ゲヘナの気高き碧い猛獣 作:吠えろ青春!!
はい、という事でヒナを労わる話です。
投稿するのが遅くなってすいませんでした。優しく見守ってね!
「────おい空崎。ここ最近お前は働き過ぎだ。少しは休め」
風紀委員会の執務室にて書類をまとめているヒナにガイが普段とは違う雰囲気を纏いながらそう言い放つ。
「………別にいつもの事だから平気だわ。それにこれは私がやらないといけない事だから」
ヒナが目線で書類などを指しながらガイへとそう言葉を返す。
そんなヒナの目の下には彼女の疲れを表したような大きな隈があった。
彼女がこうなってしまっているのは原因がある。その原因は火宮の件でもあったが、連邦生徒会長失踪に興じて発生している大量の暴動や犯罪などの鎮圧や容疑者の確保などを、風紀委員長である彼女が風紀委員会を筆頭に行っているためだ。
ガイは最近までは他の学園からの暴動などからの救援要請により、ゲヘナ学園を離れていたので彼女の現状を知らなかったのだが、彼女が疲弊しているとあのアコから連絡が来た事によりガイは現状を知った。
「1週間もまともに寝ずに仕事をするのがいつもの事な訳がないだろう?」
「………貴方だってまともに寝ていない状態で仕事をしてるじゃない」
「それでも数時間の仮眠は取っている。……だがその仮眠すらお前はまともにしていないんじゃないのか?」
「……………」
ヒナはガイに反論をするものの、更に反論をガイにされてしまい彼女は黙る。
普段の彼女は口論でガイに負ける事はない。故に今の彼女の頭が疲れによって正常に働いていないかが分かる。そんな事をガイはこうやって彼女と話し、彼女が如何に重症なのかを身を持って感じ取る。
「分かった……少しの間だけ私も仮眠を取るわ。それでいいでしょ?」
「駄目だ」
「は?」
「今のお前はしっかりと身体を休ませないと壊れるぞ?」
本来の彼女。いや本来の彼女たちはただの子供だ。普通ならば勉学に励み、友達と楽しく過ごすような青い青春を送るべき存在なのだ。
故にガイはこんな今の彼女の悲惨な現状を認めない。
彼女たちにとっての敵はテストやそれに伴って出されるような課題などだけでいい。
「それならこの面倒事が片付いたら休むから平気よ」
「いや平気ではないな。……気付いてないのか?今のお前は疲れで目の焦点も偶に合ってないし、化粧で多少は隠してるが疲れが顔に出ているぞ」
「……よく見てるわね」
「当たり前だ。何年お前と居ると思っている」
ヒナは誰の目から見ても分かるほど酷く疲弊している。それは既に彼女のキャパシティを越えかけているという、彼女の身体から発信されている危険信号の現れだ。
「……でも私がやらないと────」
「風紀委員会が回らない………とでも言うつもりか、空崎?」
風紀委員会においての空崎ヒナに対する周りからの評価は、数百人単位と人が所属する風紀委員会の中で、彼女一人がその戦力の半分に匹敵する、そんな絶対的とも言えるような高い評価をされている。
つまり裏を返せば、風紀委員会は彼女が居なければ大したことないという評価を周りからされているのだ。
確かに風紀委員会の中でも銀鏡イオリやガイと言った強者は居るが、周りからすればヒナに比べたらそれは些細な事だ。なんせゲヘナでは風紀委員長が不在ならば好き勝手できるという風潮すらあるのだから。
(だが
そんなことはガイにとってはどうでもいい事であった。何故ならそんな評価は後で自分の力で覆せばいい。ただそれだけなのであるから。
「はっはっは!それなら俺の青春パワーで何とかしてみるさ!」
「ッでも結局貴方はヘイローを持たない身体でしょ?それで一体何が出来るって言うの……?」
ヒナは疲れからか、普段以上に自身に突っかかってくるガイに苛立ちを覚え、ガイの事を鋭く睨みながら冷徹にそう言い放つ。
「それなら今まで何百回と俺と勝負してきたお前なら分かるんじゃないのか?………例え俺にヘイローがなくともな」
「でもっ────」
(それだと貴方に負担が……!!)
ヒナがこうして自分でなるべく多くの事をやろうとするのには理由がある。それは確かに自分にしか出来ないという彼女の理由もあるのかもしれないが、それともう一つで他の人になるべく負担を掛けたくないという彼女個々の理由もある。
故に彼女は誰かに甘えたりじゃれ合ったり泣き言を言ったりしたいという願望を掲げながらもそれに蓋をして、風紀委員長として働く。その証拠に他の風紀委員がもう帰っている中、彼女はただ一人残り仕事をする。
それにアコやガイなどの面々も残って仕事をしたりするが、それでも彼女ほどでもない。最終的には彼女自身が後は自分がやると言って他の面々を強制的に帰すためだ。
「俺が言うのはおかしな事かもしれないが毎回お前は一人で抱え込み過ぎた。偶にはそれを曝け出して甘えたりするというが俺は良いと思うぞ?」
「だけど私が甘えたりしたらただ迷惑なだけなんじゃ………」
彼女はそんなネガティブな感情からか何かに怯えた顔をしながら、自身が感じている不安を溢す。
「そんな訳がないだろう?風紀委員の皆なら全員お前の事を受け入れてくれるに決まっている。勿論この俺も含めてもな!」
「それは本当になの……?」
「ああ本当の本当だ。……だからお前はその一人で抱えているものを曝け出せ。俺はそれを受け入れる」
ガイの言葉を受けたヒナは自身の築いた感情の蓋という壁が壊れていくのを感じる。
そしてそんな彼女の頭の中にはとある願いが思い浮かんでいた。
(それなら私は────)
「フカフカのベッドでゆっくり寝たい………」
「分かった。ならお前は今日はもう帰れ。それでグッスリと眠るんだ。後は俺に任せろ。………っておい!」
ヒナは今まで張り詰めていた緊張がなくなったからか、糸が切れた人形のように前へと倒れ込む。それを慌ててガイは抱き止める。
(全くしょうがない奴だ………)
ガイは彼女をこのままにする訳には行かないので、彼女を背負いながら廊下を歩く。
そんな彼女の身体はとても小さく、少し力を入れたら壊れてしまうかもしれないと思うほど華奢であった。
(こんなに無理をさせてしまっているとはな………。情けないな俺は)
「暖かい………」
ガイの後ろからふとヒナの声が聞こえる。
彼女はとても強い人のように感じるが、それは間違いで彼女は普通の少女だ。そんな事をガイは改めて強く感じるのだった。
▼▼
空崎ヒナが今は居ないという情報を聞き、風紀委員会に一泡吹かせようと思い集った者たちがゲヘナ自治区のあちこちで暴れ回っていた。そこには事を荒げようと他の学園の不良たちも集まり数十人の集団が各地で暴れ回っていた。
『ゲヘナなヤバい珍獣』の噂は耳に聞くが、空崎ヒナに比べれば大した事はなく、この大人数ならなんてことはないと彼女たちは思っていた。
「────うわあああ!!何なんだよアイツ!!」
「なんかアイツ正拳突きで炎を出してないか!?」
「畜生!!風紀委員長が居ないって聞いたのに何でこうなるんだよ!!」
ゲヘナ学園の自治区のあちこちで不良たちの阿鼻叫喚の声が響き渡る。彼女たちは圧倒的な力により着実に戦闘不能へとさせられて道端へと倒れていく。
「お前は一体何なんだよ!!」
不良集団のリーダー格とも言える少女がこの現状を作り出した張本人に問いかける。そこには畏怖の感情が垣間見える。
「ゲヘナの気高き碧い猛獣だ…………」
最後に彼女たちは燃え盛る孔雀のような炎を前に意識は途絶えた。そしてたった一日でゲヘナで発生する暴動などを一人で鎮圧した事から、ガイの『ゲヘナのヤバい珍獣』という名ではなく『ゲヘナの気高き碧い猛獣』の名が他の学区にまで広がるのだった。
▼▼
おまけ
ヒナはゲヘナ学園にある保健室のベッドに横たわっていた。時計を見ると日付が変わっており丸一日寝ていた事が分かる。
「シャワー……浴びないと………」
彼女は久方振りのゆっくりとした平和な時間を感じながら、自分の身支度を軽く整えていく。本当に今までにないほどの時間の余裕を感じる彼女は慣れない感覚と共に思考能力を取り戻していく。
「そういえば何で私………」
ポケ〜とした状態でふと疑問を彼女は感じ、何で今自分はこうなっているのかを知るために彼女は記憶を辿る。
そしてそこで彼女はある記憶を思い出す。
ガイの背中に自分がおぶられていて、それが自分にとっては暖かく、無意識に自分がガイの身体に強く抱きついていた記憶だ。
「ーーーーー!!??」
彼女は急激に顔が熱くなり、声帯から声にならない声が発せられる。恥ずかしさの余りにダッシュで先程自分が居たベッドにダイブし、枕に顔を埋める。
(あの時は疲れていて頭が回らなかったけど、何で私はあんな事を………!?)
彼女は余りの羞恥により、抑えきれない感情を誤魔化すかのように自身の足をバタバタとベッドの上で暴れさせる。
ガイとの光景を思い出す度にあの時の暖かさを思い出してしまい、彼女は更に足の勢いを強めて暴れさせていく。
その姿は風紀委員長としての空崎ヒナではなく、ただの年頃の普通の少女と何なら変わりはなかった。
ヒナのキャラが崩壊しているか……?
多分次からはガイを原作に絡ませたり絡ませなかったりすると思います。後早めに投稿もする。多分。
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