【地球防衛軍6】2人のライカ   作:イエローケーキ兵器設計局

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 きゅうえん……はいら……ない……じごうじ……。



14.異変と忘却

強い衝撃。一瞬、視界が真っ黒になった。

「隊長機が被弾!墜落します!」

『2から4番機……あとは……任せた……よ。』

『あぁ……わたしは……死ぬんだ……。』

 地上の街並みが近づいてくる。およそ30秒。射出座席は故障した。操縦系統は反応しない。私はひとりぼっちで死ぬ。自業自得だろう。私は恩師を殺しかけたのだから。

 

 私が死ぬ数時間前。私はまだ基地に居た。今はブリーフィングを聞いている。この基地から作戦に参加するのは4機。いつだって4機しか動かせないからである。

「諸君、緊急事態だ。フランスのパリ北部にてマザーシップが1時間前に降下、ドローンを投下している。君たちには地上で巨大生物の対処をしている陸軍レンジャー部隊を援護して欲しい。健闘を祈る。」

 私の横でひそひそ話をしているベルカ、ストレルカと相変わらずぼんやりとした表情で私を見てくるエノスを連れて空に上がる。どうせ死ぬ時は独りなのだから地上で恨まれても辛くはない、辛くは……辛い。

 

 ブリーフィングからおよそ30分後ぐらいか。本機に給油する為だけに位置を変えて来た空中給油機の背後について給油を受けながら周囲を警戒する。今の私はきっと背後から撃たれてもおかしくないだろう。

「1番機、聞きたいこと、が、あり、ます。」

『2番機、何か?』

「大丈夫、です、か?隊長。」

『……大丈夫。エノス、1番機に何かあったら……皆を頼むよ。』

 

 さらに15分後。マザーシップNo.6が上空を占領する街に到着、私達の様な制空戦闘機はドローンにミサイルとレーザー、機銃を叩き込む作業に入った。

「エノス!後ろ!後ろ!」

『ストレルカ!機首を下げて!狙われてる!』

 

 そして私が被弾したのは私が12,3機のタイプ2ドローンを撃墜したときだった。

「隊長!後ろ!避けて!」

 背後にドローンが3機。いつもなら避けられたけれど、その一瞬、全てが止まったように感じた。

『ぐぁっ……ぐぅっ……!』

 上下の左翼をもがれて、回復不可能な錐揉みに入る。昨日の左上翼を持っていかれたシミュレーション上の痛みよりも強い痛みで、より一層思考は回らず、射出座席も壊れていて脱出もできない。詰みだった。

「隊長!」

「そんな……!」

「エノス、ストレルカ、救助隊を呼んで!私がここを守る!」

「隊長、頑張って!諦めないで!」

『……2番機、貴女に権限を委任する。皆を連れて帰って。』

『救援は要らない。自業自得。』

 無線のスイッチを切ってあと15秒程度の余暇を楽しむことにした。昔読んだ小説こうあった。人間も、子供(キルドレ)も、死ぬときは何かに包まれていたいらしい。私にとっての棺桶であり揺り籠は飛行機だったというわけで。少佐に謝れなかったなと蟠りを抱えたまま死ぬのも悔しいが、それもまた人生である。核の炎は生き残れたけれどこれは……だめらしい。

 

 

 

 

 私は包まれていた。そして長い眠りについていた。今が何年なのかはわからない。

 

 そしてまた目を開けたとき。見覚えのある顔、私が壊してしまったあの顔が、壊れて開けられたコックピットの外からこちらを覗いていた。

「お目覚めかな?それとも……今産まれたところかな?レナ少佐。」

『……たい……ちょ……う……。』

 意識が保たない。手を伸ばすもとど……かない。

 

 大きな背中で目覚めた。隣を歩く女性……見覚えがある。確か……ストリンガーだ。彼女に武器を持たせているらしく、この背中の持ち主は何も持っていないように見える。

 

「中佐、彼女が目を覚ましました。」

「そうか……。」

『隊長……。』

「喋らなくて良い。君から聞きたいのは謝罪でも後悔でもない。」

『……。』

「……寂しかったか?」

『……はい。とても。疎外感を感じました。』

「そうか……わかった。」

 

 隊長の背中に乗って数分。原因はわからないが景色は相変わらず荒廃している。

「よろしいのですか?彼女は貴女を殺しかけたのに。」

「音声記録を読んだんだ。」

「こ、これは……。」

「どうやら私は悪魔を彼女に押し付けてしまったらしい。あの機体は破壊すべきだろう。」

「彼女が悪い訳では無い。まあ……対策があるなら話は簡単なんだが……。」

『対策なんてさせませんよ。』

 く、口が勝手に動く!

「……はぁ。ストリンガー、電磁擽り棒を頼む。」

「了解。」

「レナ、それは君の言葉かい?」

 いいえ!口が勝手に!

『ええ。中佐。私はまともです。』

「ほう?レナ、君はまた空に戻れる。空に執着し続けるが良いよ。」

(背負われたまま、脇腹に電磁擽り棒を押し当てられる)

「まだ通電させていないから安心してくれ、少佐。ストリンガー、やれ。」

『あがっ!あはははははは!や、やめて!こ、こわれちゃう!』

 な、なにもかんがえられない!くすぐったい!

「電圧を上げろ。」

「ですが!」

「私のことは構わん!やれ!」

『あは!やめてぇ!こわれる!(18歳未満には見せられないかもしれない発言)!』

「続けろ!ストリンガー!」

 笑い続けて笑い続けて気がついたら気を失っていたのか基地にたどり着いていた。不思議と肩が軽い気がする。げっ、失禁してる……どうしよう……。

『隊長……。』

「お目覚めかい?」

『私……どうなりますか……?』

「どうにもならんよ。君は君だしな。ほら、懐かしいだろう?」

 隊長に回収されて、やっと帰って来た基地。ただいま。

「こほん、自室に戻ったら下着を換えておけ……冷たくて敵わん……。」

『ひぃっ!ご、ごめんなさい!』

 

 

 自室に戻ったあと、すぐに呼び出されて101号室なる部屋に入った。なんとなく嫌な予感がする。なんというか……寒気がするというか……見られているような……。

 部屋には椅子と机があって、机の向こうには背を向けた女性、隊長が立っていた。振り向きざまに隊長は言った。

「どうぞ座って。」

『ありがとうございます……。他の皆は……?』

「作戦中でな。内容はまだ話せん。」

 それでもやはり気配がする……あっ!手が勝手に腰のホルスターに……!止めろ止めろ止めろ!

「そこまでだ、レナ。」

 手が止まる。どういう原理?

「眠れ眠れよい子よ……。」(Баю-баюшки-баю……)

 ふっ、と手の力が抜ける。すごい……。

「出てきて良いぞ。」

 隊長がその言葉を言い終わった直後に気がついた。周りを何かに囲まれている。まるでカメレオンの様に隠れている何か。

『誰か……いる……?わっ!』

 急に出現して私を囲む人達。武器を構えたエノスたちだった。

 

 姿を現した元部下たちに囲まれながら机越しに隊長と話す。もう武器は向けられていない。

「つまり……レナ少佐は覚えてないの?」

『うん……墜落してからは隊長に助けられるまで何も。』

「レナ少佐、私たちはまた負けたよ。空軍基地はプライマーに占領されて機材も人材も壊滅、陸軍基地に逃げ込んで……。」

「ライカ中佐の居る日本まで生存者を連れてなんとか落ち延びたけど……世界と歴史は変えられなかったわ。」

「収穫も無かったわけではないんだがね、エノス。」

「はい。レナ隊長、これを、どうぞ。」

 エノスから書類の束を渡される。

「プライマーの残骸から技術を一部盗み取れたんだ。」

「そしてそれを応用すると……。」

 書類を捲る。航空機用シールド……?

「もしかしたら兵器にシールドを張れるようになるかもしれない。」

『シールド……?』

 

 

 また自室に帰って壁のカレンダーを見る。今日は6月1日。前回のループが5月にあの埋まった格納庫に辿り着いたから……ん?ズレ……てる?

『気にしたら負けよ、少佐。』

『わかってるわよ。』

 きりが無い。それは自明である。

『私の帰る場所を守ってくれたら勝手に出ていくわ。』

『はいはい。』

 さっさともう一人の私さんにはご退去願いたい。たまに味方を撃ちそうになりますとか笑えないから。

『それにしても……隊長、良い人ね。びっくりしちゃった。』

『そりゃあね。』

 私の上司だもの、と言いかけて辞めた。

『ディジョンがこんな人だったなら……。』

『ディジョン……。』

 話だけは聞いたことがある。と言ってもゲームの登場人物の話だが。

『もしかしたら……貴女が"nemo"なの?』

『私じゃないと思うよ。』

『じゃあ……隊長?』

『あー……かもしれない。隊長が"nemo"なら納得できる……かも。』

 私の恩人がもし仮に無関係のプログラムなら良かったのに。

 

 規則的なノックが自室の前で鳴ったので大慌てで自室を片付けた。もう一人の私も黙る。

「レナ隊長、居ます、か?」

『居るよー。』

「入っても、良い、ですか?」

『どうぞー。』

「失礼、します。」

 思ってたよりも多くの足音。

「レナ隊長、中佐から作戦指示、が、出ました。」

『……ストレルカとベルカは何用?』

「疑ったことの謝罪……と言ったほうが良いのかな……。」

『疑われたっけ?』

「レナ隊長がライカ中佐を撃った瞬間を見たもの。」

『……それは私が悪いよ。声に勝てなかった。』

「ごめんなさい。悪意があると思ってた。」

『悪意があったなら罪悪感が無くて良かったけど……あの時の私に悪意は無かったから……。』

 もし仮にプログラムなら私の手で殺してしまっても罪悪感は湧かなかっただろうか?いや……湧いただろう。プログラムだとしても隊長は私の恩人だったのだから。

 

 

 紆余曲折(肉体言語を用いた話し合い等を含む)を経て、結果的に私達4人で仲直りした上で夕焼けの滑走路に出る。エノス達は自室に忘れ物を取りに行った。

 かつてこの基地にヘリコプターで来た時は無かった港湾設備(と運河網)が設置されていることに気がついた。後ろから隊長に声をかけられる。

「圧巻……とは行かないが、それでもそれなりのものだと自負しているよ。」

『一体どうやって?』

「うーん……これまたプライマーの技術の応用、としておこう。」

『またそうやって隠すんですから。』

「こればかりはしょうがない。喋るわけにはいかないんでね。」

「とりあえず車輌用のシールド展開機は完成したんだがね……航空機には実装が難しそうだよ。」

『そうですか……隊長、煙草吸われますか?』

 いつの間にか胸ポケットに入っていたタバコを差し出す。私は非喫煙者だから正直いらない。隊長も非喫煙者だったとは思うけど。

「そうだな……遠慮しておくべきなんだろうな。」

 パイロットは煙と雲に弱いしな、と寂しく笑う隊長の口は未だに裂けていた。

 

 

 夜の食堂。お腹をすかせた私を含めそれなりの人数が食事を摂っている。私の横には隊長が居て、その前にはエノスたちが並んで座っている。

 裂けた口で器用に油淋鶏を頬張る(?)隊長を見つめているとあることに気づいた。

「なんだ?」

『あっ、いやその……髪色を変えました……?』

「ん?」

「……鏡、あるか?気にしてなかったが言われてみると頭が軽い気がする。」

『どうぞ。』

「すまないね。ふむ……どうやら……少し寄れ。」

「一定周期のループ事に容姿が少しずつ変わるらしい。私が私でなくなるように…………レナ、君も銀髪だったか?」

『えっ……あっ、本当だ!』

「あっ、こら!食事中に叫ぶな!」

「2人とも静粛に。ここは食堂です。」

 

 基地の外。私と隊長は食堂の調理担当達に抱えて摘み出されてしまった。流石に食べ終わりを待ってくれはしたが。

「はぁ……。」

『すいません隊長。』

「いや、私の落ち度だよ。うん。」

 見るからにがっかりしている隊長を慰めながら宇宙を見上げる。もう黒かった。

「外は冷えるな。」

『はい……。』

「6月とは思えんな。これでも羽織るか?」

『いえ、そんな……。』

 着ていた上着を差し出される。受け取るわけには。

「少なくとも人間としての要素が多い君には必要だと思うがな。口裂け機械女の私と違って。」

『うぐっ……。』

「チクチク刺されたくなかったら着ると良い。部下に風邪を引かれては困るのでな。」

『では……失礼します。』

 ロシア軍時代の戦闘服を着込んだ隊長が羽織っていたトレンチコートを脱いで私に着せてくれた。暖かい。

「私にはちょっと暑すぎて。」

 そう言って身体を動かす隊長の首筋に傷跡が見えた。

『隊長、その傷跡は……。』

「ん?どこにある?」

『ちょっと失礼します……。』

 隊長の首筋の傷跡は深くはない。気づかなかった、ということは最近できたものなのだろうか?

「おいおい、くすぐったいからそろそろ止めてくれ。」

『す、すいません。』

 ストリンガーが近づいてきた。

「ちょっと失礼。」

 隊長に耳打ちをする戦術人形を尻目に、先に自室に戻ることを伝えて帰る。

「了解、後で返してくれよ。」

『はーい。』

 

 自室では一人。

『案外、狭いのね。』

 訂正、私とレナで2人だ。時間は……8時を回ったところ。何を考える気にもなれなかったので、ぼーっとすることにする。銃の整備をしてもよかったが、今の私は確実に自分か誰かの頭を撃ち抜いてしまうだろう。椅子に座ってテレビの電源を……いや、暇とはいえぼーっとするのは辞めて本でも読もう。えーと……。

『これとか、どう?』

『お宅だけじゃない?それ読むの。』

『えー……?』

『少なくとも、私は読まないよ。』

 宇宙系のSF小説はどうにも好きになれない。月まで砲弾で行く話ならまだしも……未来の人類が生み出した星系破壊兵器被害の根治のために英雄が身を投げる覚悟で戦いに挑むのはちょっと好きになれない。

『揺り籠にいつまでも閉じ籠るつもり?』

『急に何?』

 急に突拍子も無い事を言われると面食らってしまう。

『ちょっと気になって。』

 






「作戦を伝える。我が第343防空大隊は衛星打ち上げロケットの防衛作戦に参加する。作戦名は"オペレーション・オメガドーン"。宇宙から来た敵の深部を攻撃するために技術研が新兵器を作ったが、打ち上げ可能な場所が種子島宇宙センターしか残っていなかったらしい。かつては破壊され誰も顧みることがなかった場所だからこそコソコソ修理して使える、ということだろう。敵はおそらくロケットの発射を阻止する為に戦力を割くはずだ。我々は全力で迎え撃たねばならない。最適な健闘を期待する。あとはライカ大佐、頼んだぞ。」
「了解しました。情報をアップロード。」
 私は夢を見ている。ここは会議室ではない広い窓の無い場所で、スクリーンに地図が投影されている。基地司令が作戦を伝え、飛行隊長になった隊長に指揮を取らせるらしい。
「総員、生き残るぞ。」

「前線指揮システム、オンライン。」

 また今度は違う場所にいる。地球が見える。青かった。ここはロケットの中の司令室あたりだろうか。隣には男性が座っていた。私の口が勝手に動く。
『ナガセ、貴女の見た地球はこんな感じだったの?』
「レナ、引き返すなら今のうちだぞ?」
『引き返すなんてしないわ。さあ、行きましょう、博士。』
「揺り籠から旅立つとするか。」

 打ち上がる時の振動に襲われて、いつもの荒廃した土地の基地で目が覚めた。
「おはよう、レナ。緊急の作戦会議だよ。起きて。」
『たいちょぉ……。』
「隊長、お寝坊さん、です、か?」
「おはよう、エノス。君も会議室に集合だよ。溶鉄小隊の皆を起こして。」


──



 発想の源:かつて読んだ"ブラッカムの爆撃機"、farcry5、R-TYPE FINAL(F-Bエンドに繋がるタイトル、F-Aエンド)、スカイ・クロラ(殺さない限り死なない子供たちの話)、1984年(101号室の使い方としてはかなり間違っているが、今回は直さない予定)、SIREN2、Ace combat 04 等

 5W1Hを明確にする練習を今回から行います。御協力をどうかよろしくお願いします。
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