知らない天井……蛍光灯の光が眩しい。
「兄さん!彼女が目覚めました!」
色白の少女が視界に乗り出してくる。少しやかましい。それと同時に懐かしさを感じてもいる。私にも似たような仲間が居た。もう……居ないが。
「こんにちは。君の事について幾つか聞くけれど……構わないかい?」
これもまた、色白の今度は少年の発言。
『ええ。構わないわ。』
「一応伝えておくと、黙秘権が貴女にはあるし、喋らなかったからと言って不利益を被る心配はないつもりだから……まあ、答えてくれるとありがたい。構わない?」
『ええ。』
「では……貴官の氏名と所属は?」
『ライカ。階級は少佐。所属は……答えなくても構わない、と聞いたけれど答えた方が良さそうね。』
少女の表情が一瞬険しくなったように見えたから。
『地球防衛軍……私達はEDFと呼んでいるのだけれど……その様子だと存じ上げなさそうね。』
この兄妹は面白い。表情がころころ変わる。至って真面目に答えているだけなのに。
「え、えーと……あのEDF……?」
『そのEDF以外にあるなら逆に聞きたいわね。』
「まずい……まずいぞ……アトラス……。」
「兄さん……。」
『……殺されるのかしらね。』
「いえいえ、殺したりなんか……。でも、そんなことあり得るの……?」
「えーとその……大変申し訳ないのだけれど……僕達の共通認識として、EDFは単なるビデオゲームだったんだ。貴女のような兵士が出てきて、地球の為に敵に立ち向かって……。」
「だからその……ビデオゲームの世界から人が出てくるなんて思わなかったんだ。」
『なるほど…………教えてくれる?そのビデオゲームの方のEDFはプライマーに勝った?』
「う、うん……オペレーション・オメガで生存者のほとんどが死んじゃったけれど……。」
『そう……やっぱり正史なのね。』
「その後を描いた続編があって……。」
『地球は死の星になった?』
「ループを繰り返して敵もEDFも強くなって最終的に被害を抑えてプライマーを消滅させたんだ。」
『そう……。』
『プロフェッサー君、ストーム1……やり遂げたのね。』
「プロフェッサー……ストーム1……!」
「貴女が……!?兄さんやっぱり……!とりあえずグリフィンに連絡する……!?」
「そうしよう!急げ!」
『何がどうなってる……の?』
走ってどこかへ行く2人。周りを見るとなるほど、ここは病室や医務室ではない。兵器の格納庫だ。
『あっ……さっきの……。』
灰色の戦車。そして……。
『あった……ライジン……。』
「そこで何をしている!」
背後から声、3人以上居たのか。素直に両手を挙げておこう。
『……まだ何も。』
「ゆっくりとこちらを向け……そうだ、ゆっくり……手は下ろすな!」
振り返ってみれば知らない顔。確かに3人以上居るようだ。
『お名前は?』
首を傾げてきょとんと尋ねる。まだ通用する歳のつもりだ。
「お、俺か?俺は……おっと!いいか?良い子ちゃんだからその武器は降ろせ!な?」
まんまと引っかかるもんだなぁ。ライジンを取って構えてしまえばもうこっちのもの。
『貴女のお名前は?』
「エ、エクスキューショナーだ!頼む!撃たないでくれ!」
『ここはどこ?』
「2062年のソ連。ライカ少佐、エクゼ姉さんを解放してあげて。」
さっきの兄妹が戻ってきたようだ。
「ライカ少佐、貴女の処遇が決まったわ。貴女はPMC"グリフィン&クルーガー"の指揮官として配属されるの。ここから……。」
一日休んだあと、私はPMCの本部に向かう事になった。この兄妹たちはグリフィン&クルーガーとは本来、敵対しているPMCらしく途中までは戦車に乗せてくれたけれど、ヴォルガ川からは一人で行くように言われてしまった。
『お世話になりました。』
「お達者で。」
「うぅ……交戦したくねぇ……。」
「いつかまたお会いできたら……お会いしましょう!」
数日掛けて飛行と着地を繰り返し続けて、日が沈んだら瓦礫に隠れて休んで……途中、ゾンビのような何かが居たのでスパークバインで感電させて頭部を潰して切り抜けて……ようやく辿り着いた。
『……こんにちは、小さな門番さん。元地球防衛軍所属のライカ少佐と申します。』
「確認するわ、待っていて頂戴!あと、小さいは余計ね!」
これは失敬。可愛い門番さん、よろしくね。
孤独、不安、殺意。
空も地も纏まることはない。
人々が纏まらないのだから。