アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

13 / 108
前回までの転生ポケモンアイドルは...

 日本から転生した元アイドル、言祝アリア。数年前戦乱を駆け抜けた元歌姫、アリア・カナサシ。2人はカナサシジムリーダー兼だいぐうじツクバネの命によってジム巡りの旅をしている。

 キナリタウンに向かう途中で保護した、痛めつけられたチルット。その影には「弱い野生ポケモンをとにかくたくさん痛めつけることで経験値を上げろ」というレッスンテキストの流布があった。これを打ち消すためには、まっとうに鍛えたトレーナーがジムリーダーコヒガンに勝たなければならない…言祝アリアはポケモン達と特訓を開始し、そしてそんなある日...?


♪12 新米トレーナーのレッスン2 「邪道と正道」

ー*ー

 

 「先生、ありがとうだぜ。」

 

 「礼を言う事ではないですね。

 

 多くのすぐれたトレーナーを生み出すのは私のライフワークですから。

 

 さあ、ジムリーダーに挑んできなさい。」

 

ー*ー

 

 「ジムリーダー、負けました。おそらく他のジムトレーナーたちもやられるでしょう。

 

 久しぶりにチャレンジャーがそちらへ行きそうです。」

 

 3連戦の最初の一人のジムトレーナーから館内無線を受け、コヒガンは防犯カメラの映像を確認した。

 

 どこにでもいそうな、駆け出しのポケモントレーナーの背中...

 

 「…あ」

 

 「どうしました、歌姫様。」

 

 ぽかんと口を開けたアリア・カナサシに、ジムリーダーのコヒガンが問う。

 

 「彼、間違いない。後姿がまったくいっしょだわ。

 

 チルットを傷めつけて飛び去って行ったトレーナーと。」

 

 「…ということは、あのレッスンテキストを読んで実践しているトレーナー…

 

 またですか…

 

 …いやしかし?」

 

 コヒガンが、何か思い出したかのように首をひねる。

 

 「何か、彼について気になることでもあるの?」

 

 「あのチルット、あと1日でもあればチルタリスに進化するはずです…

 

 それくらいには強い野生ポケモンを弄ぶかのようにいじめることができたトレーナー、レッスンテキスト以外にも何か...?」

 

 「…さあ?

 

 貴方には関係のないことよ。」

 

 あっけらかんと、アリア・カナサシは興味なさげに言い放つ。

 

 「はい?歌姫様、それはどういう…?」

 

 アリア・カナサシは答えず、去っていく。

 

 コヒガンに、彼女を追う暇はなかった。いつ挑戦者が来るか、わからなかったからだ。

 

ー*ー

 

 アリア・カナサシが向かった先は、ジム裏でイーブイ、アシマリ、そしてチルットと特訓を続けていた言祝アリアのところだった。

 

 「コトホギさん、例の…

 

 …チルットを痛めつけた悪ガキ、ジムに来たわ。ジムトレーナーたちを突破して、ジムリーダー戦に出そう。」

 

 そんな情報を伝えられても、どう答えるかどころかどんな気持ちを抱けばよいかすらわからず困るー言祝アリアとチルットは顔を見合わせる。

 

 そして、アリア・カナサシから告げられたのは、思いもよらぬ一言だった。

 

 「コトホギさん。貴女がジムトレーナーとして、彼を止めなさい」

 

 「/Outputチルットのトラウマを克服するため、ですか?End」

 

 「それはそう。」

 

 散々に痛めつけられた相手にうち克てば、もう何も怖がらなくていいはずーそれは机上の空論である。ただ、アリア・カナサシは言祝アリアという元アイドルの可能性を信じていた。だから一つだけ、アドバイスとも言えないアドバイスを囁いた。

 

 「そのチルット、後1日もあれば進化できるそうね。」

 

 (え、そうなの…?というか、それが何か…)

 

 「それはそうと、もっと大きな理由があるわ。

 

 あの状態のジムリーダーに、ジム戦はさせられない。

 

 勝てるかもしれない。いえきっと勝てるでしょう。けれどほころびは隠し切れないから。」

 

 そのほころびに付け込もうと多くの人が下克上をたくらむし、そうは言ってもコヒガンという怪物トレーナーが正道では勝ちえない相手である以上、邪道が蔓延り続けることは避けられない。

 

 「貴女が、チャレンジャーに勝ちなさい。

 

 正しく鍛えられたトレーナーの弱かったポケモンが、手段を選ばす弱い者いじめで強くなったトレーナーに勝った、その風評を作りなさい。

 

 ポケモンを傷つけ使い捨てるような邪道では勝利はつかめないと、示すのよ。」

 

ー*ー

 

 迷いがないわけじゃない。

 

 恐れがないわけじゃない。

 

 怯えなら私にもチルットにもこんなにたくさんある。

 

 「最後のジムトレーナーって言うからどんな奴かと思ったけど、なんだ、大したことなさそうじゃん。」

 

 …でも、例えそれがステージでなくてバトルコートだとしても、舞台の上の私たちに失敗は許されないし、踊り始めることをためらってなんていられないのです。

 

 「/Output一か八か、勝ちましょう、チルットEnd」

 

 「…そのチルット、どっかで見たよーな...

 

 …気のせいか、あはは。」

 

 …覚えていない…つい数日前なのに...

 

 …それほどたくさんのポケモンを痛めつけたのでしょうか。

 

 「/Outputチルット、あなたのぶんまで、私も震えています。怯えています。

 

 だから、あなたは私の勇気の分だけ、私と、戦ってくださいEnd」

 

 「そのチルットで?舐めすぎだろ。

 

 斬り裂くぞ、ストライク!」

 

 …例の、チルットをいじめたポケモン…!

 

 【悪ガキが 勝負を 挑んできた!】

 

ー*ー

 

 「/Outputチルット、コットンガード!End」

 

 「ストライク、つるぎのまいだぜ!」

 

 「/Outputもう一度コットンガード!End」

 

 チルットの羽毛が、ツヤッツヤに輝き膨らむ。

 

 「遅いっ!

 

 つばさでうて!」

 

 一閃ーストライクが駆けた。

 

 綿毛を散らしてチルットの姿が吹き飛び、地面に叩きつけられる。

 

 (威力がありすぎます!コットンガード二重で緩衝しているのに!)

 

 「/Outputりゅうのいぶき!End」

 

 チルットが、りゅうのいぶきの反動で勢いよく空へと舞い上がる。ワザをそう使うとは思っていなかったのか、ストライクもあっけにとられ見送るばかり。

 

 チルットはそのままおいかぜで飛行速度を上げていく。

 

 「つばさでうつ」

 

 「/OutputりゅうのいぶきEnd」

 

 ストライクが再び一閃ーそれを見越して同時に言祝アリアが指示を出力した。

 

 迸るドラゴンエネルギー。けれどストライクはそれすら斬り裂いて、チルットを再び地面へと叩き飛ばす。車に轢かれたようなもので、チルットはもうボロボロだった。

 

 「おいおいおい、手応えがなさすぎるぜ。うっかり殺っちまいそうだ。」

 

 (なんでこんなに強い…?もう少し耐えられると思っていましたのに…!)

 

 「ああ?もしかして、進化系でもないただのストライクだから、大したことがないと思ってたとか?

 

 それは甘いぜ。俺のストライクはそんじょそこらの進化前ポケモンじゃねーんだ。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。