プロローグ
Side九鬼地下研究所
ここはとある研究所の一室である。中には十数名の人がおり、彼らはその道のプロ
である。生物学者、物理学者、科学者、天文学者、医療学者など…、彼らは今ある
計画のために動いている。
『武士道プラン』
これは、過去の英雄たちの細胞を研究し、その英雄のクローンを生み出し、現代の
人材不足を補い、また彼女らと共に切磋琢磨させることで一般の学生たちの能力や
才能の向上を目的としている。
???「経過はどうなんだい?」
と、ふいに研究室の入り口から声がかかった。
主任「はい、マープル様。皆順調に育っています。バイタルも安定していますし
このままいけばあと数日で外に出すことができます。申し訳ありません、
わざわざご足労いただいて。」
と、入り口からかけられた声に対し応えたのはこの『武士道プラン』に必要な過去
の英雄たちを生み出す研究をしている責任者だ。研究者らしく白のワイシャツに紺
色のネクタイ、黒いスラックス。その上から白衣を着ている。
マープル「そうかい。それはなによりさね。」
マープルと呼ばれた女性は満足そうに主任の方へ歩み寄りながら頷く。彼女はこの
『武士道プラン』を提唱した人物で、彼女が所属している世界的に有名な大企業
九鬼財閥の従者部隊で序列二位の人物でもある。黒い服を身にまといどこか喪服の
ようなイメージである。そして二人は室内を回り、一つのリアクターの前で足を
止める。
マープル「この子ともうひとりが義経と弁慶、与一より早く生まれそうだね。この
子は誰のクローンなんだい?」
主任「申し訳ありません。この子に関しては全て帝様により情報の公開が禁止され
ています。そしてなにより私たちも知らされてはいないのです。この子の素
性を知るのは帝様と局様の御二人だけと聞いております。」
マープルの質問に主任はそう答えた。その答えにマープルは一瞬顔を歪ませるとす
ぐに元の表情に戻った。
マープル「まぁ、帝様が公開しないってんならしょうがないねぇ。時期が来たら教
えてくれるだろうし。この子にはそれだけのものがあるってことだし、
今はこの子が無事に生まれるのを待とうじゃないか。」
そう言い目の前のリアクターに目を戻した。主任は「そうですね。」と言いマープ
ルに倣いリアクターに目を移した。目の前のリアクターの中には透き通った緑色の
培養液の中に約50㎝ほどの赤ん坊が、目を閉じて気持ちよさそうに眠っている。
しばらく眺めた後二人は各更新データのチェックをしながらリアクターの前を歩い
ていたときその音は響いた。
『ドックン!、ドックン!』
その音は部屋中に響いた。
マープル「(なんだい、この音は?)」
マープルは周りを見ながら内心そう呟く。現在も『ドックン!、ドックン!』と言う
音は部屋中に響いている。
学者「主任!!音は87番のリアクターからです!!」
主任「わかった。すぐに調べろ。それから従者部隊に連絡を。何が起こるかわから
んからな。…申し訳ありませんマープル様、念のため安全な上の管理室まで
お下がりください。先ほども言いましたが、何が起こるかわかりません故」
報告に来た学者に指示を出した後、主任はマープルにそう言った。
マープル「仕方ないね。上で見てるから、しっかりおしよ。ヒューム、クラウディ
オここは任せたよ。」
そう言ってマープルは上の部屋に行ってしまう。代わりに現れたのは二人の男性だ
った。一人は殺伐とした雰囲気をまとわせており、もう一人は穏やかな雰囲気をま
とわせている印象だ。
ヒューム「ふん、マープルめ人使いの荒い。」
そう毒つく男は殺伐とした雰囲気をまとわせる方だ。彼の名をヒューム・ヘルシン
グ。九鬼家従者部隊の序列零位で九鬼家に使える有能な執事である。しかし、戦闘
力に特化しているためやや好戦的でプライドも高い。足技が主体。
クラウディオ「まぁ、いいではありませんかヒューム。」
そう言って嗜めるのは穏やかな雰囲気をまとった男、クラウディオ・ネエロであ
る。彼も九鬼家に使えており、序列は第三位である。非常に優秀な執事で、英才教
育を受け執事学校を主席で卒業。その優秀さから『万能執事』『ミスターパーフェ
クト』ともよばれる。戦闘力もとても高く鋼の糸で相手を拘束したり、短刀で戦っ
たりする。
ヒューム「ふん、まあいい。しかしなんだこの赤子は。部屋に響く心臓のような音
に呼応するかのように、赤子の纏う氣がとてつもなく増大している。
ふ、これは将来が楽しみかもしれんな。」
そう言い、ヒュームは口の端をつりあげる。
クラウディオ「ヒューム氣がもれていますよ。抑えてください。…しかし、私も気
になります。生まれて間もない状態でこの氣の内包量、確かに将来
が楽しみですね。」
ヒュームを嗜めるとクラウディオはリアクターに目を向け、笑いながらそう言っ
た。周りでは学者たちがデータのチェックやバイタルの確認を行っている。そのと
き、一際大きな心音がなったと思ったらリアクターの方から『ビィー!、ビィー!』
という高い警戒音が鳴り響いた。
ヒューム「どうした!?状況を報告しろ!!」
主任「はい!!データは全て高い数値を出しています!簡単に言うと現在進行形で運動
をしている状態になります。そしてこれは妊婦の陣痛と酷似しています。こ
れらから考えられることは、恐らくですが自分から外に出ようとしていると
思われます。」
主任はヒュームにそう報告した。これには研究者だけでなくヒュームやクラウディ
オ、管理室のマープルでさえ驚愕した。陣痛とは簡単にいうとその種族が母体内で
標準にまで成長し、子供が外に出たいという合図である。これだけならばなにも問
題はない。だがこれは一般の人の場合である。このリアクターは九鬼家の技術を集
め作られたものであり、コールドスリープやこのリアクターの中で肉体を成長させ
たあと外に出すことも可能なのだ。つまり、いつ外に出すかは彼ら九鬼家しだいで
あり、自分から外に出ようとすることは本来ありえないのだ。報告を聞き、思考の
の海に沈んでいると、『ピキッ!、ピキッ!』という音が彼らを思考の海から呼び戻
した。
「「「「「「!?」」」」」」
音のしたほうに目を向けると87と書かれたリアクターにヒビが入り始めた。
ヒューム「俺とクラウディオ以外は全員この部屋から出ろ。主任と数名は上の管理
室へ行け。迅速に動け。」
ヒュームの指示のとおりに、研究者たちは一部のものを管理室に残し非難した。管
理室ではマープルと研究者たちが固唾を呑んで見守っている。そんな中ヒュームは
というと…
ヒューム「さて、鬼が出るか蛇がでるか。どちらにしても赤子でないことを祈るば
かりだ。」
クラウディオ「ふふ、楽しそうですねヒューム。また氣がもれていますよ。」
ヒューム「ふん。そういうお前こそ、なにやら嬉しそうだな。」
クラウディオ「当然ですよヒューム。命が生まれることはとても素晴らしいことで
す。それが将来有望そうならなおさらです。」
ヒューム「ふ、確かにな。」
その会話が終わった直後、ヒビが入ったリアクターについに限界が来た。
『バリィィィィィィィィィン!!!!!!!!!!!!』
という音と共にリアクターのガラスが内側から外側にはじけとんだ。しかしヒュム
ムとクラウディオは他のリアクターやデータの入ったスーパーコンピューターを氣
で包んだり、拳や足で捌いていく。破片が飛んでこなくなったのをかくにんしなが
ら二人はリアクターを見た。ガラスは割れ、透き通った緑色の培養液が回りに流れ
出ていた。しかし驚くべきはそこではない。
ヒューム「ふ、なかなか楽しませてくれるな。」
クラウディオ「ええ、本当に。これからが楽しみです。」
二人の執事は楽しそうに、しかしとても嬉しそうに頷きあった。その赤ん坊はリア
クターの上に寝転がるでもなく、その膨大な氣で宙に浮いていたのだ。二人はリア
クターに近づき、クラウディオが抱きかかえようとした瞬間…
「「!?」」
二人に強烈な殺気が叩き込まれた。しかし、それでもクラウディオは抱きかかえよ
うとする。愛おしそうに満面の笑顔を向けながら。その殺気は一瞬で今は二人を受
け入れたのかクラウディオに抱きかかえられようとしている。ヒュームはそれを警
戒しながら見ていた。今ではクラウディオに抱かれ体を預けている。どうやら男の
子のようだ。
ヒューム「クラウ、殺気を中てられた時お前には何が見えた?」
クラウディオ「私には、この子の後ろに龍が見えましたよ。」
ヒューム「そうか。ふ、やはり帝様が情報を公開しないのもなにやら訳がありそう
だな。」
クラウディオ「そのようですね。しかしそれは私たちではどうすることもできませ
ん。それは帝様か局様から教えていただけるでしょう。それはそう
と名前を考えてあげませんとね。いつまでも『この子』では可愛そ
うですからね。」
マープル『そのことについてなんだが、それは帝様と局様に任せたらいいんじゃな
いのかい?あたしたちゃその子が誰のクローンか知らないんだし、その
子も生まれにちなんだ名前のほうがいいだろうさ。』
そう言ってマイクで会話に混ざってきたのは管理室で一部始終を見ていたマープル
だった。マープル自身も知らないため、知っている人物に任せたほうがいいと考え
たのだ。
ヒューム「好きにしろ。俺は周辺の警戒にあたる。」シュンッ!!
ヒュームは一言言ってその場から消えてしまった(正確にはものすごく早く移動した
だけ)。
クラウディオ「それではマープル様この子をそちらに預けに参ります。その後のこ
とはお願いします。今日は帝様も局様もこちらにご在宅です。先ほ
ど連絡はいたしました。すぐにお会いになるそうです。私はここの
片付けがありますので。」シュンッ!!
言うが早いかクラウディオは管理室にいた。
マープル「ありがとうよ。クラウ。それじゃ片付け頑張っておくれ。」
クラウディオ「簡単な事でございます。」シュン!!
お決まりのセリフをはいてクラウディオは片付けに戻っていき、マープルはその場
を研究者に任せ管理室を後にした。
Side Out
Side 九鬼 帝
ひさびさに家に帰って局と揚羽、家族水入らずで過ごしてたらクラウから87番リア
クターから子供が自力で出たと報告があった。いや、聞いたときねマジで思った
よ。さすが―――だなって。んで、マープルが子供つれてくるから名前つけてくれ
だって。こりゃ局と一緒に考えなきゃな。
局「帝様先ほどの連絡はクラウからですか?」
帝「そ。ほら例のプランの87番リアクターの子の話。」
局「87番と言うと例のあの?」
帝「そ。なんかリアクターぶっ壊して自力で出てきたみたい。」
局「自力で!?…いやしかしそれくらい出きるのかもしれませんね。」
そう言うと局は一人考えだしてしまった。今九鬼 帝が話している女性「九鬼 局」は
帝の妻である。一代で世界有数の大企業になった九鬼財閥であるが、その躍進の裏
には彼女がいたからだと言っても過言ではない。現在は長女揚羽を儲け幸せではあ
るが、帝が忙しく世界中を飛び回っているため子育てに帝の穴埋めとこちらも忙し
くも充実した毎日を送っている。
揚羽「ははうえ?どうかしましたか?」
局「ん?いやなんでもないぞ揚羽。」
舌足らずな声で呼ぶのは娘の揚羽である。まだまだ話しだしたばかりであるが
『ははうえ』と呼ばれるのは嬉しいものである。
帝「でよ、マープルがその子つれてこっちに向かってんだけど、正体知ってんの俺
達だけだし名前決めてほしいんだってさ。そんで局なんかいい名前ない?」
局「?我が決めてよろしいんですか?」
帝「いいよ。」
局「でしたら…。そうですね、あの子は―――でしたからそれからとって
『黄眞 龍一(おうま りゅういち)』というのはどうでしょう?」
帝「ふむ、なるほど…。いいな!よし、それにしよう!」
局「本当によろしいんですか?」
帝「いいんだよ。こういうのはフィーリングだ。もう決めちゃったし、それ以外だ
ともう違和感あるぐらいまできちゃってるから決定だな。」
局「ふふ、ありがとうございます帝様。」
するとそこへ、『コンコン』とドアをノックする音が響く。
局「なにようじゃ?」
執事「マープル様がお出でです。」
局「連絡は来ておる。通せ。」
そして『どうぞ』という声のあとドアが開き、赤ん坊を抱いたマープルが入室して
くる。
マープル「すまないねぇ帝様、局様。家族の団欒の時間を邪魔しちまって。」
帝「気にすんなよ。仕方ないさ。それに邪魔だなんて誰も思ってないさ。な~揚
羽。」
揚羽「うん!おばあちゃんまたおはなしきかせて!」
マープル「そうかい。ありがとうよ帝様、揚羽様。」
そう言ってマープルは礼を述べる。
局「マープルよ。その子が件の?」
マープル「ああそうさ。クラウから聞いてるだろうけど、この子の名前を決めてほ
しくてね。というかこの子、一体誰のクローンなんだい?教えてはもら
えないのかい?」
と尋ねるが
帝「ん~、その子自身には早いうちに教えるつもりでいる。自分の力に振り回され
ることもないだろうし。そうだなぁ~、確か項羽のは年が二十五歳になったと
き教えるんだっけ?じゃあその時にそいつのことも教えてやるよ。」
と言われ少し気落ちしているマープル
マープル「そうかい。ならその時を待つとするかね。それでこの子の名前は決まっ
てんのかい?」
帝「ああ。それならもう決まってる。局が考えたんだがいい名前だぜ。それはな
『黄眞 龍一』ってんだ。いい名前だろ。」
マープル「『黄眞 龍一』…。まあ、いいんじゃないかい。というかそれが前の名前
なのかい?」
帝「いや正直なところわからねえ。『いた』っていう事実はあるんだが名前が何な
のか、性別とか詳しいことはほとんどわかってねえんだ。わかってんのがその
正体くらいなもんさ。」
マープル「ふう、まあそれならしょうがないね。…帝様、局様このk、いや龍一を
抱いてやってはどうかねえ。」
帝「そうだな。局抱いてやれ。」
局「我が先でよろしいのですか?」
帝「いいから。ほらマープル。」
俺がそういうとマープルが局に龍一を抱かせる。龍一を抱いた局は愛おしそうに、
そして優しく微笑んでいる。いや~局その笑顔は反則でしょ。揚羽のときも同じよ
うな顔してましたよ。もうね慈母神だよねホント。拝み倒してよかったわマジで。
揚羽もキラキラした目で見てるし、まったく誰に似たんだか。
局「帝様も、御抱きになりませんか?」
帝「ん?なんだもういいのか?」
局「いえ、なんだかこちらを見て微笑んでらしたので…。」
帝「そっか。そうだな。じゃあ抱かせてもらおうかな。」
そう言って局のもとに歩いていく。そして局から龍一を渡される。そのとき暖かい
風が通り過ぎたような気がした。春に新芽が芽吹くがごとく、広大な草原に寝転が
り大地の暖かさを感じるかのような。そんな風に思っていると三人が注目してい
た。どうやら少し呆けてしまったようだ。
マープル「それじゃあ、あたしゃ行くとしますかね。帝様ちょっと龍一を見ていて
もらえませんかね。準備ができたら迎えに来るんで。」
帝「ん。わかった。頼んだぞ。」
マープルは『はいよ』と言って部屋を出て行った。俺はマープルを見送り、スヤス
ヤと眠っている龍一に視線を移した。
帝「よく眠っているな。」
局「寝る子は育つと申しますし、元気に育ってほしいものです。」
帝「そうだな。なにやらヒュームもクラウディオも龍一には期待しているみたいだ
しな。」
そう言って会話を切った後、俺たちは家族の時間を過ごすのだった。
Side out
こんな感じです。いかがでしたでしょうか?
つーか長くね?今回は勢いで書いちゃったし、これから文字数は調整してこう~。
局とかマープルとかこんな喋り方だっけ?
原作忘れてるなあ~。