こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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 ※注意※

 グロテスクな描写があります。
 ご注意ください。


闘争に明け暮れた者の末路

 

 ――――どこで間違えたんだろう。

 

 いつの間にか、仰向けで倒れているワタシは、そんなことを考えていた。

 

 視線の先には蒼く青い青空――――ではない。

 血よりも紅く、赤よりも紅く、毒々しいほどの紅い空が広がっていた。

 

 それは突然だった。

 まるで、終わりを知らせる鐘のように、まだ席に座る観測者を退場させるために鳴らされるベルのように、()()()は急にやってきた。

 

 キヴォトスの未曾有の危機。

 ワタシ達は戦った。各学園が対応に乗り出した。ありとあらゆる手段を用いて、()()に対抗しようと足掻いた。

 

 

 でも、ダメだった。

 きっと、ワタシ達は、足りなかったのだろう。

 団結すべきだったのだろう。各学園とは言わずに、全ての学園が連携し、確執など関係なく、手を取り合って()()に臨むべきだったのだろう。

 

 

「――――、――――ぁ」

 

 

 息が苦しい。

 内臓が傷ついているのか、上手く呼吸が出来ない。それとも――――お腹が貫かれているのが原因なのか。

 

 瞼も重い。

 このまま眠ってしまえば楽なものを。

 

 ワタシは起き上がる。

 視界が狭い。当たり前だ。左眼は抉られている。どこかで傷を負ったのだろう。

 左手もまだ付いているが、千切れかけている。なんてことだ、五体満足ではない。無事といえば、右手と両足、それに右眼くらいなものだった。

 

 

 

「ははっ」

 

 

 思わず嗤えてくる。

 自分の無様さに、生き汚さに、まだ生にしがみ付く浅ましさに、笑いが止まらなかった。

 

 ワタシ達は何かを間違えた。

 何を間違えたのかは、ワタシにはわからない。だけど、バカなワタシでも分かる。きっと、ワタシ達は何かを間違え、その結果がこの執着なのだろう。

 

 

 アリウス分校を見捨てたのが原因なのかもしれない。

 調月会長を理解しようと努めなかったのが原因なのかもしれない。

 ゲヘナの風紀委員会と事を構えていたのが原因なのかもしれない。

 トリニティを単身で叩き潰そうと動いていたのが原因なのかもしれない。

 ブラックマーケットに入り浸って戦闘に明け暮れていたのが原因なのかもしれない。

 カイザーコーポレーションと縁を作ってしまったのが原因なのかもしれない。

 アビドス高等学校の現状を見て見ぬふりをしたのが原因なのかもしれない。

 ――――ワタシだけが強ければいいと思っていたことこそが原因なのかもしれない。

 

 困った。

 思い当たる節が多すぎる。

 ワタシだけでこれだけ多いんだ、総合的に俯瞰的な立場で見たら、どれだけ間違えたのかキリが無い。

 

 

「ぅ……ごっ……!」

 

 

 眼を見開く。

 同時に、口から大量の血液を吐いた。

 それを見て、ぼんやりと、ワタシの先は長くない事を悟る。

 

 

天上院さん!」

 

 

 意識が朦朧とする中、背後から声が聞こえた。

 悪いけど、ワタシにはその声に答える余裕がなかった。

 

 最早、こんなの時間稼ぎだった。

 彼女達を逃がすために、逃がしてどうにかなるわけでもないけど、それでも足掻くための時間稼ぎ。

 

 それで()()をどうにか出来るわけじゃない。

 死んで逝った者達が生き返るわけでもない。ワタシ達を逃がすために、単身爆弾を握り締めて特攻したハルカちゃんは瓦礫の下、ワタシを庇って吹き飛んだカヨコちゃんが無事であるわけも無く、笑顔で散ったムーちゃんも、ワタシに託したアーちゃんも戻ってこない。

 

 ワタシがここにいるのは、多分意地だ。

 みんなでここまでやって来た。ワタシは便利屋のみんなに託されたから、ここで無様に立っている。

 

 それに、死ぬのなら、戦って死にたい。

 

 

「……この先に電車がある。それに乗って逃げて」

 

「そんなわけには……!」

 

“そうだよ、オウヒも一緒に!!”

 

 

 二人の声。

 先生ともう一人――――連邦生徒会長の言葉に、首を横に振りながら。

 

 

「わかるでしょ。ワタシは辿り着けない。死ぬのなら、戦って死にたい、そんな気分なんだよね」

 

 

 気配がする。

 ()()が近づいてくるのが、肌で感じ取れる。

 真正面から、容赦なく、油断なく、執拗なまでに。()()は手を緩めることはしないだろう。

 

 ワタシのやることなんて限られている。

 元々、戦いだけしか能が無い女だ。だったら最後まで、全うする。ここが、この場所こそが、戦場こそが、ワタシの居場所なのだから。

 

 

 それはどちらのモノなのか。

 背後で息を呑むのを感じる。歯をかみ締める音が聞こえる、踵を返し走り去る音が聞こえる。

 

 

 もう後ろで、気配はなかった。

 二人は去ったのを感じる。そして、目の前には()()の軍勢。多勢に無勢。本当に清々しいほどの負け戦。でも不思議と恐怖はないし、透明な気分だった。何もかもを失ったワタシには、背負うものなどないのだろう。

 

 いいや。

 

 

「――――」

 

 

 一つだけある。

 それは――――憎悪だった。

 

 そうだ、そうだとも、ワタシは許せない。

 連中が許せない。ここまでしてくれた連中が、やりたい放題やってくれた連中が、ワタシは許せない。何よりも――――。

 

 

「オマエ、よくも便利屋のみんなを、殺してくれたな――――」

 

 

 怨嗟の声に反応し、四方八方から銃弾が撃ち出される。

 避ける余裕などないワタシは、それに為す術なく、身を晒す。

 

 左腕が千切れる――――関係ない、腕の一本分軽くなったと喜ぶべきだろう。

 右足が砕かれる――――問題ない、まだ左足がある。ワタシは戦える。

 右眼が潰される――――心配ない、視えずとも()()は気配で分かる。

 脇腹が抉られる――――まだまだ、ワタシは――――まだ――――。

 

 

「ゴっ、……っ……」

 

 

 おかしいな。

 まだ戦えるのに、身体がいう事を利かない。仰向けに倒れて、力が入らない。

 でも、いいか。ワタシの役目は果たされた。

 

 気配が消えた。

 先生と連邦生徒会長の気配が消えた。

 

 きっと、この場から離脱したのだろう。

 

 ならばよし。

 便利屋として、アーちゃんの最後のお願いを聞けたし、ワタシとしては役割を遂行できたと思う。

 

 あぁ、でも心残りが一つある

 

 

「連邦生徒会長、超人なんだっけ? 一回、戦ってみたかったな……」

 

 

 

 意識が、凍結する。

 手足の指先が、冷えていくのを感じる。

 

 ワタシは何を間違えたのか、最後までわからないけれど、絶対に何かを間違えた事はわかる。

 これがその末路だというのなら、是非もなし。

 

 ワタシはそれを、甘んじて受け入れることとしよう――――。

 

 

 

 





 △ワタシ
 本編と違い、戦闘に明け暮れた者。
 自身の欲求を満たす事だけを考えて、戦う事だけをしてきた。
 その結果がこの終わり。結局、彼女だけが強くても意味が無く、紅い空を晴らす事が出来なかった。
 
 
 △先生と連邦生徒会長
 それでも何とかこの二人は逃がそうと便利屋とワタシは奮闘する。
 バッドエンドであろうと、便利屋だけは生き残ってそう。たくましいので。
 電車に乗せて逃がす。私のミスでしたに繋がる。

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