ゲヘナの気高き碧い猛獣 作:吠えろ青春!!
おまけはガイがまだ中学生になりたてぐらいの頃の話。
とあるオフィスにて怪しげに薄っすらと笑いながら外を見つめる一人の少女が居た。
「────くふふ、アルちゃん機嫌良さそうだね?」
そんな少女、陸八魔アルの様子が気になったのか、浅黄ムツキがニヤニヤとしながら彼女に問いかける。その表情は楽しみがやって来たと言わんばかりのニコニコとした表情だった。
「フフフ。皆、聞きなさい。久しぶりに依頼が入ったわよ!」
そんなムツキの期待に答える為か彼女は声の声量を上げて、依頼が久しぶりに入ったと周りの仕事仲間たちに伝える。
「やったー!久しぶりに美味しいご飯が食べられる!」
「やっとカップラーメン生活から抜けられる………」
「わ、私はアル様たちとカップラーメン美味しかったですよ………」
そしてそれを聞いた仲間たちの反応は色とりどりで、ムツキは久しぶりに美味い物が食べられると喜び、カヨコはやっとカップラーメン生活から抜けられると安堵し、ハルカは他の面々をフォローするといったような感じだ。
「それで社長、どんな依頼内容なの?」
そこでふとカヨコが依頼の内容が気になり、アルへと質問をする。
大抵こういった時の彼女はよく面倒事を持って来たりし、偶に自分たちが手に負えないような依頼を受ける事がある。そしてそういった時は必ずと言ってもいい程、自分たちが大変な思いをするので、その確認をする為だ。
「ふふ、それはね。とあるゲヘナの風紀委員の一人と戦闘をして欲しいって依頼よ」
「風紀委員?なんでわざわざあんな奴等と………」
「さあ?そこは良く分からないけど、確か戦闘データを取りたいって言ってたわね」
彼女たちにとって風紀委員会は天敵だ。幾度となく自分たちと戦闘をし何度も撃退しているが、その執着心は凄まじく、幾度となく自分たちの依頼の邪魔をされる。
特に風紀委員長の空崎ヒナは要注意人物だ。以前に彼女と戦闘をした事がある、アルたちだが、その時はボッコボコにされて命ながらに退散した事がある。
「それでアルちゃん。その風紀委員の一人って誰なのー?」
「社長。もしそれが空崎ヒナだったら今回の依頼は断った方がいい」
彼女たちはそんな戦闘をして欲しいと言われた人物の事が気になり、アルへと次々に質問だったり、助言だったりと彼女に言葉をかける。
「ふふ、安心しなさい。その風紀委員は空崎ヒナではないから」
しかし、そんな彼女は全く意に関さないとばかりに、堂々と自信満々にその実った胸を張る。
「今回、私たちが戦闘する相手はマイト・ガイっていう風紀委員よ。しかも聞いて驚きなさい!今回の依頼を成し遂げたら、報酬として100万円よ!!」
彼女はこの依頼の報酬で二ヶ月、いや三ヶ月はこれで生活していける!と内心で嬉々爛々としていたが、そんな彼女とは裏腹に他の面々は微妙な表情を浮かべるのだった。
「アルちゃんその人って………」
「やっぱりこんな事だろうと思ったよ………」
彼女たちは運が良いのか悪いのかは分からないが、今までにそのマイト・ガイと戦闘をした事があるどころか、彼と対峙した事もない。
だけどそんな彼女たちでもこの名前の噂は耳にしてことがある。
『ゲヘナのヤバい珍獣』
噂で聞いた程度の情報だが、謂く、彼はヘイローを持たない身でありながら、ヘルメット団数十名を一人で壊滅させた。謂く、彼は何度も風紀委員長に挑み敗れているものの、その実力は風紀委員長に近い実力を有している。謂く、彼は青春に拘っていて常に青春の事を考えているような馬鹿である。謂く、彼は全身緑色のタイツを履いていて、しかもそれを周りに布教したりしている。
これは噂なので事実かどうかは実際には分からないが、噂の根幹には必ず元となった話などがある筈なので、事実にしろ、虚偽にしろ、どちらにも関わらないのが吉である。
「でもあの様子だと社長は何も知らないみたいなんだけど………」
「くふふ、面白そうだからちょっとの間アルちゃんには黙っておこうよ」
「ハァ。どうなっても知らないよ……?」
カヨコはムツキの提案を聞き、白目を剥いていつものセリフを吐くアルの姿が思い浮かび、頭が痛くなるのだった。
「あら?貴方たち何を話してるの?」
「何でもなーい」
そして、またしても何も知らない陸八魔アルなのであった。
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「────それで社長。どうやってそのマイト・ガイって風紀委員と戦闘するつもりなの?……そのまま風紀委員会全体とぶつかるって訳には行かないし」
彼女たちは現在、風紀委員会の管轄から外れた、とあるゲヘナの自治区にやって来ていた。
その発端はアルで、彼女が普段愛用している武器を持ち出し、出発する準備をしろと言い出したのが始まりだった。
「安心しなさい。しっかりと作戦は立ててあるわ。……と言ってもこれは依頼主から教えられた情報が元なんだけどね」
そしてその理由は今日、依頼に沿ってガイとの戦闘を彼女たちがする為だ。
「それにしてもアルちゃん。こんな所に本当にそのガイって人はいるのー?」
「ええ。依頼主が言うには毎日この場所に居るらしいわよ」
ムツキが辺りを見渡し、不満気な顔をしてアルに問いかける。
周りは何処も木や雑草ばかりが広がっていて辺りに人がいる気配は感じられない。雑草などが無造作に伸びたり、道などと言った人の手が加わっている物なども見当たらない。
こんな場所では良い溜まり場などを求めているヘルメット団などのチンピラ集団も寄り付かない事だろう。
「それにしてもその依頼主って何者なの?そのガイって人に詳しいみたいだけど………」
「さあ?私も電話越しでよく分からなかったけど、胡散臭い奴だったわね。それに確か自分の事を『黒服』って名乗ってたし………」
カヨコは今までの情報を提供してくれている、依頼主の情報網が気になり、アルへと質問してみるが、大したような情報が得らなかったので不服そうな顔をする。
「あ!アルちゃんたちー!開けた場所に出るよ!」
彼女たちが幾分か雑草などを分けて歩いて行くと、数十メートル先に光が差し込み、開けた場所が見えてくる。
「……………」
彼女たちはそこで先程のような雰囲気とは切り替わり、冷酷さを思わせるような落ち着いた雰囲気になる。
その思いを胸に募らせて、彼女たちは自分たちの普段愛用する武器を構え、臨時体制となる。
「────な!?」
だがその体制は思わぬ形で彼女たちは崩されてしまうのだった。
「1891……1892……1893………1894」
なんと彼女たちが開けた場所に出ると、その場には明らかに重さ50kgを超える重りを二つ身に纏い、逆立ちで腕立て伏せをしている男が居たのだった。
思わずアルたちは武器を下ろしてしまい、驚愕の顔をそれぞれ浮かべる。
「ん?……こんな所に人が来るなんて珍しい。…………もしかして俺に用があるのか?だとしたら済まないが後少しで終わるからこのまま待っていてくれ」
「え、ええ、わかったわ………」
アルは困惑する余りか思わず頷いてしまうのだった。
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「────それで俺に一体何の用なんだ?」
あれから少しと時間が経ち、ガイのトレーニングが終わると、ガイは改めてアルたちと向き合い、話を伺うのだった。
「あ、えーと…………」
本来なら今頃、カッコよく登場して戦闘を仕掛ける筈だったのにと内心で嘆いてるアルは、想定外の事態が連続し、そのせいか頭で考えていた事が飛んでしまい、言葉に詰まってしまう。
「────ねぇねぇ、アルちゃん。どうせこの後に戦う事になるんだからこのまま本題に入っちゃおうよ」
「そ、それもそうね。……んんッ!………私たちは便利屋68。金さえ貰えれば何でもする何でも屋よ。………それで貴方への要求はただ一つ。私たちと勝負をしなさい!」
ムツキのフォローによりアルは何とか持ち直し、ガイへと本題を切り出す事に成功をする。そこでアルは内心で『私もしかして決まった!?』などと考えているのだった。
「……なるほど。青春を掛けた熱い勝負をしようという事だな!その勝負乗った!!」
そこにガイも、今まで自分がヒナに勝負を挑むだけで、誰からも自分に勝負を挑まれた事がないので、この初めての出来事にガイ自身もワクワクとし、すぐその勝負に乗ってしまう。
「アッハハハ!この人なんかおもしろい!」
「そんな簡単に勝負を受け入れちゃうんだ………」
ムツキはガイの可笑しな返答に対して思わず笑ってしまい、反対にカヨコは自分たちが挑んどいてなんだが、ガイの即答にドン引きをしてしまうのだった。
「そういえばまだ俺の自己紹介をしてなかったな。俺はゲヘナの気高き碧い猛獣……マイト・ガイだ!」
「ふふふ。私は便利屋68の社長、陸八魔アル」
「私はムツキって言うんだ!それで、この子がハルカちゃん、カヨコちゃん」
ムツキが残りのメンバーを紹介し、ハルカとカヨコが軽く礼をする。
(ん?そういえばそのゲヘナの気高き碧い猛獣って何処かで聞いた事があるような………?)
そこでアルはふと頭の中で気になるワードが頭の中で突っ掛かり、そのワードを思い出そうと思考する。
「そういえばアルちゃん」
「何かしら?」
「アルちゃんは気が付かなかったけど、マイト・ガイって人、あの『ゲヘナのヤバい珍獣』だよ」
「なななな、なっ、何ですってーーーーーーー!!!???」
「アハハハ!!アルちゃんのその反応ウケるー!」
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おまけ
「────校庭500周出来なかったら、逆立ちで校庭500周!」
「────腕立て伏せ500回出来なかったら、指立て500回!」
「────スクワット1000回出来なかったら、片足スクワット1000回!」
「────バーピー500回出来なかったら、重り20kgでバーピー500回!」
身体が疲労によって動かなくなってしまい、俺は地面に背に倒れ込む。いつの間にか時間は日が沈み辺りも暗くなりだしていて、空では一つの月が見えていた。
「まだだ……!まだ全く力も精神力もガイ先生には遠く及ばない………」
俺はそんな遠くの存在である月と自分の力無さを比べるかのように、光り輝く月へと手を伸ばす。
そして俺はある事に気づく。
「今日って満月だったんだな………」
《自分ルール》簡単に説明すると、何かに挑むときに、わざと自分を過酷な状況に追い込むルールを作り、それによって本気で取り組むと言ったような物で、失敗しても更に自分を鍛えられるという一石二鳥のルール。
ガイはこれを毎回課しており、ヒナに負ける度に何かしらの事をやっている。
例えば、ゲヘナの校庭全力ダッシュ5000周だったり、ゲヘナの不良生徒たち100人を一日で取り締まるなどなど。
余談
現在高校3年生の18歳のガイですが、このキヴォトスに来た当時は小学校3年生ぐらいです。
何とこの間の期間は約9年間もあり、その期間ガイは死に物狂いでトレーニングや体術に励んでいた。
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