【地球防衛軍6】2人のライカ   作:イエローケーキ兵器設計局

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作者より
溶鉄のマルフーシャ要素がようやく色濃くでてきましたね
(アシュア要素はもう少しだけお待ち下さい)


4.ストリンガー大口径狙撃銃

 

 

「おはよう、ございます。食べるものを、ご用意しました。」

 毎度のごとく、またまたまた(?)ソファーで寝落ちしたらしい私をエノスが起こしに来る。あぁ……書類は汚れてないな、よし。

『ありがとう……顔に付いているのはいちごジャム?』

「おはようございましゅ、指揮官様。」

『あれ……?なんでMG42が?』

「皆で朝ご飯を準備したんでしゅ!まあ……ちょっと失敗しちゃったのでしゅが……。」

 言われてみれば少し焦げ臭い匂いが。

『……基地を燃やしたとかではない?』

「そ、それはないでしゅ!ね、エノス!」

「……。」

 ぼんやりとした顔に僅かな後悔の色。

『二人共、ありがとう。』

 失敗した娘を慰める母、みたいな構図になってしまった。

『PzB39は?』

「対処、してましゅ……。」

『ほう?彼女を置いて来たの?』

「……ごめん、なさい。」

「本当は指揮官様を起こしてくるように頼まれたんでしゅ……。」

『それを早く言いなさい、もう。報連相の徹底は軍隊の前提条件よ。』

 

 軽く怒った上で食堂に駆け込む。PzB39が何食わぬ顔……というより、何事も無かったかのように調理室に居た。

「あら、指揮官。おはよう。」

『2人から対処している、と聞いたのだけれど。』

「それなら、もう終わったわよ。それより……料理を教えてくれない?私たち3人じゃ上手く作れなくて。」

『ふぅ……何が作りたい?』

 

 食後。指令が下る。今日の任務は偵察、そして……機甲戦力の受け入れ。もう嫌な予感しかしない。

『全員、装備は持った?持ったようね。よし、行きましょう。』

 

 前線偵察用に装甲兵員輸送車(APC)を借りた。というのも……。

「先日は愚妹が大変お世話になりました。ほら、アトラス、謝りなさい。」

「ごめんなさい……。」

『いえいえ、そんな。顔を上げてください。こちらこそ助かりました。』

 自律戦車AI"アトラス(Atlas)"が兄妹喧嘩の末に脱走、当基地に運ばれてくる予定であった正規の自律戦車の代わりに戦車運搬車に載ってやって来た、と言うのが昨日の出来事の顛末であった……とアトラスの兄"オケアノス(Oceanus)"(どちらも命名者が存在するらしい)が言う。謝礼として弾薬費の肩代わりと機甲戦力の融通を受けた。グリフィンも把握していて許可を得ているのでワクワクしながら受領できる……のだけれど、肝心の到着は夕方。今朝〜昼の前線偵察には間に合わない……だから、APCで付近まで近づき、接近したら下車して偵察しよう、と借りて飛ばしてきた。

 

 廃墟になったビル群を歩く。きっと、私の故郷もこんな感じだろうな。

『伏せ……隠れろ!』

 エノスを引っ掴んで瓦礫に飛び込む。自分が居たところに青白い曳光弾が突き刺さった。

『総員!隠れて動くな!』

「指揮官!何が起きてるの!」

『まさか……自分以外にも流れ着いた兵士が居たとは……。』

『遮蔽物を有効に使え!一列に並ぶな!まとめて撃ち抜かれるぞ!』

 わざと身体をちら見せして次弾が飛んでくるのを待ち、狙撃地点からして利用可能な遮蔽物までの間に煙幕弾を投げて4人で逃げ込む。

『ストリンガー……あの状況でレンジャーが生き残っていたのか……。』

 ストリンガー大口径狙撃銃は私の大好きなレンジャーの武器。ウイングダイバーの武器を作っていなかったらきっとこれを抱えていただろう。

『Go!Go!Go!』

 もし話の通じない人であったり、敵対勢力であるなら容赦なく撃つだろう。だけれど、今……撃ってきている兵士が敵である保障は無い。味方である保証も無いが。

「やっと着いた……!」

「ターゲットは6階にいましゅ!」

「どう、します、か?」

『私のあとに着いてきて。もし私がやられたら……APCに乗って生き残り全員で逃げて。』

 

 ガラスドアはとっくの昔に割れたらしく蹴破るものも無くビルに入れた。

「……この動作音……指揮官、この先に罠があるわ。」

『くっ……。』

『無理に突破するわけには行かない。迂回路を探そう。』

 5分後。ビルの階段を登り、ようやく辿り着いた。ドアに小型のブリーチングチャージを貼り付ける。

『3,2,1……突入!』

 発破。屋内では取り回し最悪のライジン試作型を無理矢理振り回す。PzB39もどうやら同類でMG42は1.1メートルを振り回し、エノスは賢く私の渡した拳銃を使っている。

 

「……!ライカ少佐?どうしてここに?」

『……?』

「……私を、忘れましたか?少佐、思い出してください。」

 色白の少女に抱きつかれて懇願されるも全く見当がつかない。私の知っている人にはいなかったと思うが……強いて言うなら……カスミという同僚に似ている……気がする?でも、こんなに色白ではなかったし、ほぼ同輩で少女といった歳でもなかったよな……。

「ストリンガーですよ!ストリンガー大口径狙撃銃!」

 ストリンガー……ファング大口径狙撃銃の開発時の名称だよな…………まさか。

『貴女……まさか……ストリンガーなの?』

「思い出してくれましたか、少佐。」

 エノス達が警戒している。それもそのはず、さっきまで撃ってきていたのはこの少女なのだから……ただまあ……私も銃の名前をした人間は知らない。だから、彼女は人間ではなくて人形なのだろう。

「……なら、なぜ少佐を撃つ、の?」

「……話せば長くなるのですが。」

 この世界には様々なものが漂着している。私含めてEDF兵士達も流れ着いているが、ビークルや武器の一部は擬人化された人形となって人格を持った状態で現れるという。そして目の前にいるストリンガーもその一人。ここまではこの世界の非常識。そして……。

「時々、このビルの前をゾンビが通るんです。この前なんてウイングダイバーのゾンビが……。」

 この世界にはゾンビが居る。指揮官として赴任する前に軽く聞かされた。E.L.I.D.と呼ばれるゾンビのような生命体が居て、彼らは崩壊液なる物質に曝露された者の成れの果てであるという。

「APCに乗るE.L.I.D.なんて初耳だけどね。」

 それは貴女なりの皮肉なのだろうか、PzB39。

「それは……つい先日だったんです、浮上式のAFVに乗った人達がゾンビと、ゾンビに抵抗する少女達を大通りで纏めて殺し……いえ、掃除……そうです、掃除しながら通っていきました。」

『要するに……私達を敵性勢力かもと認識したわけ、ね?』

 それっきり黙ってしまった。

 

 APCに視線を戻すと周囲を人々が囲んでいた。もっとも、群衆とかではなく資料で見たゾンビのような存在だったけれど。

「なるほど、これは危険ね。撃ちたくなるのもわかる。」

『ストリンガー、引き付けるから撃って頂戴。私じゃないよ、わかるよね?エノス、MG42、彼女の射線の外から撃って。PzB39はストリンガーとターゲットを相談してね。』

「ちょっと!指揮官!」

 面倒な時はさっさとビルから飛び降りるに限る。身投げするように飛び降りて足から着地。ゾンビ達を引き付けておく。

『はいはーい、こっち!こっちですよー!』

 ヘイトを買って、

「逃げちゃだめでしゅよ〜!」

「普通の弾でも、急所に当たれば、痛いよ。」

 掃射してもらい、

「指揮官様!マシンガンが効かない個体が!」

「ええい!当たれ!」

「発射。」

 硬い敵は貫き通す。

 

 そうやって私達は基地に帰った。

 

 執務室に女性兵士の声が2種類。私と……。

「それで……指揮官、これは?」

 PzB39が書類を差して私を見る。ごめん、それは私も知らない。

『……さ、さぁ……?』

「そうよね……受け取る側だものね…………もしかして骨董品市でも開くのかしら。」

『さぁ……わからない。』

 機甲戦力の受け入れが夕方にあると聞いていたし、歩兵しかいない部隊に小銃弾程度でも耐えてくれる存在は非常にありがたいと思っていたけれど……どうしたもんだか。

「コレクターに売ってしまって新しくIFVでも買った方がより良いものを調達できそうね。」

『それができたら苦労しないよ……。』

 誰が試作機ばかり送りつけてくるのだろうか。

『えーと……Object195(通称:T-95)が1両、Object292(152mm砲搭載型T-80)が1両……本当に売っ払ってBMPTとか買った方が良さそう。本社に電話するか……。』

 勤務時間からしてまだ誰か残っているはず……。

『……あ、やっと出た。』

 が、取り合ってくれない。どうやら電話の相手は戦車を送ってくる張本人。現場は楽しんでも喜んでもいません。

『何回伝えたらわかるんですか。乗る人が居ないのに試作車ばかり送られても困ります。え?あれが今から送れる最大戦力ですって?あり得ない……あっ、ちょっと。逃げないで……切れた。はぁ……。』

「……入室、よろしいで、しょう、か?」

『え?あ、どうぞ。』

 声の主はエノス。これで3人目。そろそろ喧しくなるか……?

「失礼、します……。」

 事務机を挟んで応接用の机があってその両脇に3人がけソファーが一対ある。私は事務用の椅子に座っていて、PzB39は机を挟んで立っているが……エノスは右側のソファーにゆっくり座るなり舟を漕ぎ始めた。何しに来たのやら。

「……寝た、みたい?」

『おそらく、ね。』

 応接間にも毛布は多少あって、大抵は書類を読みながら寝落ちした私の背中に誰かが掛けてくれている。

『23歳、か。若いって良いなぁ。』

「あら、そういう指揮官はどうなの?」

『……30からは数えてない。』

「指揮官、ごめん。」

『良いのよ。』

 寝かせて毛布を掛ける。

「すぅ…………おねぇちゃん……。」

「おねぇちゃん、だって。」

『……彼女のファイルだと姉が居たなんて記録はなかったんだがなぁ……。』

「ライカおねぇちゃん……。」

「……指揮官。」

『……はぁ、彼女の仲間に同姓同名の別人が居ることがわかっている。おそらく彼女のことだろう。』

「指揮官、逃げるの?」

『まだ、わからないじゃない。それに……私は天涯孤独でなくちゃいけない。』

「……そう。勝手についていくわ。全員でね。」

『落伍したら置いていくけど?』

「素直じゃないのね、指揮官。」

『相棒を殺した日からずっといつも一人だったもので。』

 

 

 シャワールーム。それは一人になれる場所。戦闘車両の引き渡しまでまだ時間があるからこそ来れた。ゆっくり考えてみれば物資輸送を当日にキャンセルできるわけがない。

『おねぇちゃん……か。』

 私に妹は居ない。戦争で死んだ。姉も居ない。弟は……生死不明。少なくとも軍隊に入った後で顔を合わせたことはない。

「指揮官様、お悩み事でしゅか?」

『うわっ!びっくりした!MG42!居たなら言ってよ!』

 驚いて石鹸とスポンジを落としてしまった。

「ごめんなしゃい。それよりも、指揮官様。」

『なに?』

「エノスは指揮官様を自分の姉のように思って接しているようでしゅよ。」

『……そう。』

「この間だって、相談されまして。あたしにもお姉様がいましゅから。」

『MG34か……。ならエノス(MG13を持ってる)はさらに上の姉かもね。』

「うっ……確かにそうでしゅね……。」

 はぁ……姉、か。

『〜♪』

 血の繋がらない孤児だった弟、血の繋がった孤児じゃない妹、両親。

 皆、もう居ない。ヘルメットを被り、酸素マスクを着けるようになった頃にはもう居なかった。

 

 

 戦車輸送車の到着を監視カメラで知った私は荷卸に立ち会う。

「あー……怒ってます?」

『いいえ?輸送屋に怒ったってしょうがないもの。』

「そ、そうですよね……。こちら伝票です。」

『どうも……4台?』

「あれ?本部から聞いていませんか?てっきり話がついているものだと。」

『……費用は?』

「もちろん、本部持ちです。こちらにサインだけお願いします。」

「どうも、ありがとうございました!」

 2台の牽引トレーラー付き戦車輸送車が帰っていく。当基地にある戦車輸送車はこれで残り1台に戻った。

 

『Object195が1台……チェック。』

 覆いを取ってみれば確かにObject195。152mm砲は良いが……いったい、誰が運転して誰が砲手席に座り、車長になるのやら。

『Object292が1台……チェック。』

 こちらも覆いを取ればObject292。こちらもこちらで152mmがなんとも言えない力強さを感じさせてくれている。

『さて、ここからは把握してないんだが…………はぁ……。』

 203mm自走砲2S7"ピオン"と(ウクライナの)BREM-84戦車回収車。そして先程の2つも合わせて何れも人格を持っていて喋る。

『頭のネジが外れた人間どもを恨むぞ。仲間が戦車になってしまった、なんてエノスにどう説明すれば良いんだ……。』

 指揮官の視界情報と思考に基づき、自動で機動し、射撃、周囲警戒をする最新の制御システムを搭載していると書いてあったが……こんな酷いことをするかな、普通。私でもしないよこんなこと。

『聞こえていたら返事してね、じゃあ……マルフーシャ。』

「はい。」

 Object195が喋る。時代遅れのコンセプト?知らんな。

『スピーカーよし。次、スネジンカ。』

「は、はい。」

 Object292から声が聞こえる。何であっても貫き通せるだろう。

『こちらも問題なし。アリビナ。』

「は〜い!天才美少女アリビナちゃんだよ〜!」

 ……2S7から聞こえたが困ったな、テンションの高い娘は苦手なのだが……。

『おっほん、こちらもよし。ビオン。』

「ご、ごめんなさい!」

『うん?謝らなくて良いんだよ。』

 BREM-84装甲回収から聞こえる。ご苦労さまです……エノスの仲間であり、不運にも配下に入る戦闘車両達に敬意を。

 

 私なりのいらない配慮により4人にはコードネームを覚えてもらうことになる。

 "マルフーシャ"ことObject195はマストドン(原始ゾウ類)、

 "スネジンカ"ことObject292はアルマジロ(アルマジロ)、

 "アリビナ"こと2S7ピオンはメイルストロム(大渦流)、

 "ビオン"ことBREM-84はパーマフロスト(永久凍土)と名乗ってもらうことになった。

 初めは皆、混乱していたけれどだんだん慣れてきたらしい。4人にとっては元の姿に戻れるようになるまでの辛抱である。どうか堪えて頂きたい。

 本当は配布された資料を読むにスネジンカはスチールケージのコールサインが与えられる予定だったのだけれど、本人の取り乱した様子、周囲の明確な殺意から反乱のおそれあり、として別のコールサインに差し替えられたという。

 

『ライカ、フェリセット、ベルカ、ストレルカはまだ適合していない、か。』

 さっさと素体だけ置いていって歩兵として使わせてくれた方が有効活用できそうなのだが。

『くれぐれもエノスには次の作戦終了まで正体を明かさないように。』

「はい。」

「え〜?」

「ど、どうしてもですか?」

『作戦中に気絶されても困るので。』

「……確かにそれもそうです……ね。」

 

 格納庫に移動してもらい、整備を軽く行って(乗員が本当に居なくて驚いた)、事務室に戻る。

 

 

 




 乗員が居ない無人戦車なんて価値は無い。
 降車戦闘が可能であるということは大きなアドバンテージである。
 仮に撃破されたとしても乗員が生きて脱出して経験と知識を元に戦えるのならマイナスは小さい。
 無人戦車にそれができるのだろうか。


マルフーシャ達のコールサインの元ネタ
(例外を除き、ほぼ全てENDWARのロシア軍小隊の名前に由来する)
マルフーシャ:戦車小隊"マストドン隊"
→Object195
スネジンカ:輸送車小隊"アルマジロ隊"(スチールケージ隊からの変更)
→Object292
アリビナ:砲兵小隊"メールストローム隊"
→2S7"ピオン"
ビオン:指揮車両"パーマフロスト隊"
→BREM-84
ライカ少佐:戦闘ヘリ小隊"ムーンムース隊"
→ウイングダイバー
エノス:戦闘ヘリ小隊"イエロージャケット隊"
→(秘匿情報)
MG42:工兵小隊"グレムリン隊"
→戦闘工兵
PzB39:ライフル兵小隊"ロングタスク隊"
→対戦車ライフル班
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