アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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♫4 望むままに姿を変える金属(あるいは、鉄錆と宝石の物語)

ー*ー

 

 【シンボラーの みらいよちが 発動した!】

 

 ミュウスリーGXが何をしようが、完全に手遅れであった。「みらいよち」、それはつまり、未来に於いて発生する可能性が100%である予知ということで、どんな可能性を引きずり出したところでみらいよちは必ず発動し命中する。

 

 統合AI「シャンボール」は破壊された。多数のCPUもGPUも入り組んだ配線も冷却水パイプもど真ん中を撃ち抜かれ、人工知能として死んだ。

 

 そして、「触れた者の望むがままに姿を変える金属」こと随意金属(オリハルコン)は、常に接触し意志を与え続けていた統合AIの破壊により、己を制御する枷を失い。

 

 「モンスターボールもっと欲しいよな!」「お前、手、手すりがモンスターボールに!?」

 

 「し、食堂がポケモンフーズの皿になっていく…なにを言ってるんだ俺は…!」

 

 「あと2分あれば、あと2分あれば回答終わる…!

 

 …あれ?時計止まってね?」

 

 「何!?教室が崩れてく…!」

 

 それまでは統合AIという巨大な意思によって操作され、接触者による変化にロックがされていたオリハルコン。それが、パーシモン・ゼミナール数千人の教員・生徒と数万のポケモンたちのてんでばらばらな意思によって、野放図に変化を始める。

 

 「まずい!無数の意思に干渉され続けたら、そのうちオリハルコンは崩壊するぞ!」

 

 同じ粘土の塊を数人がかりで思いのままこねるようなものだ。それぞれの完成形のイメージが全く違っていては粘土の作品はいつまでたっても完成しない。オリハルコンの操作も然り。

 

 「ハッハッハ、そうは、ならぬものなり。」

 

 サンジェルマンは、そう言って、片足で床を蹴りつけた。

 

 床を構成する金属板が、サンジェルマンの意思に応じて柱のように突き出す。

 

 メモリを持つ手の、すぐそばに生成された金属柱。そこへ、サンジェルマンはメモリの端子を突き立てた。

 

 「ダメです!ミュウスリー、すぐに奴を殺せ!取り返しがつかない!」

 

 【ミュウスリーGXの プロバビリティドライヴGX!】

 

 「何をそんなに焦ってんだ!?」

 

 サンジェルマンの半身が音もなく消え、臓物をまき散らして崩れ落ちる。ミクロステリスは錬金術師の残骸から目を背けながら、自分と姉の手をつかむバックレアを睨んだ。

 

 「あのメモリは!わたくしから奪った『可能性科学』のデータ!

 

 EXオーバーラップの最新アップデート版!

 

 矛盾する可能性を両存させ!あらゆる可能性を自由自在に具現化しあるいは現実から排除する!テクノロジー!」

 

 「…っ、思うがままに姿を変える金属なんてものに、一番与えちゃいけない力ってことか…」

 

 「そのとおり!逃げますよ!」

 

 バックレアは、ミクロステリスとレプトシフォンの手を引き走り出した。ミュウスリーGXが続く。

 

 廊下を構成する床、壁面、天井が、無秩序な金属塊へと変化させられ、そして不協和音を刻みながら細かく砕けて崩落していく。

 

 「なんの可能性か知りませんが!オリハルコン自身か!サンジェルマンかが!この建物を再構築しようとしているようです!」

 

 「おい待てサンジェルマンまだ生きてるのか?あの状態で!?」

 

 「奴は不老不死!3000年の賢者!都市伝説はだいたい本当だったようですし!全身抹消できなかったのだからまだ復活するでしょう!」

 

 「それはわかりましたけど、これはいったいなんなのですか!?」

 

 「…さあ?オリハルコンが!こういう可能性を秘めているということでは!?」

 

 「…ちっ…」

 

 周囲の金属が砕け散り、怪しく宙を舞いながら変形していく…銀色の歯車に。空間を満たす不協和音の正体はそれだ。レプトシフォンは歯車をつまみ…それが霧となって崩れるのを見て、わけがわからないと令嬢らしからぬ舌打ちを一つ。

 

 崩壊し続ける階段をなんとか駆け上り。

 

 すでに、地上の建物は半ば消えかけていた。そのかわりに、無数の歯車が空中を渦巻いている。

 

 「姉貴、あれ!」「が、学園が…」

 

 校舎があるあたり、山のように巨大な、銀色の竜巻。

 

 「校舎のオリハルコンも、全部、使ってるのか…」

 

ー*ー

 

 学園島のあちこちで、建物が崩壊し、無数の歯車へと変換され、建物の中の人もポケモンも放りだして舞い上がる。

 

 歯車の渦は、空へと巻き上がり、銀色の雲をなし、そして学園島の一点…たった今海水淡水化センターから海水淡水化センター跡地にされてしまったスポットへ、ゆっくりと集まっていった。

 

 「この歯車が!ラスボスだと!言うことですな!

 

 ならばこのわたくしの科学力で!鎮めてみせましょう!」

 

 こんなぽっと出の金属歯車に負けるようでは、ツクバネにも、ミシャグジ神にも、いっぱい食わせることなどできはしない…バックレアは機械の身体で気炎を吐く。

 

 【ミュウスリーGXの プロバビリティドライヴGX!】

 

 ミュウスリーGXの頭上に、漆黒かつ極彩の、あらゆる可能性を秘めた天使の輪が顕現して。

 

 破壊の可能性が、過程を無視して、歯車の渦に浴びせられた。

 

 「復活早々、試運転とするものなり。」

 

 【???????の ”解体()“】

 

 天使の輪も、破壊の可能性も、存在しなかったことになった。

 

 「な!まさか!オリハルコンの真の可能性とは…!」

 

 「いまさら気づいたるか。遅しに過ぎけるな。」

 

 【???????の ”解体()“】

 

 ミュウスリーGXの姿が揺らぎ、、あるいはのような物体がぶちまけられる。

 

 たった3行、それだけで、稀代のウルトラマッドサイエンティストが用意した最強の切り札は、この世から存在を抹消されたのだった。

 

ー*ー

 

 ヒスイ分家の姉弟が、目のハイライトを失ってうなだれている。

 

 バックレアは...白衣の下、無数の精密部品を散乱させ、崩れ落ちていた。

 

 2人のアリアとタロが駆け込んで来た時、すでに、そこは惨憺たる敗北の現場だった。

 

 「…これは…?」

 

 「サンジェルマンが、島中のオリハルコンを無数の歯車に変えて…歯車からの攻撃から私たちをかばってランセオラータ先生が…」

 

 レプトシフォンが、辛そうに告げながら、30メートルほど先を指さす。

 

 燕尾服の怪人サンジェルマン。そしてその上で渦巻く、見上げるほどに高い、歯車の集合体。

 

 「/Outputなんですかアレ…歯車のポケモンなんて、ギギギアルくらいしか…それにバックレアが簡単にやられるなんて…End」

 

 ヒスイ分家姉弟がかすかに驚くーえっランセオラータってバックレアだったの!?国際指名手配されたばかりの!?

 

 「まあバックレアについては…自業自得とか因果応報みたいなところあるわね。」

 

 どうせまだバックアップあるでしょ...アリア・カナサシは特に同情しない。

 

 「それより、あれはいったい…伝説のポケモンにしたって…全然かわいくないけど、なのに、なぜか、跪きたくなる…?」

 

 ヒスイ分家の姉弟は応えない。心当たりがないからではない。

 

 たった一つの心当たり、それを口にすることすらはばかられる。だってそれは、絶望とニアリーイコールだから。

 

 つい、ついつい、言祝アリアはこの異様な事態に、肉声を漏らしていた。

 

 「私が知らないポケモン…?こんなのありえない…教えてください、サンジェルマン、あなたはいったい何者を呼び出したのですか…?」

 

 「我輩が教えんとするものなり。

 

 この、復活せる、世界最大の神秘について!」

 

ー*ー

 

 3000年の時を旅してきたサンジェルマンは、高らかに語る。

 

 「ユキコシ地方はトキトビ島。その海上で、7年前、見にけり。

 

 世界を思いのままに書き換える、虚構(Fiction)を司る絶対神(Deus Ex Machina)の姿を。」

 

 無数の歯車が、鉄錆を振りまきながらガチガチと噛み合わさり、世界を侵食しながら姿を変えていく。

 

 「この世界が秘める本当の神秘、我輩はそう感じたり。

 

 ゆえに我輩は、かの神の欠片たる歯車を以て『意によって様態を書き換えられる金属』となして保存したり。それに、かの神が倒されたらぬ世界の可能性を、ここに組み合わせにけり!」

 

 その神は、本来のポケモンからは逸脱した存在であり、自由に世界のすべてを書き換える能力を持ちながらも、サンジェルマンの覗き見る目の前で潰えた。その欠片、一片の歯車こそが「触れた者の望みによって姿を書き換えられる金属」であり、そして、今回、欠片たるオリハルコンから「倒されていなかった可能性」によって神が復活しているのだ。

 

 歯車が組み変わり、本来あるべき姿を顕す。

 

 「なに、これ…」「うそ…こういうの、絶対よくない…」

 

アリア・カナサシは知っているーその絶対神がカントー・コーシュー・シンシュー・ユキコシを引っ掻き回したために、討伐のわずか3か月後にはシンシュー地方は絶望的な戦乱へと突入したのだ。

 

 タロは知っているーその絶対神はカントーからホウエンまでの熟練のトレーナーたちを全員集めてなお歯が立たなかった怪物なのだ。

 

 それを知らない言祝アリアが、ぽかんと見上げる先。

 

 真っ黒なフィルムロールがいくつもの環をなし、無数のそれが本体の上下にー本体から遠ざかるほど大きくなりながらー地下深く空高くまで続いている。

 

 本体の左右でどこまでも伸びる歯車仕掛けの巨腕が、錆を落としながら光を纏い、星を包む翼かのように平たく開いていく。

 

 無限にも等しい暗黒が無機質な真球の胴体を染め、無限にも等しい光芒が4対の眼窩から迸る。

 

 永遠にして至上なる光翼が、大空へと展開された。

 

 「名を冠するなら、そう…

 

 (Copy)(God)フィクト(Fict)マキナ(Machina)とでも、言わんとするものなり。」

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