アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜 作:十二の子
ポケモン世界に転生せし、絶世のアイドル、言祝アリア。「シンシュー地方」に転生した彼女は、シンシュー戦乱の英雄たる”現人神”歌姫アリア・カナサシとともに、シンシュー10のジムを巡る旅に出ていた。
シンシューからの分離独立・ジョウトへの編入合併を試みるムラサキ村と、ムラサキ村への懲罰出兵を試みるワスレナタウン市民。両者の争いを、アリア・カナサシは言祝アリアの指揮と意志と名の下に達成して見せる。
これに対し、力の信奉者、ワスレナジムジムリーダーリンダウは...?
ー*ー
「やってくれたそうじゃない?」
ワスレナジムに戻った2人のアリアを出迎えたジムリーダー、リンダウ。彼女の第一声は、これだった。
「『居合わせたトレーナーに歌姫アリア・カナサシが協力』シン中新聞、『アリア・コトホギとは何者?』トレーナーズ☆ファン、『無名の新星トレーナー、紛争を解決』ジョウトニュース…」
手に持った新聞紙や雑誌の束数センチ分を、まとめて破り捨てる。一瞬だけ、女の細腕が力こぶを盛り上がらせた。
「これ、
もう英雄になりたくない歌姫と、理想はあっても実力がまだまだ伴わない新星が、力と名をトレード?はっ。」
リンダウが、目を細くして、言祝アリアを睨みつける。
「このシンシューで、力なきは罪よ。
手を出す力がないのに口を出すことは大罪よ。
さて、アンタのこれは功績か、大罪かしら?」
足元に散らばる紙面を、ぐりぐりと踏みつけて。
【ワスレナタウンジムリーダーの リンダウが しょうぶを しかけてきた!】
ー*ー
「アンタを試すのにちょうどいいものを見つけたの。
次代の傑物たりえるかを試すには、前代未聞の怪物こそがふさわしい。でしょ?」
「な、なんでそれをリンダウ、貴女が!?」
(ウスモエのホンミツといい、コーシューでしか作れてないはずのアイテムが、なんで次から次へ!?)
「アタシも伊達に力の信奉者やってないわよ。
強くなるためなら、なんだってやる。コーシューの最新軍需物資だって、アタシの武名にかかればこのとおり。」
リンダウはわざわざ、ジャラジャラと、メガストーンにダイマックスバンド、Zリングにテラスタル結晶、それどころかお隣ユキコシ地方でしか使えないはずのBREAKオーラ結晶までもポケットから取り出し、ちらちら見せびらかしてからポケットに戻して。
「/Output知らないかもしれませんが、ポケモンGXは前代未聞と誇るほど絶対の強者ではありませんよ。
それに、私もそれは持っていますEnd」
言祝アリアがGXマーカーを取り出すのを見て、リンダウはー口の端をわずかにゆがめた。
((嘲笑!?))
「足りないね。
足りない!強さへの研鑽が!自分の意志を貫くための手段を磨く、当然の探求が!
ポケモンGX...コーシューの侵略者どものモンキー真似で、強くなどなれるものか!
本当の強さを、教えてあげるわ。モクロー、ナッシー!」
ワスレナジムの露天のバトルフィールドから、天へと突きだすようにアローラナッシーの首が伸び、モクローがその頭の周りを飛び回る。…シンシュー地方には生息しないどころか寒すぎて生存困難なアローラナッシーを持つ苦労も、強くなるためならなんのことはないらしい。
掲げられたGXマーカーが、黒い閃光を放つ...フィールド全体が隆起したかのような錯覚、そして地脈の力があふれ出した。
【モクローとアローラナッシーが オーバーラップしている…!】
「2体同時の、GXオーバーラップ!?」
言葉を発することができない言祝アリアもまた、無言ながら呆然目を見開く。
「限られた組み合わせでのみ、ポケモンどうしの可能性は共鳴するのよ。多分まだ誰も、このことに気付いていないわ。
これはただのGXポケモンじゃない。アタシはこれを、TAGTEAM_GXと、そう呼んでいる。」
モクロー&アローラナッシーTAGTEAM_GX (くさ/ドラゴン) 特性:おみとおし/えんかく
| HP | 攻撃 | 特攻 | 防御 | 特防 | すばやさ | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| モクロー | 68 | 55 | 50 | 55 | 50 | 42 | 320 |
| ナッシー(アローラのすがた) | 95 | 105 | 125 | 85 | 75 | 45 | 530 |
| アローラナッシーGX | 220 | 200 | 240 | 170 | 150 | 80 | 1060 |
| モクロー&アローラナッシーTAGTEAM_GX | 270 | 320 | 360 | 300 | 280 | 170 | 1700 |
「さあ、使えるもんは全部使って、この怪物を倒してみせな。」
ー*ー
「/Outputイーブイ、オシャマリ、チルタリス、ラプラス、チラチーノ、オンステージ!End」
なんでもありでかかってこい…リンダウがそう言うのならば言祝アリアも容赦はしない。レイドバトルだと、5体の手持ちすべてを出す。
「/Outputりんしょう!End」
5体同時になされるりんしょう。仲間と共鳴しあって威力を上げ、バトルコートに響き渡る。
「…小物がよく囀るわねえ。
ラプラスへギガドレイン。」
緑色の光線が、10mの頭上から撃ちおろされる。ラプラスは避けることなどかなわず一瞬で吹き飛ばされ、バトルコートの観客席をいくつも爆散させてひっくり返った。
普通のくさポケモンなら、中威力のワザ、そして与えたダメージの半分しか回復できない…となれば、いくらなんでもラプラスを一撃必殺はできないし、5体がかりのりんしょうの被ダメージを相殺できるほどの回復量はない...にもかかわらず。
「/Outputラプラス、戻ってくださいEnd」
「…完全回復してるわね、モクローもナッシーも…」
圧倒的な種族値の暴力。攻防ともに300前後を誇るそれは、並大抵のアタックでは擦り傷にしかならず、それでいて素の威力が控えめなワザを巨砲としてしまう、空前絶後の要塞であった。
(...こうなると、GXは...でも、イーブイにGXマーカーを使って特性でグレイシアGXにしたところで...
とりあえず…)
「/Outputチルタリス、メガシンカ&オーバーラップ!End」
【チルタリスは チルタリスEXへ オーバーラップした!】
【チルタリスEXは
「やどりぎのタネ」「/Outputミストパージ!End」
ナッシーの上の口から、タネの弾雨が降り注ぐ。
イーブイ、チラチーノ、オシャマリのりんしょうが響き続けている…ふと、オシャマリは、鋭い視線に身をすくめた。
視線の方向、真上を、オシャマリが見上げる…モクローとばっちり目が合う。
直後、
「/Outputみんな避けてっ!オシャマリはアクアジェット!End」
必死に逃げ回るもむなしく、チラチーノが、イーブイが、次々に弾幕をくらってメンコよろしくひっくり返され、タネから生えてきたヤドリギに囚われる。
ミストパージによる腐蝕を完全に避けての、全弾命中…やどりぎのタネという散布型のワザにはありえない射撃性に、言祝アリアは目を剥いた。
(まさか、モクローが照準を…!)
自由自在に飛び回るモクローからの指示を受け、10mの高みからアローラナッシーが撃ち下ろす…要塞が完璧な砲撃性能を持つとあっては難攻不落である。
「ああ、そっちも始末しておくか。」
ヤドリギに未だ囚われていないのは、腐蝕性の霧を放つ
「/Output危ないチルタリス!End」
「ソーラービーム。」
「/Outputムーンフォース!End」
指示しながらも、言祝アリアは気づいている…ダメだと。種族値がおそらくは足りない、ワザの素威力も負けている、よって威力が競り負けると。
日光のビームと月光のビームが、中空で交差する…そして、
「/Outputチルタリス、大丈夫ですか!?End」
気丈に、
かくなる上はイーブイへの使用をためらい進化先の指示をためらっている余裕はない…言祝アリアはGXマーカーをかまえる…が、リンダウはイーブイGXの「任意に進化できる」特性を知らないにもかかわらず、天才的な直感でイーブイの危険性を察知していた。
「ナッシー、やるのよ!」
【モクロー&アローラナッシーTAGTEAM_GXの ドラゴンハンマー!】
アローラナッシーが誇る長大な首が、大きくしなって揺り戻し、その頭を振り下ろす。
たった一打。それで、バトルコートにはクレーターが刻まれ、イーブイはクレーターの中央でボロボロになって伸びていた。
アローラナッシーがブンブン頭を振って土を振り払うのを、言祝アリアは呆と見上げるしかない。
「これが、タッグチームGX…」
アリア・カナサシの声が、むなしく聞こえてきた…
ー*ー
「吹っ飛べ、口先だけの雑魚が。」
【モクロー&アローラナッシーTAGTEAM_GXの ソーラービーム!】
頭上高くより撃ち下ろされる光線は、バトルコートをぐるり円を描いて一周した。
直接命中してはいない。けれど、爆風、余波だけで、チラチーノもオシャマリもヤドリギごと吹き飛ばされて観客席に叩きつけられる。
爆風を浴びながら、言祝アリアも、ポケモンたちも、歯を食いしばるしかないー打つ手がない。
(…いっそ、負けてしまっても…)
負けたから何か大事なものを取られるわけではないー本当にそうか?
負けたから死ぬことも傷つけられることもないー本当にそうか?
(…でも、それは…)
ー弱いことは罪だ、弱い者が口を挟むことはもっと罪だ…そんな力の理屈で、良かれと思って自分がしたことを、これからもするだろうことを、断罪されたくはない。
「もう一度吹き飛ばしてやりなさい。
力の原理しか信じられないこのシンシューで、力なきは
【モクロー&アローラナッシーTAGTEAM_GXの ソーラービーム!】
爆風。
ヤドリギに囚われたオシャマリが、何度もバトルコートをバウンドし、言祝アリアの身を突き飛ばし巻き込んで、地に伏した。
オシャマリがぶつかった衝撃で、指示を伝えるためのタブレット端末は言祝アリアの手から離れて数メートル先の地面に滑ってしまう。
言祝アリアは、オシャマリの下敷きとなって土にまみれながら、悔しさにその拳を固く握った。
右手に握ったタッチペンが、ぽきりと折れる。
「…勝ちましょう、オシャマリ。」
【オシャマリは 祈声状態になった!】
言祝アリアの左手に握ったGXマーカーが、銀色の閃光を放った。
地脈の力が、バトルコートに溢れ出す。
水とフェアリーのエネルギーが、オシャマリの身体から迸る。
アリア・カナサシとリンダウが、目を見開く。
【おや…オシャマリのようすが…?】
オシャマリの可能性。言祝アリアの可能性。言祝アリアの今のユニットの可能性。…シンシューの大地の可能性。シンシュー=コーシューの神々の可能性。
「ふふ。
私たち、まだまだ、こんなものじゃない。
こんなところで立ち止まっていられない。
そうですよね?」
可能性と感情が共鳴する。
可能性と感情が爆発する。
【チラチーノは 祈声状態になった!】
【
【オシャマリ(祈声)は アシレーヌ(祈声)へ 進化した!】
【アシレーヌ(祈声)は アシレーヌGX(祈声)へ オーバーラップした!】
バトルコートの向かい側までは、観客席までは、頭上10メートルの絶対的強者までは、絶世のアイドルの涼やかな声は届かない。…だが、口を開いていることだけは、リンダウには見えていて。
【祈声状態:すべてのランク補正が最大まで上がる。すべてのワザの威力が1.5倍になる。】
「…面白い…わね…!チャレンジャーコトホギ…!」
「…アシレーヌ、GXワザを。
反撃の狼煙です!」
天上の調べがごとく美しい声。それを引き継ぐかのように、アシレーヌGXの口から旋律が漏れ、そして音響を徐々に上げていく。
【アシレーヌGX(祈声)の グランエコーGX!】
【みかたのすべてのポケモンが かいふくしている…!】
チラチーノが立ち上がり、
言祝アリアが、タブレット端末を拾いに走る。
アシレーヌGXの、チラチーノの、
「面白い…っ!
こっちもGXワザよ!すべて破壊しなさい!」
「/Output回復しだい、みんなでエコーボイス!End」
【モクロー&アローラナッシーTAGTEAM_GXの トロピカルアワーGX!】
天を束ねて一本の光線にしたかのような、眩しく暑い陽光の集束。それが、青空から大地へと突き立つ。
【
【チラチーノ(祈声)の エコーボイス(祈声)!】
【アシレーヌGX(祈声)の エコーボイス(祈声)!】
聖歌のような循環唱。それは、圧倒的な陽光の攻撃すらもむしろ天から授けられた冠であるかのように、歌い紡がれ続ける。
「いけいけいけっ!」
リンダウが叫ぶ。
(決めて…!)
言祝アリアが手をあわせ祈る。
アシレーヌGXが倒れた。
歌声は依然響き続ける。陽光も依然差し続ける。
陽光が、翳った。
「しかし勝ったわ…!
モクロー、つばめがえし!ナッシー、ドラゴンテール!」
歌声が止まる。
【モクロー&アローラナッシーTAGTEAM_GXの つばめがえし&ドラゴンテール!】
「/Output迎え撃って!End」
ところが、言祝アリアの
「ふっ、モクロー&アローラナッシーのGXワザは、相手のワザをしばらく封じるわ!」「/Output元アイドル舐めないでください!タネはわかります!
目を閉じて、メガチルタリスは斜め上30度、チラチーノは正面!End」
陽光に眩み、消えた光量に惑う2体は、その言葉にそっと目を閉じ。
【
【チラチーノ(祈声)の おうふくビンタ(祈声)!】
眩しいステージでも歌い踊る方法は、動きを身体に染み込ませることだ…言祝アリアは知っている。ゆえに、眩しさ程度では彼女のポケモン達は止まらない。
目にも止まらぬ拳の連打へ、モクローが疾風のごとく突っ込む。
アローラナッシーの長大な首がゴルフクラブよろしく
クラッシュ。
爆風が、ワスレナタウンの空へ吹き上がった。
ー*ー
勝利の証を、リンダウは言祝アリアへと手渡す。
「アンタには資格があるわ。世の中に異を唱え、世の中を変えられる強さという、資格が。
アンタには義務があるわ。シンシューに異を唱え、シンシューを変えていく、強さに見合った義務が。
これはアンタの戦功を願う、ワスレナバッジよ。」
貴女もまたコトホギさんに願いを託すのね…アリア・カナサシは口には出さなかった。
ー*ー
「子ニャルマーちゃん、さっきはぼかしたけど、GXマーカーはアタシが手を尽くして手に入れたものじゃないわ。」
「…でしょうね…」
「ある日突然、郵送で届いたのよ。発送元を調べたけど、隠蔽工作がされてたわ。」
「/Output身元を隠すべき発送者、ですか…End」
「…出所がコーシューなのは間違いない。コーシュー側かその内部の離反者かはわからないけど、ウスモエといい、シンシューかシンシューのジムリーダーにGXマーカーを流出して…
…それで?」
「/Outputこうは考えられませんか?
パワーアップアイテムを蒔いて、争いを呼ぼうとしている人がいるEnd」
「かつて子ニャルマーちゃんが強さを与えて、かえって争いを助長してしまった…それを、今度は意図的に…ってわけね…?」
「だと、したら…」
戦争の再開は、近い。
次章予告
2人のアリアの旅はついに5つ目の街、フジナドシティへ。ここでもアリア・カナサシは、かつての戦友と出会う。
「人を魅了してこそ芸術家です。」
「歌姫さんの刺激になるかも、そう思ったんですよね?」「私は、きっと、歌姫さんの望みに違うのは良くないことだと思うんです。けれど、もったいないとも思っています」
「俺たちには火事場になっても馬鹿力を出せる才能もくれる龍神様もいやしないんだ!」
「あなたは、この地方に何を考えていますか?それをいつか見せてほしい。」
歌姫アリア・カナサシはこんなものじゃない。
転生ポケモンアイドル第5祝 「かつてハーモニーだったアリアたち」
「あなたは、この地方に何を考えていますか?それをいつか見せてほしい。」