やばいほど亀更新
川神学園 昼休み 屋上
side 黄眞 龍一
朝の騒動から時間は過ぎて昼休み。
俺は自身に向けられる嫉妬の視線に疲れながら屋上へと足を進めた。
燕が来てから多少は減ったものの、それでも数は多い。
食事も終わり、屋上の給水タンクの上でどうしたものかと考えていると大和の氣が屋上に向かって進んでいるのに気がついた。
龍一
「(あいつはこのままサボリかね)」
そう考えていると、屋上のドアが開き、給水タンクの上まで大和が登ってきた。
大和
「あ、先輩どもです」
龍一
「おう、このままサボリか?」
大和
「あ~次麻呂の授業なんで」
龍一
「ふ~ん、そっか」
なんでもその教師は平安時代が至高と言っており、授業では平安時代しかやらないくせに、テストでは別の時代も出すというなんとも迷惑な教師らしい。
横になってしばらく談笑していると一つの氣を感じた。
燕
「やっほ~、ここにいたんだね」
龍一
「燕か、朝はご苦労だったな」
燕
「いやぁ~さすがは百代ちゃんだね。強かったよ」
大和
「松永先輩こんにちわ」
燕
「うん、こんにちわ」
龍一
「燕も風に当たりにきたのか?」
燕
「うんまぁそんなとこ」
龍一
「???」
燕はちらりとこちらを向いたあと空を見上げた。
なんとなく顔が赤い気がしたが次に向いたときは元に戻っていた。
その後は三人で談笑し、大和は燕のアドレスを教えてもらったり、二人で大和をいじったりして過ごした。
◇
九鬼財閥極東本部 PM 21:26 自室
夜の鍛錬や入浴なども終え、自室でくつろいでいると携帯が鳴った。
龍一
「もしもし」
彦一
「龍一か?今大丈夫か?」
龍一
「ああ」
彦一
「そうか。では聞くが明日の放課後時間はあるか?」
龍一
「大丈夫だが、どうしたんだ?」
彦一
「実はな……」
話を聞くと、明日が義経たちの誕生日なので、誕生日おめでとうパーティーと歓迎会を同時にやってしまおうと紋白が言い出し、それに賛同した大和たちが彦一や俺に協力を依頼したという訳だ。
会場や料理など大和が方々駈けずり回っているらしい。
龍一
「なるほど、了解した。そういうことなら俺も手伝おう」
彦一
「助かる。葉桜君にはもう言ってある。ではおやすみ」
龍一
「ああ、おやすみ」
電話を切り一人物思いに耽る。
龍一
「転入してから一週間も経ってないのに、つくづくイベントに事欠かないな。まったくもって―――面白い」
そう呟いて布団に潜り就寝した。
◇
6月12日 川神学園 放課後 歓迎会会場
清楚
「こんにちわ」
彦一
「来たぞ、直江」
龍一
「よ」
大和
「どもです」
会場に足を運んでみればもうほとんど準備は終わり、後はテーブルの運搬や料理運びだけらしい。
何でも昨日から準備を始めていたようで、最後の準備と「やるなら三年も巻き込んでしまえ!」ということらしい。
龍一
「俺はテーブル運んでくるから、清楚は料理運んできてくれ」
清楚
「うん」
大和
「京極先輩には字を書いてほしいんであっちに」
彦一
「うむ、わかった」
一子
「おおー京極先輩が字を書いてくれるのね」
モロ
「豪華なメンツでの歓迎会だね」
ガクト
「せっかくだ、最大限のおもてなしをしてやろうぜ」
そんなこんなで1時間後
会場設営は終わり、後は義経達一行を待つばかりとなった。
小杉
「プレミアムに会場設営完了!」
由紀江
「料理もばっちりです」
みんなそれぞれ談笑して過ごしているところに本日の主賓がやってきた。
マルギッテ
「直江大和。2-Sを全員連れてきたぞ」
大和
「ありがとう。皆さんいらっしゃい」
井上
「おーいいねいいね、メシもうまそうだし」
冬馬
「よく一日でここまでやりましたねえ」
大和
「みんなのおかげさ。俺指示しただけだし」
2-Sの周りには人が集まって、笑って話している。
それを離れて見ていると声がかかった。
清楚
「ありがたいよね。こういうの」
龍一
「そうだな。ここまで大きなものは今までなかったし」
清楚
「うん。……あ、来たみたい」
入り口には義経、弁慶、与一の姿があった。
与一は来ないかもと思ったがちゃんと来てくれた。あいつも少しずつ外と関わりを持とうとしているということだろう。
三人は会場の一段高くなっている即席の舞台に立った。
義経
「今回は、義経達のためにありがとう」
弁慶
「川神水まで用意してもらって…嬉しいね」
与一
「まあ、ありがとな」
井上
「ヘイヘーイ!与一、照れがあるぞ」
与一
「るっせ、後で蜂の巣にしてやる」
井上
「なんでいきなりそんな殺伐とすんの!」
こうして歓迎会は始まった。
みんなは思い思いに楽しんでいる。立食式でひたすら料理をかき込んでいるのもいれば、談笑に花を咲かせてるのもいる。
俺は紋白のところに向かった。なにやら直江と話している。
龍一
「よっ!紋」
紋白
「ぬ、龍一か」
龍一
「ありがとうな紋。あいつらのために」
紋白
「かまわん、なにより我一人ではここまでのことはでなかったからな」
龍一
「ああ、話は聞いてる。直江ありがとう。ここまでこぎつけたのはお前のおかげだ」
大和
「いえ、気にしないでください。やりたいようにやっただけですし」
龍一
「そうか。あいつらも他学年と関わりが持てただろうし壁も無くなっていくだろう」
大和
「だといいですね」
龍一
「じゃ俺はこの辺で。お前も紋も楽しめよ」
大和
「はい」
紋白
「うむ、またの」
俺はその場を後にし、義経達のところに向かう。
義経
「あっ龍兄」
龍一
「楽しんでるか?」
弁慶
「もちろん。やっぱりみんなで飲む川神水はおいしい(ングング)」
義経
「あわわ、弁慶ペースが早いぞ」
龍一
「今日くらいは好きに飲ませてあげな」
義経
「うう、龍兄がそう言うなら」
龍一
「今日はお前たちの歓迎会なんだ。そんな顔しないで笑え」
そう言って義経の頭を撫でる。するとみるみる笑顔になっていく。
義経
「そうだな。今は笑顔だな」
龍一
「そうだぞ義経。さ、みんなのとこに行きな」
義経
「うん!」
笑顔になって弁慶を連れて2-Sのほうに向かっていった。
まったく。周りのことばかりで自分のことは省みないからな。
与一を探して見れば弓道部からの勧誘を受けているようだ。
ここはあいつのコミュ症を治すのにいい機会だと思い、あえて放置した。
まあ帰れば話を聞いてみるか。
立食しながら3-Sの面々と談笑していると百代がやってきた。
百代
「こんな美少女に話しかけないなんて重罪だぞ」
龍一
「冤罪もいいとこだ」
百代
「まあ冗談として、どうだ?楽しんでるか?」
龍一
「ああ。他学年とも関われたし、料理も美味いし言うことなしだ」
百代
「そうかそうか。それでな稽古のことなんだが、ジジイと話して基本的に土曜でということなんだがそれでいいか?」
龍一
「ああ、予定があるとき以外ならそれでいい」
百代
「じゃあジジイにそう伝えておくからな。いやぁ~楽しみだな~」
そういってスキップしながら離れていった。
そんなに嬉しいものなのか?と視線で回りに振って見るが、みな肩をすくめるだけだった。
そのあともあちこち回りながら談笑し、立食し交流を深めていった。
歓迎会は大成功といえるだろう。
◇
九鬼財閥極東本部 義経の部屋
歓迎会も終わり帰宅した俺は義経達を部屋に集めた。
もちろん誕生日プレゼントを渡すためだ。
龍一
「さてまずは義経からだ。誕生日おめでとう」
義経
「ありがとう龍兄。開けてもいいか?」
龍一
「ああ」
義経にあげたのはクマのぬいぐるみ。だが普通のぬいぐるみではなく、両手で挟んだ電子表示のプレートがあり、それには時計の機能と時間経過で変わるメッセージ機能がある。例えば朝なら「Good morning」や「Good night」だ。
今は誕生日をあらかじめ入力してあるので「Happy birthday」と表示されている。
義経
「わあ~ありがとう龍兄!!」
龍一
「どういたしまして。後、それには面白い機能があってな。音声を録音・設定することで目覚ましのときにその音声が流されるんだ」
義経
「へぇ~そうなのか。じゃあ龍兄、音声登録しよう」
龍一
「ん?俺の音声でいいのか?」
義経
「うん龍兄がいい///」
龍一
「そうか。じゃあなんて言えばいい?」
義経
「う~ん『起きろ、朝だ義経』と優しい感じで」
弁慶
「そこは『起きろ、義経。起きないとキスしてあげないぞ』くらい言ってもいいんじゃない?」
義経
「こら弁慶!!///」
弁慶
「ああ~怒った主も可愛いな~」
与一
「(はぁ)」
清楚
「あはは、弁慶ちゃんは揺るがないね」
龍一
「ふむ、それでいくか」
義経
「ちょっ///」
龍一
「はは冗談だ。後で登録しとくから」
義経
「ほっ」
龍一
「次は弁慶だな。はい、誕生日おめでとう」
弁慶
「ん、ありがとう。こ、これは!!」
弁慶に渡したのは川神水。もちろんこれも普通ではない。
川神水が取れる場所、生産される場所はいくつかあるがその中でも幻の名水『川神水・朧』は20年に1本しか作られない。
川神水は源流を蒸留・加工したものだが、ある生産者が試行錯誤し作ったのがこれだ。
『川神水・朧』は味はもちろんだが、なんといっても特徴なのが炭酸飲料に近いのだ。もちろんその成分に炭酸はない。製作過程での変質とみられるが詳しいことは製作者のみ知るところである。
龍一
「弁慶にはこれしかないと思ってな」
弁慶
「いや~ありがとう。まさか出会えるとは思わなかったよ」
龍一
「どういたしまして。次は与一だ。誕生日おめでとう」
与一
「ああ、サンキュ。お、おおーーー!!」
与一に渡したのは与一がはまっていたゲーム、テイ○ズからそれを模したものを九鬼で魔改造したものをプレゼントした。
基本色の白にところどころ金の装飾が施されたまさに聖弓といっていい代物だ。
見た目に反し装飾弓ではなく実用重視のもので、与一に合わせて作られたので本人しか使用できないもので、他人が使うと著しく命中精度が下がる。
龍一
「どうだ?」
与一
「おお最高だぜ!!弦を引いた感じも俺にぴったりだし、握りもフィットするしな!」
龍一
「そりゃよかった。…そういえば弓道部に勧誘受けてたがどうするんだ?」
与一
「…ああ、せっかくだしやって見ようと思う。行けないときもあると思うが」
龍一
「そうか。頑張れよ」
与一
「おう」
その後清楚がプレゼントを渡し、ケーキを食べたりした。
清楚が渡したプレゼントは、義経・弁慶が清楚とおそろいの腕時計。与一がシルバーブレスレットだった。
ケーキを食べた後、そのままゲームをしたり、麻雀したりした。
一度部屋に戻り携帯を確認すると燕からメールが来ていた。
燕
『明日暇なら川神の案内してほしいな』
龍一
『かまわないが川神院で百代との稽古があるけどそれでもいいか?』
と返信した。すると1分たたずに返信が来た。
燕
『私も少したったら川神院で合同稽古するから大丈夫だと思う』
と返ってきたので、
龍一
『それなら大丈夫か。なら10:00に川神駅の東口でいいか?』
燕
『いいともー!』
とものすごい早さで返ってきた。
そのあとシャワーを浴びて義経と弁慶のいる部屋で朝まで過ごした。
to be continude
次回「―川神案内―」
今回は短めです。
すいません。