アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜 作:十二の子
ー*ー
言祝アリアが、久方ぶりにーあくまで彼女の主観であるがー手にした自らのポケモンたちを慈しむように、モンスターボールを投げる。
まったく同時に、今や唯一の大三輪遥の戦力が、その絶大な力を振るった。
【
言祝アリアを傷つけることはできない。本質的に大三輪遥と同一人物であるからして、何かの間違いで大三輪遥のほうへ害を与えてしまうリスクがある。オブジェクト指定的には識別困難なのだ。…けれど、彼女のポケモンはそうではない。なんなら「モンスターボールの開閉に失敗した可能性」を具現化させるだけでも、大三輪遥は勝利することができる。
そう思って攻撃をさせ…直後、大三輪遥は途方もない不快感によって膝をついた。
「な、にを…」
視線を巡らせ、直感する…少し低いあたりで、かつてのユニットメンバー、物部ユイと藤原千尋が手を振っていた。
「『フューチャー・トリニティ』…そういうこと…」
自分には届かない程度の存在だと確信していた。そして、けれど、凡百のアイドルではないとも、彼女なりに2人を認めていた。ファンたちも、そう評価していた。だから。
「ファンの願いが、私個人ではなくて、ユニットにも向いている…ということでしょうか?」
「それだけじゃないわよ?
龍神様!」
【デュアルメガレックウザ(アルビノ)(祝歌)の ナチュラル・サーキュレーション!】
星空に、白く輝く龍神が、藤の香りとともに舞う。
「
カナサシ湖の龍神として巫女に力を授けることを長くしてきた白き龍神は、『流れ』を奪い取るまでのことはできるわけがなくとも、かき乱すくらいのことはしてみせた。
ーここに、「可能性を放出し、捕食し、操る」という二柱の邪神の権能は、大三輪遥にとって無力化された。今やそれは、使うことはできるが扱うことはできない、目を瞑って持つ刀に等しき危険物に成り下がった。
「神の力は封じさせてもらいました。もう、『この星の不思議な不思議な生き物』どうしです。
…これはポケモンバトルです。ポケモン大好きアイドルどうし、そうするべきでしょう?」
「コトホギさん、私もいるわよ。
だから、アリアじゃない…
大三輪遥は、関係のない第三者だったら笑うだろうなと、そんなことを心の片隅で考えた…だってそうだ。言祝アリアという自らの同一存在に正対され、自らのアイドル歴の始まりとなった「フューチャー・トリニティ」によって神の力を抑えられ、そして迫られたバトルは、「アリア」を否定するかのように「デュエット」だと言う。皮肉にもほどがある…まるで悪役の最後ではないか。
けれど、大三輪遥は悪役ではない。アイドルだ。
「いいでしょう。受けて立とうではありませんか、そのレイドバトル!」
染み付ききっている「自分を最も魅せる身振り手振りと言葉回し」で、彼女は応え。
「
「終わらせるわよ、メロエッタ、サーナイト、ニンフィア、キュウコン、ワタシラガ、アマルルガ!」
「アンコールはなし、正真正銘、これがラストソングです…イーブイ、アシレーヌ、チルタリス、ラプラス、チラチーノ、イワパレス!」
上下に並んで光と闇を重ね合わせる、2体の邪神。それを、12体のポケモンが包囲する。
…先手を打ったのは、2人のアリアの方だった。
【メガサーナイトの メガシンフォニア!】
【メガチルタリスの メガハーモニー!】
2つの音色が重なり合い、ネクロズマとアクジキングを襲う。
「振り払って!」
...横暴、暴虐と言ってよかった。2体の邪神の圧倒的な出力は、身体とともにオーラを振るうだけで、音波攻撃を弾いたのだから。
「ッ、一斉攻撃!」
「りゅうのはどう」
12の攻撃、色とりどりのビームが集中し…同時にネクロズマとアクジキングがオーラの波動を放出する。そう、ただ放出するだけで、ビームのように集束させたりエネルギー弾にする必要などなく、すべての攻撃を跳ね返してみせた。
「シンプルな話です。数値が違います。
GXとなれば種族値は2倍、Tagteamとして合算されますから。
それに可能性を司る伝説ポケモン、タイプは可変ですし補正は常に最大ランク。搦手も通じませんよ。」
合計種族値2708、あらゆる補正最大で弱点無しの…神格として権能を振るえなかったとしても、モンスター。目の前に座しているネクロズマ&アクジキングTagteamGXというのは、そういう存在であった。
「今の私は、私たちは、常に最強で最善です。
さて、撃ち返してください!」
【
世界そのものの可能性への干渉はできなくても、ポケモンバトルのワザとしての性能は据え置きだ…閃光と漆黒をまとい、破滅的な威力が降りかかる。
「それを」「待ってました!」
【ワタシラガの コットンガード!】
【シンシューイワパレスの からをやぶる!】
絶大な威力を、綿毛と岩の殻で受け止め…もちろん一瞬で粉砕されるが、稼いだ時間のうちにポケモンたちは逃げ走って。
【チラチーノの アンコール!】
【シンシューキュウコンの かなしばり!】
「…なるほど?」
凶悪なワザの封印…けれど大三輪遥は狼狽えない。
「忘れてはいないでしょう?ワザ威力が落ちても、元の数値が違います。
わるあがきです!」
「ニンフィア」「チルタリス」「「ハイパーボイス!」」
フェアリースキン込み、普通のポケモンバトルなら決着がついてもおかしくない高火力…それが、本来は万策尽きた時の苦し紛れに過ぎないわるあがきに、押されている。
いずれアンコールもかなしばりも効果が切れる、そうなれば…
「離脱してください!」
ネクロズマとアクジキングが、両側面からハイパーボイスを浴びながらも狭い尾根を走り、12体の輪の中から逃れようとする。
「包囲して!」
そうはさせじ、2人のアリアのポケモンたちは攻撃を加えながらも、斜面を走って追いすがる。
少しでもネクロズマとアクジキングのHPを削れば御の字、12体と2人のアリアの目的は、2体の邪神に射点を得させないこと…アンコール&かなしばりの効果が切れてプロバビリティゲイザーとプロバビリティバイキングが飛んできたら、今度こそ耐えられない…ビーム攻撃の射界を得させないことがもっとも重要で。
「アクジキング、地面に向かってわるあがきです。」
ーそして2人のアリアの目論見は、あっけなく崩れ去った。アクジキングの膨大な重量によって、富士山/シロガネ山の崩れやすい火口外輪尾根は再び崩落し、2人のアリアのポケモンたちは麓側、あるいは火口内側へと斜面を押し流されたからだ。
大三輪遥が、スマートフォンを投げ捨てる…鳴り響くアラーム。アンコールとかなしばりのタイムリミット。
「終わりです。」
【
ネクロズマが火口内側へ、アクジキングが麓側へ、絶望的な威力のビームを扇状にして放つ。
12体のポケモンは、あとかたもなく呑まれ。
投げ捨てられたスマートフォンが、落下とともに、ひとりでにユーチューブアプリを立ち上げる。
バトルに巻き込まれまいと遠巻きに見守っていたオスプレイ、その拡声器から、メロディーが奏でられ始める。
ー*ー
「お姉ちゃん、ぼろぼろで…大丈夫?」
「そんなことより、ですわ。
/この回線を放送にのせてくれ。」
「え、うん…わかった…大事な、ことなんだね。」
山頂で繰り広げられる喧騒に目もくれず、蒼玻/アオバ・フロックスは、未明ながらも緊急放送を始めた。
世界に、語りかけるために。
「こんにちは、わたくしはアオバ・フロックス。
今宵は、みなさんに、聴いていただきたいことがございますわ。」
ー*ー
オタクというものは夜更かしなものである。ただこの夜に限っては、夜更かししていたのはオタクだけではなかった。なにしろ、日の出とともに隕石が長野県・山梨県を吹き飛ばそうと言うのだから、固唾を飲んで空を見上げないわけにはいかない。
そんな人々の手に持つ、あるいは目の前にする画面の中で、2人の少女が話し始める。
かつてアイドルだったころのどんなMVよりも、それは素人の即興撮影の拙さが目立っていたけれど…でも、言祝アリアの両隣を務めた2人の姿は、数分でトレンドを駆け上がった。
ー*ー
「わたくしたちフロックス家は今まで、侵略者、古代文明、動く化石、そしてコーシンの地下の邪神と、影に日向に世界を護るべく先頭に立ってきた、そう自負しておりますわ。
では、どうして世界とは護られなければならないのかしら?」
「私たち2人は、あの言祝アリアの、かつてのユニットメンバーです。何年か前、彼女の隣に立ち、仲間として力を尽くしてきました。
今でも覚えています。日本中、いえ世界中を沸かせた、あのころを。輝かしい10年代後半を。そして、言祝アリアを残してアイドルを引退し客席に回った今、考えます。みなさんは客席で、何を言祝アリアに、そして私たちに託していたのだろうか?と。」
「どうにもならない失敗をしたり、どうしようもない不条理に直面して、もう何もかも台無しになってしまえ、あるいはいっそ全部なかったことにならないかな、と思ったことがある方もいるはずですわ。フラダリやアカギがそうでしたわね?」
「世界中のファンの皆様が、私たち3人を応援してくれたころ。
きっとみなさんは、それぞれに異なることを考え、私たちに託していたのだと思います。」「みんなが考えてることって、ひとつにはならないもんねー…」
「けれどわたくしたちは知っておりますわ。どんな時でも、それでも人とポケモンは立ち上がり、前を向き、荒野にタネを蒔き水をやるように一歩一歩踏み出してきたことを。
それこそが、その想いこそがきっと、人とポケモンの持つ最大の力。2000年前に一度滅び、そこから厳しい冬を幾度も越えて今に至るユキコシの人間だからこそ言いますわ。
わたくしたちには、わたくしたち人とポケモンの世界には無限の可能性がある…そしてその尊い輝きを、悠久の昔より人とポケモンが諦めず積み上げてきたこの景色を、踏みにじらせるわけにはいきませんわ!
それがたとえ、悪の組織であろうと、伝説のポケモンであろうと、あるいはしたり顔で救済を説く独善的な神様であろうと。
想いを、わたくしたちは明日もこの世界を、自分の足で前へと踏みしめていくのだという想いを、示してほしいのですわ!
シンシュー地方が自ら立ち上がり立ち向かうのだとわたくしに見せてくれた、あの英雄アリア・コトホギさんのように。」
「でも、私も、ちーちゃんも、はるちゃんも知ってる。みんな違う願い事をしていたってさー」「私たち3人がステージの上で歌い踊り、観客の皆さんが席で、画面の向こうで見ていたあの時。
願いは違っても、私たちはみんな一つでした。
いっしょに、ライブを楽しんでいました。
今、日本が…いいえ、世界が、隕石によって危機に瀕しています。こんな時だからこそ…
ともに、みんなの心が一つになったあの時を、思い出してくれませんか?星が堕ちて世界を揺るがそうという今だからこそ、私たちで、この世界で、ともに歌うあの熱狂を思い出しませんか?」
ー*ー
「こ、れは…!?」
とても、旋律などとは言えない代物だった。
雑多な音の交わりでしかなかった。
東京の交差点で、マサラの草原で、新潟の水田で、ワカナエのオフィスビルで、スペイン沖の漁港で、パルデア沖の学校で、フジナドの酒屋で、ジンザモの一軒家で、ナデシコの荒地で、あるいは無人の長野、山梨のあちこちで…
…音が、いや、歌が、流れていた。
【ポケモン世界の りんしょう!】
【ポケモンなき世界の りんしょう!】
それはなんのハーモニーにもなれない。人々が、思い思いに動画サイトを再生しているだけだから。
それはまったく聞くに堪えない。戦場で聞いたことがある輪唱を、思い出しているにすぎないから。
…それでも、2人のアリアの12体のポケモンたちは、ネクロズマとアクジキングの攻撃を持ちこたえていた。
「『りんしょう』…私の記憶が正しければ、ゲームでは仲間が使っていると威力が上がりますが、カードでは使える仲間の数だけ威力が上がるんでしたね。
私の十八番を、乗っ取りますか。」
「ううん、違います。
大三輪遥、もう一人の私、あなたにはできないはずです。ステージの上へと願いを託されたと思っているだけでは。
私は、もっとみんなと、同じ会場にいたい!このまま2つの世界を、終わらせたくない!」
言祝アリアの叫びに、大三輪遥は表情を変えることなく…しかしその細指に力を限界まで込め。
コーシン地方最後となったGXマーカーを、折った。
カード状のGXマーカーが、粒子となって飛び散る。
富士の、シロガネの地脈が、鳴動する。
【
それは、正真正銘世界最後にして最強のGXワザ。
「ッ…!龍神様!我らに力を!」
天空を舞う白き龍神が、アリア・カナサシの喚ぶ声に応える。
【デュアルメガレックウザ(アルビノ)(祝歌)の…】
自然、そして超自然の「流れ」…そう形容され得るものである、2つの世界で流され続ける歌。雑多な騒音でしかなかったそれが、龍神によって束ねられ、導かれ、荘厳な神歌へと紡ぎ合わされていく。
「ミシャグジッ!手長足長ッ!吹き飛ばしてくださいッ!」
【よをてらすきゅうせいのひかり&クラッシュパスト・ワールドゼロGX
万象が明滅する。宇宙が震撼する。
けれど、同時に。
【ナチュラル・サーキュレーション!】
すべての歌が調律され、2つの世界が1つの舞台のように力を集約し。
「「りんしょうッ!」」
2つの世界の歌が、12体のりんしょうにオーバーラップした。
神様の光、神様の闇、神様の音、神様の歌…それらすべてがぶつかり、弾けた。
ー*ー
わずかに白み始めた空。
頭上に迫る巨大隕石。
「「相打ち…」」
根本的に同一人物だから、大三輪遥と言祝アリアはまったく同時にそう呟いた。
煌々と、フィクトマキナのオーラ結晶が、アリア・カナサシを加えた3人の間に浮かんでいる。
ふと、大三輪遥が、言祝アリアに歩み寄った。
「あなたは、何処まで読んでいたんですか?」
言祝アリアが、ふと、本当にただ転がり落とすように、その質問を口にする。
「何一つ、読めたことなどありませんよ。ただ私は、揺蕩う可能性に身を任せただけです。」
応えながら、大三輪遥は、言祝アリアに右手を差し出した。
「私たちを2人としていた、異なる可能性によって隔てていた神は、もういません。ですから…」
可能性は収束する。2つの世界も、2人のアイドルも。…巨大隕石が、動き出していた。
「相打ちだから、私たちは対等だ、というわけですか?」
大三輪遥の右手を、自らの右手で握り返す。
問いの答えを聞かなくても、言祝アリアは理解していた...だって、大三輪遥は、自分だ。
「私はあなたに、あなたなりに2つの世界の願いを受け止めた偶像として、あなたの世界の可能性を委ねたい。
私は、私なりに受け止めた願いのカタチを預かる偶像ですから。」
すっと…重なり合うように、混ざり合うように、溶け合うように…2人のアイドルのシルエットが、1人になる。
ぽつり、涙がふた粒。
立ち尽くす彼女の肩に、アリア・カナサシが手をかけた。
「歌姫さん。」
万人を魅了するあの力が戻ってきたというのに、彼女はとても弱弱しくて。
「うん。」
「…私、どうしたらいいのか、わからないです。
このまま世界を統合させてしまうことが…いいのか、悪いのか。」
2人の可能性は…意思は、今や完全に融合している。いずれは1つになるだろうが、今は「迷い」としてまだそこにあった。
ー迷っている余裕はない。夜明けとともに巨大隕石は衝突し、ポケモンの有無で分けられた2つの世界は統合される。ネクロズマとアクジキングという「可能性の神格」が倒れたところで、既に仕掛けられていた時限爆弾が止まるわけではなかった。
世界の統合を止める方法は、たった1つ…目の前にあるフィクトマキナのオーラ結晶。アルセウスに並ぶ創世神の力で、一連の騒動をなかったことにするのみ…
「…この世界に来てからのコトホギさんは良く知っているけれど。でも、他の世界、この世界に希望を求めて、そしてこの世界にすら失望して、2つの世界を救おうとした…そんなコトホギさんのことは、私は良く知らない。
だから、軽々に、何が正しいなんて言えない。私の立場なら言うべきなんだけど、やっぱり、敢えて、口にはできないわ。」
それは、2度の凄惨なシンシュー戦争、そして悲惨なコーシュー地方を知っているアリア・カナサシならではの言葉…彼女にとっても、このポケモン世界は、コーシン地方においてのみ、ポケモンなき世界が夢に見るような素晴らしいものではなかった。
「だけど。」
「だけど?」
「私は学んだわ、コトホギさん。
厳しい冬の後には春が来て芽がめぶく。暗い可能性は明るい可能性の前触れに過ぎない。
私はシンシューを愛してる!」
…朝日が昇るまで、あと数十秒もない。
「…知っていますか?歌姫さん。」
「なに?」
「『シンシュー』って、ポケモンのいない世界では、『信濃の国』略して『
フィクトマキナのオーラ結晶を掴み、東の地平線へと掲げる。
「『神の国』すなわち『
「…『神の国』…それは、それは…!」
笑い出しそうになりながら、アリア・カナサシは、オーラ結晶へと右腕を伸ばす。…邪神に苦しめられたコーシン地方にとって、龍神の依代たる彼女にとって、なんと皮肉なことだろうか?
もう、余計な会話は必要なかったし、その時間もなかった。巨大隕石はもうすぐ上で、表面の模様がくっきり見える。
ただ、決めた、秘めた想いを、
「「「シンシューあれ!」」」
物語を司る絶対神の力の結晶が、砕け散る。同時にー
ー朝日が、東の地平線から顔を出し、巨大隕石を照らした。
Fine:これからの話
それからの話を、しないといけないかなー?
はるちゃんは、またどこかに消えちゃった。あの隕石騒動そのものが、私とちーちゃん以外の記憶から消えてたから…最初からいなかったってことに、したいんだと思う。
でもさー…人間社会に神様がはっきり現れたことがないように、はるちゃんも姿を消すことで神様として完成したんだー…みたいなおかしなことは、私には言い出せないかなー。
はるちゃんはきっと、待ってくれてるんだと思う。私たちが、はるちゃんが望んだような理想郷に、たどり着くときを。…その世界にポケモンがいるかは、わからないかなー。
ー*ー
あれからの話を、しなくてはならないかしら?
元々あの隕石については緘口令だったし、混乱は抑えられましたわ。何か起きていたのだと気づいた方も多いのでしょうけれど、悪の組織や伝説ポケモンで世界が傾くことなんてそう珍しくもございませんし。
アリア・コトホギ?さあ?蒼玻くんはどう思いますかしら?
…言祝アリア、か。彼女は良くも悪くも大きすぎるからな。旧シンシューのジムリーダーのうち9人を下してチャンピオンの資格を持ち、戦場の英雄となり、神を従えた…本来の能力のこともある。今さら表に出て祀り上げられはしたくないだろう。
…えっ?言祝アリア/大三輪遥が、どちらの世界を選んだかはわからないって?そりゃあお前、ポケモントレーナーがポケモンを手放せるわけないだろうよ。
ー*ー
どれから、そしてどこから、話し始めるべきかわからないわね。
とりあえず、コーシン地方は戦災復興が進みつつあるわ。旧シンシューを蹂躙した旧コーシューの指導層はのきなみ訴追されたか一揆で死んだし、私とコトホギさんが人知を超えた邪神ポケモンを2体も倒したことで、旧来の秩序はほとんど解体されたから。…私たちカナサシおみやまで力を失ったのは良くないし、口さがない人は「ユキコシ地方の保護下にある従属地方」なんて言うでしょうけど。
…シロガネ山での邪神騒動についても、コトホギさんがしようとしていたことはともかく、してくれたことは悪くなかった。あのレッドを下したことで、コーシン地方はカントー・ジョウトへ発言力を得た…もう国際的に無名な戦乱の蛮地ではなくなりつつある。最大の懸念だった邪神2体も、騒動で力を使い果たしてシロガネの火口で煙を噴き上げるだけになっているし。死にはしないでしょうから、100年もすればあの山は「不死の高嶺」とでも呼ばれたりして。
…苦労は多いけど、進んでいくわ。きっとそれが、コトホギさんの…そして大三輪遥の、願いでもあるし。
ー*ー
「/Outputこれから、どうしますか?イーブイEnd」
「…もう機械出力は要らない?それもそうですね。」
「旅…ですか?」
「そう、ですね。思えばポケモンってストーリーを旅するかランクマで対戦するかのゲームではありますし。…レッドにも邪神にも勝ったこの私が、今さら対戦するというのもおかしな話です。」
「どちらへ行きますか?え、私が決めていい?そう、ですね…」
「西!ジョウトよりさらに西!」
ポケットモンスターの世界…この不思議な不思議な世界で、まだ見ぬ地の冒険を求め、転生アイドルはパートナーを抱えあげた。
まだ始まったばかりだ。言祝アリアの人生も、コーシン地方の歴史も。