どんな理由があろうとそれは変わらない。ここで拒んでは拉致と変わらず、下手したら学園間で抗争の火種に――――」
「わかってる、わかってますよー。ただちょっと気に入らないだけですよー」
口を尖らせて文句を言う私に、ナギちゃんは、そうですか、と言うと紅茶の入っているカップを持って。
「分かって頂けて何よりです」
満面の笑みで、口までカップを持っていき、優雅に紅茶を飲んでいた。
ナギちゃんは暗にこう語っている。これでこの話は終わりであると。
わかっている。
私が我儘を言った所で、今回ばかりはどうしようもない話。
アイツがミレニアムの生徒である以上、ここにずっといるわけじゃない。いつかはトリニティを離れて、ミレニアムに帰らないとならないときが来る。
わかっている、わかっているけど。
「~~~~~~~!」
いくらなんでも早すぎるよー!!!
だって、全治一年だよ!?
それを翌日にはある程度治して、歩き回るってどれだけなのー!?
アイツと再会して、段階を踏んで、仲良くなっていこうと思ったのにー!!
崩れていく。
音を立てて、思い描いていた理想の展開が、崩れていくのを私は感じる。
ガラガラ、と。粉々に、これ以上にないくらい予想外の連続で。
頭を抱えて机に突っ伏している私を見かねて、ナギちゃんは冷めた声で。
「……お見舞いに行けばいいだけなのでは?」
「心の! 心の準備が出来てないのっ」
「いつも感情のまま動くくせに、どうしてこういうときだけ考えてしまうのですかミカさんは」
「だってぇ、だってぇ……!」
本当に情けない声。
でも、何を言えばいいか、わからないんだもん。
久しぶりって声をかける? 元気にしてたって聞いてみる? それじゃ戦おうか、って誘ってみる? そもそもの話――――アイツが覚えてなかったら?
一番私が怖いのがそれだ。
私を忘れていたり、私のことを覚えてなかったら、どうすればいいのだろう。
それが一番怖い。悲しくて、悲しくて、本当に悲しくて、多分私は泣いてしまうに違いないから。
私にとって、忘れられているのが、一番最悪な事。
それを考えると、どうしても、最初の一歩が踏み出せない。
声をかけるまで、最短でも一ヶ月は見ていたのに、明日にはミレニアムに帰るなんて。
「しかし、彼女がそうですか」
拗ねるように、むくれるように、それでもってウジウジとして突っ伏している私の耳に、ナギちゃんの感慨深い声が入ってきた。
顔を上げるとナギちゃんは思案するように、口元に手を当てている。
「幼い頃、ミカさんがいきなり、強くなりたいから修行するね、と言った時には何事かと思いましたが、彼女が原因と考えると納得です」
「えー、ナギちゃん聞きたいの? 私とアイツの出会い!」
「いいえ、結構です。昨日、嫌ってほど聞いていますので」
「そういわずに聞いてよー、昔のアイツったらねー?」
「ミカさん? 私の話、聞いてます? 結構ですと申し上げた筈なのですが」
ニッコリと笑みを浮かべてナギちゃんは言うけれど、眼は笑ってはいなかった。その事には勿論、私も気付いている。つまり、これは自棄というヤツだ。昔の思い出に浸り、現実から逃げるための行為。
ナギちゃんには悪いけど、私の自暴自棄に付き合ってもらおう。
なんだか、そうしている暇があるのなら、アイツに会いに行けといわれそうだけど、謹んで断らせて頂きます。
それが出来たら、苦労は、してないので!!
そうしていると。
「失礼するよ」
ティーパーティの生徒会室のドアを開けて、一人の生徒が入ってきた。
その生徒は、おや、と声を上げて。
「ミレニアムの生徒会長との会合は終わったのかい?」
「えぇ、滞りなく。ミカさんも、空気を読んで、黙っていてくれたので」
何やら含みのあるナギちゃんの言い方に、思わず私は面白くなさそうな顔で見つめるけど、ナギちゃんは無視し続けて。
「セイアさん、お体の具合はどうですか?」
入ってきたもう一人のティーパーティーのトリニティ生徒――――百合園セイアちゃんは片手を上げて。
「今日は調子が良い」
「それは良かった。ですが、決してご無理はなさらないで下さいね」
「君は心配性だなナギサ。わかっているさ、無理はしないとも」
さて、とセイアちゃんは私に向き直り。
「折角、天上のア――――ではないか。君のお目当てである、天上院がいるのに、油を売っていていいのかい?」
「えっ、セイアちゃんアイツと知り合いだったの?」
「知り合いじゃないさ。私が一方的に、彼女を知っているだけだよ。尤も、今の彼女ではなく、昔の彼女なのだけどね」
いまいち要領を得ないセイアちゃんの言い方に、私は首を傾げる。
そんな私の姿が面白かったのか、クスクス、と小さくセイアちゃんは笑うと。
「ミカに忠告だ」
「何かな?」
「上手い言い訳を考えておいたほうが良いよ」
「え?」
それはどういう意味なのか、尋ねる前にセイアちゃんは続けて。
「これで二度目だろ? 君が公私混同でティーパーティーに権力を行使するのは」
一度目は、アイツの治療をする場としてトリニティの救護騎士団を手配した事。
二度目といえば――――。
瞬間、どんっ、と。
生徒会室が揺れた。いいや、生徒会室が揺れたわけじゃない。揺れたのはトリニティ自治区内。遅れて衝撃が壁を叩き、黒煙が立ち上るのを、確認が取れた。
「な、何事ですか!?」
突然の揺れに、ナギちゃんは立ち上がり窓まで走り、視線をトリニティ自治区内へと向ける。
その様子を見て、セイアちゃんは慌てることなく。
「自治区内で爆発が起きたのさ」
「爆発!? ど、どうして――――」
「便利屋68の浅黄ムツキによるものだ」
「便利屋……。確か、ゲヘナの。でもどうして?
まさか、テロ? とナギちゃんは呟くも、セイアちゃんは首を横に振って否定して。
「いいや、それは違う。安心して良い。原因はこちらにある。浅黄ムツキは理不尽な我々の要求に、力の限り抵抗したのだろう。そうだろミカ?」
二人はこちらに視線を向ける。
はい、そうですね。正直に言うと、私には心当たりがある。セイアちゃんは冷やかな視線を私に送り、ナギちゃんは満面の笑みで私を見つめる。いいや、見つめるというのは間違いだ。正確には睨み付ける。
ナギちゃんは、条約の締結が迫っている中、事を荒げたくないのが本音。
だというのに火種の原因が身内にあるというだけで、彼女が怒るのは無理もない話。
ましてやその理由が。
「ミカさん?」
「はい」
「正直に仰ってください。何をやりました、いいえ――――何をやらかしました?」
私は立ち上がり、誰に言われるまでもなく、その場に正座する。そうしないとならないと思ったから。ナギちゃんの
身体が震えるのも、目じりに涙が溜まるのも、きっとそのせいなんだと思う。
「アイツのお見舞いに来ると思って……」
「来ると思って?」
「ティーパーティーの要請として、正義実現委員会に通達しました」
「何を?」
「……陸八魔アルと浅黄ムツキを出禁にするようにって、言いました……」
それからは思い出したくもない。
ただ言えることは、三年生になったのに、子供のように私がギャン泣きしたってこと。
心の底から思った。
――――もう、ナギちゃんを怒らせるのは、やめようって。
△桐藤ナギサ
ティーパーティの一人。ミカの幼馴染。今作での胃痛に悩んでいる人トップ3に入るくらい苦労している人。
オウヒのことはミカからある程度聞いている。ミカ係といっても過言ではない。
でも内心、ミカを最強戦力と見ているので、この人も大概。
ムツキが「ヒーちゃんは最強」というと、すかさず「ミカさんの方が強いですが?」と返すくらいにはミカに信頼してる。
幼いミカ「ナギちゃん、修行に山篭りしてくるね☆」
幼いナギサ「――――なんて?」
△百合園セイア
ティーパーティの一人。
ミカとそりは合わないけど、それはそれとして見ていて飽きないとは思っている人。
ミカ、君は実にバカだな、って言う方。畜生青狸みがある。
オウヒの事を知っている。知り合いではない。昔のオウヒを知っている。
△パテル分派
ミカが纏めている派閥。
ブルアカ本編とは違い、今作のパテル分派はミカが力で纏め上げている。それもこれも、暴力に傾倒したせい。つまりはオウヒのせいなんだ。すまない、本当にすまない。
ブルアカ本編よりも規模は小さく、何だったら三派閥の中で少なく、ヨハネ分派と同等かそれよりも少ない。
それでも三派閥として数えられているのは単純に強いから。類は友を呼ぶというヤツ。力ISパワーって言うヤツらの集まり。
ミカ様すげぇ!!って言うくらいにはミカの暴力に魅せられている。
△少し分からせてやれば良いだけだと思う。
思考がナチュラルボーン暴の者なミカ。
ブルアカ本編よりも物騒だし強い。才能があるやつが努力したのだからそうなる。
それもこれも、好きな人を振り向かせるため。失礼だな、純愛だよ。
全てはオウヒのせいなんだ。
△陸八魔アルと浅黄ムツキを出禁
許さないよ、陸八幡アル
覚えてろよ、浅黄ムツキ
単純に、嫉妬なのである