アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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♪5 プロパビリティタワーのチュートリアルバトル

ー*-

 

 「貴女に渡すのは、この子よ。」

 

 モンスターボールを受け取り、言祝アリアは慎重にそれを開いた。

 

 「/Outputアシマリ、ですか?End」

 

 つぶらな瞳で見上げてくるあしかポケモンを撫でながら、もう片方の手で器用にタブレットを操って見せる言祝アリア。

 

 「そう。アローラでは最初の一体になっているらしいわね。

 

 歌に関するポケモン(アシレーヌ)に進化するからってカナサシおみやに奉納されたけど、私が二度と歌わない以上温存されてたのよ。

 

 その子とさっき返したイーブイで、私のポケモンに勝ちなさい。」

 

 「/Outputダブルバトル、ですか?End」

 

 「それじゃああんまり、でしょう?

 

 私は1体だけ。その代わり、これを使うわ。」

 

 EXエディッションプレート、そう呼ばれるディスクを取り出し、歌姫は不敵に微笑んだ。

 

 「/Output何もわからないですけど、やって、みます!

 

 イーブイ、出ておいで!End」

 

 「私は…いえ、切り札のデータをマッドサイエンティストたちに取られるのも癪ね。

 

 おいで、ニンフィア…」

 

 しなやかな指先で、虹色のディスクを挟み、すいっと横投げする。

 

 「EX、オーバーラップ!」

 

 ニンフィアの艷やかな体毛から、明らかにエネルギーが溢れ出る。

 

 【ニンフィアは ニンフィアEXへ オーバーラップした!】

 

 「/Outputやりますよ、イーブイ、アシマリ!End」

 

ー*ー

 

 「ニンフィア、リフレクター。」

 

 初手、歌姫は、物理攻撃を防ぐ光壁を展開させた。

 

 「そしてそのままめいそう。」

 

 「/Outputアシマリ、イーブイ、なきごえですEnd」

 

 (これで、お互いに物理攻撃はほとんど機能しなくなったはず…

 

 …でも、何も安心できません…)

 

 「さて、と…

 

 貴女は、私と同じ答えにたどり着けるわよね?

 

 ニンフィア、チャームボイス!」

 

 不躾に、滑らかで穏やかながらも怪しげな声が響いてくる。イーブイとアシマリが、表情を歪めた。

 

 (音波攻撃!?どうにかして防がないといけないですが…!)

 

 「続けてチャームボイス。」

 

 (「同じ答え」...もう、歌姫さんの胸の内には、音ワザを阻止するための方法論が、あるのですよね...でも、この世界に来たばかりの私には…)

 

 イーブイもアシマリも、前足で耳を押さえる仕草をするが、それでも音波を防ぐことはできず苦しそうに言祝アリアへと振り返った。

 

 (とにかく音を消さないと、でも「ぼうおん」はないし…

 

 …音を、消す?

 

 もしかして、私に、先入観がある…?)

 

 言祝アリアは指をもつれさせながらもあやまたず、タッチパネルを高速で叩く。

 

 「/Outputイーブイ、アシマリ、最大音量でなきごえ!End」

 

 なきごえというワザに、そんな効果は本来ないーけれど、確かに、大音量の鳴声は、伸びやかなチャームボイスを半ば打ち消すことに成功していた。

 

 「貴女も歌を扱ったことがあるのなら、そう、音響を使いこなすことを思いついてくれると期待していたわ。

 

 じゃあ、もう一つのチュートリアルメニューをこなしましょうか。

 

 ニンフィア、EXワザ、『プレシャスリボン』。」

 

 EXワザーポケモンEXへのオーバーラップで手に入れる、新たなワザである。

 

 ニンフィアEXのリボンが、無数に分かれ、どこまでも伸びていく。

 

 「/Outputイーブイ、かわして!End」

 

 右へ左へイーブイが跳びはねて…けれど、リボンは右から左から上から地中からあらゆる方向から迫り、あっという間にイーブイを絡め取った。

 

 「さて、これはどうさばく?」

 

 這い寄るように忍び寄るように、リボンはアシマリにも迫っている。

 

 (考えろ、考えるんです私…!)

 

 イーブイを絡め取ったまま、残りのリボンが、今にもアシマリを捉えそうに左後ろからにじりよる。

 

 「/Outputアシマリ、右にかわして!End」

 

 その機械音声の直前に、リボンは一気にくねり、アシマリの右後ろから殺到した。

 

 「/Output左!End」

 

 左へとジャンプしたアシマリの真左を、嘲笑うかのようにいくつものリボンが通り過ぎる。

 

 「ふふ…

 

 …ポケモンバトルは1分1秒が勝負。やっぱり、入力読み上げではラグがあるわね。」

 

 歌姫の言う通りだったー言祝アリアが顔をしかめるのも無理はない。彼女が指示を入力して音声出力させるより、ニンフィアが指示を先読みするほうが遥かに早いのだ。後手後手どころか、完全な逆効果。

 

 「貴女がトラウマで声を出せないのは仕方ないわ。龍神様の手が届かないなら人が手を…それでも、人の子にもできないことはある。けれど、それは、負けていい理由には、まだ、ならないわよ。」

 

 (私にもできない…歌姫さんの言う通り…だったら、どうすれば…

 

 …いえ、答えそのものは、もう、見えてはいますね。)

 

 アシマリが、後方からのリボンから逃げ、その指示をリボンを見ながら言祝アリアが出す…ああ、それならアシマリは全力で走って逃げられるしアシマリが確認できない後方を言祝アリアがカバーできる。けれどそれではダメだったのだ。

 

 「/Outputアシマリ、ニンフィアに向き合ってください!

 

 バックステップ!End」

 

 人ができないことは、ポケモンに任せるー

 

 ー後ろから迫ってきていた無数のリボンに向き直り、アシマリは尻尾とヒレで器用に後ろ跳びしてみせた。触手のように襲い来るリボンを、右へ左へ、掻い潜るように避けていく。

 

 「/Outputアシマリ、イーブイを解放しますよ!みずでっぽう!

 

 イーブイはじたばた!End」

 

 リボンの隙間と隙間を縫って、水流がアシマリからイーブイへ放たれた。

 

 ふわふわのイーブイの体毛はびしょ濡れになって縮み、絡みとっていたニンフィアEXのリボンの中から、少しもがくだけでストンと落ちた。

 

 「順応が早いわね、貴女たち。」

 

 感心感心…歌姫が手を叩く。

 

 けれど、イーブイはボロボロ、アシマリとてもクタクタで、対するニンフィアEXはほとんどダメージも受けていなかった。

 

 ここから、どうする…?

 

 ー言祝アリアは、ポケットから、メタリックに輝くプレートを取り出す。

 

 「/Output私も、これ、使っていいんですよね。

 

 イーブイ、いい?End」

 

 「ついにこの目で見られるのね、ポケモンGX…!」

 

 イーブイの身体から、エネルギーが溢れ出す。

 

 何処かから亀裂音が聞こえ、地脈の力が下方から湧き上がるー歌姫は、ほんの少しだけ、眉をひそめた。

 

 「神の、光…」

 

 【イーブイは イーブイGXへ オーバーラップした!】

 

 【イーブイGXの かくせいDNA!】

 

 ずぶ濡れの身体から、水のエネルギーが満ち溢れる。

 

 【イーブイGXは シャワーズGXへ 進化した!】

 

 「/Outputイーブイ、バブルこうせんで隠れて!End」

 

 【シャワーズGXの バブルこうせん!】

 

 シャワーズGXが、数え切れない泡を吐き出す。泡はシャワーズGXの姿を瞬く間に覆い隠した。

 

 「ニンフィア、薙ぎ払って。」

 

 リボンが、大量の泡を薙ぐ。…けれど、泡が弾けた後には、何もいなかった。

 

 「シャワーズが、消えた…?まあいいわそれならそれで。ニンフィア、アシマリにプレシャスリボン!」

 

 【ニンフィアEXの プレシャスリボン!】

 

 「/Outputアシマリ、みずでっぽう!End」

 

 【アシマリの みずでっぽう!】

 

 水弾がニンフィアEXを濡らす…ニンフィアEXは意にも介さない。

 

 ニンフィアEXから伸びたリボンが、アシマリにまとわりつき、エネルギーを吸い上げつつ締め上げていく…

 

 「/Output今です、イーブイ!End」

 

ー*ー

 

 ー「えー、この番組も節目となります今回、スタジオには超ビッグなゲストをお呼びしております。

 

 誰もが知る国民的アイドル、日本史上最高の歌姫にして、美少女…言祝アリアさん!」

 

 ー「はい、ご紹介に預かりました、言祝アリアです。」

 

 ー「えー、この度は場末のゲームバラエティに来ていただいてね、世界ツアー直前の時期でダメ元でオファー出して、そしたら事務所から快諾されたんですよ、ゲーム好きで売っているアイドルってわけでもないのにびっくりしました。言っちゃなんだけど、アリアさん、どうして来てくれたんですか?」

 

 ー「…私、あんまり言ってないんですけど、好きなゲームがあるんです。この番組は出演者の提案したゲームで企画をしてくれるって聞きましたし、私対戦をやり込む時間がないものですから…」

 

 ー「ほう、対戦をやり込んではいないが好きなゲームがある、と。それは、ストーリーが好きなんですか?」

 

 ー「ストーリー、というよりは、そう、世界観、ですね。

 

 私、世界を回っていろいろなものを見ていろいろな方に会ってきたから、まだ見ぬ他の世界も見てみたい…なんて気持ちがあるんです。だから、不思議な生き物、魅力的なキャラクターが集うあの世界観がたまらなく好きで…

 

 …実は非公式wikiの編集してたこともあります。それくらい好きなんです。さて、私が好きなゲーム、なんだと思いますか?」

 

 ー「おっと、ここで番組側への逆質問だ!というわけでね、わたくし、一発で当ててみようと思います。あ、もちろんディレクターから聞いてるとかじゃないよ。

 

 えーと…んん、国民的アイドル言祝アリアが愛してやまないゲームな…『ポケモン』!どうでしょう!?」

 

 ー「正解です。」

 

 ー「というわけでね、今回はアリアさんご希望の対戦の前に、企画として、言祝アリアさんが好きなゲーム…ポケモンの、クイズ!言祝アリアさんのポケモン愛を世界に魅せてみよう!ということでね、それではまず、VTR、スタート!」

 

ー*ー

 

 【シャワーズGXの ハイドロポンプ!】

 

 ニンフィアEXの体表が、爆発した。

 

 膨大な水。それが体毛から噴出し、ニンフィアEX本体へと爆縮したのだ。

 

 「なっ…!?」

 

 歌姫はやっと自分の不覚に気がついたーけれど遅すぎた。

 

 (シャワーズは水に溶けることができる!でも、アリア・コトホギにそれほど深いポケモン知識があるなんて思ってもみなかった…っ!だって音ワザは防げなかったのに…!)

 

 「イーブイ、そのままスピードスター!」

 

 【シャワーズGXの スピードスター!】

 

 普通のニンフィアEXなら、スピードスターごときでやられはしない…けれど、今回は別だ。

 

 濡れた体毛。染み込んだ水分に溶けているシャワーズGXからの、ゼロ距離スピードスター。

 

 ハイドロポンプに続き叩き込まれた、全身全方位の体毛という極超至近距離砲撃によって、ニンフィアEXはまたも爆縮を叩き込まれ、ついに倒れ伏したのだった。





 言祝アリアの「ゲーム設定はよく知っているが対戦経験は浅いし実際のポケモン世界も知らない」という知識状態が歌姫に「実践を知らないのに知識があるとは思わなかった」という情報ギャップとして返っている…



 
HP攻撃特攻防御特防すばやさ
ニンフィア95651106513060525
ニンフィアEX1701702201302601201050


 EXワザ:プレシャスリボン 

 元のワザはドレインキッス。ダメージと回復量が倍になった代わりに、回復は自分ではなく仲間に対して行う。
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