アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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 学会準備、申請書準備、論文準備、申請書準備のため更新遅れます(そんなにタスクを溜める作者に問題がありすぎる)


♪49 言祝チェイス

ー*ー

 

 【コウジジム忍者部隊が 勝負を しかけてきた!】

 

 「/Outputイワパレス!ラプラス!

 

 練習したとおりのフォーメーションで行きましょう!End」

 

 取り戻したばかりのモンスターボールを投げ、言祝アリアは忍者たちに相対する。

 

 忍者のポケモンは、アギルダー、テッカニン、ヌケニン、ストライクの4体。もっとも周りの森に隠れているのがいるのだろうが…

 

 「「「「「GXオーバーラップでござる!」」」」」

 

 膨れ上がる、忍者ポケモンたちの存在感。

 

 (学園島に行く前はジムリーダーたちに行き渡ってたけど…冬の間に、したっぱクラスにまで…!)

 

 「/Outputラプラス、イワパレス、EXオーバーラップ!End」

 

 だが、ポケモンEXとポケモンGXとでは、能力こそ変わらないもののポケモンGXが圧倒的に有利だ。強力無比なGXワザがあるからである。まして単純な数でも負けているとなると…

 

 「/Outputゆきげしき!End」

 

 しんしんと雪が降り始め、それとともにイワパレスの背負う岩ブロックが白と灰色の縞模様に変わる。シンシューイワパレスならではのウィンターフォルムへのフォルムチェンジだ。

 

 「「「「かげぶんしん」」」」

 

 敵のポケモンたちが無数に増える。そのうち少なくとも十数が森に入り込み…どこに敵がいてどこから攻めてくるのかわからない絶対の死地、そういうことだ。

 

 「/Outputラプラス、オーロラベール。イワパレス、むしのさざめきEnd」

 

 言祝アリアは、目をつぶり、耳を澄ませ…

 

 「/Output右手、38度と115度、左手、349度、260度にふぶきEnd」

 

 森の中めがけ、吹雪が吹き付け、悲鳴が聞こえてくる。かげぶんしんの影たちも消えた。

 

 「…よく、本体の位置を見抜いたな。」

 

 「/Output大した手品ではないですよ。

 

 あと、やはりまだ何体かいますね…?

 

 69、193、301へふぶきEnd」

 

 「ちっ、アギルダーこうそくいどう!」「でんこうせっか!」「ちいさくなるでござる!」

 

 森の中を飛ぶ気配、しかし、ラプラスEXとシンシューイワパレスEXからのふぶきはそれを追随し、しっかり撃ち落とす。雪天候下でのふぶきはターゲッティングさえできれば必中だ。

 

 (…「むしのさざめき」と私の聴力を使った、音響測位。ホールに比べればまだざわつきも観客も少ないと思っていましたが、攻防を繰り返すたびにノイズが増えて、会場最適化も追いつきませんね…)

 

 アイドル流の忍者攻略にも限界が見えている。誰もをファンにする魅了力も、誰もをファンにするアイドル活動のための超人的聴力も、忍者軍団への決定力にならない。

 

 「「「「いけ!GXワザだ!」」」」

 

 森そのものが爆発攻撃を仕掛けてきたかのような爆轟。隠れ潜む4体のポケモンGXにより、森全体がキリングフィールドと化し、ラプラスEXとシンシューイワパレスEXを焔の刃で斬り刻んだ。

 

 「油断するな。」

 

 確実にオーバーキル、そうわかっていながらも忍者たちは遠巻きに業火を見守る。もとより、たった2体で熟練の忍者4人を翻弄しているのだ。言祝アリアはかなりの強敵であり…

 

 【シンシューイワパレスEXの からをやぶる!】

 

 業火の中から、それは飛び出した。燃え続ける森にシザークロスが炸裂し、ストライクが戦闘不能になる。

 

 「そうか、『がんじょう』でござるか。

 

 アギルダーッ!」

 

 アギルダーが燻りの中をシンシューイワパレスEXへ突撃する。そのさなか、アギルダーは一瞬、陰りを感じて上を見上げ…

 

 「上を、取られ…ッ!?」

 

 森が焼ける上昇気流に乗り、ふわりと浮かび上がる羽毛。その背には少女が1人。

 

 「/Outputりゅうせいぐんです、チルタリス!End」

 

 一斉攻撃の直後でなければ。一斉攻撃の直後でも、地上からイワパレスの反撃を受けなければ。忍者が敵に飛び立ちを見過ごすことなどあり得なかったというのに…

 

 「テッカニン、ダブルウィング!」

 

 それでも忍者たちは、真上から叩かれることを防ごうと、何体ものテッカニンを繰り出し…しかしそれは、コットンガードに阻まれて大した打撃を与えられない。

 

 【М(メガ)チルタリスEXの りゅうせいぐん!】

 

 【イーブイ(ニンフィア)GXの ハイパーボイス!】

 

 森を、星礫が轢き潰した。

 

 隅々まで響き渡る歌声は、隠れ潜むことを許さなかった。

 

ー*ー

 

 本気の言祝アリア、躊躇のない言祝アリアにとって、五感が健在な人間ほど「もろい」ものはない。

 

 目をつぶろうにも、もはや彼女から目を離せない。耳をそむけようにも、意識は彼女の歌声に誘引される。そしてこの無上のアイドルを一度脳で感じとろうものなら、その魅力に灼かれてファンにされてしまう。それは厳しい鍛錬を積んだ忍者でもさほど変わらない。素人が彼らを縛り上げたとて、忍者たちは数分でほどいて逆転してのける…が、言祝アリアにとっては、耳栓を抜く時間さえあれば魅了するには充分だ。

 

 かくして、間抜けヅラで言祝アリアの一挙一足に見惚れる忍者の出来上がり…なのだが、さすがにリーダーのひとりは違っていた。

 

 「貴様、俺たちに勝って、それでどうするつもりだ?

 

 すでに上に通報した。第2陣がすぐに来る。」

 

 自決の意思こそ抑えられているが、唯々諾々と盲従するでもなく、減らず口を…いや、それさえもアドバイスになってしまっているが。

 

 「もちろん、歌姫さんを追います。」

 

 「深入りするな。次は命はないぞ。

 

 俺たちも、女を殺したくはないのだ。貴様の精神操作のせいかもしれんがな。」

 

 言祝アリアは、ふぅと息を吸って。

 

 「命はない…ですか。」

 

 忍者たちから奪い取ったGXマーカーを懐にしまい。

 

 「追うべきとか、追わなかったらどうなるとか、そんな理屈はどうでもいいのです。

 

 旅は道連れ、世は情け…そういうではありませんか。

 

 チルタリスッ!」

 

 言祝アリアが飛び乗るやいなや、チルタリスはふわりと舞い上がった。

 

ー*ー

 

 アリア・カナサシが攫われた山道から、コウジタウン市街中央のコウジジムまでは、十数キロ。徒歩ならば数時間であり、飛行タイプを使えば十分足らずである。…もちろん、誰も邪魔せず進めれば。そして、そんなに世の中都合良いわけではない。

 

 ー「ウェスト3より全部隊!敵の洗脳能力は耳栓と偏光グラスで克服できるもよう!」

 

 ー「センター1より全部隊。コウジジムにて洗脳対策を受け取られたし!」

 

 ー「ウェスト4、2次スクランブル入ります!」

 

 通信とともに舞い上がるのは、コウジジムが保有する空戦部隊。バルジーナ、ドンカラス、オトシドリ…

 

 言祝アリアのチルタリスは、コウジタウン市街が見えてくるその手前で、空戦部隊に囲まれた。

 

 「/Outputチルタリス、低空へ!End」

 

 ひこうタイプどうしのバトルでは、絶対的に高空有利なわけではない。上にいたほうが狙いやすくまた落下を速度に上乗せしやすいが、自分が撃墜された時のダメージが大きいし、地面スレスレの敵へ突っ込むのは危なすぎる。

 

 森の樹冠を這うように飛ぶチルタリスへ、バルジーナやドンカラスたちは突撃するわけにもいかず「あくのはどう」を遠くから撃ちかけるしかない。

 

 言祝アリアはと言えば、チルタリスに全幅の信頼を置き、その背の上で器用に身体を前向きから後ろ向きに変えた。これで、前からの攻撃はチルタリスが、そして後ろからの攻撃は言祝アリア自身が察知して避けさせればよい。

 

 ーそう思っていたから、反応が遅れたのかもしれない。

 

 【オトシドリの がんせきふうじ!】

 

 【オトシドリの ストーンエッジ!】

 

 【オトシドリの うちおとす!】

 

 【オトシドリの ステルスロック!】

 

 こうかばつぐんの攻撃が、前後左右から、真下の森の中から、真上の空から出現する。不意をつかれただけではなく、あくのはどうと異なり発射型ではなく出現型のワザだったこともあり、チルタリスは何発かくらってふらふらになり…そして、前方に設置されていたステルスロックへ追い込まれた。

 

 爆発。チルタリスは咄嗟に羽毛を膨らませて背中の言祝アリアをかばい、森中に墜落した。

 

ー*ー

 

 「/Outputチルタリス、休んでいてくださいEnd」

 

 薄暗い森の中、下草をかき分けて言祝アリアは歩き出す。

 

 「見つけたでござるか!?」「否、しかし此方にござる!」

 

 アイドルとしての繊細な聴力は、森の遠くからのヒソヒソ声を聞き分けていた。

 

 「『みやぶる』にござる。」「『かぎわける』に候。」

 

 (森の中を逃げ回るというのは、まるで私がこの世界に転生してきた時のようですね…たしかあの時は…)

 

 「逃げるとすれば、匂いが届かない風下か、渓流の向こうに候な。」

 

 ーどうやらこの忍者たちは、転生1日目の賊のようには逃げさせてくれないらしい。

 

 (…どうやって逃げ延び…

 

 …いえ、違います。逃げて、一刻も早く歌姫さんを助けに行かないと。)

 

 追われているという危機感が逃げの姿勢を取らせていたが、考えてみれば、言祝アリアはむしろ誘拐犯の追跡者。逃げではなく攻めこそが取るべき立場だ。

 

 (…そうです。このアイドル言祝アリアが、旅の友を探すのに、みじめに逃げ回ることなんてありません!)

 

 両の手で頬を叩き。

 

 「考えるより前に走り出せ、私!」

 

 「いたでござる!」「捕まえよ!」「往けい、タチフサグマ!」「ふん縛れ、アリアドス!」

 

 敵の声はすれども姿は見えず、しかも対策されていて「ファンにしてしまう」という手段は使えない…それは、どんなステージもおそれない言祝アリアを怯ませる理由にはならない。

 

 「最初っから最後まで、本日のライブはすべてがハイライトですよ!

 

 輝くのは、最初に倒した忍者たちから奪った、GXマーカー。

 

 「オンステージ&オーバーラップ、イーブイ、アシレーヌ、ラプラス、チラチーノ、イワパレス!」

 

 敵はコウジジムにありー5体のポケモンGXを従え、言祝アリアは走り出した。




 アイドル、サムライの城へカチコミ...!
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