アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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 そろそろ冬休み気分を終わらせないとなので更新頻度落ちます。

 ~これまでの「転生ポケモンアイドル」は~

 かつて、モリヤ家が祀る邪神「おひだりさま」が君臨し、カナサシ家が祀る龍神様によって鎮定された地、シンシュー地方。日本で一世を風靡したアイドル、言祝アリアは、この知らないポケモン地方に転生し、龍神様の依代、「現人神」アリア・カナサシとともに、シンシューを巡る旅をしていた。

 シラアイジムにて、ジムリーダーのモロコシは、再びシンシューに戦乱が近づいていると言祝アリアとアリア・カナサシに警告する。急遽、旅の始まりの地エクリプス(旧カナサシ)タウンに戻る2人。

 そのころエクリプスタウンでは、この街の「科学」を統べるウルトラマッドサイエンティストのDr.バックレアが、この街の「神秘」を祀るカナサシおみやに対して、牙を向こうとしていた...


7祝 謎解かれる湖岸にて、解き放たれるは彼岸より
♪37 決戦、ウルトラマッドサイエンティスト


ー*ー

 

 カナサシ湖には、「御神渡り」と呼ばれている現象がある。

 

 湖底に眠るとされる二柱の神…その中で、カナサシの地に在来していた暴れ神であり、古代にはモリヤ家によって祀られていた通称「おひだりさま」...それが龍神様の拘束から抜け出そうと暴れると、湖面に張った氷がひび割れるのだ。

 

 氷が完全に割れた時、湖底に鎮められたおひだりさまがお渡りなされる(顕現する)...畏れられてはいるが、そうなる時にはまず龍神が黙っていないないだろうから、カナサシおみやの龍神の依代様が力を発揮しているうちはシンシューの人々は枕を高くして寝られるというわけだ。

 

 とはいえカナサシのすべての民が安眠を貪っているわけではない。古くから湖底の龍神を祀るカナサシおみやでは、祭司長モリヤ家の下でおひだりさまの封印を再補強する儀式が年に1回行われる。すなわち、1年の信仰を封印者である湖底の龍神へ直接捧げるのだ。

 

 「皆の者、今年は手順が違うが、ぬかるんじゃないぞえ。」

 

 龍神の御神力をその身に宿せるのは、カナサシ家の巫女だけ...当代の依代様たるアリア・カナサシが旅に出ている今、だいぐうじツクバネ・モリヤは例年と異なる儀式をやらねばならなかった。

 

 トリックルームが、何重にも湖岸の祠を囲む。

 

 祠の周囲四隅に立つ御柱の上に、リフレクターが展開される。

 

 「『匣』建立しました。」

 

 「還養術の用意を進めるぞえな。

 

 チリーン、めざめるパワーじゃぞえ。」

 

 儀式は着々と進んでいくかに思われた。

 

 「おっと!そこまでに!してもらいます!

 

 行け、CC:パオジアンEX!」

 

 ー余計な、そして思いもしない邪魔が入るまでは。

 

ー*ー

 

 「バックレア、そなた、御神渡りの封印儀式を妨げるなど、どうなるかかわっておるのかえ!」

 

 ツクバネは怒る。今まで持ちつ持たれつでやってきた科学者たちが、神事を妨害するとは何事かと。

 

 「どうなる?

 

 どうできるというのですか?あなたがたが!」

 

 相変わらずテンションの高いウルトラマッドサイエンティストは、嘲笑まじりに事実を開示していく。

 

 「すでにカナサシおみやは!公安統監部により!制圧済みです!

 

 テレビ局も!電波局も!ネット回線も!通信はすべて!この科学者バックレアによるもの!掌握済み!

 

 エクリプスタウンへの交通網?すべて!公安統監部によって検問されています!

 

 カナサシおみやの最大戦力?ここでわたくしたちに拘束されている!

 

 …誰が!わたくしたちの!愉しい実験を!阻みましょうや!?」

   

 血迷っているわけではなく、勝算と綿密な計画の下で行われた、これはマッドサイエンティスト陣営による白色クーデターなのだと、その言葉は告げていた。

 

 「…そなた…

 

 …それで、何の意味があるのかえな?

 

 1年ぐらい儀式をせずとも、龍神様は揺らぎはせんぞえな。

 

 そなたの実験は有意差なしというやつではないかえ。」

 

 当たり前だ。1年分の信仰で補強されなくとも、神様はそれ自体がすでに神様。零落した暴れ神であるおひだりさまを抑える今の状況に、変化が起きるわけではない。

 

 「ええ、もちろん!

 

 ですがそれは!龍神を祀らず封印力を高めなかった!ただそれだけの場合!

 

 今!この祠には!湖底の龍神から!おみやまでをつなぐ!霊脈(レイライン)が結節しています!

 

 信仰の力をおみやから湖底に捧げることができるのなら!逆に!神の力を湖底から地上へ奪うこともできましょう!」

 

 バックレアが明かした計画は、単純にして、極めて不遜なもので。

 

 「龍神様の力を奪う...!?何を言って...

 

 ...っ!?」

 

 銀色のディスクーEXエディッションプレート。それも、何十枚も。それらすべてが、バックレアの手の上で輝いていた。

 

 「簡単なことです!

 

 龍神様の『可能性』を!汲み上げてしまえばいい!」

 

 ”強いという可能性の、剥奪”ーこのマッドサイエンティストなら、余裕で出来かねない...

 

 「そういうことなら、まあ、吾にはどうしようもないかえ。」

 

ー*ー

 

 エクリプスタウンに通じる峠。峠の外側はガードレールもない程度の道路なのに、峠のエクリプスタウン側だけ、近未来都市のさまを体現するかのように電飾でキラキラ彩られている…そんな場所で、問答が行われていた。

 

 「申し訳ありませんがここは通行禁止です。」

 

 公安統監部ーそう書かれたバンドとベストの男は、申し訳なさそうに頭を下げた。

 

 「この私、アリア・カナサシであったとしても?」

 

 「歌姫様だからこそ、通すなと上から言われております。」

 

 公安統監部職員は、いっそ土下座でも始めそうである。言祝アリアは、なんだか自分が悪いような気分になってきた。

 

 「ちょっとコトホギさん?

 

 どうせ演技よ。申し訳なさそうな顔をすれば、相手も申し訳なく思って躊躇したり譲歩する...」

 

 「バレてしまっては仕方ありません。いけクロバット!」

 

 「/Output騙したんですね…イワパレス、オンステージ!End」

 

 公安統監部職員の男が、笛を思い切り吹く。

 

 「すぐに仲間が来るわね。

 

 おみやまで強行突破するわよ!」

 

 「/Outputはい!

 

 イワパレス、がんせきふうじ!End」

 

ー*ー

 

 規制線で封鎖され、公安統監部職員がポケモンたちを従えて背を向けずらりと立つのは、原始的な社が並び御柱で囲まれた広大な聖域、カナサシおみや。

 

 「コトホギさん、一足遅かったわ。」

 

 すでにカナナシおみやはマッドサイエンティストの手下どもに占拠されてしまった...そうなれば、長居しても無意味だ。

 

 「おいそこの女、なんか怪しいな?」

 

 「通行許可証を見せろ!」

 

 公安統監部職員たちが近づいてくる。

 

 「/Output逃げましょう!

 

 どうせ行く場所は決まってます!そうですよね!?End」

 

 言祝アリアが、右手でアリア・カナサシの腕を引きながら、右手で数キロ先、カナサシ湖の方角を指さした。

 

 人差し指の先、雪に屋根が白くなった街並みの向こう、カナサシ湖畔に、デンジュモクのバケモノのごとくそびえたつ異様な塔がそびえたっている。

 

 「おいこら!」「貴様!止まれ!止まらんか!」「戒厳違反者だ!捕まえろ!」

 

 物騒な声に追われながら、2人のアリアはこの街を掌握するマッドサイエンティスト集団の根城、可能性の殿堂(プロバビリティ・タワー)へと駆けだした。

 

ー*ー

 

 「おいウルトラマッドサイエンティスト。

 

 何をしているの?

 

 何をたくらんでいるの?」

 

 凍結したカナサシ湖のほとりにたたずむ白衣の男へ、アリア・カナサシは息を整えるなり問いかけた。

 

 2人のアリアを取り巻く数十人の公安統監部職員たちが、やり取りをかたずをのんで見守っている。

 

 「何をって...」

 

 白衣の男…ウルトラマッドサイエンティストことバックレアは、アリア・カナサシへ、振り返った。

 

 そこで言祝アリアは、バックレアの表情越しにカナサシ湖を見て初めて、気づいたー

 

 ー凍り付いたカナサシ湖から、異様な雰囲気が漂っている。

 

 「これ、GXオーバーラップの時と同じ、地脈からあふれ出してるエネルギー...?

 

 貴方、本当に何を…」

 

 バックレアは、朝食の献立を告げるくらいなんでもないことかのように、それを告げた。

 

 「何をって…

 

 湖底の龍神から、可能性を吸い上げているんですよ。」

 

 いつものハイテンションは影を潜め。

 

 「…貴方、何をやっているのかわかっているの?

 

 龍神様が、簒奪神『おひだりさま』を湖底に鎮めているから、カナサシの地は平穏が保たれている…なのに、龍神様の御神力を直接地脈から吸い上げるなんてしたら、おひだりさまが復活しちゃうわよ。

 

 1000年以上封印された暴れ邪神、解放したら何が起きるか…」

 

 「それが?何か問題でも?

 

 いくら暴れ神、邪神と言ってもかのギラティナやグラードン、カイオーガほどではありますまい!

 

 街や地方の1つや2つ消えるくらいまでは!本実験では!誤差の範囲内ですよ!」

 

 公安統監部職員たちが、キョロキョロと互いの間で目を泳がせた。「そんな馬鹿な」「じゃあ我々は一体」「くそっ」などと声が聞こえてくる。

 

 言祝アリアがタブレット端末を叩く…前に、公安統監部職員の一人が進み出て、口を開いていた。

 

 「貴方」「一旦任せていただけませんか、歌姫殿。いろいろ手違いがあるようです。

 

 …Dr.バックレア閣下。貴殿は、カナサシおみやに伝わるところの龍神を下し悪神を蘇らせようとしている、違いますか?」

 

 「…子飼い風情が!わたくしの崇高な研究に逆らって!取り調べの真似をしようと!

 

 …いいでしょう、気に入った!ついでに手間を省いて差し上げます!

 

 邪神おひだりさまを復活させ!その結果起きる如何なる事象も!わたくしたちが感知するところではない、むしろ実験の観測対象として望むものである、と!」

 

 エクリプスタウンに、シンシュー地方に害を与えるつもりである...ウルトラマッドサイエンティストは、明言した。

 

 「…調書とするまでもないようです。

 

 これより公安統監部は上層部が乱心したと判断、エクリプスタウン基本律法第10条『体制機能不全時の緊急対応』に基づき現場判断に移行!

 

 第1処から第6処までの全分隊、突撃!Dr.バックレアを拘束せよ!」

 

 号令一下、ポケモン達が一斉に駆け出す。ウィンディ、グラエナ、エネココロ、レントラー、ライボルト、ミルホッグ、ムーランド、パルスワン、マフィティフ...同時に、周りの科学者たちへ公安統監部職員自ら飛び掛かった。

 

 「…舐められたものですね!

 

 この街をこれほどまでに進歩させたのは!すべて!わたくしたちの科学力!

 

 元の寒村に戻ったとて!何ほどのことがありましょうや!?

 

 パオジアンEX、ヘイルブレード!」

 

 バックレアの背中越しに躍り出た、機械式の模造伝説ポケモン。それが、口から凍気を吐き出す。

 

 【CC:パオジアンEXの CC:ヘイルブレード!】

 

 無数の氷剣が空中に生み出され、

 

 「…悪いけど加勢するわよ。行け、ニンフィア!」「/Outputオンステージ、イワパレス!End」

 

 氷剣を、ようせいのかぜといわなだれが吹き飛ばし弾き飛ばす。

 

 「歌姫殿、お連れ様、ご協力感謝します!

 

 レントラー、ワイルドボルト!」

 

 【レントラーの ワイルドボルト!】

 

 【CC:パオジアンEXの つららおとし!】

 

 「部長を援護しろ!ウィンディ、かえんほうしゃ!」「ムーランド、とっしん!」「マフィティフ、いかく!」

 

 いくら伝説ポケモンの8割模造品のポケモンEX(2倍)とはいえ、相手が悪かった。公安統監部職員は全員がバトルのプロで、おまけに犯人拘束のプロ。次から次へとポケモンを繰り出して袋叩きだ。

 

 「ノココッチ、でんじは!」「レパルダス、ふいうち!」「バネブー、サイケこうせん!」「ポワルン、こなゆき!」「ヤバソチャ、シャカシャカほう!」「スリーパー、さいみんじゅつ!」

 

 あっという間に、CC:パオジアンはいくつかのネジを落として機能停止した。

 

ー*ー

 

 「どうする?パオジアンのパチモンは倒されちゃったみたいだけど?

 

 次はチオンジェンでも出してみる?それかイーユイとか、ディンルーなんてのもいたわね。

 

 いくらでも相手になるわよ。」

 

 四災ポケモンの名をすべて告げ、アリア・カナサシは不敵に笑った。その背後では、十数名のマッドサイエンティストたちが手錠で拘束されている。

 

 「ふむ...ラボから残りのCCシリーズ3体を引っ張り出すのも!まあ、いいでしょう!

 

 しかし!せっかくですから!わたくしたちの科学の叡智の!可能性を!見せて差し上げましょう!

 

 カモン!」

 

 バックレアは、白衣のポケットから、マスターボールを取り出した。

 

 マスターボール?公安統監部の職員たちが首をひねる。機械式の模造ポケモンを主力とするバックレアに、ゲット確率が上がるマスターボールなど必要ないはずだ...だってゲットするまでもなく最初から製造者なのだから。

 

 「/Output捕まえるのが難しい...それか、マスターボールじゃないと逃げ出してしまうようなポケモン...?End」

 

 にわかに緊張が奔る中、バックレアは両手を広げ、演台の上で発表するかのように大げさな身振りで。

 

 「遺伝子という!可能性の!宝庫!

 

 その研究の!成果を!

 

 アタック...!ミュウスリーEX!」

 

 瞬間、サイコパワーの嵐が吹き荒れた。

 

ー*ー

 

 地面から草という草が剥がれ、木という木がへし折れている。

 

 鉄筋コンクリートはヒビだらけになり、窓ガラスはサッシごと外れ、電線は電柱から千切れている。

 

 ーそれらすべての事象がポケモンのワザによるものなら、まだよかった。しかし、目の前にいる存在は、まだ1つもワザを使っていない。ただそこに登場してサイコパワーを放出させただけで、物理的な影響がこれほど出たのだ。

 

 何人かの公安統監部職員が、頭痛のあまりに膝をつく。ポケモンもだ。濃密なサイコパワーは精神影響を及ぼすことがある…

 

 「何よ、あれ...」

 

 滑らかな全金属製ボディー、しなる尾と角、流体金属のアーマーが腕と脚の表面で波打っている。

 

 「最強と謳われたロケット団製人造ポケモン、ミュウツー!その、レプリカですよ!

 

 相転移金属製筋肉はビルを粉砕するかくとう力を!トップダウン・ボトムアップ併立演算AIは神格級のサイコパワーを!量子テレポーテーションCPUはそれらすべてを最適に発揮するパフォーマンスを!

 

 わたくしたちの科学力の結晶!一つの通過点でございます!」

 

 ミュウスリーEXが、左手をひょいと振り上げる。

 

 【ミュウスリーEXの サイコキネシス!】

 

 ドタン!その場のすべてのポケモンが、強制的に宙へと浮かばされ、そして地へと叩きつけられる。

 

 たった一撃、通常攻撃の一撃で、その場にいた数十体のポケモンは、ほとんどひんしに追い込まれた。かろうじてエスパー耐性のイワパレスだけが耐えている。

 

 「/Outputなんで…End」

 

 公安統監部の連中がのきなみ色を失い、アリア・カナサシがギリリと歯を鳴らす中、先ほど音声出力を公安統監部に遮られた言祝アリアは、やっと言葉を出力することができた。

 

 「どうしました?転生者。」

 

 「/Outputなんで、こんなことをするんですか?

 

 街の破壊を見込んで、最強のポケモンのレプリカも用意して、何が目的なんですか?End」




 ミュウスリー(CS(Copy:Strongest):ミュウツー) ふくせいポケモン シンクロ/プレッシャー

  
HP攻撃特攻防御特防すばやさ
ミュウ75100100100100100600
ミュウツー1061101549090130680
ミュウスリー841521568096112680
ミュウスリーEX1683043121601922241360


 ウルトラマッドサイエンティストのバックレアが開発した、ミュウツーを機械的に再現したポケモン。7年前にミュウツーがユキコシ地方に現れた際に得たサンプルに基づいている。

 EXオーバーラップ技術を応用した解析によって、メガミュウツーX・メガミュウツーYという2つの能力の可能性が発覚したため、双方の能力をいいとこどりできるように開発された…ものの、そもそもCC:パオジアンと同じく伝説・まぼろし級ポケモンは機械的には8割ほどしか再現できないため、能力的には結局ミュウツーとあまり変わらなかった。
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