【地球防衛軍6】2人のライカ   作:イエローケーキ兵器設計局

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 気がついたら翌朝だったらしい。昨日の朝のように……。


3.戦車隊、前進

「おはよう、ございます……少佐。」

『おはよう、エノス。』

 またソファーで寝落ちした。今日は掛けた覚えのない毛布が掛けられている。

『ありがとう。』

「……いえ。眠れ、ました、か?」

『うん、とても。』

「良かった。」

『今日のお仕事は……。』

「新規人員、の受け入れ、と、輸送阻止任務、です。」

『なるほど。わかったわ。ご飯は食べた?』

「これから、です。」

『……久しぶりに作るけれど、食べる?』

 

 自分の好き嫌いはよくわかっているけれど、人の好き嫌いは正直……よくわからない。私は基本的に何だって食べる。この普通の味のMREだって私一人なら何も弄らなかっただろう。

 

「おいしい……。」

『それは良かった。』

「マルフーシャが、食べたら、驚く……多分。」

『マルフーシャ……ちゃん、ね。』

「パン屋になりたかったって、言って、ました。」

『パン屋か……。』

 某ターン制ストラテジーゲームの主人公(というよりヒロイン)を思い出してしまったがきっと関係無い。

『また出会えると良いわね。』

 

「ごちそうさまでした。」

『お口に召したかしら?』

「とても、おいしかった。」

『それは良かった。』

 

 そろそろ時間だろう。事務室の窓から外を見るとこちらに向かってくる車両が見える。出迎えねば。

『行くよ、エノス。』

「はい。」

 覆いを被せた戦車を載せたグリフィン&クルーガー印の戦車運搬車(MAZ-537E……だっけ?)が基地の物資集積地に到着。機関銃を持った白い髪の女性と、ライフルを持った黒い髪の女性が戦車運搬車から降りてくる。2人はIFFの反応からして今日来る予定の人形らしい。

「おはようございましゅ、指揮官様!MG42と申しましゅ!」

「パンツァービュクセ。今日からあなたの部下になるわ。」

『よろしくMG42、PzB39。こちらは私の部下……で合ってるよね?』

「はい。少佐の副官です。」

『失敬、副官のエノス。』

「よろしくお願い、します。」

『彼女はあまり発言が得意でなくてね、ゆっくり待ってあげて欲しい。』

「なるほど……よろしくお願いしましゅね!」

「別に待つから良いけれど、私の服を汚さないでね。この服は私の命なの。」

「了解、です。」

『それで……その荷台は?』

「本部からのお届け物でしゅ。」

 MG42とPzB39が荷台の覆いを協力して取ると……。

『Object120か。』

「対戦車自走砲……だったかしら。」

 125mm滑腔砲の成功に伴い、主力戦車に重戦車並みの攻撃力が付与できるようになった結果、不要となってしまった試作対戦車自走砲。

「無人で運用できるように改造されているみたいでしゅ。」

『ふーん……ん?無人というと、誰が動かすの?』

「待ってました!」

「うわ!びっくりした!急に何よ!」

 おお……最近の自走砲は喋るのね……それにしてもこの声、聞いたことがあるような……。

『アトラス……?』

 鉄血とは違う無人車両の癖に明らかに動揺している。でなければあんなに細かく砲塔が動く訳が無い。

「ちちち、違いますよ〜、やだな〜……人違いじゃないですか〜?」

 全員が無人戦車を見つめる。

『まあ、良いわ。それで、作戦開始は何時だったかしら。』

「2時間後、です。」

『了解、総員……解散。』

 30分前には集合してもらいましょう。それまでは解散。

 

 周囲の人形たちは各々の部屋に散らばっていった。エノスには案内をしてもらっている。アトラスには戦車運搬車を自走して降りてもらった。

『さて、アトラス……一体どういうことかしら?』

「仕事で来たの!正式な依頼よ!」

『ふむ……車内はどうなってる?』

「うわっ!ちょっと!」

 無理矢理、ハッチを開けてみてみれば……なるほど、見える範囲にはあの色白の少女以外、誰も居ない。

『まあ、良いわ。協力してくれるなら文句は無いし。』

 

 

『エノス、2人はどんな感じ?』

「2人とも、面白い、です。」

『個性が?』

「はい。」

『……なるほど。面白い、か。』

「優しくて、もし姉や妹が居たら、こうだった、のかも。……ん……私の頭に、何か、ついていまし、たか?」

『え?あっ、ごめんなさい。』

 反射的に彼女の頭を撫でていた。自分に生きた妹や娘が居たならこうだったのかもしれない。

 

 

『作戦内容について説明する。エノス、地図を。』

 机上に地図を広げ、駒を置いていく。

『ターゲットは正規軍の輸送部隊(車列を組んでいるのでコンボイ)。昨日知ったのだけれど、あの緑色の連中は正規軍というのね。』

 遥かなる祖国。もう存在しない祖国。帰りたくても帰れない祖国……。

『護衛として鹵獲された鉄血人形等が張り付いているけれど……まあ、鹵獲してしまっても破壊してしまっても構わない。』

「この道路を走行する事が予想されていますが、異常に気がつくと離脱してしまうかもしれません。」

 流暢に発言するところを初めて見たかもしれない。

「ですので、奇襲で殲滅を、提案、します。」

 一瞬だったなぁ。

「質問でしゅ。」

『何だろうか、MG42。』

「戦車が来たらどうするのでしゅか?」

「ちょっと!私の仕事を疑うの!?」

『いや、それもごもっともかも。』

「指揮官まで!」

『7.92×94mmのAPCR(硬芯徹甲弾)で今の時代の戦車を撃ち抜くのは少し……難しいかも。』

「くっ……。」

APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)でも出てくれば話は別かもしれないけれど……そこで、152mmが活きる、という訳。』

 色白の鉄血人形を見る。

「え?ボク?」

『貴女以外に誰が居ると思う?』

 4人共、一点を凝視していた。穴が空きそうなほどには。

「戦車砲なんて食らったら爆散しちゃうよ!」

『でしょうね。端から貴女の防御力に期待はしていないわ。』

「うーん……。」

『Object120は機動性と射撃能力で陣地転換をしながら攻撃する……といったところかな。私達は戦車以外の非装甲、軽装甲目標の処理、で。』

『他に質問は?』

「もし、民間人だったら?鉄血じゃなくて。」

『民間人への攻撃は許可されていない。つまり……撃つな。』

「わかったわ。」

 

 私達はObject120の車体に座って写真を撮ることにした。別に誰かが言い出したわけではなかったものの、このご時世、誰かが欠けるリスクは隣り合わせであることから写真として残しておくべき、と無意識下で決まった。

「写真はボクが撮るから、皆、車体に座って!」

『エノス、私の隣に。MG42、砲身の左へ。PzB39、そう、そこ。』

「撮りまーす!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 車体に揺られること数十分〜数時間。予想ルートに到着。Object120を段差に隠し、降車して配置につく。

『マシンガンは随伴歩兵をお願い。』

「了解でしゅ!」

「了解、です。」

『PzB39、私と来て。』

「はいはい、了解……うわっ……ぬかるんでる……。」

『しょうがないわね。ほら、行くよ。』

「うわ、うわわわ!飛んでる!」

 フライトユニットの出力を普段より上げてジタバタする人形と合わせて2人分の推力を確保、ぬかるみの向こうまで運ぶ。

『全くもう。ほら、来るよ。』

 トラックがコンボイを組んでこちらに走ってくる。乗っているのは……。

「鉄血人形……ね。」

「本車は少佐の攻撃指示を待ちます。」

『戦車が見える様子はない……アトラス!HEATで先頭をお願い!』

「アトラス?」

「アトラス、了解。攻撃開始。」

 Object120が段差から砲塔のある車体後部を出し、砲撃を開始。

「トラック1両撃破、退避します。」

撃ったらすぐに引っ込ませて装填完了を待つ。その間に……。

『残りのトラックから随伴歩兵が降りてくる!マシンガン!出番!』

「みんな逃げちゃだめでしゅよ!」

「気を付けて、狙います。」

「……圧倒的ね。」

『まだ仕事がありそう、狙撃兵が居る。』

 運良く車体下部に逃げられた狙撃兵がこちらを探しているらしい。指揮官狙い、か。

「見えた。私からは逃げられないわよ。」

 ものの数分で殲滅完了。うーん、弾薬費が怖い。……ん?このエンジン音は……戦車!

『総員!隠れて!アトラスはAPFSDSで指示を待って!』

 全員を隠れさせる。遅れてやってきた戦車は……先日、交戦した自走式レールガン。ふむ。PzB39と合わせればなんとかなりそう。

『PzB39、付いてきて。』

「正気?指揮官?」

『良いから。』

 側面に回り込む。相手も周囲警戒に熱心になっていて、機動性は落ちているようだし、今のうちに。

『さて……効くかしら……。』

「指揮官、それ、何?」

『うーん……遠距離用の電撃銃、と言ったら伝わるかしら?』

 ライジンの正式名称はここでは言わない。言ったってしょうがないし。

『タイミングを合わせて頂戴。あと15秒くらい掛かりそうだけれど。』

 フライトコア、1回目の緊急チャージ。旧式のコアはどうしてももたつくのが難点。

『準備は良い?私が撃ったらすぐに砲身を撃ち抜いて。アトラス、指示したらレーザーペイントするから車体をお願い。』

「了解。」

『撃つよ〜3,2,1……発射。』

 電撃が砲塔に命中。すかさず7.92mmが砲身を撃ち抜く。152mm徹甲弾が撃ち込まれ、砲塔が打ち上がる。

『無力化を確認。作戦終了……?』

 

 増援はなかった。帰還。アトラスは戦車運搬車に載せて帰ってもらった。

 

『どっと疲れたわ……請求書は見たくないわね……。』

「……諦めて、ください。」

『まあ、そうね……そうよね。』

 研究者だった頃も、その昔、パイロットだった頃も書類に追われてまともに動けなかった……そういう記憶がある。




『どれどれ…………見なかった事に。』
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