アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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♪14 熟練トレーナーたちのレッスン4「無色な道がオフホワイトに染まる時」

ー*ー

 

 「あのバトル、見てた?」

 

 「…はい。

 

 正直、コトホギさんが勝てると思っていませんでした。あれが、歌姫様が見出した、希望の可能性ですか?」

 

 「ええ。アリア・コトホギは大きな可能性を秘めている。

 

 講和から4年、まだ私は、諦めていないわ。これが、今の私の、未来への道。

 

 それで貴方は、どうするの?ジムリーダーとしてトレーナーを育て導き率いるのが、貴方が押し付けられた道で、望んだ道でないのなら…」

 

 「…いいえ。ぺーぺーの彼女に負けていられない。

 

 もう、どうやってなったのかなんて、7年も前の繰り言です。一人前のジムリーダー、やって見せます!」

 

 「じゃあ、行きましょうか。」

 

 アリア・カナサシとコヒガンは、ボールを片手に、扉を勢いよく押し開けた。

 

ー*ー

 

 「あなたが、レッスンテキストの著者だったんですね?」

 

 「ジムリーダー、何をおっしゃいますか?」

 

 「おかしいと思っていたのよ。

 

 いくらコヒガンが、強さだけで擁立されたジムリーダーだからって、彼の警句が容れられずに出所不明の胡乱なテキストが出回り続けるわけないもの。しかもテキストの使用者は結局まだジムリーダーに勝ててない(より強くなれてない)のにね。」

 

 数時間前に館内無線で悪ガキに敗北したことを伝えてきたばかりの、1番目のジムトレーナー…彼女を指さし、アリア・カナサシはそう言い放った。

 

 「…だから、私があのレッスンテキストの頒布者だと?」

 

 「内部の犯行なら、ジムリーダーである私の発言の否定も、私に勝てなかったトレーナーの激励もできる…盲点でした。」

 

 「それはちょっと状況証拠が過ぎますよ、歌姫様、ジムリーダー。なにか証拠が」

 

 「その言葉を口にした時点でギルティーよ、来なさい、サーナイト。」

 

 「これだからやることなすこと気が早い人は…

 

 ピジョット、続きますよ。」

 

 証拠など知ったことか、戦友2人はボールを投げた。

 

 「ちっ…誤魔化しきれないか…

 

 カモン!」

 

 パチン!ジムトレーナーが指を弾く。

 

 「ここでシラを切り通せていたなら歌姫様から逃げおおせたかもしれないのに…」「こんな鎌掛けに嵌まるようではどのみち大成しないわよ。」

 

 「余裕こいていられるのも今のうち…

 

 …かかりなさい!」

 

 バタン!狭いバトルコートの4辺の扉と窓が勢いよく開かれ、十数人の少年少女がなだれ込んでくる。その全員が複数のボールを握りしめ、目をギラつかせていた。

 

 「キナリタウン最強のトレーナーと思っておいでのようですが、人を育てる強さなら、私の方が上ですよ、ジムリーダー。

 

 私の強さの前に、貴方たち2人ぽっちの強さが、どこまで立ち向かえますかね?

 

 カモン、ミルタンク!」

 

 「先生に続け!フシギバナ!」「コジョンド!」「グラエナ!」「カイリュー!」「ボーマンダ!」「ロトム!」「フラージェス!」

 

 【ジムトレーナー扇動者と悪ガキたちが 勝負をしかけてきた!】

 

 「あら大盤振る舞い。せっかくなら私たちも、音程を一つ上げるわよ(メガシンカ)!」「ピジョット、本気を出すとしましょうか(メガシンカ)…!」

 

ー*ー

 

 「ジムリーダーコヒガン、あなたの弱みは知っています。  

 

 キナリタウン防空戦の英雄…ですが、こんな狭い室内ではピジョットだろうがメガピジョットだろうが身動きは取れないでしょう!」

 

 「で、私はどうするつもり?」

 

 「それはもちろん…数で押しつぶす!」

 

 【ミルタンクの はかいこうせん!】

 

 【フシギバナの ハードプラント!】

 

 【コジョンドの きあいだま!】

 

 【グラエナの かえんほうしゃ!】

 

 【カイリューの はかいこうせん!】

 

 【ボーマンダの はかいこうせん!】

 

 【ロトムの かみなり!】

 

 【フラージェスの ムーンフォース!】

 

 光線が殺到する。それも、全方位から絶えることなく。

 

 ジムそのものが爆散するのではないかと錯覚してしまうほどの猛烈な光の驟雨。

 

 たっぷり1分弱、30を超えるポケモンたちから発せられた光爆が続く。

 

 「先生!これはやりましたよ!」

 

 もうもうと立ち込める煙が、少しずつ薄れていく。

 

 「さすがにやりすぎては罪になりかね…

 

 は?」

 

 まったく無傷のメガサーナイトEXと、その上で羽ばたくこれも無傷なメガピジョットEXーそれが、トレーナーたちの目に映ったもので。

 

 「先生、戦果を確認するまで気を抜くなって、教えなかったの?」

 

 【メガサーナイトEXの ブリリアントアロー!】

 

 【メガピジョットEXの マッハサイクロン!】

 

 引き絞られたフェアリエネルギーの矢が、はっしと撃ち放たれる。

 

 暴風そのものと化したメガピジョットEXが、目に止めることもできぬ速度で吹きすさぶ。

 

 「そんな、馬鹿な…!

 

 教え子たちのポケモンが、何十万体の野生ポケモンの血の上に立っていると…!?」

 

 「そんなだから有象無象なのよ。

 

 コヒガン、言ってやりなさい。」

 

 何十万人を、何百万体いや何千万体のポケモンを、コヒガンがかつて守ろうとしたか…アリア・カナサシにとって、それに比べればこんなのは鼻で嗤うべき話で。

 

 「守る強さ、敵を退ける強さ…いくらあっても足りないということはありません。そして、そのために強くなりたいのではないのですか?

 

 傷つけ攻め侵す、そのような強さに屈することが、このキナリタウンにて、許されると思いますか?」

 

 【メガピジョットEXの ぼうふう!】

 

 今度こそ、キナリジムは爆風とともに大破を余儀なくされた。

 

ー*ー

 

 悪ガキたちの補導を見届け、元アイドルとジムリーダーは瓦礫の上で向かい合っている。

 

 「/Output大丈夫でしたか!?End」

 

 「はい。コトホギさんこそ、身内の恥だったのに苦労をかけてすみません。」

 

 言祝アリアにコヒガンが頭を下げる。

 

 「/OutputいえいえそんなEnd」

 

 「そういうわけにもいきません。

 

 強い心で困難を突破し、多くのポケモンたちを救い、新たな可能性を示したあなたを、大いに認め、称えなくては、強きを育て正しきを導き鍛えを認めるジムリーダーとしての誇りに関わります。」

 

 (それって…)

 

 「アリア・コトホギ、あなたに、キナリジムジムバッジを授けます。」

 

 作られてから4年間、誰の手にも渡らず引き出しに死蔵されていた立派なジムバッジが、言祝アリアの掌にうやうやしく授けられた。

 

ー*ー

 

 アリア・コトホギが、私が望んだとおりにジムチャレンジャーを撃退して、コヒガンにジムバッジを授けられる…その光景を見て、私はその時決めたの。

 

 ユキコシの大悪党クワズが「世の中の物はなんでも代替できる」と言ったように。私という偶像(現人神)を代替する偶像(アイドル)を育てようと。

 

 アリア・コトホギをいつか、シンシューのために歌わせよう、そう決めたの。

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