アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜 作:十二の子
ウスモエジムに挑戦する言祝アリア。彼女を導いたアリア・カナサシは、戦乱で目立つ仕事をしなかったウスモエのジムリーダーに期待してはいなかった。
しかしジムリーダーのホンミツは「言祝アリア&アリア・カナサシ両方を相手にするダブルバトルとしてのジム戦」「アリア・カナサシ最大の切り札たるメロエッタEXを、ほろびのうたで倒す」「初めてGXオーバーラップを使ったアリア・カナサシに対して、
ジムリーダーホンミツが手負いのキングドラと無傷のゲッコウガGX、アリア・カナサシが完全回復済みのシンシューキュウコンGX、そして言祝アリアが1度だけポケモンを出すことができる...このジム戦最終局面、2人のアリアは、ホンミツに何を見て、何を見せる...?
ー*ー
「歌姫アリア様、君の覚悟を見せてくれ。俺の試練に応えてくれ。
さあゲッコウガ、オーバーラップ!」
地脈の力が満ち溢れてゲッコウガへと流れ込み、ゲッコウガの肢体から水と悪のエネルギーが迸る…と同時に、ゲッコウガの身体からみずしゅりけんが放出され、ラプラスを直撃、ラプラスを戦闘不能へと至らしめた。
言祝アリアもアリア・カナサシも、出鼻をくじかれて呆然とする。
「まずは一手、だ。」
【ゲッコウガGX 特性:ふうましゅりけん
登場時、みずしゅりけんを放出して軽微なダメージを与える】
ー*ー
「/Outputチルタリス、すべて、託します!End」
言祝アリアはモンスターボールを放り投げ、そして、虹色のディスクを掲げる。
チルタリスの鶏冠に結び付けられたリボンに輝くメガストーンが、言祝アリアの胸元をネックレスとして彩るキーストーンが、メガシンカエネルギーで虹色に輝く。
掲げられたEXエディッションプレートに共鳴して、チルタリスの全身からドラゴンエネルギーとフェアリーエネルギーが満ち溢れていく。
【チルタリスは
「/Outputコットンガード!End」
「キュウコン、こごえるかぜ。」
ゲッコウガと言えば専用ワザのみずしゅりけん…目にも止まらぬ遠距離攻撃をどうやって躱し、あるいは耐えるか…そう考え、
「ゲッコウガ、おぼろぎり」
ー直後、ゲッコウガの姿が、水霞となって消えうせた。
アリア・カナサシが舌打ちするー直後、前触れなく突然出現した水霞の刃が、
「しのびポケモンの名に恥じないわね…」
言祝アリアが頷きながら、高速でタブレット端末をフリックする。
「/Outputチルタリス、専用ワザを!End」
【
綿毛が散って霧となり、光を反射してきらめく。きらめきを浴びた者は...シンシューキュウコンGXは首をぶるぶる気持ちよさそうに震わせ、ゲッコウガGXとキングドラはがくりと姿勢を崩した。
(専用ワザ「ミストパージ」...大きなダメージを与えつつ味方を少しずつ回復できるこのワザなら、長期戦に耐えられます…けれど、結局相手が神出鬼没のままではジリ貧です…)
「マジカルシャインよ!」
「キングドラ、ラスターカノン。ゲッコウガ、おぼろぎり」
(な、ドラゴンタイプのキングドラだからと甘く見ていましたが、はがねワザ持ちでしたか!)
「/Outputチルタリス、もう一度ミストパージです!End」
ー*ー
ゲッコウガGXの姿が、再び水霞となって消えうせる。専用ワザ「おぼろぎり」はやはり、忍者よろしくドロンと消えて攻撃する、ゴーストダイブと同系統のワザらしい。
高速で宙を移動しながらキングドラがラスターカノンを撃ち荒らす。
シンシューキュウコンGXが全身をフェアリーオーラで瞬かせ、
直後、水霞の刃がどこからともなく現れ、
無数に綿毛が舞い散る。
水霞が一瞬だけゲッコウガの姿をなし、直後再び消えうせる。未だキングドラからのラスターカノン爆撃も続いている。もはやシンシューキュウコンGXはマジカルシャインを発動させる余裕すらなくひたすら
再び水霞が出現し...今度は、それはシンシューキュウコンGXの目の前だった。
【ゲッコウガGXの おぼろぎり!】
水の刃が振り下ろされ…ラスターカノンを回避するため走り回っていたシンシューキュウコンGXは、唐突に出現したそれを避けることはできず、刃に真正面から突っ込むこととなって倒れ伏す。
斬りつけられて寸秒動きを止めたシンシューキュウコンGXの真後ろに、キングドラが回り込み、ラスターカノンをチャージする。
通常ポケモンとステータス2倍のポケモンGXという差こそあれど、二重弱点攻撃を弱ったところにぶつけられて、無事で済むはずがない...
「キュウコンっ!」
「あー、キングドラ、ストップ。」
ホンミツは、大声で叫んだ。
キングドラが、今にも撃ち放とうとしていたラスターカノンのビームを慌てて真上へと射線変更する。
「…はい?」(え?)
「ここでジム戦を終えちゃ興ざめだし、目的も果たせてないよな。
君らが俺を、俺が君らを理解する、その上で俺が君らを認めるか判断する。それが、ジムバトルってもんだろ。」
ー*ー
「歌姫アリア様、君はどうしたい?何を目指している?それともまだ迷い彷徨っているのか?」
返答がないことが何よりの返答だと、ホンミツは語り続ける。
「君はかつて、そして今も、俺たちのことがわからないんだろ?」
コクリ、アリア・カナサシは頷く。
「そうね。私にとってこのバトルは予想外の連続だわ。それは...
…あの戦乱でウスモエタウンにいだいたイメージ、そして何の印象も残らない程度という貴方へのイメージ、その予想を外されたから予想外なのよ。」
そして、困惑を伴う予想外は、敗北寸前まで追い詰められたことで頂点に達している…
「君が俺たちの精神性を理解してないんだから、俺たちの行動も思考もわかるわけないし、正しく評価できるはずもない。」
「/Output相互理解の前提知識がない...ってことですか?End」
その言い方はいいな…などとホンミツは呟き、ある格言を口にした。
「『川は上流へも流れる』...この街の格言だ。
俺たちは川を通じて、上はキナリ、カナサシへ、そして下はワカバ、それどころか海の向こう全世界へとつながっている。俺たちは川を上に下に行き交って、自由闊達に生きることを理想としている。
君らにとってはコーシューは敵かもしれない。けどな、世界に目を向ければ、
言祝アリアがイーブイと必死に戦ってコーシューの賊から奪取し、エクリプスタウンの考案に捕まる原因となった
「敵とか味方とかに縛られない、行きたいところへ行き売りたいものを売り買いたいものを買う、そうやって生きていきたい…この川にだけは縛られるけどな。でも、俺たちはこの街とこの川のそういうところを愛してる。」
ウスモエタウンが戦乱の間まとまりも協力性もなかったのは、そういうことだ。元から、戦乱にも、コーシューとの対立にも、それどころかウスモエタウン籠城戦そのものにすら、この街と川を拠点に自由に生きる住民たちは
「…納得はともかく、理解はしたわ。
あのレンタル屋の人が言うことがこの街の一端で、このバトルがこの街の本当の強さだって。」
今まで、何もわかっていなかったのだ。ウスモエも、この街のジムリーダのことも。
「さっきまでの君とおんなじだ。俺には歌姫様のことがわからない。
シンシューを守るため、まとめるため、前に進ませるためにこの地方を3年駆けずり回って、力尽きた。そのはずの歌姫様が、なぜ今になって、拾った素人トレーナーとジム巡りをしているんだ?
それも、明らかに自分に枷をはめて。苛烈で果断で勇敢だったあの頃はなかったかのように。
どこを目指している?それとも…
…龍神から借りた力を持て余しながら惰性で彷徨い続ける
正真正銘の旧時代のたる、旧豪族からのジムリーダー昇格組…そんなホンミツは、いや、彼だからこそ、たった4年前の戦乱の英雄に皮肉を吐く。
アリア・カナサシは昏くうつむいた。
「そうかもしれない。私はまだ、この先歩むべき未来の選択を、定めきれないでいる。
この旅の先にどれだけの可能性があるのかすら、わからないでいる。」
「ならば...
ゲッコウガ!」
ゲッコウガの姿が、再び水霞となって消えうせる。
…アリア・カナサシは、その時やっと、顔を上げた。不敵な表情で。
「それでも!」
ー*ー
ゲッコウガは姿をドロンと消し、キングドラは高速で飛び回っている。
「それでも!
コトホギさんを見て、迷い続けてなんていられないわよ。
がむしゃらこのシンシューを回った先にどんな可能性があるかはわからないけど、きっと未来に可能性があると信じて、今を前進するだけだわ。
そうよね?」
「/Outputそうよね、と言われても、私にも、打開策はさっぱり…End」
水霞として現れては攻撃してすぐに消えるゲッコウガGXと、好き放題ラスターカノンを撃ち荒らしているキングドラ…根本的な対応策は、キングドラならまだしもゲッコウガGXに対しては思いつくことすらできない。
「ええ、まあそうね。
動き出したゲッコウガGXにダメージを与えられるのは、攻撃のため出現するほんの一瞬…けれど向こうは必ずこちらのふいをついて出現するから、反撃を与えるタイミングもポイントもわからない。
方法は一つよ。」
タイミングがわからないならずっと攻撃し続けるしかない、ポイントがわからないなら範囲攻撃するしかない…要するに、求められているのは、必要なのは、永続範囲攻撃だ。
「…手段が思いつかなくたってかまわない。
私たちはもう、迷わない。
私たちにできることは、私たちの音楽だけ、そうでしょう?」
ーなんてったって私たちは
(歌姫さん、本当に、それはこのバトルのこと...?
…もっと大局的な、未来のほうを視ているような、そんな瞳…)
「/Outputわかりました。なら、こうすべきなんだと思います。
チルタリス、歌いつないで!エコーボイス!End」
「キュウコン!響きあわせなさい、エコーボイス!」
【
【シンシューキュウコンGXの エコーボイス!】
地を震わせるような鳴き声のシンフォニーが、幾重にも響き渡った。
ー*ー
変化は、ゆっくりと現れた。
何もいないはずの空中が、ブレ、何かの影を地上に映す。やがてそれはぼんやりとした何かになり、朧な像となり、そして、ズルっと、水霞が地に墜ちた。
ゲッコウガGXが、片方の耳をふさぎながら膝をつく。水霞を纏い姿を不明瞭とし、残像すら残さない超速機動を、意識の隅を縫って行い…そうしてドロンと姿を消しても、あまねく方位に染み渡りながらいつまでも交互に響き合い続ける2匹のエコーボイスからは逃れられなかったのだ。
一刻も早くエコーボイスを止めなければ…反撃しようとゲッコウガGXは立ち上がり…そして初めて気づいた。視界の端に映る仲間、キングドラが、既に意識を失い堕ちていることに。
「隙だらけのはずだ!もう一度おぼろぎり!」
【ゲッコウガGXの おぼろぎり!】
再びゲッコウガGXが水霞と化して消える。
「/Output音色を止めないでください!End」
水刃が綿毛を飛び散らせる。さえずりながら
アリア・カナサシは、綿毛舞うバトルコートをじっとにらみ…
「読めたわ!
キュウコン、3秒後、真正面!」
ーゲッコウガGXの居場所に皆目見当がつかなくとも、彼が動き回れば綿毛が吹き惑い、なんとなくの移動方向を教えてくれる。
ー超速機動といえど、いやだからこそ、動きに規則性が存在する。
【シンシューキュウコンGXの ムーンフォース!】
ゲッコウガGXは、莫大な月光の照射に自ら飛び込んで、壁面へと叩きつけられ、そこで力尽きた。
ー*ー
「君らは、思ったより屈折していて、思ったより愚直だな。
敬意を表そう。これが、ウスモエジムをクリアしたあかし、アクエリアスバッジだ。」
「/Outputありがとうございます!End」「どうも。」
「…まだ可能性を絞ることなくがむしゃら進み続けるなら、何度だって未来が凍てつき閉ざされているかもしれない。
だが、そうだな…君らの旅路、無数の可能性、川も祝福してくれるよう祈っているよ。」