アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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 お気づきと思いますが、カナサシタウン=諏訪・岡谷・茅野市・下諏訪町、エクリプスタウン=諏訪工業地域、カナサシおみや=諏訪大社です(諏訪大社がわかる方には、上社本宮を情景として思い浮かべていただければ)。



♪6 挑戦、カナサシジム(カナサシおみや)…?

ー*ー

 

 「おや、お客さんかえ?」

 

 板葺きの、古風というよりいっそ原始的な社殿。その真正面で、しわくちゃの婆が歌姫と言祝アリアを待っていた。

 

 「ええ。モリヤの婆っちゃん、相談にのってはくれる?」

 

 「相談…ジム戦かえ?」

 

 「/Outputジム戦?この神社で?End」

 

 「神社…貴女はそう呼ぶのね。

 

 ここはカナサシおみや。シンシュー10豪の一家、モリヤ氏の祭祀場にして、戦乱の終結とともにカナサシジムに登録された、龍神のおみやよ。」

 

 「/Outputひょえ、すごい…て、そんなジムに挑むんですか!?勝てませんよ!?End」

 

 イーブイとアシマリだけでは無理だ…そう、言祝アリアは悲鳴をあげる。

 

 「…私とタッグバトルだったら?」

 

 「そなた、戯れはほどほどになされ。」 

 

 「あら、そう?」

 

 「お客さんから邪なる力を感じるぞえ。あらかたまた『科学』とかいう背神の輩の産物であろ?」

 

 眼光鋭く、婆は言祝アリアを睨んだ。

 

 「いろいろ事情は複雑で、私たちが解決を提案すべきように思うのよ。」

 

 「…まあ、良かろうて。」

 

ー*ー

 

 「あらためて、カナサシおみやだいぐうじ、カナサシジムジムリーダー、シンシュー10豪がひとり、ツクバネ・モリヤじゃ。ツクバネと呼んでくだされよ。

 

 …それで、相談とは何かえ?そのけったいな板のことかえ?」

 

 装飾も何もない簡素な木造小屋なのに、神聖な雰囲気が満ちている…そんな重々しい空間で、だいぐうじ兼ジムリーダーはそう口を開き、次いで言祝アリアへ回答を促した。

 

 「/Output言祝アリアです。アリアって呼んでください。

 

 これは私が声を出せないだけです…End」

 

 「…すると、さては、その懐に隠しとるモノじゃな?」

 

 ツクバネと名乗る婆は、しわくちゃの腕をすっと伸ばし、人差し指で言祝アリアの胸元を指さした。

 

 「…よくわかるわねモリヤの婆っちゃん…」

 

 「なぁに、冒涜的な雰囲気を感じたからの。

 

 例のEXエディッションとか呼ばれし神器に似ておるが、もっとそう…無茶なシロモノではないかえ?」

 

 言祝アリアが、胸ポケットから、再び黒くくすんだ板、GXマーカーを取り出す。ツクバネは嫌そうに顔をしかめながらGXマーカーを受けとり、光にかざしてためつすがめつした。

 

 「…これは、コーシューの…」

 

 「/Outputはい、GXマーカーって呼ばれてるモノらしいです。ひょんなことで手に入れました。でも、これがどういうものでどうすればいいのか、私にはわからないでいますEnd」

 

 コーシューからの賊から半ば奪い取った、怪しげながらも、ポケモンGXという力をくれる石板。言祝アリアには、原作に存在しないそれをこれからも扱っていいのか、扱い切れるのか、わからないでいる。

 

 そしてまた歌姫にしても、エクリプスタウンが誇る(?)マッドサイエンティスト集団が解析しきれないGXマーカーという代物について、神秘を司るカナサシおみやの意見が知りたいと思っていた。

 

 「ふうむ…ほうほう…

 

 …アリア殿、そなた、EXエディッションの仕掛けは聞いたかえ?」

 

 「/Outputポケモンの可能性を引き出す…って、聞きましたEnd」

 

 「ま、そういうことにされておるな。」

 

 「/Outputされている…?End」

 

 「かつて誰もがこの街を、神祀る街カナサシタウンと呼んでおった。それが今やどうじゃ?皆が科学の街エクリプスタウンと呼ぶ…なれど、祭祀のためのおみやや強さを尊ぶジムとして、神を祀るカナサシの側面は残っておる。

 

 このように、物事には常にいくつもの側面があるものじゃ。ポケモンEXにもな。説明せんかったんかえ?」

 

 歌姫は首を横に振りながらすくめてみせた。

 

 「したとして、それに何の意味が?

 

 プレートの中の科学力は部外者である私たちにはブラックボックス、としても『可能性』って説明と解釈が揺らぐわけでもないのよ。

 

 『プレートが与える力は、カナサシの神の力に似ている』なんて、言ったところで意味もなければ意義もないわ。私たちは湖底に眠る神様の正体すら知らないのだから。」

 

 「EXならば、それで良かろうかえな。

 

 じゃがこれは…GXとやらは違うな。この石板、今も、地脈を通じて御神力を吸い上げておる。」

 

 (…えっ!?)

 

 

 「…はあ…やっぱり、そうなのね。」

 

 「/Outputそ、それって、罰当たりなのでは…?End」

 

 「だから言ったではないかえ。ま、1つなら誤差じゃろが…コーシューの賊共、なりふりかまっておらんの…

 

 良かろうお客さんよ、ひとつ、昔話をしようかえ。」

 

ー*ー

 

 ポケモンEXーそう呼ばれ始めた技術が普及し始めた頃。

 

 既に街の中枢をマッドサイエンティスト集団に奪われていたカナサシおみやは、入手したEXエディッションプレートを何度か試し、そしてある結論に達した。

 

 「これは御神力を宿しておるな。」

 

 神様すなわちカナサシおみやが祀る伝説のポケモン…EXエディッションプレートとはそれの権能を再現する模造神器であろう、と。

 

 カナサシおみやの神様は他者に力を授けることができると言われている…ならば、その権能の一部であれ、ポケモンをパワーアップさせても無理はない理屈だ。

 

 プロバビリティ・タワーに棲まうマッドサイエンティストたちはEXエディッションの効果を「ポケモンのあり得たかもしれない可能性を現実に重複させ、引き出す」と言っている。けれどカナサシおみやは、伝説のポケモンの権能は単にポケモンを強化するのであって可能性うんたらかんたらではないとそれだけは主張した。湖底に鎮められた荒神は光を司り、湖底に眠る龍神様は強さを誇り分け与える…それ以上でもそれ以下でもない、と。

 

 ともあれ…カナサシおみやは、得体のしれない模造神器を頼ってはならないとお触れを出した。けれどシンシュー地方のほとんどが従わず…結果、7年前の戦乱でポケモンEXを唯一持たなかったカナサシおみやは、一時期遅れを取る羽目になった。それを覆したのが、龍神の力を歌声を通じより直截に授ける、おみやの歌姫というわけだったのである。

 

ー*ー

 

 「神の力は私たちには過ぎたものよ。欲望と争いをうむわ。」

 

 「それだけではないぞえ。その石板は神様の権能を真似るのみならず、神様の御神力を吸い上げておる。半分は本物の神器じゃな。…ロクなものでないな。

 

 コーシュー人は罰当たりじゃ。自力で何も望めないから、シンシューの神様から力を奪いよる。

 

 科学とかいう背神者は無謀じゃ。仕組みだけ、その仕組みの真髄すら理解せず真似た分際で、正真正銘の御神力を帯びた神器など理解できまいて。神秘への敬意が足らんぞえ。」

 

 ツクバネがこっぴどくこきおろす…一方で、言祝アリアは混乱した。ツクバネはつまり、「神の権能を『可能性』と仮定してそれを模造した科学製偽神器」EXエディッションプレートに「本物の神の力を直接地脈から吸い上げるコーシュー版付加」をしたものがGXマーカーとそう言っているわけだが、1つの強化アイテムに2つの対立する体系が組み込まれていてはややこしすぎる…だから、とりあえず単刀直入に結論だけ求めることにした。

 

 「/Outputツクバネさん。

 

 私は結局、これをどうしたら?End」

 

 やっぱり、神の力を吸い上げるなんて罰当たりなシロモノ、封印したほうが?

 

 「…1つや2つで揺らぐ神様でもあるまい。じゃが乱用はするなよ?」

 

 ありがとうございますーそうタブレット端末に打ち込もうとする言祝アリアを、ツクバネは咳払いで制した。

 

 「何、モリヤの婆っちゃん?」

 

 「なぁに別件じゃ。頼み、いや命令じゃな。」

 

 「ちょっと婆っちゃん?GXマーカーを使っても問題はないんでしょ?だったら条件なんか」

 

 「問題がなくても、こやつに預けるには問題があろうよ。」

 

 射るような鋭い老眼。

 

 「本来はそなたが使うべきであろ。そなたが戦いから逃げるのはさておき、貴重な鹵獲品まで死蔵してはならぬでないかえ?

 

 強き神器は強き者の下にあるべきぞ。アリア・コトホギ…シンシューリーグを、このシンシューの10人のジムリーダー、新たに治めることになった10の豪族を、倒してまいれ。

 

 まずは手始めに、このツクバネを倒してみよ。」

 

 モンスターボールを3つ掌の上に

 

 「ちょっと!?」

 

 「/Outputあの、私チャンピオンを目指したりするつもりは…

 

 …少し、考えさせてもらえますか?End」

 

ー*-

 

 「あんな婆の言う事、従う必要はないわ。

 

 私だってほったらかして出奔する気だったし。」

 

 何気に問題発言をしつつ、歌姫は言祝アリアに翻意を促した。

 

 「カナサシおみや…カナサシジムのタイプ、知らないわよね?

 

 雷タイプなのよ。でんきタイプと外では言うらしいわ。」

 

 ただでさえ歌姫からもらったばかりのアシマリは、弱点ゆえに頭数に入れられない...すなわちイーブイGX一体で、シンシュー10豪が一人、カナサシジムジムリーダーのツクバネ・モリヤだいぐうじを倒さなければならない。

 

 「/Output無理、ですね…End」

 

 イーブイGXの特性「かくせいDNA」も、何らかのタイプのエネルギーなしには進化系に至ることはできないし、そもそもイーブイの進化系にじめんタイプがない以上ツクバネのポケモンの弱点をつけない。無謀だった。

 

 「/Outputでも、このGXマーカーがどうとか、ジムチャレンジやリーグがどうとか以前に」

 

 「…でも?」

 

 そして、シンシュー史上最強の歌姫は、日本史上最高のアイドルがその地位に至ったわけの一端を、聞くことになった。

 

 「/Outputせっかくチャンスがあるなら挑みたい。勝負を挑まれたなら負けたくない。

 

 一か八かになるとしても、私は、ツクバネさんに認めてもらいたいですEnd」

 

 たぐいまれなるハングリー精神ー元アイドルのかわいらしくも美しく透き通った瞳、その中に燃える熱を見て、歌姫は息を呑んだ。

 

 「…そう。

 

 正面から挑んで勝てるとは思えない。けど、他所の地方のジムでは必ずしもポケモンバトルの勝敗でバッジを渡していないそうね。」

 

 特にオレンジ諸島ではそうだ。また特別にバッジを与える場合もあるージムバッジは「ジムリーダーがふさわしいと認めた場合」に与えられるのであってジムリーダーに勝利する規定ではないのだ。

 

 「搦め手を、考えて行くという手も…

 

 …あら?」

 

 ガヤガヤと。

 

 「/Outputなんだか、鳥居のほうが騒がしいですね…?End」




 ツクバネ・モリヤ

 シンシュー10豪族が一家モリヤ氏の長にして、カナサシおみやで神様を祀るだいぐうじ。4年前からカナサシジムジムリーダーでもあるしわくちゃババァ。でんきタイプを使う。
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