【地球防衛軍6】2人のライカ   作:イエローケーキ兵器設計局

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『対空砲は落ちてくる巨大生物ではなくテレポーションシップを攻撃!それ以外は地上を叩く!』


22.狼の巣

 お姉ちゃんとレナちゃん達がフィドラーやファイター等に乗って太平洋経由で祖国に向かっている間も私達は暇ではない。ついにこの千歳第234空軍基地がプライマーにバレたみたいで見送った翌日から激しい波状攻撃に見舞われている。侵略性外来生物αの侵攻……何かがおかしい。茶色だっただろうか?こんなに大きかっただろうか?

 

『エノスさん!走って!ライカさん!こっちこっち!』

 愛用のMG13 LMGが弾切れを起こしたエノスさんにはG6ケブラー対空戦車に乗ってもらい、制圧射撃をしてもらう。ライカさんには"G&M-24S"セミオートライフルの代わりに"スラッガーNN2"アサルトライフルを渡した。

『ストレルカさん、ストリンガーさん……言わなくても大丈夫そう。フェリセットさ……貴女は寝ちゃ駄目。』

「お姉さん……ぐぅ……。」

『起きなさい!』

「ううぅ……枕……。」

『敵を追い返したら返してあげるから!』

「ふぁ〜い。」

『戦力が足らない……!このままでは押し切られる……!』

「あれ……前が……見えな……。」

 急にがくっと頭が傾くライカさん。まだ、まだ貴女は死んではいけない!

「…………エアレイダー、目標を指示。居ないの?アンナ、現場から誘導して。」

 え?ライカさん?急にどうしたんです?

「アンナ、目標指示を。」

 明らかに本人ではない口調で命令を出すライカさん。

『は、はい!』

 そして流される私。

 エアレイダー用のレーザー指示機の予備がたまたま有ったので試しに照射してみる。

「目標、捕捉。」

 ありゃ。

「照射。」

 レーザーが上空から侵略性外来生物αの群れを一掃してしまった。もっとも、テレポーションシップからの増援はまだ来ているから一息つく間しかない。

「冷却に移る。ライカを返すよ、アンナ。」

『え、あっ……。』

「……ゲホッゲホッ!な、なにが……。」

『ライカさん、説明は後でします!エノスさんの血路を開いてください!』

「りょ、了解しま……ケホッ!」

「アンナ隊長、こちらマルフーシャ。この戦車、動くよ。タンクもポンプも異常無いし。」

『動く!?よしよしよし!目標、基地を攻撃する巨大生物α!』

「了解。攻撃開始。」

 格納庫に眠っていたB651C、重戦車タイタンC型が動かせたらしい。その為に人員を割いて良かった。

『戦車が動いた!時間稼ぎにはなる!残存戦力は集合!』

 まだ戦えるレンジャー数名とウイングダイバー数名、そしてマルフーシャと整備を行っていたストレルカを除いた戦術人形達が集まってくる。侵略性外来生物の酸に耐えられるだけの保護液をC型が流せるのは最大60秒。歩兵よりはずっと頑丈だけれどそう長持ちするものではない。タイタンの車内タンクを持ってしてもそれが限界である。

『重戦車が前線を拓くから、ウイングダイバー含め、対空部隊はテレポーションシップ(円盤)を攻撃、レンジャーは重戦車を援護!』

 全員が、生き残ることに必死。そのうえでどうせ死ぬのなら一矢報いよう。

『突撃ー!』

「うぉぉぉぉ!」

「うわぁぁぁ!」

「(クラクション)」

 

 

 

 およそ30分後。私たちは物量の前に破れた。エノスさんの乗っていたG6ケブラーは砲塔が車体からバイバイしている。タイタンC型は主砲も副砲も壊れて装甲材は一部溶かされていた。脱出ハッチから火の手が上がっているからきっと中のマルフーシャさんとストレルカさんも……。遠くに配置したストリンガーさんとフェリセットさんは……生き残っただろうか。それとも殲滅されてしまっただろうか。ライカさんは……駄目だ。みんなシグナルロスト。レンジャー達も、ウイングダイバー達もみんな……。

『……ごめん、お姉ちゃん。部隊の……みんなを、みんなを……守れなかった……。』

 撃破された重戦車に迫る侵略性外来生物α。複数匹が死屍累々の中をギーギー言いながら物色している。

『ゴフッ……!』

 さっき被った酸で吸排気系が焼けたのだろう。手が震える。これは伝達系も一部やられたな。手に何かが当たる感触がある。

『バイナリー……弾。』

 レンジャー用の化学手榴弾だった。物言わぬ屍になる前の彼らが落としたのだろう。

『お姉ちゃん……生きて……よね、約束……だよ。』

 震える手でピンを抜いて、重戦車の残骸、みんなの墓標に貼り付けた。きっと私みたいな化学戦用に調整された戦術人形でも苦しむことになるだろう。それ以外はもっと苦しむ羽目になるだろうけれど……。

『罠に掛かった狼は……脚を噛みちぎって……生き延びる。』

 

 

 

 走馬灯が回る。緑色の濃霧の中でもしっかりと見える。

「水で固めたジオラマみたいな世界、時間が経てば風に崩されてしまう。」

『何度組み立てて何度壊したら気付くだろう……。』

 プライマーの侵攻よりもずっと前、2人で日本のカラオケに行ってアニメソングを歌ったのを覚えている。曲名は何だっただろうか……。

 あぁ……何かに引き摺られてていく。私を食べても美味しくないのに……。

「後退!後退!後退!」

 連続した銃声。生き残りがいたんだ……。

『早く……逃げて……。』

「エノス!」

「わかった。」

 そう、それで良い……ん?

『あ……れ……?』

 誰かに背負われて走っている。死んだはずの部隊の皆が後ろに銃口を向けて、私の背後を撃っている。

「アンナ、さん、皆、無事。」

『シグナルが途絶……ゲホッ!……ごめん……ね。』

「ケチャップ……。」

『重い……でしょ……。置いていって……良い、よ。』

「マルフーシャが言ってた。誰も見捨てない、って。」

『そっか……。』

 周りをもう一度見ればレンジャー達もウイングダイバー達もまだ一人も欠けずに生きていた。所々、アーマーが溶けていたり武器を紛失していたりしたけれど、建物の半分近くは崩壊していて、滑走路は穴だらけ、格納庫は瓦礫の山……とまあ、再建作業が必要だけれど、まだ生きている。

 

 

 




飛行中だったろうに、部下の意識を乗っ取るような器用な事をするということは……もしかしたら姉の躁鬱病が再発したのかもしれない。確かに昨日の朝から様子がおかしかった。改葬がどうのとか言っていたし、アンドレイ(義理の兄)が呼んでいるとか……でも、お義兄ちゃんはお姉ちゃんが……。


アンナ
:ライカ中佐の実妹。姉やレナ、溶鉄小隊等と同じく戦術人形。レナが姪であることは知っていたが、不安定な姉の精神の均衡を崩さない為に黙っていた。姉が記憶を取り戻してからは隠さなくなったが、代わりに義兄が行方不明になってから発症した姉の、躁鬱病の再発を警戒している。姉によって吸排気系等を改造されており、化学戦向けに調整されている……が、ガスグレネードであるバイナリー弾と回復用ナノマシンガスであるエリアルリバーサーを誤認するほどには認知判断能力が低下していた模様。

ライカ中佐
:アンナの実姉。レナが自身の娘であることを記憶のプロテクトを解除して知った。躁鬱病を罹患しているが、服薬治療はしていない。

エリアルリバーサー
:レンジャー用の特殊なグレネード。触れたものを回復させる特殊なナノマシンの霧を展開する。人道的な観点から"無差別に"回復する為、敵すらも回復してしまうのが難点。

ライカ
:ライカ中佐にハッキングされたり、死んでしまったり(後に蘇生)と苦労の絶えない"元"監査官。タイタンC型の横で死んでいた。スラッガーアサルトライフルの反動に最初は翻弄されるも段々と慣れていき22話の終わりには使いこなせるようになった。

エノス
:ぼんやり系の何を考えているのかわからない、感情も自我も薄い"元"軽機関銃兵。かつてはライカ中佐の副官を務めていた。職務態度は良好で、妹のように可愛がられていた。一度はG6ケブラーの車内で機能停止(≒ほぼ人間の言う死亡)したが、アンナがバイナリー弾と間違えてエリアルリバーサーを投げた為、風に流されたナノマシンが届き蘇生した。

マルフーシャ
:溶鉄のマルフーシャの主人公にして、"元"パン屋を夢見た少女。かつてはObject195の車長兼操縦手兼砲手だった。タイタンC型の車内で焼死するも、先に蘇生したEDF兵士達によって救出され今は半壊したEDFの兵舎でパンを焼いている。

ストレルカ
:タイタンC型の車内で焼死していたが、救出されて残った戦車にBC防御の為の改造を施している"元"化学者。ある友人に渡されたメモ帳を肌見放さず持っており、ライカ中佐と、ある整備兵にしか見せたことが無い。

フェリセット
:生きていたが、通信機が壊れていた。元狙撃兵。ライカ中佐が居なくなってからまた眠れなくなった。

ストリンガー
:ライカ中佐の娘(的存在)。ストリンガーは開発中の旧名であり、正式な名称はファングM98。後にスナイパー・カノン系列に発展することが約束されているが……過去改変されてしまえばすべては水の泡。
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