~ソロモンちゃんねる~
サオリ「アサリにストレス与えると、美味しくなるらしい」
オウヒ「ほう?」
ヒヨリ「そうなんですねぇ」
アズサ「試してみる?」
サオリ「?」
アズサ「捕まるなんてマヌケ」>アサリに向かって
オウヒ「模様がイマイチ」>アサリに向かって
ヒヨリ「バカ」>アサリに向かって
サオリ「なるほど、そういう調理方法が……!」
ミサキ「ストレスって、そういうのじゃないと思う……」
アツコ(面白そうだから黙ってる)
キヴォトスには数多くの運動施設がある。
生徒は皆、銃火器を手にしている。銃を所持していない生徒の方が珍しいといえるほど、銃火器といったモノはキヴォトスでは珍しくなく、日常に浸透している日用品ともいえる代物であった。
とはいえ、やはり身体が資本となるのは変わりない。
運動施設。つまりは、体を鍛えるための施設は、一つの自治区に何個も設置され運営されていた。
それこそ、選り取り見取り。
バリエーションも豊かなモノで、利用者を飽きさせない作りとなっている。
しかし、数が多いというのも考えモノ。
地面がコンクリートで出来ている、走者にはとても優しくない作りとなっているランニングコース。
滝の水流を利用した、明らかに設計ミスである時速20キロ以上の激流プール。
ゲヘナのヒノム火山近郊には、発汗を目的とした運動することもままならないスポーツジム。
少しでも運動性能が落ちたものなら、地面から電気が走るスポーツ施設。
その他にも中には、どこの層を狙っているのか分からないような、運動施設が存在していた。
このように、残念な有様な運動施設も存在するのだが、キヴォトスでは質の高い運動施設も存在する。
例えば、トリニティ自治区内にあるジムなどは、プロテイン飲み放題といった施設も中には存在し、会員となればバーテンダーがプロテインのカクテルなどを作ってくれる施設が存在する。
例えば、ゲヘナ自治区には温泉とスポーツ施設が複合となっている施設もあれば。
百鬼夜行連合学院には運動した後に旅館に泊まれるサービスがあるジムがあれば、ワイルドハント芸術学院に至ってはどうやって使えば良いのかわからないような、極めて前衛的なトレーニングマシンがあるスポーツジムもある。
これだけの千差万別。
一つの学園でこれだけの違いが、運動施設にはあった。
そんな中、ミレニアムサイエンススクールのスポーツジムは別格であった。
最新技術により、どの角度で鍛えれば効率が良いか教えてくれるAI。
人体の構造に基づき、多角的観点から考慮し、鋳造されたトレーニングマシン。
栄養素を第一とし、尚且つ味も損なっているわけでもない、全く新しい新感覚のプロテイン。
おまけに、シャワーや温泉まで入れる、かゆい所にまで手が届く素敵使用。
そういう意味では、ミレニアムサイエンススクールのトレーニングジムは別格と言っても過言ではない。
となれば、ミレニアムのスポーツジム────『プラチナジム』で身体を鍛えにやって来る者達も別格。
トレーニングといえばジム、ジムといえばプラチナジムと連想させるほど、鍛える者達にとっては聖地であり、そこへ身体を鍛え上げるためにやって来ているのだから、それに心血を注いでいる連中ばかりだろう。
だがそんな連中でも、自分を鍛える事を二の次で、ある者がトレーニングしている姿に、全員が釘付けになっていた。
「ふぅ、ふぅ……!」
なんてことはない。
ベンチに寝そべり、フックからバーベルを両手で持ち、そのまま何度も持ち上げる。つまりは、ベンチプレスという種目をこなしていた。
周囲が釘付けになっているのは、バーベルについている重りだろうか。
確かに、素人目からみたら、バーベルについている重りに注目しがちである。恐らくであるが、全体的名重りは、300キロ以上はあるだろう。
だがそうじゃない。
周囲が、身体を鍛える者達が注目しているのは、重りだけではなかった。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ……っ!」
注目────見惚れているといっても過言ではない。
周りの者達が注視しているのは、その呼吸にあり、フォームにあり、その姿勢にあった。
あまりにも美しいフォーム。
あまりにも一定な呼吸。
あまりにも洗練された一連の動き。
その者に、身体を鍛えにやって来た者達が、自分を鍛える事を二の次に、その者のトレーニング姿に見惚れていた。
一朝一夕で身に着く所作ではない。
何度も反復し、何度も繰り返し、それでいて慣れを感じさせない負荷。
ゆっくりとゆっくりと、自身の筋肉と向き合い。何度も何度も、己の肉体を苛め抜く。
その姿に、周囲は、芸術を見出していた。
まるで、求道者であるかのように。
この世に神は存在しない。いいや、その者が神であるかのような。
自分の中に神を呼び出し、支配する儀式。
それこそを努力と呼び、それを欠かすことがなかったのだと、その者はトレーニングにて体現していた。
「ふぅ……」
一息を吐き、その者はバーをフックに置いて、身体を起こす。
もはや、滴る汗も美しいといえるほどの、優雅さと気品を、彼女は備えていた。
それを見ていた周囲の者達は、ハッ、と我に返る。
見惚れている場合ではないだろうと、そそくさと自分自身を鍛える為に、没入していった。
それを見て。
「ふふっ」
その者は、かすかに微笑んでいた。
戸惑いはない。むしろ、こうして注目されるのは慣れたものだと言わんばかりに、慈愛に満ちた眼を周りに向けていた。
それから、さて、と身体を起こす。
恵まれた体格だった。
体躯は太い。贅肉が付いている、といった類の太いではない。むしろ、余計な脂肪は削ぎ落とされ、極限まで鍛え上げた肉体美がそこにはあった。
近くにかけていた、タオルで流れる汗を拭く。
尋常ではない汗の量。それほどの運動量であることが想像できるが、その物の顔は晴れやかなそれだ。むしろ準備運動が終わったと言わんばかりに、朗々とした口調で。
「もう少し、負荷をかけてみましょうか。次は……」
重りを増やそうと、手を伸ばしかけるが止まる。
視線の先には、鳴り続けている端末。
その画面には見覚えがある者の名が表示されていた。
その名は────ニヤニヤ教授。
何の用だろうか、と思う反面。
丁度良い、と断じると、その物は端末に手を伸ばし、画面をスワップして耳に当てる。
「もしもし」
『トレーニング中、失礼しますよ』
どこにいるのか、何をやっているのか、といった質問ではなく、トレーニングをしていると断定した上での言動。
思わず、怖気を通り越して、ため息が出る。
この世には、腕力だけではどうにもならないことがあり、自分にとってそれは端末の向こう側の彼女であることを、改めて再認識しながら。
「貴女に隠し事なんて出来ませんね。敢えてお聞きしますが、どうして私がトレーニング中であると?」
『ほむ。当てずっぽうで言ったのですが、当たっていましたか』
くすくす、と端末の向こう側から笑みが聞こえるが、それこそ嘘であると彼女は思う。
キヴォトスには怪物が何人も存在する。
自分のように身体能力が高い者、自己の意思力がが普通とはかけ離れている者、奇抜となる才能のみで存在する者と様々だ。
しかし、電話口の少女のような存在には、出会った事がなかった。
戦力を分析、計算し、戦場を意のままに操る。比喩ではなく、誇張表現でもなく、電話口の少女こそが、キヴォトス犯罪界の頂点に君臨していると言っても過言ではないだろう。
電話口の少女、つまりにニヤニヤ教授の前では、隠し事も無意味。
であるのなら、先程の問いは無意味なものであった。
ニヤニヤ教授は本題に入る。
『貴女から依頼された件、その一つが動きますので、伝えようと思いまして』
「その前によろしいでしょうか?」
『何でしょう?』
「なぜ、例の子犬に手を貸したのですか?」
子犬。
それが誰なのか、ニヤニヤ教授は尋ねる事はない。
誰の事を指しているのか、理解した上で答える。
『それは簡単な話です。私が彼女のファンだからですよ』
「教授?」
『彼女の行動は全て、予想外の連続でした。他校に所属しているにも関わらず、アリウスを武力で統一し、ワカモを蹴散らし、例の世界征服推進部、ゲヘナの風紀委員長との無意味な戦闘、助力する必要のないシャーレへの協力』
ニヤニヤ教授は指を折って数えるように、どこか楽しそうに続ける。
『救わなくてもいいカイザー理事を救い、単騎で倒せる筈のデカグラマトンを周囲と協力し撃退、先の元ゲマトリアに完封されるなど、本当に予想外でした』
「ファンだから、助けたと?」
『えぇ。彼女は実に興味深い。彼女と言う変数がどれほどの影響を与えるのか、私にも予想が出来ません。本当に、見ていて飽きない』
「ティーパーティーに情報を流したのは?」
『ここで退場しては勿体無いと思いまして』
クスクス、とニヤニヤ教授は笑みを零す。
ファンだと少女は言った。
だが逆に言えば、自身の予想内の動きをすれば興味は失われるという事に他ならない。
そうなれば、今後は助力する事もなく、その程度の存在だったかと勝手に失望される未来しかなかった。
興味があるうちは注目し些細な干渉をされ、興味がなくなると道端に落ちている石ころのような扱いを受けることとなる。
あの子犬も、厄介な存在に目を付けられたものだ、と彼女は内心同情を禁じえない。
『貴女は不服でしたか?』
「どういう意味でしょうか?」
『私が彼女を助ける真似をして、気に入らないのかと』
「いいえ、むしろ感謝しております」
そういうと、彼女は獰猛に笑みを浮かべる。
先程の優雅さと気品を滲ませていた者と同一人物とは思えないほど、口角を切り裂くような笑みを浮かべて野卑な雰囲気を纏い続けて言う。
「ここで彼女が退場しては興ざめですもの。私が脱獄した意味がありませんわ」
『貴女を嵌めたヘルメット団の報復。もう一つは────』
「えぇ、彼の者への
端末を握る手に、自然と力が入る。
ずっと熱望していた、ずっと渇望していた、ずっと切望していた。
もう一度、彼の者、つまりは子犬と呼ぶ者と闘う為に、彼女は焦がれてきた。
眼を閉じる。
思い出すのは、対峙した時の光景。忘れる事がなかった戦場の光景。
初めてだった。
自分と対峙して、小手先に頼ろうとせずに、真正面から対峙した者は、子犬と呼ばれる彼女が初めてだった。
避ける事もしなかった。防ぐ事もしなかった。守るに入ることもしなかった。
堂々と、真正面から、邁進するように、身体が吹き飛ぼうとも直ぐに起き上がり、自分を見据える紅い双眸。
「…………っ」
思わず震える。
子犬と呼ばれる者は尋常ではなかった。
血を噴出し、口からも鮮血が流れ、腹部には痛ましい痣を刻み、怪我と言う怪我を負いながらも、向かってくるその様は尋常ではない。
むしろ、その口元には笑み。
これでもかと大きく嗤い、愉しそうに声を上げて、これ以上にない快楽に溺れた者のような
──あぁ、愉しい! 本当に愉しい!
──さぁ、もっと闘おう!!
──片腕なんて、へし折れただけだよ!
──ワタシはまだ闘える、まだ片腕がある!
──まだまだ! まだまだ闘える!
──もっと、闘おう一緒に!
──ワタシと一緒に、闘い尽きろう!
体躯は遥かに小さいのに、何度も何度も立ち上がり、こちらを蹂躙する姿に恐怖を覚え、遂には自分は敗北した。
しかし、今は違う。
眼を開けると、瞼の裏側に焼きついていた戦場ではなく、先程までのトレーニングジム。
身体は高揚していた。トレーニングしていたからではない。それとは違う熱に魘されているのを自覚する。
もう一度、闘いたいと。肉体が、細胞が、彼女の全てが叫んでいる。
今度こそ、勝利する為に。
完膚なきまでの勝利を、彼女は欲していた。
「教授には感謝しております。貴女のおかげで、私は挑戦することが出来るのですから」
彼女には二つ、目的があった。
一つは、密告によって自身が矯正局送りとなった原因である、ヘルメット団への
もう一つは────。
「私に苦杯を舐めさせた、子犬への
『ほむ、それは心強い。頼りにさせてもらいますよ』
『『伝説のスケバン』栗浜アケミ』
△栗浜アケミ
完璧なお嬢様。
本編よりも前に子犬なる人物と闘い敗北し、その傷が癒えぬまま、ヘルメット団がアケミの情報をリークして、矯正局に捕まった、というのが一連の流れ。
目的は、子犬へのリベンジ。ついでに、ヘルメット団への報復。
△彼女のファン
ニヤニヤ教授の事。
彼女はね、やることなすこと無茶苦茶じゃなければならないのですよ、とは教授の言葉。
想定内の収まるようなら、失望してファンをやめることが約束されている。
またしても何も知らないアイツ(天上院なんとかさん)
△子犬
推定、天上院なんとかさん。
腕がへし折れても、片腕が折れただけだよっ!って笑顔で闘う頭オカシイ人。アケミはドン引きした。
これは疑う余地なく戦闘卿。