アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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前回までの転生ポケモンアイドルは...

 日本から転生した元アイドル、言祝アリア。数年前戦乱を駆け抜けた元歌姫、アリア・カナサシ。2人はカナサシジムリーダー兼だいぐうじツクバネの命によってジム巡りの旅をしている。

 キナリタウンで「野生ポケモンいじめでのレベリング推奨レッスンテキスト」問題を解決しジムバッジを得た言祝アリア。次に訪れたウスモエの地で、キーストーンとチルタリスメガストーンを求め、6年前に戦争で廃鉱山となった山を訪れる。

 だが、キーストーンを隠した金庫を開けに翌日再びやってきてみれば、そこはマフィアの占拠するところとなっていて...


♪17 異世界でもジャパニーズマフィアの国際化が進んでいるらしい

ー*ー

 

 大金庫前。行って開けようとしていたところに、人相悪そうな人たちが5人、たむろしてます。

 

 「嬢ちゃん、いい年なんだから背後には気をつけたほうがいいぜェ。」

 

 尾けられてたんですね…パパラッチみたい…

 

 …でもどうして?私もストーカーには敏感ですし、歌姫さんはサーナイトのサイコパワーがあるんですよ?

 

 「なんてったって悪のプロだからなァオレたち。サイコパワーにテレパシー、もちろん人間の第六感も、遮断する方法は用意してるぜェ?」

 

 

 「/Outputところで歌姫さん、ゴフク屋って?ロケット団残党は知ってますが、そんな名前じゃなかったような…End」

 

 「なにィ!?オレらゴフク屋を知らんだとォォ!?」

 

ー*ー

 

 ポケモン世界には、たびたび悪の組織が誕生しては壊滅していく。多くは、その地方に眠る伝説ポケモンを狙い、その権能を悪用して独善的な目的を果たそうというボスのカリスマに惹かれた連中だ。彼らは伝説ポケモンの制御に失敗したり他のトレーナーにゲットされたりしてボスの大義に失敗し、そして散り散りになった残党も摘発されて消えていく。

 

 けれど、ボスのカリスマに頼らず維持され戦力も充分な支部組織があったら?ボスの大義を失った者に、新たな目的が与えられたら?残党を摘発からかくまい再び組織化するノウハウがあったら?

 

 シンシュー=コーシューの北、ユキコシ地方にはそれらすべてがあった。厳冬には雪に閉ざされポケモンも強いため、独立性の高く強力な支部が必要…そして、本部壊滅で残党化した様々な悪の組織ユキコシ支部に対して、営利という誰もが納得できる目的と、数百年の裏社会のノウハウを提供できる組織があったのだーそれすなわち、マフィア組織、ゴフク屋である。

 

ー*ー

 

 「ユキコシでいろんな組織喰ってるとは聞いてたけど、ここはユキコシじゃないわよ。ワカナエシティにでも帰れば?」

 

 「オレたちはロケット団残党閥でなァ。世界進出が夢なんだぜェ。」

 

 まあそれでなくとも最近のユキコシは締め付けが悪くていけねェからなァ…なんてうそぶきながら、男はモンスターボールをお手玉する。

 

 「で、どうすんだァ?

 

 いくらシンシューの英雄歌姫っつったって、まさか分裂できるわけもねェだろ。

 

 俺たちにァできるぜ。これが、組織の力で組織力ってもんだ。」

 

 スマホロトムがふわりと浮かんで見せ、その画面には砂防ダムの堤体の上で万歳してみせるーガラの悪い男が2人映っていた。

 

 「そうね。じゃあ私が砂防ダムに行ってそいつらを叩きのめしたら万事解決じゃない?」

 

 「嬢ちゃん抜きでこの大金庫を守りきれるんならな。別にオレたちはコイツを山肌ごと谷底に落として、ワカバタウンの海底に流れてきたのを拾ってもいいんだぜェ?」

 

 コーシュー地方には無理でも、ロケット団なら流れてきた金庫をサルベージするくらい容易い芸当だろう。なんと言ってもワカバタウンはロケット団の古巣ジョウト地方だ。

 

 「じゃあここで貴方たちを縛ってから、とか。」

 

 「砂防ダム側の入力装置を壊せば、もう誰にも金庫は開けられねェだろォ?」

 

 どうあっても、砂防ダム制御所のゴフク屋とこの金庫前のゴフク屋を同時に倒さなければならない…それどころか、英雄歌姫として知られるアリア・カナサシには、妙な動きを見せることすらできない…

 

 (私はこいつらを、金庫に指一本触れさせずに瞬殺できるわ。

 

 けど砂防ダムのゴフク屋のところまで行って帰ってくるのはさすがに小一時間はかかる。それまでダムを破壊せず待ってくれるわけない...それにここにコトホギさんを置いて行ったら悪党5人に負けるのは確実...

 

 …できる手は2つしか...でもそれは...)

 

 「答えは2つしかない、見えてるだろォ?

 

 1つ、尻尾を巻いて逃げ帰る。

 

 2つ、そこのトーシロ嬢ちゃんを砂防ダムに行かせる。ま、ギャンブルだよなァ?」

 

 (...コトホギさんが負ける可能性は...ここの5人の悪党に比べればマシだけど...扇動者に騙された悪ガキと葉訳が違う悪のプロ2人、負けて酷い目にあう可能性は決して低くない…

 

 …それに、コトホギさんが負けて捕まったら...)

 

 脳内でいくつかの可能性をシミュレートしアリア・カナサシが悩む…その答えが出るより前に、言祝アリアは、タブレット端末の音声出力ボタンを押していた。

 

 「/Outputわかりました、私が、砂防ダム制御所に行きますEnd」

 

 「さすがだなァトーシロの嬢ちゃん。でも、勇気と無謀は違うぜェ?

 

 歌姫の嬢ちゃんに迷惑をかけるかもしれねェって、わかってんのかァ?」

 

 「/Outputはい。

 

 私を砂防ダムにおびき寄せて、捕まえて人質にすれば、金庫の中身にも劣らない身代を歌姫さんに要求できる...そうでしょう?

 

 私は、アイドル言祝アリアは、ここで逃げるつもりはありません。ですから…最初から、一か八か、砂防ダムにいるあなた方のお仲間に勝てる方に賭ける、これしかありません!」

 

 「肝座ってんなァ。

 

 その喧嘩と意気、買ってやるぜェ。『貸し一つ』だ。」

 

 挑戦的な笑みを、ゴフク屋の賊は浮かべる。そして続く何事かを口にしようとするー前に、慌てて、本当にあわててアリア・カナサシが口を挟んだ。

 

 「コトホギさん!?そんな、せめてもう少し考えて!

 

 というか外つ国のヤクザの喧嘩買ってどうするの!?」

 

 「/Outputすみません歌姫さん、黙っていてください。

 

 …それに、ヤクザにも最低限の任侠くらい、ありますよね?End」

 

 「っ...!」

 

 ゴフク屋が貸しにすると言ったものを、逆に彼らのプライドを担保にして確約させる…アリア・カナサシも、そこまで言祝アリアがするのならこれ以上口を挟めなかった。

 

 「これは勇ましい嬢ちゃんだ。

 

 嬢ちゃんが無事に、砂防ダム側の解錠をできたなら、俺たちはおとなしくここを退いてやる。それで、貸し一つだ。

 

 無事じゃなきゃ...まあ何かを貸すほどのことはねェなァ。奪えばいい。」

 

 卑怯な条件だ。アリア・カナサシが本気を出せばここにいる賊5人くらいは即座に排除できるのだから、素直に退くことは別に大きな貸しにはなりえないというのに…彼らは、言祝アリアが勝てば素直に退く代わりに彼女とアリア・カナサシに貸し一つ、言祝アリアが負ければ金庫の中身プラス言祝アリアの身代をアリア・カナサシから取り立てようとしているわけである。

 

 「ロクでもないにもほどがあるわね。」

 

 アリア・カナサシはそう吐き捨てながら、船着き場へと駆け降りていく言祝アリアを見送った。

 

ー*ー

 

 「/Outputおいで、ラプラス!End」

 

 歌姫さんを心配させてしまいました。…歌姫さんには歌姫さんの考えがあって、損切りも選択肢だったでしょうし、というか私のためにここに連れてきたせいで隠していた金庫を見つけられてしまったわけですし…

 

 なぜ歌姫さんが私に入れ込んでくれるのかすら、私にはわかりません…声を出さなくてもいつの間にか私が魅了してしまっているのか、それとも単なる老後の余暇みたいなものか…でも、期待に応えるとまでは言わなくても、失望はさせないつもりです。

 

 「/Output上流、砂防ダムまでお願いします!End」

 

 私はアリア(独唱)、言祝アリア。ひとりでだって、声が出せなくたって、この世界でも私の舞台(ステージ)を輝かせて見せます。




次回の転生ポケモンアイドルは...

 一人、解錠コードを入力するため砂防ダム制御所へ向かった言祝アリア。

 「気づいちまったみてェだなァ。」「歌姫の嬢ちゃん、アンタが弱いものなら知ってるぜェ。」

 待ち受けていたのは、北より来たる狡猾なならず者たち。

 「逃げて!コトホギさん逃げて!」

 【アシマリは オシャマリに進化した!】

 そして、すべての齟齬がかみ合う…!

 ”私のファンに、なりたいですか?”

 「♪18 躊躇えばすぐに、選択は常に」 みんなもポケモンと、オンステージ!
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