アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜 作:十二の子
けれど、「UB00 LEFT」「ネクロズマ変種?」「おひだりさま」そして「ミシャグジ神」と呼ばれたその邪神について、謎も懸念も残っている。
2000年の名家にして「転生ポケモン令嬢」主人公、フロックス家。
侵略者・占領者、アリア・カナサシの仇敵、コーシュー四天王「炎のマルス」。
外界を拒絶するような卑怯、ウコンタウンのジムリーダー「おひいさま」。
逃亡中の主犯、邪神を信仰し復活させた、「ツクバネ・モリヤ」。
彼女ら彼らは、あの邪神に何を考え、何を語るのか。
※次章掲載遅れます。
ー*ー
「お姉ちゃんと蒼玻くんは、エクリプスタウン騒擾の報告書、もう読んだ?」
「ええ、読みましたわ。ミシャグジ様なる湖底の伝説ポケモンが蘇らされて、封印者だった白いレックウザを食べようとして、おみやの現人神と同行者によって再封印されたのでしたわよね?
/謎はまだ残っている気がするが。」
「謎...?
確かによくわからないこと、いくつかあるけど...」
「いや、カグヤちゃんが気づいていないはずのことだよ。
/もしかしてわたくしもかしら?
/ああ。…俺が前世でニワカオタクをやっていたってのは知ってるよな?」
「いろんなコンテンツに興味を持って、ただガッツリ視聴したりはしないでネット百科事典とかで概要だけ読んで満足するタイプ...だったっけ?」
「ああ。だから俺は、神話もちょっとつまんだことがあるんだ。まあ転生して8年もしたから前世の記憶自体怪しいが…
/お待ちくださいまし蒼玻くん、貴方が言いたいのは、貴方の前世、ポケモンがいない世界の神話に、ミシャグジ様とやらが存在する、と!?
/そうだよアオバちゃん。
ミシャグジ様は日本、それもちょうどカナサシ湖と重なる位置にある、諏訪の土着神のはずだ。
ポケモン世界の伝説ポケモンに、なぜモリヤ家は同じ名前を付けた?
長野県がシンシュー地方で、諏訪湖がカナサシ湖。諏訪家が英雄歌姫のカナサシ家で、諏訪大社祭祀長の守矢氏がそのままモリヤ家だと言うのなら、そこまで符合する以上、ミシャグジ様に当たる伝説ポケモンがいてもおかしくない。白いレックウザはさしずめ、ミシャグジ様を鎮め守矢氏を従えた、諏訪氏の祭神タケミナカタといったところか?先日のミシャグジ様の姿がほっそりしたウルトラネクロズマのようだという報告からすると、龍にしてはシンプル、すなわち龍になる前の翼の生えた蛇、未分化の蛇…まあ本職の龍神であるレックウザに鎮められるのも道理だしな。
…でも、相似の関係であっても、それそのものであるはずはない。どこまでいっても、ポケモンという物語を作った人が自分たちの世界にモデルを求めたというメタ的な意味以上のものはなくて、原作に登場しないユキコシやシンシュー=コーシューに奇妙な一致があってもそれは奇妙な一致以上でも以下でもない。だから原因については考えても無駄だ。と、思う。
…だけど、ミシャグジ様という通称には、それだけじゃない何かを感じる。まだ何か隠されてる気がする。
/わからないことがもうひとつありますわ。シンシューの地下に可能性を司るミシャグジ様が眠っていて、じゃあコーシュー地方はどこから、いえ、何からGXマーカーを作り出したのかしら?
GXマーカーはEXエディッションプレートと同じ『可能性を引き出す』機能に『引き出したすべての可能性をGXワザとして一撃へ収束させる』機能が付加されているアイテム...そしてエクリプスタウンのマッドサイエンティスト集団がミシャグジ様の権能からEXエディッションプレートを生産していたのなら、GXマーカーにもまた、ミシャグジ様同等かそれ以上の『可能性の権能』の伝説ポケモンがかかわっていなければおかしいですわよ。
シンシュー地方...列島の中央部であるあの地の下には、いったい何が眠っていると言うのかしら?」
「蒼玻くんの前世で、コーシューの地下にも、すごい神様がいたりしたの?」
「いや、コーシュー地方...山梨県の地下にこれといった神様なんて覚えはない。
ただ…ミシャグジ様がネクロズマの同類、世界に穴を開けるウルトラビーストだとすると、『可能性』の権能とやらに、嫌な創造が成り立つんだ。
/…パラレルな可能性の汲み上げというのは、可能性の分岐によって発生する並行世界、パラレルワールドに穴を開けて行われている…ということですわね。そんなのが1体だけではないとなると困ってしまいますが…
けれどおそらく、コーシューには同じく世界に穴を開け、並行世界へ行き来し、その可能性を引き出す神格ウルトラビーストがいる...何者なのかしらそれは?」
ー*ー
「へぇ大将!」
シンシュー地方とコーシュー地方の境目の街の一つ、ロクショウタウン。コーシュー軍によって今なお占領統治されているこの街の中心で、隻腕の男は盃を豪快に呷りながら、部下を出迎える。
「よォ、どうした?」
「エクリプスタウン、壊滅にごぜぇます!マルス大将のおっしゃるとおりになりやした!」
「フン。
なんもかんも全部行き当たりばったりだろォが。謀でもなんでもねェよ。」
6年前に自分の片腕をもぎ取っていった、因縁の相手、カナサシおみや軍の総大将アリア・カナサシのことを思い浮かべ、コーシュー四天王の一人にしてロクショウタウンジムリーダーのマルスは、どこか愉しそうに自嘲した。
「おひだりさまを巡る研究の末に、バックレアはおひだりさまを復活させてみたくなったし、ツクバネのババァは邪神信仰を叶えたくなった。そんで勝手におひだりさまにやられて自滅する運命だったのを、このマルス様の軍事的脅威と、GXマーカーっていう技術的な競争相手がちょっぴし加速させた。
マ、しょうもない話だぜェ。」
「けどこれで、EXエディッションプレートの生産能力はガタ落ちですぜぇ。奴らのポケモンEXが減れば、シンシュー再侵攻も再び...」
エクリプスタウンの超科学的生産能力が失われれば、シンシュー地方の戦力は大幅に弱体化する...そんな部下の意見に、マルスは首を横に振った。
「いいや?
GXマーカーの横流し量を増やせ。本国に要求してなァ。」
「はい?それはなにゆえでありやすか?」
「強力無比なGXワザ、それを使えるポケモンGX...これがポケモンEXに入れ替われば、シンシュー地方は騒がしくなるんだぜェ。」
「…シンシュー内部の不和を煽ると!?さすがマルス様!」
「いいやそれもちょいと違うなァ。
俺様はコーシュー四天王、炎のマルス様だぜェ?
さァ、祭をおっ始めようじゃねェかァ。」
カッカッカ、マルスは盃を飲み干した。
ー*ー
シンシュー北の最果てのジムを持つ街、ウコンタウン。
山間の寒村に場違いな、白亜の館の中で。
「おひいさま、カナサシ湖、鎮まりましてございます。
ボールに閉じ込め湖底に沈めた、と。」
「…さようですか。」
静謐そのものの声が、御簾の奥から返される。
「これからは、如何様に?」
「なんら、変わることはありません。
本家も、シンシュー=コーシューの神々の危険性について、気づいたことでしょう。」
おそるおそる、家臣は御簾へと口を開いた。
「しかしそれは、神格本体についてかと…」
「それでも、良いのです。
神格ミシャグジ本体についてなら、なんとでもなります。人間の危機感、こちらが本当に必要なものなのです。」
家臣が下がっていく。
御簾の中、木簡をシャッフルする音がしばらくして、それから、独り言が漏れてきた。
「ミシャグジ様とモリヤ家が呼んでいたアレは、可能性の怪物と呼ぶべきものです。」
「すべての並行世界の並行同位体の力を併存させているし、封印なんてあってないようなもの。レックウザもそれに気づいていない。
封印されていない可能性を存在させられるどころじゃない。ポケモンじゃない可能性、神格としての可能性、それらすべてを併せ持てば、世界だって即座に滅びます。」
それでも、この「おひいさま」ことウコンジムジムリーダーには、後手に回り続けさえしなければミシャグジ神に勝てる自信があったのだが。
「一番芳しからざるは、可能性の汲み上げ。
可能性が消えるということは、並行世界が消えるということ。世界線が収斂していくということ。
可能性を我田引水して遊んでいるうちはまだいい。似たような世界の可能性は無限に見えて、いつかは尽きる有限のもの。徐々に異なる世界から可能性を汲み上げて…その世界であるという可能性が、この世界に持ち込まれてしまうでしょう。
並行同位体...ウルトラネクロズマのウルトラメガロポリスは、そうやって成功の可能性を少しずつ汲み上げられて、失敗の可能性だけが残って、ネクロズマごと崩壊した。同じように、世界が少しずつ変わっていく恐れを、許容できません。」
声は、誰にも聞かれてはいない。
「今の封印とて、怪しいものです。」
モンスターボールに入れるという、ポケモンとしての封印の神学的記号。
湖底に沈めるという、ミシャグジ神の神話になぞらえた封印の神学的記号。
物理的にだけではなく観念論的にも二重に封印されたとしても、弱い。それは、「湖底に封印」とはたかだか水深7mの物理的な水底ではなく、
「ボールからポケモンが勝手に飛び出す可能性。
封印はいつかは解かれるという民俗学的な可能性。
そして、あのミシャグジ神に可能性を引き出され重複している、ポケモンでもなければ湖底に封印された神話もないミシャグジ神の可能性。
...カナサシおみやは、神格の本気を理解していません。たかだか1000年とちょっと、たった2柱に代わり映えのない儀式を繰り返してきただけ。危機感が、足りないのです。」
声は、誰にも聞かれてはならない。
「神は、人の思い通りにはならないものです。
ゆえに、神の権能は、人の手の上にあるべきです。」
ー*ー
しわくちゃの婆が、路地裏で、マンホールを開けて、飛び降りる。
「シビルドン、照らしたもれ。」
ツクバネ・モリヤは、地下配管の中を悠々と歩き出した。
「おひだりさまは、あんな大した神格じゃなかったらしいのじゃが、の。
家伝によれば、あれは世界の裂け目から転がり落ちてきた蛇に過ぎんぞえ。それが…はぁ…」
長い間、カナサシおみやの闇としておひだりさま、ミシャグジ様を祀り上げてきたモリヤ家は、その歴史を知っている。
蛇は可能性によって自らの運命を操作して生きる、ウルトラビーストの一種。ただ、本能のままに生きるそれを古代モリヤ家は崇めすぎてしまったーあるいはそれすら、蛇が自分に都合のいい可能性を引き寄せていたのかもしれないけど…
神に祀り上げられ信仰を受けることで、実際に蛇は神としての力を得た。蛇とともに繁栄した古代モリヤ家は、傲慢にも神の右席で対等になろうとして、神におひだりさま…音読みで
かくて蛇は、異なる世界のミシャグジ様の可能性を引き寄せた。多くの世界でミシャグジ様は強大な土着神、引き寄せれば引き寄せるほど蛇の可能性改変力は強力になり、そしてついに誰にも制御できなくなって。
同時に、モリヤ家は、変質した神、ポケモンではなくなったそれを、心から崇めることができなくなって…どんなに怖ろしい神格ポケモンであっても、ポケモンであるからして、この星の不思議な不思議な友であるからして信じられたのだ。ポケモンではない数多の可能性を秘めたそれはもう。モリヤ家の軛を離れていた。
伝わっていた古代ユキコシの邪法を、古代モリヤ家は使った。生贄を捧げて、レックウザを召喚する。捧げたもののぶんだけ、神に願いを聞かせる。そうして白いレックウザがカナサシの救い神となり、ミシャグジ神と相打ちして、生贄の子孫を地上での自らの代行者に任命して湖底に沈んだ。それが、現人神の一族、カナサシ家。
けれど、祟り神としてのミシャグジの力を持つ蛇は、鎮められてなおモリヤ家に祟っていた…祭祀されなければ、その祟り神としての「可能性」は発現とともにモリヤ家を祟り殺し…その後、「可能性」の権能を手に入れたミシャグジ神はどこまでも権能を高め、世界をも滅ぼしかねない。
「せいぜい潜伏するしかないかの。邪神教徒…これが、吾なりの、シンシューの護り方ぞえな。
ミシャグジ様を無縁の神にしてはならんぞえ…邪神であっても、な。」
とはいえいつまでもこんな手段が通用するとはツクバネも思っていない。そもそもカナサシおみやを離れて潜伏しなければならない時点で、ミシャグジ神を満足させるに足る正常な祭祀は不可能、応急処置での延命しかできないのだ。
再封印も、潜伏祭祀も、しょせん、「すぐに爆発する爆弾」を「いつか爆発する不発弾」へ変えるだけ...いつかは、ミシャグジ神は災厄の祟り神として再顕現する...その時、ポケモンとしての可能性をそぎ落としていたのなら、ポケモン世界の住人としてポケモンを祀り従える術しか持たぬ人々に、打つ手はない。
「…アリア・コトホギの可能性。
異世界からの来訪者という、ミシャグジ様に重なる神学的記号。
人々を惹きつける、崇拝の対象あるいは経由地としての神学的記号。
偉大なるシンシューよ、時流の荒波で、錬成するのじゃぞ。
異世界の神の、巫女を。」
ー*ー
From:ミクロステリス・フロックス
To:アリア・カナサシ
CC:レプトシフォン・フロックス、カグヤ・フロックス
件名:招待状
カナサシ家当主、アリア・カナサシ様へ
突然の御連絡にて失礼します。フロックス家ヒスイ分家当主、ミクロステリス・フロックスと申します。
このたび、私と姉のレプトシフォン・フロックスは、私たちが学園理事長を務めます学園島グランデ・コンティネントへ、アリア・カナサシ様を御招待したく存じます。
当学園で研究しておりますポケモン学と最新技術、とりわけ
どうか、ご検討のほどよろしくお願いします。
ー次章予告ー
「/Output学園島?海底学園じゃなく?End」
「パルデア沖に、本土のポケモンスクールに対抗しようとユキコシ資本が作った教育・研究拠点よ。
そこに、万能の機能を持つ復興資材があるってことみたいね。」
2人のアリアが招待された先、
「どういうことなのか、教えてくれる?」ーありえない人物との再会。
「私は今、先生についての質問をしています。」「アレには、星屑になってもらわないとね」ーそれはポケモンオタクアイドル言祝アリアを驚愕させる犯行。
「アリア・カナサシ、それにその旅の同行者を見定める件、か?」ー遠くユキコシから、前作主人公たちは糸を引く。
人々が集う時、時の流れの彼方から、世界の壁は破られる...!
「/Output私の、転生前の世界で、有名な都市伝説です…End」
「…この学園の秘宝、それしかないんじゃないですか?」
転生ポケモンアイドル劇場版「
「ステージの上のアイドルは、誰にもなびかない、最強のかわいい主役なんですよ?」
常夏の島で、再び、世界の命運を賭けた究極のバトルが始まる…!