アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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前回の転生ポケモンアイドルは...

 ウスモエジムに挑戦する言祝アリア。彼女を導いたアリア・カナサシは、戦乱で目立つ仕事をしなかったウスモエのジムリーダーに期待してはいなかった。

 しかしジムリーダーのホンミツは「言祝アリア&アリア・カナサシ両方を相手にするダブルバトルとしてのジム戦」「アリア・カナサシ最大の切り札たるメロエッタEXを、ほろびのうたで倒す」「初めてGXオーバーラップを使ったアリア・カナサシに対して、(メガ)オニゴーリEXでシンシューキュウコンGXを正面から倒しかける」という予想外を繰り返し、そして予想外は「ホンミツが、コーシュー地方の最新軍需物資であるGXマーカーを使用した」「ゲッコウガがゲッコウガGXとなった瞬間、ラプラスがワザもなしに気絶させられた」ことで最高潮に達した。

 ジムリーダーホンミツが手負いのキングドラと無傷のゲッコウガGX、アリア・カナサシが完全回復済みのシンシューキュウコンGX、そして言祝アリアが1度だけポケモンを出すことができる...このジム戦最終局面、2人のアリアは、ホンミツに何を見て、何を見せる...?


♪20 川は上流へも流れる(ウスモエタウンの諺。人が、川に逆らって遡ってでも、活発に行き来する様をさして。)

ー*ー

 

 「歌姫アリア様、君の覚悟を見せてくれ。俺の試練に応えてくれ。

 

 さあゲッコウガ、オーバーラップ!」

 

 地脈の力が満ち溢れてゲッコウガへと流れ込み、ゲッコウガの肢体から水と悪のエネルギーが迸る…と同時に、ゲッコウガの身体からみずしゅりけんが放出され、ラプラスを直撃、ラプラスを戦闘不能へと至らしめた。

 

 言祝アリアもアリア・カナサシも、出鼻をくじかれて呆然とする。

 

 「まずは一手、だ。」

 

 【ゲッコウガGX 特性:ふうましゅりけん

 

 登場時、みずしゅりけんを放出して軽微なダメージを与える】

 

ー*ー

 

 「/Outputチルタリス、すべて、託します!End」

 

 言祝アリアはモンスターボールを放り投げ、そして、虹色のディスクを掲げる。

 

 チルタリスの鶏冠に結び付けられたリボンに輝くメガストーンが、言祝アリアの胸元をネックレスとして彩るキーストーンが、メガシンカエネルギーで虹色に輝く。

 

 掲げられたEXエディッションプレートに共鳴して、チルタリスの全身からドラゴンエネルギーとフェアリーエネルギーが満ち溢れていく。

 

 【チルタリスは (メガ)チルタリスEXに M進化(メガシンカ)&オーバーラップした!】

 

 「/Outputコットンガード!End」

 

 「キュウコン、こごえるかぜ。」

 

 ゲッコウガと言えば専用ワザのみずしゅりけん…目にも止まらぬ遠距離攻撃をどうやって躱し、あるいは耐えるか…そう考え、(メガ)チルタリスEXとシンシューキュウコンGXは守りを固めながらゲッコウガGXとキングドラを見つめる。

 

 「ゲッコウガ、おぼろぎり」

 

 ー直後、ゲッコウガの姿が、水霞となって消えうせた。

 

 アリア・カナサシが舌打ちするー直後、前触れなく突然出現した水霞の刃が、(メガ)チルタリスEXを縦に斬りつけた。

 

 「しのびポケモンの名に恥じないわね…」

 

 言祝アリアが頷きながら、高速でタブレット端末をフリックする。

 

 「/Outputチルタリス、専用ワザを!End」

 

 (メガ)チルタリスEXの ミストパージ!】

 

 綿毛が散って霧となり、光を反射してきらめく。きらめきを浴びた者は...シンシューキュウコンGXは首をぶるぶる気持ちよさそうに震わせ、ゲッコウガGXとキングドラはがくりと姿勢を崩した。

 

 (専用ワザ「ミストパージ」...大きなダメージを与えつつ味方を少しずつ回復できるこのワザなら、長期戦に耐えられます…けれど、結局相手が神出鬼没のままではジリ貧です…)

 

 「マジカルシャインよ!」

 

 「キングドラ、ラスターカノン。ゲッコウガ、おぼろぎり」

 

 (な、ドラゴンタイプのキングドラだからと甘く見ていましたが、はがねワザ持ちでしたか!)

 

 「/Outputチルタリス、もう一度ミストパージです!End」

 

ー*ー

 

 ゲッコウガGXの姿が、再び水霞となって消えうせる。専用ワザ「おぼろぎり」はやはり、忍者よろしくドロンと消えて攻撃する、ゴーストダイブと同系統のワザらしい。

 

 高速で宙を移動しながらキングドラがラスターカノンを撃ち荒らす。

 

 シンシューキュウコンGXが全身をフェアリーオーラで瞬かせ、(メガ)チルタリスEXも綿を光の霧として散らす。

 

 直後、水霞の刃がどこからともなく現れ、(メガ)チルタリスEXを袈裟斬りにした。

 

 無数に綿毛が舞い散る。

 

 水霞が一瞬だけゲッコウガの姿をなし、直後再び消えうせる。未だキングドラからのラスターカノン爆撃も続いている。もはやシンシューキュウコンGXはマジカルシャインを発動させる余裕すらなくひたすら二重弱点攻撃(ラスターカノン)から逃げ回るしかなくなっていた。

 

 再び水霞が出現し...今度は、それはシンシューキュウコンGXの目の前だった。

 

 【ゲッコウガGXの おぼろぎり!】

 

 水の刃が振り下ろされ…ラスターカノンを回避するため走り回っていたシンシューキュウコンGXは、唐突に出現したそれを避けることはできず、刃に真正面から突っ込むこととなって倒れ伏す。

 

 斬りつけられて寸秒動きを止めたシンシューキュウコンGXの真後ろに、キングドラが回り込み、ラスターカノンをチャージする。

 

 通常ポケモンとステータス2倍のポケモンGXという差こそあれど、二重弱点攻撃を弱ったところにぶつけられて、無事で済むはずがない...

 

 「キュウコンっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あー、キングドラ、ストップ。」

 

 ホンミツは、大声で叫んだ。

 

 キングドラが、今にも撃ち放とうとしていたラスターカノンのビームを慌てて真上へと射線変更する。

 

 「…はい?」(え?)

 

 「ここでジム戦を終えちゃ興ざめだし、目的も果たせてないよな。

 

 君らが俺を、俺が君らを理解する、その上で俺が君らを認めるか判断する。それが、ジムバトルってもんだろ。」

 

ー*ー

 

 「歌姫アリア様、君はどうしたい?何を目指している?それともまだ迷い彷徨っているのか?」

 

 返答がないことが何よりの返答だと、ホンミツは語り続ける。

 

 「君はかつて、そして今も、俺たちのことがわからないんだろ?」

 

 コクリ、アリア・カナサシは頷く。

 

 「そうね。私にとってこのバトルは予想外の連続だわ。それは...

 

 …あの戦乱でウスモエタウンにいだいたイメージ、そして何の印象も残らない程度という貴方へのイメージ、その予想を外されたから予想外なのよ。」

 

 そして、困惑を伴う予想外は、敗北寸前まで追い詰められたことで頂点に達している…

 

 「君が俺たちの精神性を理解してないんだから、俺たちの行動も思考もわかるわけないし、正しく評価できるはずもない。」

 

 「/Output相互理解の前提知識がない...ってことですか?End」

 

 その言い方はいいな…などとホンミツは呟き、ある格言を口にした。

 

 「『川は上流へも流れる』...この街の格言だ。

 

 俺たちは川を通じて、上はキナリ、カナサシへ、そして下はワカバ、それどころか海の向こう全世界へとつながっている。俺たちは川を上に下に行き交って、自由闊達に生きることを理想としている。

 

 君らにとってはコーシューは敵かもしれない。けどな、世界に目を向ければ、これ(GXマーカー)は手に入らないわけじゃないんだ。」

 

 言祝アリアがイーブイと必死に戦ってコーシューの賊から奪取し、エクリプスタウンの考案に捕まる原因となった黒い石板(GXマーカー)。それと同じものをこの街の主はひらひらと揺らし、あまつさえ外の地方から購入したと示唆してみせた。

 

 「敵とか味方とかに縛られない、行きたいところへ行き売りたいものを売り買いたいものを買う、そうやって生きていきたい…この川にだけは縛られるけどな。でも、俺たちはこの街とこの川のそういうところを愛してる。」

 

 ウスモエタウンが戦乱の間まとまりも協力性もなかったのは、そういうことだ。元から、戦乱にも、コーシューとの対立にも、それどころかウスモエタウン籠城戦そのものにすら、この街と川を拠点に自由に生きる住民たちは焦点(ピント)があっていなかったのだ。目的すらまとまっていないのに手段がまとまるはずもないのである。

 

 「…納得はともかく、理解はしたわ。

 

 あのレンタル屋の人が言うことがこの街の一端で、このバトルがこの街の本当の強さだって。」

 

 今まで、何もわかっていなかったのだ。ウスモエも、この街のジムリーダのことも。

 

 「さっきまでの君とおんなじだ。俺には歌姫様のことがわからない。

 

 シンシューを守るため、まとめるため、前に進ませるためにこの地方を3年駆けずり回って、力尽きた。そのはずの歌姫様が、なぜ今になって、拾った素人トレーナーとジム巡りをしているんだ?

 

 それも、明らかに自分に枷をはめて。苛烈で果断で勇敢だったあの頃はなかったかのように。

 

 どこを目指している?それとも…

 

 …龍神から借りた力を持て余しながら惰性で彷徨い続ける戦乱の落とし子(旧時代の遺物)なら、ここで引導を渡された方が身のためだろうに。」

 

 正真正銘の旧時代のたる、旧豪族からのジムリーダー昇格組…そんなホンミツは、いや、彼だからこそ、たった4年前の戦乱の英雄に皮肉を吐く。

 

 アリア・カナサシは昏くうつむいた。

 

 「そうかもしれない。私はまだ、この先歩むべき未来の選択を、定めきれないでいる。

 

 この旅の先にどれだけの可能性があるのかすら、わからないでいる。」

 

 「ならば...

 

 ゲッコウガ!」

 

 ゲッコウガの姿が、再び水霞となって消えうせる。

 

 …アリア・カナサシは、その時やっと、顔を上げた。不敵な表情で。

 

 「それでも!」

 

ー*ー

 

 ゲッコウガは姿をドロンと消し、キングドラは高速で飛び回っている。

 

 「それでも!

 

 コトホギさんを見て、迷い続けてなんていられないわよ。

 

 がむしゃらこのシンシューを回った先にどんな可能性があるかはわからないけど、きっと未来に可能性があると信じて、今を前進するだけだわ。

 

 そうよね?」

 

 「/Outputそうよね、と言われても、私にも、打開策はさっぱり…End」

 

 水霞として現れては攻撃してすぐに消えるゲッコウガGXと、好き放題ラスターカノンを撃ち荒らしているキングドラ…根本的な対応策は、キングドラならまだしもゲッコウガGXに対しては思いつくことすらできない。

 

 「ええ、まあそうね。

 

 動き出したゲッコウガGXにダメージを与えられるのは、攻撃のため出現するほんの一瞬…けれど向こうは必ずこちらのふいをついて出現するから、反撃を与えるタイミングもポイントもわからない。

 

 方法は一つよ。」

 

 タイミングがわからないならずっと攻撃し続けるしかない、ポイントがわからないなら範囲攻撃するしかない…要するに、求められているのは、必要なのは、永続範囲攻撃だ。

 

 「…手段が思いつかなくたってかまわない。

 

 私たちはもう、迷わない。

 

 私たちにできることは、私たちの音楽だけ、そうでしょう?」

 

 ーなんてったって私たちは歌姫(アイドル)なんだから。

 

 (歌姫さん、本当に、それはこのバトルのこと...?

 

 …もっと大局的な、未来のほうを視ているような、そんな瞳…)

 

 「/Outputわかりました。なら、こうすべきなんだと思います。

 

 チルタリス、歌いつないで!エコーボイス!End」

 

 「キュウコン!響きあわせなさい、エコーボイス!」

 

 М(メガ)チルタリスEXの エコーボイス!】

 

 シンシューキュウコンGXの エコーボイス!】

 

 地を震わせるような鳴き声のシンフォニーが、幾重にも響き渡った。

 

ー*ー

 

 変化は、ゆっくりと現れた。

 

 何もいないはずの空中が、ブレ、何かの影を地上に映す。やがてそれはぼんやりとした何かになり、朧な像となり、そして、ズルっと、水霞が地に墜ちた。

 

 ゲッコウガGXが、片方の耳をふさぎながら膝をつく。水霞を纏い姿を不明瞭とし、残像すら残さない超速機動を、意識の隅を縫って行い…そうしてドロンと姿を消しても、あまねく方位に染み渡りながらいつまでも交互に響き合い続ける2匹のエコーボイスからは逃れられなかったのだ。

 

 一刻も早くエコーボイスを止めなければ…反撃しようとゲッコウガGXは立ち上がり…そして初めて気づいた。視界の端に映る仲間、キングドラが、既に意識を失い堕ちていることに。

 

 「隙だらけのはずだ!もう一度おぼろぎり!」 

 

 【ゲッコウガGXの おぼろぎり!】

 

 再びゲッコウガGXが水霞と化して消える。

 

 「/Output音色を止めないでください!End」

 

 М(メガ)チルタリスEXの背の上、空気が揺らぎ、水霞が現れ…それでもМ(メガ)チルタリスEXは、歌うのを止めない。

 

 水刃が綿毛を飛び散らせる。さえずりながらМ(メガ)チルタリスEXが墜落する。再びゲッコウガGXが姿を消す。飛び散った綿毛が音波に乗ってバトルコート中を漂う。

 

 アリア・カナサシは、綿毛舞うバトルコートをじっとにらみ…

 

 「読めたわ!

 

 キュウコン、3秒後、真正面!」

 

 ーゲッコウガGXの居場所に皆目見当がつかなくとも、彼が動き回れば綿毛が吹き惑い、なんとなくの移動方向を教えてくれる。

 

 ー超速機動といえど、いやだからこそ、動きに規則性が存在する。

 

 シンシューキュウコンGXの ムーンフォース!】

 

 ゲッコウガGXは、莫大な月光の照射に自ら飛び込んで、壁面へと叩きつけられ、そこで力尽きた。

 

ー*ー

 

 「君らは、思ったより屈折していて、思ったより愚直だな。

 

 敬意を表そう。これが、ウスモエジムをクリアしたあかし、アクエリアスバッジだ。」

 

 「/Outputありがとうございます!End」「どうも。」

 

 「…まだ可能性を絞ることなくがむしゃら進み続けるなら、何度だって未来が凍てつき閉ざされているかもしれない。

 

 だが、そうだな…君らの旅路、無数の可能性、川も祝福してくれるよう祈っているよ。」

 

 

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