―――3-S
Side 黄眞 龍一
3-Sの教室では拍手喝采が起こっていた。
原因はもちろん俺達……というか、清楚を見るクラスの男達のものだ。
女子の方は何やらこちらを見て呆けている。
龍一
「(……ここまで個性が強い学園はそうないだろう)」
と、素直な感想を胸中で呟いた。
隣では清楚が改めて挨拶をしている。
清楚
「改めまして、葉桜 清楚です。短い間ですがよろしくお願いします」
ぺこりと一礼して微笑む。その様にクラスは…
3-S生徒A
「いやぁ、受験で身も心もボロボロなときに清涼剤だ」
3-S生徒B
「この学園の子は我が強いのが多いから清楚な君は大歓迎だよ」
3-S生徒C
「文学少女バンザーイ!」
周りが騒がしくなる中、着物に身を包んだ一人の男が声をかける。
京極
「京極 彦一だ。君の生い立ちは朝礼で聞いた。正体は誰であろうと君は君…私達は気にしない。気にしすぎて自意識過剰にならないことだ」
清楚
「はい。そこは理解しています」
京極
「そうか。これからよろしく頼む」
清楚
「こちらこそ」
清楚は無事に自己紹介を終えクラスも歓迎しているようだ。この分なら案外早くに馴染んでいくだろう。
さて、次は俺の番か。
龍一
「こちらも改めて、黄眞 龍一だ。話し方が変わっているがこちらが素だ。よろしく頼む」
ぺこりと一礼。
3-S女生徒A
「かっこいいなあ」
3-S女生徒B
「新たなイケメン…これって逆ハーレム!?」
3-S女生徒C
「今度一緒に写真撮ってもらおう!」
俺の方も受け入れて貰えた様だ。
当面の問題は『武神』川神百代に対しての対応だな。朝礼の時ヒュームの後ろを取ったせいか、かろうじて氣は抑えていたが好戦的な目をこちらに向けていた。
龍一
「(まあ九鬼が機会を用意すると言っているしそれをあてにさせてもらうか)」
そこで思考を中断し、担任に言われた窓側の一番後ろの席へと向かう。
清楚は右隣だ。
担任の連絡事項を聞きながらHRは過ぎていった。
◇
―――放課後
本日の授業も終わり俺は清楚に声をかけた。
龍一
「清楚、俺は義経たちの様子を見てくるがどうする?」
清楚
「あ、私も行くよ。その後でみんなで帰ろう」
龍一
「そうするか。と、その前に一年のクラスに寄りたいんだが構わないか?」
清楚
「うん、いいよ」
龍一
「じゃあ行くか」
俺と清楚は席を立ち、教室を後にした。
なぜ一年のクラスに行くかというと、朝礼のときに見知った顔を見かけたからだ。
龍一
「(会うのは二年ぶりか……)」
考え事をしながら歩いていると、周りからの視線がこちらに集中していた。
「何で一年の階に?」とか「かっこいい」とか「清楚先輩可愛い」などだ。
まあ、このくらいはある程度予想していたので聞き流す。
しかし清楚は若干機嫌悪く俺に話しかけてきた。
清楚
「モテるね?龍君」
龍一
「……なんだ?妬きもちか?」
清楚
「そんなんじゃないよ……」
やれやれ。清楚は案外独占欲が強いからな。今はモノ珍しいのとミーハーなものが半々、といったところだろう。
しかしこのままでも不味いのでフォローしておくか。
龍一
「安心しろ清楚」
清楚
「え?」
龍一
「お前達のほうが、俺はいい」
清楚
「///」
清楚は頬を赤くした。これで一先ず大丈夫だろう。フォローというより誤魔化した感が強い気がするが……
そうこうしているうちに1-Cへと着いた。俺は生徒の一人に声をかけ、目的の人物を呼び出してもらう。
龍一
「ちょっといいか?」
1-C女生徒
「え?」
龍一
「ここに黛 由紀江という人はいるか?いたら呼んでほしいんだが」
1-C女生徒
「は、はい///」
女生徒は顔を赤くしながら由紀江を呼びにいった。
向かう先を見ると由紀江がこちらに気づいた。
俺は「よう」と手を上げながら声をかけ、由紀江は小走りで駆け寄って来た。
龍一
「久しぶりだな、由紀江」
由紀江
「は、はい!お久しぶりです!龍一さん!」
龍一
「……その様子だとあれから変わりないみたいだな。いろんな意味で」
由紀江
「あうう」
松風
「元気を出すんだまゆっち!まゆっちにはオラがついてるぜ!」
龍一
「松風も相変わらずだな」
松風
「オッス龍さん!まゆっちあるところにオラありだぜ」
龍一
「そうだったな」
俺は松風の言葉にクスリと笑う。二年ぶりに会う彼女は、以前会ったときのようにオドオドしていた。しかし硬さはとれていて、自然な感じだ。これを自然と言っていいのかは微妙なところだが……
清楚
「龍君そろそろ紹介してくれない?」
龍一
「ん?ああ、そうだな。由紀江、知っているとは思うが彼女は葉桜 清楚だ。そして清楚、彼女は黛 由紀江。俺が旅をしていたときに出会った子だ。最後に喋ってる携帯ストラップが松風。由紀江曰く九十九神が宿ったらしい」
清楚
「葉桜 清楚です。よろしくね、由紀江ちゃん、松風」
由紀江
「は、はい!よろしくお願いします!」
そういって由紀江は笑った。……いや、本人は笑ってるつもりなんだろう。しかしその顔はクワッといった効果音が似合いそうな迫力のあるもので、初見の人は十分引くレベルだ。
清楚
「ひっ!」
龍一
「……由紀江。その癖まだ直ってなかったのか?」
由紀江
「うう……やっぱり怖いですか?」
龍一
「ああ。まだまだ練習が必要だな」
松風
「おうふ…オラをちゃんと認識してくれるなんて…オラ今目から変な汗が出てきた」
龍一
「はあ…清楚、彼女は少し内気でな。松風というイレギュラーがいるが根は優しい子だ」
清楚
「あはは、ちょっとびっくりしたけどもう大丈夫だよ」
由紀江
「すみません、お見苦しいところを…」
清楚
「ふふ、大丈夫って言ったでしょ?仲良くしようね」
松風
「よっしゃー!まゆっちここで友達宣言だ!」
由紀江
「こら松風図々しいですよ」
清楚
「友達?それならもう私達は友達でしょ?」
由紀江
「へ?」
清楚
「違うの?」
由紀江
「いえいえいえいえ!すっごく嬉しいです!」
松風
「いえ~い!まゆっち、友達ゲットだぜ!」
由紀江
「はい松風!今夜は宴ですね!」
由紀江は今にも飛び出しそうな勢いで喜んでいる。やっぱり清楚を連れて来て正解だったな。こういう相手の本質を見る清楚なら、由紀江の友人になってくれるのでは?と思ったからだ。こういうのは自分で何とかするものだが、まあ今回くらいはいいだろう。
由紀江
「そういえば龍一さん達はどうしてこちらに?」
龍一
「義経達の様子を見に行くんだがその前に由紀江に会っておこうと思ってな。友人にくらい会ってもいいだろう?」
由紀江
「そうでしたか」
龍一
「せっかくだし由紀江もどうだ?」
由紀江
「え?いいんですか?」
龍一
「ああ。というか元々誘うつもりだったしな」
由紀江
「……では失礼ながら」
龍一
「じゃあ行くか」
俺達は1-Cを後にし、2-Sへと向かう。俺の後ろでは清楚と由紀江が話している。
「龍君はそっちにいた時はどうだった?」とか「葉桜先輩はどんな本を読むんですか?」とか話題が尽きることはなさそうだ。
しかし清楚……なぜ俺のことばかり聞く?いや、気にしたら負けだろう。
俺はそれを頭の隅に追いやった。そして2-Sに到着。
2-Sの前は過去の偉人を一目見ようと、人でごった返していた。
龍一
「すごい人だな」
清楚
「私のことは分からないからね。義経ちゃん達は有名だし」
龍一
「それはそうだが…仕方ない、行くか」
俺は清楚と由紀江の手を引き前へと進む。教室の入り口にはマルギッテがいた。
龍一
「久しいな『猟犬』」
マルギッテ
「そうですね『覇王』」
龍一
「清楚、由紀江先に行っててくれ。俺は少し彼女と話してから行く。問題ないな?マルギッテ」
マルギッテ
「ふむ、彼女達なら問題ないでしょう。通行を許可します」
マルギッテは体で塞いでいた教室の入り口から移動し、道を譲る。
清楚
「…じゃあ先に行くね?」
由紀江
「お先に失礼します」
龍一
「ああ、すぐに行く」
先に二人に教室に入らせ、俺はマルギッテのほうを向く。
龍一
「相変わらず元気そうだな」
マルギッテ
「体調管理は万全です。体が資本ですから」
龍一
「そうだな、お前はそういう奴だったな」
ここで少し俺とマルギッテのことを話そう。
マルギッテと出会ったのは去年の夏。国内を回り終え、海外に出て十二カ国目のイスラエルでの紛争地帯での出会いだった。
マルギッテはドイツ軍に所属しており、イスラエルでのテロ組織の鎮圧に派遣された狩猟部隊の隊長だった。
なぜ俺がイスラエルにいたかというと、これは完全に偶然で紛争地帯にいたのも理由はあるが偶然だ。
現地の人に近づかないほうがいいと言われたが、俺は人の殺し合いというのを知る――言い方は悪いが――いい機会だと思い紛争遅滞に足を運んだ。
そこではイスラエルの政府軍とテロ組織が戦っており、銃声の響く中荒れた大地の上にはすでに事切れている人。片足のないもの。片腕のないもの。爆死したのか、肉片や大量の血がそこらじゅうに広がっていた。
その日の戦闘はいったん両軍が引き終了した。俺は胸糞悪さを感じながら街の宿にもどろうと気持ちの整理をしていると何やら路地が騒がしいので、気になったので向かうと、数人の男が女性に暴行しようとしているのを発見し、それを助けたところに騒ぎを聞きつけたドイツ軍が駆けつけ、事情説明として軍に連れて行かれた。
ここで初めてマルギッテに会うことになる。事情聴取が終わった後にマルギッテとの戦闘や俺のことについてなど、いろいろあったが、その後半年近く行動を共にしたという訳だ。
閑話休題。
龍一
「中将はどうだ?相変わらずの親馬鹿か?」
マルギッテ
「そういう言い方はやめなさい。それにお嬢様はドイツの至宝。それに我が子を可愛がるのは当然です」
龍一
「まったく、甘やかしすぎだろう……それそうとマルギッテ、お前いい奴は見つけたのか?」
マルギッテ
「話が一気に離れましたね……答えはNOです」
龍一
「まあ、お前の目に適うのは相当な男だろう。惚れられる男は得だな」
マルギッテ
「今のところあなた以上の男はいません……いや、今後現れるとは思いません///」
龍一
「頬を染めるな。けどまあ…ありがとう」
マルギッテと共に行動していたとき、なにやら惚れられていたみたいだった。それに気づいたのはドイツを出るときにマルギッテにキスされたときだ。……おかしい。いつフラグを立てた?
龍一
「ま、積もる話もあるが今はこれぐらいにしよう。入っても?」
マルギッテ
「……ええ、あなたの役割は朝礼で聞きました」
そう言うとマルギッテは道を譲り、俺はマルギッテの横を通り過ぎようとしたが、ふとイタズラ心が芽生え小声でマルギッテに言う。
龍一
「(今度デートでもしよう)」
マルギッテ
「なっ!?///」
驚愕するマルギッテをよそに教室に入る。
そこには義経達を囲み英雄や冬馬達、そして由紀江の姿があった。
英雄
「む?来たか龍一よ」
龍一
「ああ。どうだ義経達は?」
あずみ
「はい。最初は緊張していましたが今ではすっかり慣れたようです」
龍一
「そうか。それは何よりだ。ありがとう、あずみさん」
あずみ
「いえいえ、英雄様の従者として当然です」
英雄
「フハハ!あずみよ褒めて使わす」
あずみ
「ありがとうございます!!英雄様ーー!!」
英雄達と話していると義経達がこちらに気づいた。
義経
「あっ!龍兄!」
弁慶
「お、清楚先輩から聞いてたけどちょっと遅いんじゃない?」
与一
「はあ、しんどい」
弁慶がぶつくさ言っているが、それを無視して近づく。
龍一
「様子を見に来たんだが無用な心配だったみたいだな」
義経
「ああ。義経達のことも受け入れてくれたし義経は嬉しい」
そう言った義経は満面の笑顔だ。
俺は義経の頭をゆっくりと撫でた。
義経
「あ///」
龍一
「ん。まだまだこれからだ。あんまり気を張りすぎるなよ」
義経
「……ん。わかった///」
龍一
「弁慶はどうだ?」
弁慶
「ん~、特に問題な~し(ゴクゴク)」
弁慶は川神水を飲みながら答えた。
龍一
「学園の許可も貰ってるし、飲むなとは言わないが授業中は飲むなよ」
弁慶
「その辺は心得てるよ」
龍一
「はあ…まったく」
ため息をついて、俺は与一の方へ顔を向ける。
龍一
「与一は大丈夫か?」
与一
「まあ、なんとかな。しかし視線がウザイ。客寄せパンダになった気分だ」
龍一
「なにせ偉人のクローンだからな。そんなに心配しなくてもそのうち収まるさ」
与一
「それまでこの状況かよ……だりい」
心底嫌そうに与一は肩を落とした。
小雪
「やっほー!僕のヒーロー!」
いいながら突っ込んできたのはユキだ。それを受け止めユキは顔をあげる。
龍一
「こらユキ、そんな勢いで突っ込んだら危ないだろ?」
小雪
「大丈夫だよ♪ちゃ~んとリュウ兄が受け止めてくれると思ったし~♪」
龍一
「やれやれ」
邪気のない笑顔に苦笑をこぼす。
冬馬
「お久しぶりですね龍一さん」
龍一
「冬馬か。元気だったか?」
冬馬
「医者の子供が病気になっては笑いものですからね」
龍一
「そんなことはないと思うが……まあ元気そうでなによりだ」
さて、冬馬がいるということは準の奴もいると思うがどこだ?
井上
「龍さん久しぶりだな」
龍一
「………冬馬、誰だこいつは?」
冬馬
「準ですよ?」
井上
「若?なんで疑問系?」
龍一
「やっぱりか……準、どうしたんだその頭?その年で毛根が全滅したか?」
井上
「ちっがーーう!!これはユキにやられたんスよ」
龍一
「まさか…ユキに手を出そうと…」
井上
「ちがうって。唐突に俺の頭を剃りだしたんだよ。ま、それ以来さっぱりして気に入ってんだけど」
龍一
「それなら仕方ないな。俺にもユキの行動は読めんからな」
小雪
「ん~?何の話~?」
龍一
「ん?なにユキは可愛いなって話だよ」
俺はユキの頭を撫でた。ユキは気持ちよさそうに目を細めている。
小雪
「ん~♪」
冬馬
「ユキはべったりですね」
井上
「仕方ないんじゃね?龍さんに久しぶりに会ったっていうのもあるし、よく懐いてたしな」
そこに教室の入り口からこちらに向かってくる集団があった。
Side out
Side 直江 大和
俺達は2-Sに向かっていた。メンバーは俺、キャップ、ワン子、ガクト、モロ、京、クリスだ。なにせ偉人のクローン。おちかづきになっておいて損はないからな。
少し打算的な考えをしながら歩いていた。
一子
「義経たちはいるかしら?」
マルギッテ
「検問だ。ここは通れないと知りなさい」
ガクト
「揉める気はないぜ。挨拶して仲良くなりてーんだ」
マルギッテ
「お前達のような野次馬が多くて煩わしい事この上ない早々に立ち去りなさい」
大和
「なるほど、マルギッテさんは番犬代わりか」
クリス
「マルさん、ガクトの言う通り挨拶に来ただけなんだ」
マルギッテ
「お嬢様も来ていらっしゃいましたか」
クリス
「マルさん、通してくれ」
マルギッテ
「……(彼なら何が起こっても対処できるだろう)わかりました。お通りください」
大和
「お役目ご苦労さまです」
俺達は2-Sに入った。
ワン子
「あ、いたわ」
クリス
「ああ、隙がないな」
ワン子
「ええ、間近でみるとすごく強いわ」
ワン子とクリスは武芸者としての力量が気になるんだろう。
キャップ
「お?まゆっちもいるじゃないか」
モロ
「珍しいね。まゆっちがいるなんて」
確かに。今頃は大和田さんと一緒に帰ってると思ったんだが……
すると義経達が気づいたようだ。
義経
「あっ」
大和
「やあ源さん。交流戦ではどうも」
義経はこちらに駆け寄って来る。
義経
「わざわざ挨拶に来てくれたのか、ありがとう。龍兄、清楚先輩、弁慶、与一達も来てくれ」
龍一
「ああ」
清楚
「いいよ」
弁慶
「は~い」
与一
「かったりいからヤダ」
弁慶
「主の命に背くな」
与一
「いだだだだだ!!姉御耳を引っ張るな!!」
与一は弁慶に引きずられて来た。
義経
「源 義経だ。改めて、よろしくお願いする」
クリス
「クリスティアーネ・フリードリヒだ。クリスでいい。よろしく頼む」
あっちは握手していた。学友として、また強敵(とも)として。
大和
「直江 大和。よろしく弁慶さん」
京
「大和の妻椎名 京」
モロ
「おおっと、京が積極的に!」
京
「すくすく成長してるの。身も心も(弁慶は大和と話が合いそう…要注意なんだ!)」
龍一
「黄眞 龍一だ。交流戦以来だな大和、と言うより君の事は前から知っていたんだが」
大和
「え?なんでですか?」
龍一
「君の両親とロンドンで知り合ってね。景清さん達がテロに巻き込まれたのを助けてから、しばらく護衛として雇われていたんだ」
大和
「そうなんですか!?……親父の奴そんなこと一言も言ってなかったのに」
龍一
「子供を心配させるような連絡をあの二人がするはずないだろう」
大和
「そう言われればそうですね」
龍一
「しかし君は咲さん似だな。考え方は景清さん譲りみたいだが」
大和
「親を知っている人にはよく言われます」
龍一
「ふむ、気分を悪くしたならすまなかったな」
大和
「いえ、気にしてませんよ」
龍一先輩は「助かる」と言って苦笑した。うわっ、なんだかその仕草だけで無駄にかっこいいな、と思ってしまった俺は悪くない。
他の面々も自己紹介は終わったようだ。与一だけは終始だるそうにしていたが…
その時――
百代
「よーしつねーちゃーん。たったかおー♪」
と、姉さんが入ってきた。
一子
「あ、お姉様」
百代
「お、妹に愉快な仲間達も一緒か」
龍一・弁慶
「「はあ……やっぱり来たか」」
二人は盛大にため息をついた。心底面倒だと言わんばかりに。
クラウディオ
「この場は私にお任せください」
どこからともなく執事が現れた。
弁慶
「…クラウ爺いつの間に後ろに」
龍一
「なんだ気づいてなかったのか?」
弁慶
「…龍教えてくれてもいいんじゃないか?」
龍一
「気づいてるんだと思っていたんだがな……まあ、クラウなら仕方あるまい」
二人の会話の横ではクラウディオさんが姉さんの説得を行っている。
クラウディオ
「武神は義経様達に勝負を挑みたいとお見受けしました」
百代
「もうワクワクしすぎて先生に注意されたくらいですよ」
クラウディオ
「しかし今はお断りします」
百代
「そうですか…って引っ込むような性分じゃないんですよ。戦わせてくださいよ。ウズウズしてるんです」
クラウディオ
「もちろん戦いから逃げている訳ではございません。悩みがありまして、学園外からの挑戦者達です。なにせ相手はあの源義経。外部からの挑戦者もかなりの数になるでしょう」
百代
「人気者ですからね。外の人間にまで気を回していては、キリがないのはわかりますが…」
クラウディオ
「そこでこういうシステムをとります。義経様達と戦いたいものは武神と一戦し、武神に認められた者のみが、義経様達と勝負することができる。お力を貸していただけますか?」
百代
「それはいい、OKです!戦いに不自由しなさそうだ。でも義経ちゃん達ともきちんとたたかいたいなー」
クラウディオ
「もちろんでございます。きちんと舞台は用意しますゆえ、ご安心ください」
一子
「えーっと、つまり学園の人たちは勝負を挑んでいいのね?」
百代
「おーなんだワン子やるきか?」
一子
「うん!またとない機会だしね」
クリス
「それでは自分もぜひお願いしたいな!」
弁慶
「すでに申し込んでる人がいるので順番待ちだけどね」
一子
「あはは…みんな考えることは一緒ね。待つわ待つわ」
クリス
「それまでは腕を磨いておくか」
百代
「さて、義経ちゃん達はだめですけど、そのサポート役の彼ならいいですよね?」
姉さんの視線は龍一先輩を捕らえていた。
自然と俺達の目もそちらに向く。
先輩はため息をついていた。予想が的中した。そんな感じのため息だった。
Side out
Side 黄眞 龍一
はあ……やっぱりこうなったか。予想していた事とはいえ、正直これからのことを考えると頭を抱えたくなる。
しかしどうするか……
龍一
「(ヒューム達には断れと言われているが、百代の目を見るに目の前に極上の獲物がいる…みたいな感じだ。ここは一つさらに甘味を与えモチベーションを上げて次までの繋ぎにしてもらおう。我慢できるかは微妙だが……)」
龍一
「ああ、いいだろう」
クラウディオ
「龍一様!」
百代
「おお!そうか!戦ってくれるか!「ただし」……?」
龍一
「今回は手合わせだ。俺の本来の役割は彼女達のサポートだ。仕事に支障が出ては困る。真剣勝負をするつもりはないからその辺りは理解してくれ」
百代
「ん~まあ仕方ないか。いいぞそれで」
あきらかに肩を落とす百代に俺は…
龍一
「ああ、安心しろ。真剣勝負の舞台は義経達と同様九鬼家が用意するそうだ」
すると、一目で分かるほど機嫌がよくなる。
百代
「そうかそうか!では早速グラウンドに行こう!」
龍一
「クラウ、学園長に連絡は?」
クラウディオ
「すでに手配済みです」
龍一
「さすがだな――それとすまないなクラウ。お前達に断れと言われていたのに」
クラウディオ
「構いませんよ。龍一様もお考えがあってのことでしょう。ならば私共はそれを支えるだけでございます」
龍一
「そうか。すまな……いや、ありがとうクラウ」
クラウディオ
「では、参りましょうか」
龍一
「ああ」
俺達はグラウンドに移動を始めた。
さて、武神はどれほどやら―――
Side out
to be continued
次回 「―手合わせ―」
誤字、脱字報告お願いします。