【地球防衛軍6】2人のライカ   作:イエローケーキ兵器設計局

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 お昼にお弁当を食べながらSu-15TM2"フラゴンG"を眺める。
「隣失礼するよ。」


13. 母船来襲(1)

『どうぞ、隊長。』

「どうも。彼女の調子は……まあ、悪くはない。新人整備士が維持してくれていたようだ。ブラックボックスは触らずに居てくれたらしい。だから……その……まあ、調整が必要なんだ。」

 なるほど。自分で飛ぶには細かい所を調整する必要がある、と。

「これでも飲んでないとやってられない。」

 瓶入りの栄養剤(150ml)を煽り、戦車に登った男女の集合写真にロシア語で「機甲部隊運用論3」と書かれた雑誌を雑に置いて、駐機した場所から動かさずに整備し直している。私はお弁当の蓋をもう一度開けて食事に戻る。おかずが一品無くなっていた。言われてみれば声が若干、もぐついていたような……。

 

 ふと雑誌が気になって開いてみた。ロシア語はライカ隊長と長いとはいえ苦手な部類なので、ただ眺めていると上から手が伸びてくる。その手は整備用手袋は外していた。

「……何を読んでいるのかと思えば、それか。返してくれると嬉しいんだがね。」

『た、隊長!すぐにお返しします!』

「そうしてくれ。それは私のものだ。」

 雑誌を開くと女性レイヤーのエッ……"可愛いコスプレ"ピンナップ写真、それが一番に飛び込んだ。次に目についたのは輸送機の設計図。うーん?

 

「ふぅ……勘違いするな。」

『は、はい……。』

 知ってしまった。ちょっと意外だったけど、多様性と言うものだろう、うん。

「弟が好きでな、このシリーズ。」

『はい……はい?』

「よく見てみろ、ほら、この輸送機の図案のページ。」

 ただの輸送機……じゃない?

「輸送機で機甲部隊を運ぶシーンは原作者側がわざわざ専門家の監修のもとに設計して図案と……。」

 ペラリ。ページを捲ると戦闘機に背後を取られた輸送機のイメージ画が現れる。

「イメージを描いたらしい。」

 なるほど……それならそうなのかもしれない。

「お色気ピンナップに関しては全くわからんが、まあ……コレくらいのほうがウケが良いんだろうな。輸送機のノーズアートがこれだし、な。」

 ピンナップ写真を指で突きながら説明してくれた。多少なりとも隊長は隊長で思うところはあるらしい。そういえばこの基地に駐機していた機体群にピンナップ系のノーズアートの類を見た覚えがない。

「基本的に私達の軍は……ノーズアートはシャークマウスとかが限界で、それこそ……ピンナップ写真のような絵はあまり好まれない環境だから、ね。」

 この小説の舞台は地球規模の核戦争後に未知の勢力によって占領されたロシアで、3巻は人類の生き残りの為にアメリカ大陸に向けて戦車の輸送を試みる話らしい。

 

「武装は……こりゃ駄目だ、23mmガンポッドがイかれてる。」

『この機会に換えます?』

「うーん……そうだなぁ……。」

 滑走路に駐機されたVM-Tを一瞥して忘れ物を取ってくる、と歩き始めた隊長を見送り、お弁当の容器を回収箱に返す。

 

「レナ少佐、ちょっとよろしいかな?」

『司令官殿!』

「そう畏まらなくて良い。」

 あなたの一言で首が飛ぶ立場としては畏まらないわけには行かない。

「ライカ中佐の事だが……彼女の元部下として、君の上司として頼み事がある。」

『は、はぁ……。』

「彼女がもし道を踏み外しそうになったら……戻れるように手を貸してあげてほしい。それだけだ。」

『……了解しました。』

「頼みます、よ。レナ少佐。」

 司令官は遠くに隊長の姿を見て帰っていった。いや、このコースは宿舎?

 

「お待たせ……ってあれ?基地司令が見えたような……。」

『待ってないですよ隊長。司令官殿は宿舎に行きましたし。』

「うーん……聞きたいことがあったんだけどな……。」

 隊長が押してきたドリーには見たことのない機関砲……?のような物体が載せられていた。

『隊長、それは?』

「これはね……新兵器だよ。」

 ガスト式35mm機関砲、仮称"GSh-35-2"を左右に膨らみのあるガンポッドに納めた状態でドリーに載せて押してきた隊長は何の器具も使わずにそのまま持ち上げ、装着してしまった。

「……人間を辞めて戦術人形になった事で得た唯一の良い事は力が強くなった事かもしれない。」

 隊長の暴言が昔よりキツくなっている……気がする。

「さあ飛ぼうか、レナ隊長。」

 

 

「管制塔より、えー……レナ、ムーンムース、両機の離陸を許可します。1番、2番滑走路をご利用ください。」

 

「了解、レナ、飛べるな?」

『は、はい!もう大丈夫です!』

 コックピットに座る時に手を握ってもらった。誰かと繋がっていると感じただけで悪夢というものは引き下がっていってくれるらしい。

「5000mで待ってる。」

 模擬空戦のライバルが隣の滑走路を猛スピードで駆け抜けて空に消えていく。私も追いかけないと。HMDを調整。左手を機械と繋ぎ、右手も機械と繋ぐ。足は軽く置いて乗機に身を任せる。大丈夫、私はもう一人じゃない。

 

 推力をWEPまで上げて迎え角は20°。2000mの途中で15°に下げてWEPから97%に下げる。エンジンを冷やす必要がある。

「速度……約マッハ2.5〜2.6か。追いつけないかもしれんな。そろそろ約束の高度だ、旋回開始。」

『了解。』

「下では観客が見ているから、気を引き締めて行こう。模擬空戦システム、起動。」

『模擬空戦システム、起動。』

 FCSが変更されてHUDが訓練用のちょっと古いものになる。

「さあ、始めよう。」

 レーダーには10km先に遠ざかる反応あり。

『FOX2!』

とりあえずロックオンしてR-73を投げる。勿論、本当にミサイルやフレアが発射される訳ではなく、システム上で再現されているだけではあるが一発撃っただけで機体が軽くなった気がする。

「目覚ましの一発ということかな?」

 難なく回避される。でも構わない。この機体は複葉機である。旋回戦に持ち込んでしまえばこっちのものであるから……とりあえず機体を軽くしておきたい。

「では、お返しと行こう、FOX1。」

「(レーダー照射を受けたことにより警報が鳴る)」

『多少惹きつけて、チャフを撒いて……急旋回!』

 ミサイルが見えた。チャフを撒いてなおこちらに向かってくる。

『まずっ……加速して逃げる!』

 フレアを撒いて推力を吹き上げて一気に引き離す。ミサイルにも航続距離があるからここまで逃げ続けられればもう安全。

「やるな!どこで覚えた!」

『これくらいできないと隊長についていけませんから!』

「だろうな!やわに育てた覚えはない!」

「だが……これはどうだ!」

「(急にミサイル警報が鳴る)」

『なっ……!』

 スロットルを心のなかで押し上げ……ようにももう押し上がっている!

『まずいまずいまずい!追いつかれる!』

 レーダーには私よりも早い反応が写っている。

 フレア、チャフ……違う、こうだ!

「スポイラーで失速機動に入ったか……恐れ入ったよ、レナ隊長。」

『えへへ。』

「でも、自分のケツには気を付けたほうが良い。」

『え。』

 レーダーにはまだ輝点が残っている。2つ。

「失速機動には弱点がある。攻撃回避に使うと……隙がデカい。」

『いたいっ!痛い痛い痛いっ!』

 35mm機関砲弾を左上翼に受けて機動性が悪くなる。機体のダメージが多少なりともフィードバックされてとても痛い!

「部下に言うことじゃあないが……君ならもっとやれるはずだ。シンクロ率を高めろ。」

『そんなこと言われましても……!』

 

「ほら、集中……集中。」

『だ、誰……?』

「私よ、レナ。ヒロセレナ。アイドルになったソラにしか居場所の無い貴女よ。」

『どういうこと……?』

「貴女が私で……回避!」

 バレルロールでミサイルを回避する。

「どうも。私が貴女なの。ほら、左手貸して。貴女と私、もっと強くなれるはず。空に居続けたいなら……。」

『そう、その調子……。』

『ほら、もう大丈夫。レナ、今よ。』

 

 

「誰がプロテクトを解除して実弾を使えと言った!それもレーザーなんて!殺す気か!命令違反!」

『あっ、えっ……だ、大丈夫ですか!隊長!』

 気がついたら装甲キャノピーが融解して操縦者が剥き出しになった中佐機が隣に居た。

「……操縦系統は生きてるな。いてて。口裂け女になってしまった。参ったな〜……生体パーツの予備は無いからずっとこのままかぁ。」

『隊長……。』

 終わった。

「私の負けだ。基地に帰還しよう。君が先行してくれ。また撃たれては今度は命も無いだろうから。」

 

『あの、中佐……。』

「整備士君、無理に機体を直さなくて良い。可能な範囲で検討してもらえると助かるよ。」

「りょ、了解しました!その……お身体の方は……医務室に行かれるべきかと……。」

「うむ?あー……気にしなくて良いよ。」

「あの、中佐……レナ少佐は?」

「ん?あー……(小声で何かを話している、聞き取れない)」

「えっ……了解しました。」

 

 ライカ中佐は話を聞いてくれなくなったどころか、予定を切り上げてすぐに帰ってしまった。隊のみんなは話を聞いてくれたけれど……目線は痛い。自業自得ではあるとはいえ……辛い。




ナイトレーベン
性能:第6世代ジェット戦闘機
コスト:高(部品の製造が困難)
欠点:高コスト,無整備で飛行できる航続時間が短い,高すぎる機動性に人間の肉体がついていかない,触ると精神汚染を起こす

Su-15TM2
性能:第4世代ジェット戦闘機程度
コスト:高(燃料消費が激しい)
欠点:高コスト,航続距離が短い,高すぎる機動性に人体がついていかない,下手に触ると精神的不調を起こす(特にブラックボックス付近)

Q:ナイトレーベンをどうやって運んだのか?
A:日本へ向かう時に乗ったVM-Tに乗せて低空を這って持ってきた。

Q:ライカ中佐は両性愛者なのか?
A:現時点(6ループ目)で言えるのはそれは違う、ということ。彼女は異性愛者で婿養子である弟以外の男を知らず、それ以外の男女に性的な興味及び恋愛感情は無い……模様。

Q:ではなぜあのコスプレ写真が?
A:コスプレ写真のキャラクターは少佐の弟の好み、らしい。(コスプレ写真云々の元ネタはス〇ールアビ〇〇ションさんです←ノーズアートの再現など)

Q:ライカ中佐が、自身が戦術人形になった事で憤慨していた理由は?
A:妹が電脳化されて封印されている事、本人が生と死にこだわり始めた事、そして彼女が無人兵器反対派(乗員が下車戦闘できない事を欠点と見なしている)の軍人である事を加味すると……おわかりになるかと。

Q:ナイトレーベンのレーザーは1本でしたよね……?
A:装甲キャノピーを貫通した1発がライカ中佐の片頬を融かし、破壊されたキャノピーの破片がもう片頬を切り裂いた……という設定です。
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