こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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 ~ソロモンちゃんねる~
 
 オウヒ「クラッシュタイプの蒟蒻畑ってあるであろう」
 ヒヨリ「ありますねー」
 オウヒ「アレって、畑を荒らされたという解釈でいいのだろうか?」
 アズサ「だとしたら、許せないな」
 ヒヨリ「えぇ、許せませんね……」
 オウヒ「で、あろう? 極刑で是非もなしである」

 ミサキ「何の話……?」


第4話 アルバイター天上院

 

 黒見セリカはやる気に満ちていた。

 その歩みは力強く、その表情は殺気立っているそれであり、纏う雰囲気は剣呑。

 

 進行方向から歩いてくるキヴォトスの住民は、そんな彼女を見て、目を合わせずに道を譲る。

 

 そう。

 彼女はやる気に満ちていた。とはいっても、殺る気の方であるが。

 

 

 昨日、セリカが帰る間際。

 彼女のバイト先の一つである、柴関ラーメンの大将より一言があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうだ、セリカちゃん。明日、新しいバイトの子が来るから頼むな』

 

 

 最初は反射的に、聞いてない、と抗議の声をあげるつもりだったが、セリカは直ぐに冷静になる。

 それはそうだ、聞いているわけがない。今、柴大将が言ったのだからセリカが聞いているわけがなく、いちいちそんなことで抗議していたら、話が進まず非合理であると判断したから。

 

 しかし、憤りはある。

 昨日の今日で決まった事じゃないのだから、事前に三日前辺りに教えてもらわないと困る。

 ましてや、入ってくるのはバイト。きっと、自分と同じくウェイターとして雇われた子なのだろう。となれば、仕事の流れや教育をするのは、きっと自分になる筈だ。ともすれば、必要になってくる。心の準備と言うものが。

 

 そこまで考えると、やはり再燃してくるというもの。

 セリカは半眼で柴大将を見て。

 

 

『大将、急すぎませんか?』

 

『ははっ、悪い悪い。言うのを忘れちまっててな』

 

 

 悪びれもなく、竹を割ったように豪快に笑う柴大将を見て、セリカは何も言えなくなった。一介のバイトが口を挟むことでもなく、何よりも雇ってもらっている恩もあり、アビドス高等学校一同としても柴大将にはお世話になっている身だ。

 セリカもこれ以上追及する気は起きなかった。

 

 彼女は呆れた口調で。

 

 

『それで、新しいバイトの子って誰? 私よりも年上ですか?』

 

 

 だとしたら、少しだけやり辛い。

 後輩なのに先輩とか複雑なものになり、今のうちに慣れておく必要があった。

 

 でもそれは違ったようで。

 柴大将は、いいや、と首を横にやんわりと振り。

 

 

『セリカちゃんと同い年だよ』

 

『あっ、そうなんですね』

 

 

 だとしたらやりやすい。

 気兼ねなく接する事が出来ると言うもの。

 敬語も使う必要もなく、話題も共通しているモノが多いし、何よりも他校の話も聞くことが出来るかもしれない。

 

 そう思ったセリカは、若干乗り気になりつつ、柴大将への問いを続ける。

 

 

『どこの学校の娘?』

 

『ミレニアムさ』

 

『……それは意外な所から来るのね。あそこって、研究とか開発とかで忙しいと思ってた』

 

『まぁ、その娘はそういうのに無縁みたいでな』

 

 

 セリカが知る限り、ミレニアムサイエンススクールと言う学校は、キヴォトスでも有数の名門校であり、頭の良い娘じゃないと入れない学校であるという認識だった。自身の通う学校の借金周りで必死であるセリカにとって、他校の内情など知る由もなく、セリカにとってミレニアムという学校への理解はその程度でしかない。

 

 そのため、セリカは少しだけ、新しく入ってくるバイトの娘に対して同情的であった。

 何せ、研究もせずに、バイトを始める。それはつまり、その娘が俗に言う『落ちこぼれ。学校の勉学についていけずにドロップアウトし、バイトをしてお金を稼ぐ事を選んだ』、とセリカの中ではそういう認識をしていた。

 

 

 バイトを掛け持ち、お金を稼ぐ大変さ。

 セリカは同年代よりも、理解しているつもりだ。

 故に、彼女は応援する。静かに、そして出来るだけ優しくしようと心に決めて。

 

 

『苦労、しているのね……』

 

『あ、いや。そういうわけじゃないと思うが……』

 

 

 柴大将の苦笑混じりの否定も、セリカの耳には入ってこなかった。

 彼女は、件のミレニアムのバイトの娘の苦労を想像したまま、柴大将に問う。

 

 

『それで、その娘の名前って?』

 

『セリカちゃんも聞いた事があると思うな』

 

『え、本当ですか?』

 

 

 そんなわけない、とセリカは否定しようとした。

 

 でも確かに。

 その名には、セリカは聞き覚えがあった。

 柴大将が口にした、ミレニアムの生徒の名前。それを聞いた瞬間、セリカの心は熱く、熱く、更に熱く、燃え上がるのだった────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、現在。

 セリカは前方を睨みつけながら、荒れる心を落ち着かせる事もなく、目的地である柴関ラーメンへと歩を進める。

 

 全ては、新しくバイトとして柴関ラーメンにて働くミレニアムの生徒に嘗められないようにする為に。

 

 

 セリカにとって、その生徒は気に入らない者の一人であった。

 バイト先である柴関ラーメンの常連にして、アビドス自治区で好き勝手暴れて、その上柴関ラーメン周辺を自身の縄張りにすると告げた勝手気侭に振舞う生徒。

 

 確かに、彼女が武力を用いて君臨したおかげで、柴関ラーメンが構えている立地周辺の治安は良くなった。

 件のミレニアムの生徒の暴力性が脅威となり、その辺りで蛮行を働く事を良しとさせなかった。それは、ミレニアムの彼女の武力のおかげとも言える。

 

 そういう意味では、恩があるといえるし、セリカもそれは認めている。

 でもそれはそれ、これはこれ。アビドス高等学校に通う自分達が出来なかった、一部自治区の治安を守ってくれたことへの感謝はある。でもそれとは別に、納得出来ない感情もあることをセリカは否定出来なかった。

 

 つまり、彼女は嫉妬していた。

 自分達が必死になって、借金だらけの学校を何とかしようと東奔西走し、自治区すら満足に守れなかった間に、件のミレニアムの生徒はたまたまその場にいたからと言う理由で事を治めてしまった。

 加えて、辺りを自身の縄張りとすることによって、治安を向上させてしまったという事実。

 

 

 その手腕に、セリカは嫉妬していた。

 ミレニアムの彼女に恨み言を言うのは、筋が違っていることはセリカも理解している。

 でも、だからと言って、それを割り切れるほど彼女は精神的に完成していなかった。

 感謝もしている、不満もある、義理はあるが、釈然としていない。複雑な感情は雁字搦めとなり、ちょっとやそっとじゃ解けることはないだろう。それほどまでに、セリカは強烈に件のミレニアムの生徒を意識していた。

 

 

 かといって、誰彼構わず牙を剥くわけにも行かない。

 ましてや、これからはバイト仲間になるかもしれないのだ。荒れ狂う心境は、心の片隅に置いておく。

 

 

 そうして、セリカは柴関ラーメンの入り口までやって来た。来てしまった。遂にここまで。

 心を落ち着かせるため、深呼吸をする。深く吸って、これでもかと吸って。一気に吐き出し、嫌ってほど吐き出す。それを何度も繰り返して。

 

 

「よし」

 

 

 意を決して、扉に手をかけて、横に引き柴関ラーメンへと足を踏み入れる。

 セリカが目にしたのは────。

 

 

「似合っているな、お嬢」

 

「えへへ、そうかなー?」

 

「キツイとことかねぇか?」

 

「うーん、胸の辺りがちょっと窮屈だけど、大丈夫だよ。ありがとう、シヴァさん。あと、ごめんね……」

 

「どうした?」

 

「急にアルバイトさせてもらっちゃって……」

 

「なーに、お嬢が謝る事でもねぇさ。こっちも人手が足りてなかったからな。先生にもお嬢にも感謝しているよ。正に、渡りに船って奴だ」

 

「で、あるかなぁ? そう言ってもらえると嬉しいな」

 

「しかし、お嬢がバイトとはねー」

 

「意外だった?」

 

「まぁな。何か買いたい物でもあるのかい?」

 

「うん。アリウスの皆にメロンを買ってあげたくて。食べた事がないって言うし」

 

「そりゃまた。頑張らないとな……」

 

「うん! ワタシ、頑張るね────」

 

 

 そこまで言うと、柴大将と和気藹々と会話していた彼女────金髪紅眼の彼女がセリカを見て固まった。

 

 身に纏っているのは、柴関ラーメンの制服。

 その長い黄金色の髪の毛は、後頭部で纏められており、腰には『柴関』と印字されたエプロンを巻いている。

 

 彼女が何者なのか。

 そんなこと聞くまでもない。彼女こそが────。

 

 

「────ククッ、いらっしゃいませ」

 

「お嬢お嬢、その子はうちのバイトさんだよ」

 

「えっ、そうなの?」

 

「おう。セリカちゃんって言うんだ」

 

 

 そういうと、ククッ、と不敵な笑みから固い表情へと変わる。

 もしかしたら、浮かべていた不敵な笑みこそ、接客するための愛想笑いだったのかもしれない。もしそうであれば、なんて不器用なことだろうか。

 

 唖然とするセリカに、固い表情のまま近付いて。

 

 

「天上院オウヒです。これからよろしくお願いします、セリカ先輩!」

 

 

 件のミレニアムの生徒────天上院オウヒは頭を下げるのだった。

 

 

 

 

 

 





 △天上院オウヒ(アルバイト)
 いつもよりも表情が固い天上院。きっと緊張している。
 髪型も、後頭部で纏めているポニーテールスタイル。自分のことを『余』とかあまり言わない。シヴァさんのお店で働かせて貰っているので頑張ろうとはしている。でも少しばかり緊張している。
 それはそうと、ラーメン屋の店主さんは皆腕を組んでいるので、自分も組むべきか悩んでいる今日この頃。
 セリカのことを先輩と呼ぶ。
 セリカの様子を見に来たホシノもビックリ。なぜいる的な意味で。


 ホシノ「セリカちゃん、おじさんが来────」
 オウヒ「ククッ、いらっしゃいませ」
 ホシノ「……なんで、天上院ちゃんがいるの?」
 オウヒ「バイトである」
 ホシノ「……名札曲がっているよ。ダメだよ、しっかりしないと」
 セリカ「あっ、ホシノ先輩」
 ホシノ「セリカちゃん、天上院ちゃんのシフトって決まってる?」
 セリカ「うん、決まってるけど……」
 ホシノ「あとで教えてね」
 セリカ「う、うん」

 セリカ「ちょっと、ホシノ先輩に何かした? いつもより厳しい感じがするけど」
 オウヒ「わ、わからないッピ(困惑)」

 ホシノ(天上院ちゃんは私が守護らないと……)






 

 
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