(セリフの一部をEDF5本編のセリフ及びその書き起こしを掲載したサイトから引用しました。)
引用元
https://w.atwiki.jp/edf5/pages/121.html
0.オペレーション・オメガ(回想)
あの日、人類はプライマーによる奇襲攻撃を受けた。人類は防戦一方も、後にストーム1と呼ばれる一般人の志願により反撃と反撃の反撃による大攻勢を重ね、遂に今日、旗艦を落として神を殺すに至る……はずだった。
超現実的な力によって戦力のほとんどを失うまでは。
「前線は崩壊しました。もはや……生存者の存在自体が絶望的です。」
『……準備完了。出撃。』
「隊長、着いていきます。」
『ありがとう。プロフェッサー君……上手くやって見せてよね。』
数ヶ月前だったかしらね、狂人の真似をして隔離病棟送りを試みた天才を脱走させたのは。彼はその日はしきりにぶつぶつと呟いていた。ストーム1がどうのとか、このループでは見つからなかった、とか。
「ストーム3、突入する!」
「ストーム4、突入!」
最強のフェンサー隊とウイングダイバー隊が誰に命令されるでもなく突入したと無線越しに知った。
「オペレーション・オメガを発動しました。」
(中略)
「全員が死ぬぞ!神風を祈ってわずかな生存者を犠牲にするのか!?誰もいない地球を守ってなんになる!」
「隊長……大丈夫ですか?」
『……うん、大丈夫。気にしないで。忘れ物はない?』
「はい!隊長と一緒ならどこへでも!」
「……無い。どうせ地獄へ持っていけるものなんて無いし。」
「死地でもどこでも運びますよ、ライカ少佐。」
『……ヒドラ。』
「帰る場所はもう無くなって久しいですから。」
これから死ぬと皆わかっていた。全ての人間が奮戦を続けるストームチームの為に陽動に出る。守るべき命を磨り潰してでも守る命、それがストームチーム。
オペレーション・オメガは全ての作戦の終わりであり、人類が組織的に生き残ることを放棄した合図でもあった。こんな無意味な作戦を本部が知る訳が無い。私も知らなかった。あの天才に言われるまでは。
「到着。健闘を。」
『ありがとう、ヒドラ隊。』
人生で最初で最後のラペリング降下。別に私はウイングダイバーなのだから飛び降りてもいいのだけれど……。
「……さようなら、隊長。」
(ほんの僅かに中略)
重武装のエイリアンを確認。死に向かっての陽動任務を始める。
『作戦行動を開始。本部は知らないでしょうね。まだ生き残りが居たなんて。』
「隊長……お先に……失礼します……。」
『しっかりして!まだ!まだよ!』
「雲よりも……高い場所で……待ってます……隊長……。」
『しっかり!おい!目を開けろ!開けろっ……!』
「隊長……彼女は貴女に忠を尽くした。それだけ、です。」
「ぐっ……エンジンをやられた!墜ちる!掴まれ!メイデイ!メイデイ!メイ(ノイズ)。」
隊員達が隕石に銃撃に、火炎放射に、砲撃に、やられていく。臨時編成の寄せ集めとはいえ地球防衛軍としての誇りはある。あった。誇りは……。
隕石の直撃弾をストーム1の代わりに受けて遂に私も墜ちる。最後に見えたのはストーム1がファング大口径狙撃銃を構えて神を撃とうとしたところ。彼がこっちを向いていなくて良かった。
あぁ……近づいてくる地面が眩しい……。
──
気がつけば私は道路の上に横たわっていた。廃墟に囲まれた命の気配を感じない場所。
『フライトユニットは……生きてる。武器は……これか。』
自分がウイングダイバー用に作った近距離電撃武器"スパークバイン"と遠距離電撃武器"ライジン"(試作型なので銃身が量産型よりも長い)のトンデモ物好きウイングダイバーとしては基本の兵装。
『スラスター……良し。ブースト……OK。』
初期のプラズマコアはエネルギー容量が小さくて飛行時の消費は比較的控えめではあるけれど、それでもやっぱり重い。
『おーい…………誰も居ないようね。』
倒壊したビルの上に登って見渡してみる。緑と灰と……ん?
『人……?おーい……うわっ!』
一瞬だけど見えたのはマズルフラッシュと顔一つ分横を通ったビーム。さっさと隠れた方がきっと良い。
倒壊したビルといえど柱があって、壁もあり、潰れてしまっているわけではないからこうして……。
『ふんっ!』
扉をこじ開けてしまえば入れる。
『失礼し……じゃなかった、お邪魔します……』
『食料は……あった。缶詰……賞味期限…………これっていつ?まあ良いか……貰っておこう……。』
部屋を漁っていく。住人は逃げ遂せることができなかったらしく白骨化した遺体が3体、お互いに抱き合うように絡み合っていた。宗派は分からないが、部屋を出るときに拝んでおこう。この哀れな住人が天国へ辿り着けたことを願わずにはいられない。
部屋から出て外を見る。まだ奴らが居る。どうしたら良いものか。このアーマーは装甲を犠牲に機動性で振り切るデザインだから基本に忠実に……としたいところだけれど、相手の弾速が速いと話は別になってしまう。
『……戦車?まずい、かも。』
戦車らしき何かが主砲(だと思う太い筒)を非常に高い仰角で保持している。これは逃げるべきだろう……あ。こっち見た。
『退避ー!退避ー!』
ビルの外まで浮いてブーストを連発。破片加害の及ばないエリアまで急いで飛ぶ。
(ビルの一室が爆ぜる)
『おっとっとー!ひゅうー……危なかったぁ……。』
『私が何をしたと……ん?』
再度、側壁に登ってみれば(途中でガス欠を起こして着地した……)カラーリングも構造も異なる車両が見える。さっき撃ってきた戦車もどきとは異なっていて、履帯で動いているらしい。あれ?撃ったぞ?
『仲間割れ……?いや、第三勢力?この場合、私が第三勢力か……?』
灰色の戦車と奇襲を受けた緑色のホバー戦車が動きながら撃ち合っている。
『う、うーん……助太刀しておくべきか……?』
一応、ライジンの充電は(途中で何回かガス欠からの緊急チャージを挟んだが)既に済ましてあって多少なりとも損害は与えられるのではないかと思うけれど……どちらも敵だった場合、生き残った方が私に来ることを考えると、困った。
『撃つなら2つに1つ…………反撃開始。』
ターゲットは緑色のホバー戦車。奇襲によって被弾し、動きが鈍くなってはいるようだけれどそれでも十分、速いことを考えると……すぐに攻撃した方が良い。あの灰色の戦車が中立関係にある可能性があるなら余計に。
『偏差……照準、発射。』
電撃が銃身の先から多少のうねりを持って飛んでホバー戦車の砲塔に。
命中。
砲塔が止まる。
泥舟は沈まなかった。
少なくとも今のこの瞬間は。
灰色の戦車がとどめを刺した。動かなくなった砲塔を車体ごと回そうとするホバー戦車に素早く矢を撃ち込む灰色の戦車。きっと敵ではない。これは仮定であり、実際にそうなのかなんてわからないのだけれども……ね。
「おーい!出てきてくださーい!」
『……見られてたか。』
建物の影から覗く。戦車の車外にスピーカーでもあるのだろうか、流暢な母国語が聞こえた。私のかつての故郷はもう……存在しない。
「あれぇ……出てきませんねぇ……。」
今度はドイツ語。ありとあらゆる言語を試すつもりなのだろうか?
戦車の砲塔から人が降りてくる。さっき私を撃ってきた敵兵とは違うようだ。
『……!』
さっきの敵が隠れて待ち伏せしていたのか、降りてきた人に銃口を突きつけている。どうするべきか……。恩人と言えば恩人ではあるが味方とは限らない。罠かもしれないのに飛び出るわけには……。
『いけない……!』
驚いた銃口がこちらを向く。そうだ、それで良い。
私達はこれまで殺し合ってきた。
きっとこれからも殺し合うだろう。
いつまでもどこまでも。
殺し合える限り。