こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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 ~ソロモンちゃんねる~

ホシノ「昨日寝ぼけてて、天上院ちゃんにパンはパンでも食べられないものはゴーリラ? って変ななぞなぞ出しちゃったよ。悪い事したな~」
ヒナ「あぁ、だからオウヒ朝から難しい顔をしていたのね……」
ホシノ「……待って。解こうとしていたの?」

 

 禁足地から一時帰国してきました。
 チャアクとガンランス楽しいです。
 

 ※注意※
 全国のミカファンの方々、本当にごめんなさいな内容です。



第6話 私の運命の貴女

 

 

 ────今頃、アッちゃん達はトリニティの偉い人と会合している頃だろうか。

 

 

 ワタシはぼんやり、と。

 空を見上げながら、今のアリウスで何が行なわれているかを考えていた。

 

 空は嫌ってほど、青く広がっている。

 晴天、といって差支えがないほど、雲ひとつない空をワタシは見上げていた。遮るモノが何一つない太陽光がワタシの肌を容赦なく照らす。念には念を、日焼け止めクリームを塗って出てきて良かった。

 容姿を意識しているつもりはないけれど、日焼けしてお風呂とか入るとき痛くなったら嫌だからね。念のため塗ってきたのです。痛いのやだし。むしろ、日常を過ごしていて痛いのが良いって人なんていないと思う今日この頃。

 

 

 一先ずは一安心。

 そして、後々にやってくる暑さに億劫になっているワタシがいるのはアリウス分校のグラウンドだった。

 

 

 今のワタシの姿といえば、ミレニアムサイエンススクールで指定されている運動服。動きやすいように、髪も後ろで纏めている。

 運動をした後のように身体は熱いのだが、実際運動した後でもあった。運動、つまりは模擬戦。アッちゃん達の会合が終わるまでの間、手持ち無沙汰となっていたワタシは一人のアリウスの生徒と、アリウス分校のグランドに常設されている訓練場で、模擬戦を行なっていた。

 

 

 

 今日もアリウスは平和だった。

 今、正に今後のアリウスがどのような立場になるのか決まる会合を行なっているとは思えない。

 

 

 グランドでは各々、訓練に励むアリウス生徒達の姿があった。

 近代的な校風であるミレニアムではあまり見られない光景。やはり、戦闘力を売りとしているアリウスにとって訓練とは、日常茶飯事な光景でもあり、ワタシも見慣れたものだった。皆、真剣に励んでいる様子を見るに、彼女達の教官でもあるサオリの指導によるものだということは、想像にかたくない。

 

 サオリは本当に多才だ。

 戦闘のみならず、誰かに教授する事にも長けているとは。ワタシは誰かに教えるなんて苦手なので、今度何かコツとかあれば聞いてみたいものだ。

 

 

 ワタシは辺りを見渡す。

 今の所、大きな問題が起きていないものの、違和感を覚える。本来ならもっと活気があるのだが、どういうわけか今日ばかりはそうじゃないみたいで────。

 

 

「動きが硬いな……」

 

 

 ポツリ、と。

 言葉にした通り、どこか皆の動きが硬い。更にどういうわけか、やたら皆と眼が合い、直ぐに逸らされる。

 

 どういうことなのか。

 もしかしたら、ワタシ招かざる客だったりする?

 

 

「そ、れは、みんな、殿下に、良い、ところを、見せたいから……緊張、しているのだと思う……」

 

 

 荒い呼吸をしながら、ワタシと訓練していた件の一人の生徒────アズサがワタシの疑問に対する答えをくれていた。

 膝をついて立つ事も儘ならない様子。無理に立たせることも良くない気がするので、とりあえずアズサはそのままで休んでもらう事にしよう。

 

 それはそれとして、ワタシに良いところを見せたいとはどういうことだろうか。

 良いところを見せて、ワタシに何が出来るわけでもないし。もしかして、褒められたい? いやいや、そんなわけがない。ワタシなんかに褒められても、嬉しくもなんともないだろうに。

 

 

「私、も、良いところを、見せたかった、けど……手も足も、出なかった……」

 

 

 アズサは悔しそうに吐き捨てるように言うが、それは自分自身に向けての言葉であることは、ワタシでも理解が出来た。

 その言葉は、アズサ自身を呪うような言の葉であったけど、ワタシはそこまで自分を責める事でもないと思う。手も足も出なかったとは言うけれど、これはあくまで模擬戦。実戦とは違うものであるし、そこまで悲観する内容でもなかった筈。

 

 それをどう伝えようか。

 そんな事を考えながら、回復しつつあるアズサに向かって、手を差し伸ばして。

 

 

「……アズサよ、何が気に入らないのだ?」

 

「自分自身の弱さに。これじゃ、狐坂ワカモを倒す事なんて出来ない……」

 

 

 それは、確かに。

 ワカモにはまだ勝てないだろう。ワカモは戦い方が()()()。強いではなく()()()んだ。何でもありの戦闘なら、キヴォトスでも随一と言える。

 

 ワカモと初めて戦ったときは、偶々ワタシが勝利を拾えたけれど、あの娘が装備を整えて、本気でワタシを仕留めに来ていたらどうなっていたかわからない。

 手札が多い相手は厄介である。だけどその分、どのような戦い方で追い詰めてくるか想像できない。だからこそ、ワカモとの戦闘は愉しい。また戦いたいのだけど、あの娘は先生にお熱なのかまったくモモトークを返してくれない。

 やはり、友情は恋には無力なのかもしれない。ワタシ、ちょびっとだけ、悲しいのです。

 

 

 ……今は置いておくとしよう。

 ワタシが注力しなければならないのは、どうやってアズサを励ましてあげられるか。

 

 

「狐に勝てるかどうかはさておき、余に敵わなかったからと悲観する事でもあるまいよ」

 

「……殿下は汗一つかいていないのに?」

 

「たかが模擬戦だ。実戦であれば、違った結果になっているは必定」

 

 

 恐る恐るといった調子で差し出すアズサの手を掴み、壊れ物を扱うようにゆっくりと引き上げてワタシは続けて言う。

 

 

「模擬戦、及び練習で100%のパフォーマンスが出来たからと言って、実戦でその動きが出来る訳ではない」

 

「そう、なの?」

 

「然り。その要因はいくつかある。緊張、自身の体調、場の空気、その日の天気であったり、自身を取り巻く人間関係によるストレスであったり様々だ。ヒトとは思っているよりも、繊細な造りである生き物だ。様々な要因により、どう足掻いても100%のパフォーマンスが発揮出来ないように造られている」

 

 

 アズサも心当たりがあるのか考え込んでいた。

 ワタシはその様子を見ながら。

 

 

「ベストコンディションであっても、精々八割が限度。ストレスがない模擬戦と、ストレスがある実戦では何もかもが違ってくるのだ」

 

「……それじゃ、模擬戦で勝てなくても、実戦で勝てることもあるってこと?」

 

 

 アズサの問いに、ワタシは無言で頷いた。

 

 実戦では何があるかわからない、とは言うけれど本当にその通りだ。

 今ではアズサに模擬戦で勝っているけれど、実戦でもそうであるという保証はない。精神的にも最高の状態であるアズサに、調子が悪いワタシが勝てないことだってありえる。

 

 だからこそ、訓練や模擬戦は重要なんだけどね。

 地道な積み重ねが自身の力となる。調子が悪かったとしても、その状態でどう付き合っていけばいいのか、自ずと積み重ねた経験と鍛え上げた身体が教えてくれるから。

 

 

 中には十割の性能を発揮できる人もいる。

 ネルちゃんとかがそうだ。あの人は自分が傷つけば傷つくほど、鋭さを増している感じがする。戦闘中に傷を負う、それがトリガーとなり、俗に言う極限集中状態(ゾーン)に入るとはそういう意味なのだろう。

 

 もちろん、誰でも出来る事でもない。

 キヴォトスでも限られた者でしか到達できない境地であり、ネルちゃんのような上澄みも上澄みの人じゃないと、経験できない領域。

 つまりは神域の天才、といった類の人達。────そんな人達との戦闘は、本当に、本当に、愉しい事になるに違いない。

 

 

「……いいや」

 

 

 でも今は、関係のない話。

 ワタシは頭を振るう。余分な願望を追い出すように、己に溢れかけた叶う事がないであろう欲望を、意識の外に追いやって。

  

 

「とはいえだ、今の貴様では狐を打倒する事など出来よう筈もなし」

 

「うぐっ」

 

 

 グサリ、と痛いところを突かれたと言わんばかりに呻くアズサに、苦笑を浮かべて言う。

 

 

「なればこその訓練である。結果に一喜一憂している余裕などないことを知るが良い」

 

「うん! 殿下、また付き合ってくれる?」

 

「無論だな。貴様が満足するまで、余は何度でも付き合うとしよう」

 

「ありがとう、殿下」

 

 

 やっぱり、と言葉を区切りアズサはどこか興奮気味に続けた。

 

 

「殿下はやっぱり凄いな。今の話、凄く為になった」

 

「…………ククッ、まぁね」

 

 

 えぇ、そうでしょうとも。そうであろうとも、そうに違いませんとも。

 だって、今のお話。ネルちゃんが言っていた事をコピペしたようなものなんだから。

 

 ネルちゃんにね、前に聞きに行ったのですよ。どうやって部員達を纏め上げているのか、部員達の鍛え方とか、やる気の出させ方とか、その他色々。

 やはり、ネルちゃんは凄いのです。流石、C&Cの部長って感じ。実際、上に立つ者として、ネルちゃんほど適任者は居ないと思う。口は悪いけど面倒見は良くて、ワタシの相談も親身になって聞いてくれたし。

 

 模擬戦と実戦の違いなんて、考えた事もなかった余。

 実戦、つまりは闘争。ワタシにとってそれは、愉しめれば良いもの。勝ち負けとか度外視であり、調子が良かろうが悪かろうが関係がないワタシにとって、ネルちゃんの話は目から鱗だった。

 まさか、こんな形で活かされるとは思わなかったけど。ネルちゃん、本当にありがとう。

 

 

「でも、殿下いいの?」

 

「何がだ?」

 

「桐藤ナギサが来ているのに、私の訓練に付き合って……」

 

 

 あぁ、そのことか。

 ワタシは考える事もなく、事実だけを口にする。

 

 

「構わん。余はミレニアムの生徒、トリニティからしてみたら他校の生徒である。そんなモノが、アリウスとトリニティの会談に出張るわけにも行くまいよ。決まるモノも決まらん」

 

「何を決めるんだ?」

 

「……そうさな。例の条約、及び交換留学の話であろうよ」

 

 

 時期的に、きっとその話をしに来たんだと思う。というか、それ以外でアリウスまで来る理由がないだろう。

 でも意外だった。てっきり、交換留学の話を持ちかけにきたパテル分派の偉い人────聖園ミカさんも来ると思っていたから。

 

 何かがあったのか、ワタシには皆目見当がつかないのだけど。

 

 

「交換留学、か……」

 

 

 アズサは神妙な顔で呟いて。

 

 

「殿下、もし良かったら私を────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その先から続く言葉はなかった。

 気配で分かる。アズサはワタシに顔を向けていることが、気配で分かった。

 

 でも、ワタシの意識は、視線は、意志は、彼方へと向けられている。

 呆然と、眼球がグラグラ揺れて、ある一点を見つめていた。

 

 人影があった。

 女性だった。

 トリニティの白い制服を着ていた。

 何よりも頭髪が────桃色だった。

 

 見覚えがあった。記憶があった。脳裏に焼きついた光景があった。例え、地獄に落ちようとも、忘れる事のできないモノが、そこにはあった。

 

 声が出ない。

 意識は朦朧として、まるで自分が自分じゃないかのような感覚に陥る。

 

 

「アレは、聖園ミカ

 

 

 アズサの声が聞こえる────答えている余裕はない。

 

 

「って、殿下。眼が……金色に

 

 

 アズサの声が、聞こえる────応じている余裕がない。

 

 

 ワタシは眼が離せない。

 視線の先にいる、桃色の頭髪のトリニティ生から目が離せない。

 病魔に魘される病人のように、身体に芯が通ってない者のように────焦がれた初恋の人に再会した女のように。

 ────身体が炎になったように熱く。

 ────脳髄が白熱し沸騰する。

 

 

 ワタシはワタシの意志とは違って歩き出した。

 

 

「『理解しました。貴女が、あの時の“あの娘”なのですね』」

 

 

 その声も、まるでワタシじゃないみたい。

 あまりにも無機質で、無感情で、無愛想で。置いてきた()()()()()が、意志を宿し勝手に言の葉を紡いでいく。

 

 

 積もる話もある。

 話したい事もたくさんある。

 怪我をさせてしまった事を、謝罪しなければならない。

 

 でも何もかもが、劫火に焼かれたかのように滅却された。

 

 

 視線の先には“あの娘”の姿。

 彼女は────笑っていた。蠱惑的な笑みを浮かべて、こちらを惑わすような淫靡な雰囲気を纏い、彼女も歩を進める。きっとワタシも、彼女のような表情を浮かべている事だろう。

 

 逸る気持ちを抑えるように、駆け出したい衝動に抗うように。一歩一歩、確実に。この余韻すら愉しむように、優雅にワタシ達は近付いていく。

 

 

 静寂に包まれていた。

 いいや、喧騒など既にワタシの耳には入っていなかった。

 今のワタシは、“あの娘”しか見ていない。それ以外の情報は不要と言わんばかりに、ワタシは“あの娘”しか認識していなかった。何もかもが色褪せて見えていたワタシに、闘争の喜びを教えてくれた“あの娘”しか見えていなかった。

 

 

 交わす言葉はなく。

 ついには、ワタシ達は手を伸ばせば届く距離まで到達する。

 子供の頃よりも成長した“あの娘”は可憐そのもので、絵本などに出てくるお姫様のよう。

 

 視線が交じり合う────。

 微笑を浮かべ合う────。

 また会いたかったことを胸中に呟いて────。

 

 

「…………ッ!」

 

「────!」

 

 

 まるで示し合わせたかのように、拳を握り締め、一歩力強く踏みしめ、お互いの顔面へと握り締めた拳を叩き込もうとしていた。

 その余波で地面が陥没し、見守っていた周囲から悲鳴が上がる、止める声が耳に入ったような気がした。

 

 でも関係がなかった。

 今のワタシ達は、ワタシ達しか映ってない。今はそれ以外はどうでもいい。

 

 これは続きだ。

 場所は異なるが同じグラウンド。

 状況も違えど対峙するワタシ達。

 

 今ここに、音もなく声もなく、止まったお互いの時間を戻すように秒針が再び動き始めた────。

 

 

 

 

 





 △ミレニアムサイエンススクールで指定されている運動服。
 つまりはブルマ。
 今のオウヒはブルマ。


 △極限集中状態
 ゾーン。
 実力がフルに発揮できる状態。
 ネル先輩やキヴォトスの上積み勢は経験した事がある現象。きかっけで入れることはあっても、狙って入ることが出来る者は今の所存在しない。


 △お互いの顔面へと握り締めた拳を叩き込もうとしていた。
 鉄拳シリーズの冒頭の仁と一八が殴り合うアレ。
 殴り愛。


 Q.もしかして、オウヒって“あの娘”のこと覚えていた?
 A.勿論、覚えていた。誰しも初恋を忘れる事ができないように、オウヒにとっての“あの娘”はそれに似たような感覚。地獄に落ちても忘れない。

 Q.ピンクが好きな理由は?
 A.“あの娘”の綺麗な髪色と同じだから。

 Q.なんで殴り合い始めているの?
 A.会いたくてしょうがなかった人に会えて、お互い我慢が出来ずつい。殴り愛だから。




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