アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜 作:十二の子
シンシュー地方を旅するさなか、シラアイジムに挑む2人のアリア。シラアイジムジムリーダーであり、ユキコシ地方の悪の組織「ホープ団」後方支援部隊のトップであるモロコシ中将は、陸海空軍をそれぞれ統べるホープ団3中将をジムトレーナー代わりに向かわせた。
ジムトレーナーたるウキクサ海軍中将、ハッカ陸軍中将、アルソミトラ空軍中将と戦い、ユキコシならではの奥の手「BREAK進化」を退け、3中将に認められた言祝アリアとアリア・カナサシ。2人に、ホープ団糧秣軍中将モロコシが勝負を挑んできた...!
ー*ー
「バトルの形式は『スイッチバトル』であります。」
「スイッチバトル...?」
そんなものは知らない、2人のアリアは首をかしげる。
「普通の6対6シングルバトルでありますよ、ただし、ポケモンは2人のどちらでも出るであります。」
「/Output私と歌姫さん、2人をまとめて1人に数えて、あわせて6体出せるってことですか?End」
そのとおりだと、モロコシは頷いた。
2人のアリアは臍を噛むー完全にアイテム5つを間違えた。タッグバトルだと無意識に考えて
「…本来なら、オボン4つ状態異常対策1つとかが正解だったのね…」
「そうであるかもしれないでありますな。
それも含めての、兵站というものであります。モノを準備する人間は、あらゆる可能性を予知した上で、最も合理的な備えをしなければならない。
あなたがた、この街に来る前に、雪山で遭難したそうでありますな?」
可能性を予見したか?準備は適していたか?ーアリア・カナサシの表情が沈む。
「/Output…歌姫さん、私が先に出ますね。
チルタリス、オンザステージ&オーバーラップ!End」
気を使ったのだろう、言祝アリアは、あたかもアリア・カナサシをかばうかのように、モンスターボールを投げ、キーストーンを掲げた。
【チルタリスは チルタリスEXに オーバーラップした!】
「ならば、私もならいましょう。
ルカリオ!オーバーラップです!」
【モロコシは ルカリオを 繰り出した!】
【ルカリオは ルカリオEXに オーバーラップした!】
お互いにポケモンEX、タイプ相性もなんとも言えない…ゆえに、ここで言祝アリアとモロコシは出し惜しみしない。
「/Outputメガシンカ!End」「メガシンカであります!」
【チルタリスEXは
【ルカリオEXは
「つるぎのまいであります!」
(…どうしましょう…コットンガードで防御を上げるか、やられる前に速攻するか…?)
あいにくチルタリスにひこうワザもだいもんじ・じしんも覚えさせていない。等倍攻撃で決めきれないうちに積みまくられると一撃される危険がある…
「/OutputコットンガードEnd」
「さらにつるぎのまいであります。」
「/OutputコットンガードEnd」
勝ったー言祝アリアは思った。つるぎのまいの攻撃上昇は2段階、コットンガードの防御3段階上昇なら、相殺以上の効果がある。
(もし、特攻が上がる「わるだくみ」だったら、守り固めてないで速攻しないとダメでしたが…)
「/Outputハイパーボイス!End」
響き渡る高音。特性フェアリースキンのおかげでタイプ一致ワザとなったそれは、
膝をつく
【
真上へと突き上げられた拳が、
「/Outputハイパーボイス!End」
「バレットパンチ!」
再びハイパーボイスを発しようとした
「再びライジングフィストからのバレットパンチ!」
(ライジングフィスト!?そんなワザは知らないです!それに何かおかしい!)
着地、すぐさま全身の筋肉をバネに跳び、右の拳でパンチ、さらに鋼質化させた左の拳でパンチして着地ー
「/Output高度を上げてハイパーボイス!End」
未知の専用ワザらしき「ライジングフィスト」は名前からしてかくとうワザ、バレットパンチも弱点のはがねワザだが先制ワザらしく威力低めでどちらもコットンガードで低減される物理攻撃…とはいえ殴られ続ける必要はない。
【
【
果たして
【
【
もはや
「/Outputミストパージで回復!End」
【
羽毛からフェアリーな霧を飛び散らせて攻撃&回復ーところがその霧ですら、明らかに濃度が薄い。今のところ、ハイパーボイスもミストパージも、すべてのワザが大幅にナーフされている。
さすがに言祝アリアも気づいた。
けれど、それかわかったからと言って何になる?
「/OutputミストパージEnd」
「ライジングフィスト、続けてバレットパンチ。」
いくら回復できようとコットンガードを積んでいようと、特攻のランク補正が下がり続けているのだからもはや
実質的に、
「コトホギさん、貴女はよくやったわ。」
「/Output歌姫さん…End」
「初見殺しだった。速攻か防御かの選択をミスった。いろいろあるけど戦訓は私が引き継げる。貴女とチルタリスの戦いは無駄じゃない。
スイッチよ、コトホギさん。」
ー*ー
「スイッチよ、コトホギさん。」
(…そういうわけにはいかないのです。
歌姫さんが私に望むような、歌姫さんやそしてシンシューの光になる
「それでいいのでありますか?
「/Output初見殺し、選択ミスは、実戦では理由にならないEnd」でありますよ…はっ!?」
(…私はアイドル。人々を魅了するアイドル。だから、ジムリーダー1人程度が次に言おうとしていることくらい、どうすれば驚くかくらいわかります。)
「なぜ、私の」「/Output『なぜ私の言いたいことがわかるのか?』…ですよね?そんな複雑なことではないからです。
そして、小言を繰り返させるわけにいかないんです。下調べが足りないだとか準備対策が足りないだとか選択が甘いだとか、ましてやそんなことの、単なる旅の連れへの教育が甘いだなんて、口にさせるつもりはないですEnd」
モロコシは口をつぐみ、そして手を振り下ろした。
【
「/Outputコットンガード、今!End」
「むっ、ルカリオ様子を見」
なぜ、防御がすでに最大なのにコットンガードを?モロコシはおかしいと引き留めたが、手遅れだ。バレットパンチは反射的に繰り出される素早い先制攻撃ワザ、指示を出したから拳をすぐに引っ込められるなどというわけがない。
【
【
もふり、膨らみ始めた羽毛に鋼の拳が突き刺さり、そして羽毛はまだ膨らむ。
深々とした羽毛に囚われ、
「ライジングフィスト!チルタリスの腹を打って反動で抜け出せ!」
そんなアクロバティックな罠抜けがうまくいくはずもなく、全身の筋肉をフル駆動させた拳の一振りはむなしく宙を掻く。
そして、次の言祝アリアの指示たるや。
「/Outputハイパーボイス!耳元で!End」
最低レベルまで特攻ランクを低下させられ木偶となり下がったはずの音響攻撃ーけれど、宙づりの中で耳元へ寄ってきた口先からそれをぶつけられたらどうなるか?
ただでさえ三半規管にダメージを受けている中で、耳道・鼓膜へもダイレクトアタック。
「/Outputスイッチ!End」
「OK、それが貴女の選択ねコトホギさん!」
アリア・カナサシがボールを構える…一見、お互いに累積ダメージが上がったわけではなく、特攻激減による機能不全で
「まずっ、ルカリオラスターカノン!」
その指示は、聴覚をノックアウトされた今の
「/Output戻ってチルタリス!End」「サーナイト、ムーンフォース!」
それでも
フェアリーエネルギーの奔流が、
ー*ー
「…2体目、いえEX2体換算ルールで言えば3体目でありますね。
フライゴン、出撃!」
言祝アリアもアリア・カナサシも、首を傾げた。ドラゴンタイプを持つフライゴンはフェアリータイプを持つサーナイトに弱い。まして
「いくら、シラアイジムがじめん・いわ・かくとうタイプのジムでも、じめん/ドラゴンをフェアリー相手に出す事もないわよね?」
「もちろんであります。
すべての有利不利は、入念な準備によって覆されるでありますからな。
フライゴン…テラスタル『いわ』!」
フライゴンが、クリスタルな見た目へと変貌を遂げ、冠を載せて
「…なんでもやるじゃないの、ホープ団…」
パルデアとキタカミの里以外でテラスタルの確認はほとんどされていない。フジナドジムのレンゲ教授は先日ラウドボーンEXをはがねテラスタルさせたが、あれはポケモンの可能性を引き出すEXオーバーラップあってこそだ…だがホープ団は、軍需開発の名の下に通常のテラスタルを戦力化しているらしかった。
「フライゴン、じわれ。」
地面に広がっていく地割れ。アリア・カナサシが出すべき指示など決まっている。なんせそれは一撃必殺ワザなのだ。
「ちっ…避けて!」
実際、じわれを避けることは難しくはない…だが観戦中の言祝アリアは、ゲームとはまた違った一撃必殺ワザ真の恐ろしさに気づいた。
「/Output対策を余儀なくされますね…予備動作で…End」
ゲームなら、相手ポケモンがじわれを出すかはわからない。例えじわれを持っているとわかっていてもなお、だ。けれど現実のポケモン世界では、モーションでじわれを出しそうなことがわかる。わかってしまう。
「じわれの準備動作、じわれの準備動作に見せかけた他のワザの動作、じわれの準備動作のふりをしたただのブラフ…一撃必殺ワザを見せるということが、何かしらの対応、それを指示する度胸を私に迫ってくるのよ…」
アリア・カナサシは忌々しそうに告げ、そして速攻の決意をした。種族値2倍のポケモンEXであれども一撃必殺ワザは一撃必殺なので、運試し兼度胸試しみたいなマネは続けられないのだ。
「サーナイト、ブリリアントアロー!」
フェアリーエネルギーの矢を中空に生み出して次々と連射する。当然フライゴンは飛んで避けたが、けれどアリア・カナサシは涼しい顔。
「不気味な…?」
モロコシはそう呟き指をパチンと鳴らした。わざわざ指示が「じわれ」か否かを伝える必要はなく、軍人なら符丁でいいということだ。
「サーナイト避けて。」
果たしてフライゴンが使ったワザは、なんとしたことか「りゅうのまい」。パワーアップをみすみす見逃すことになりアリア・カナサシは舌打ちする。
再びサーナイトがフェアリーエネルギーの矢を放ち、フライゴンが避ける。
再び、モロコシが指を鳴らす。
「避けて。」
フライゴンが地面に近づき、今度こそ「じわれ」が来るとアリア・カナサシが思った次の瞬間、地面から砂煙が舞い上がった。「すなあらし」だ。
姑息な…アリア・カナサシは歯ぎしりする。じわれブラフへの対処に忙殺されている間に砂嵐天候ダメージを受ける、これはそういうことだ。
「…けど、ギリギリ、『視えた』わよね?」
「何を…?
よもや、『次は外さない』などと言うつもりですか?モグリュー叩きをしているわけではないでありますよ?」
モロコシは、
「いいえ、次は、絶対に、外さないわ。」
放たれる前のフェアリーエネルギーの矢が、数本まとめて雲散霧消していく。
フェアリーエネルギーを生贄に捧げたかのように、激烈なオーラが高まっていく。
「サイコ...パワー...?しかしそれにしても強過ぎ...?...!?
...まさか2つ目の専用ワザ!?それは、鉱山崩しは、掟破りでありましょう!?」
無数のブリリアントアローは、フライゴンの回避パターンを探るための小芝居でしかないーモロコシが気づいた時には、サイコパワーの光球からすでに絶死の光が漏れ出していた。
「あら...最初に私を挑発したのは、貴女でしょ?『軍人に戻れ』って。」
「くそがっ、フライゴン、じわれ!」
【
【フライゴン(テラスタル:いわ)の じわれ!】
ひび割れていく地面、その上を薙ぎ払うように、それでいて砂嵐を穿つように、閃光が抜けていく。熔解された砂塵が飛び散り、その先、砂嵐の中から甲高い悲鳴が聞こえた。
「…アリア・カナサシの隠し札を見られたのだから、この負けは悪い負けではなかったと言うべきでありますな。
フライゴン、戻るであります。」
モロコシは、砂嵐の中でフライゴンがどうなっているのか確認したりはしなかった。その気になれば1つのキーストーン鉱山を崩す…いくらフル出力ではなさそうと言っても、そもそもポケモンEXとそうでないポケモンの差もある。
「…ガラガラ、出撃であります。
かたきうち!」
「サイコキネシス!止めなさい!」
ボールから飛び出すなり、ホネを2つも手にして駆け出したガラガラを、サイコキネシスで抑え込む。
「サーナイト、そのままムーンフォースで吹き飛ばして。」
「ガラガラ...
…BREAK進化であります!」
サイコキネシスで押さえつけたガラガラへ、ムーンフォースのビームが迸るーが、それと同時に、ガラガラの全身が金色に輝いた。
BREAK進化によってサイコキネシスを上回る脚力を得たガラガラが前進を取り戻し、ムーンフォースがガラガラBREAKの背後を通り過ぎ、そして黄金に染まったホネが、
「…いくらでも手札が出てくるわね、やるじゃない後方支援部隊…」