アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜 作:十二の子
ー*ー
コウジタウンに、鐘が鳴り響く。
戦時中にコーシュー軍の重包囲下に置かれた時ぶりの、敵襲を告げる鐘。
けたたましい鐘の音の下、たった1人でコウジタウンを敵に回したアイドルは、襲来するサムライに会敵、戦闘、アイテム強奪、勝利、回復を繰り返しながら、城下町を爆走していた。
「団ラッシュ…と呼ぶにはいささか規模が贅沢ですが。
…チラチーノ、メロメロ!イワパレス、うちおとす!」
街角で乱闘が始まり、路地裏へとひこうポケモンが落ちていく。
屋根の高さすれすれを飛ぶチルタリスGXがさえずるとともに、コウジジムの方角からやってくる甲冑をつけたタイレーツGX軍団へ、りゅうせいぐんが降り注ぐ。
用水路の中から飛び出してきたグソクムシャGXを、
空き家を斬り飛ばしてネギガナイトGXが姿を見せた瞬間、ラプラスGXが空き家もろとも凍りつかせる。
通常の2倍の強さを持つポケモンGXが市街戦を繰り広げるのだから、言祝アリアの通った道は瓦礫の山と化していった。
そんな中、言祝アリアはふと、十字路の中央立ち止まる。止まれば敵は回復し追撃してくるとわかっているのに、十字路の前後左右から漂う殺気が彼女をそうさせた。
「みなさん、備えて…」
【ゲッコウガGXの きょだいみずしゅりけん!】
四方から、水刃が殺到した。迎撃は間に合わない…言祝アリアは、身体を伏せながらきずぐすりを取り出す。
「イーブイ、ニンフィアへチェンジ!」
特性「かくせいDNA」による一時的進化を指示しながら、言祝アリアはきずぐすりをポケモンたちに吹きかけ。
【ゲッコウガGXの おぼろぎり!】
刹那の水霞。いくら目をこらしてもそれ以外に何も見えない斬撃が、四方から襲いかかる。
(ウスモエジムと同じ、変幻自在の水の斬撃…ゲッコウガGX…!けれどあの時のような攻略方法は…!)
姿を見せない忍者ポケモンに対し、2体のポケモンのエコーボイスを歌いつなぎ、連続的な範囲攻撃を浴びせ続ける…しかし、今回はエコーボイスのワザ思い出しをしなければならない上、相手は4体いてダメージレース的にも間に合わない。
(…考えるんです言祝アリア!ポケモンオタクの名に賭けて!)
敵は照準すらできない不可視の忍者ポケモン。ここでやらなければ自分がやられる。
(…必中ワザ!それで探知するッ!)
「…イーブイ、4方向へスピードスターッ!」
【
水霞が四方に出現し、直後、斬撃が
(…前回、2体のエコーボイスで、1体のゲッコウガGXをなんとか仕留めた…なら、スピードスターのダメージでは4体のゲッコウガGXは倒せない…こっちが先にやられます…!
…けれどこれなら!)
「アシレーヌ、チルタリス、ラプラス、イワパレス、スピードスターを追尾してくださいッ!」
星屑の軌跡を追うように宙を奔る、ムーンフォース、りゅうのはどう、ふぶき、うちおとす。それは、水霞が出現したところに、狙い過たず命中した。
十字路の前後左右、水霞が崩れ、ゲッコウガGXが肩で息をしながら姿を見せる。
(忍者作戦が無理ならば、次はいよいよ来るはずです…)
【ゲッコウガGXの シャドーアサシンGX!】
4体のゲッコウガGXの姿が、黒い霧となってかすみ、姿を消し。
(来ましたっ!GXワザッ!)
「こちらもGXワザですッ!チラチーノ!全部当ててッ!」
【チラチーノGX(祈声)の スイープビンタGX!】
至近へ出現した黒い霧へ、チラチーノGXの掌底が突き放たれる。特性「スキルリンク」により必中の連撃となっていたそれは、姿か見えなくなるほどの速度で動いていたゲッコウガGXの運動量をダメージへと変換し…
ノックバック状態にある4体のゲッコウガへ、
ふぅ…冷や汗したたる額を手の甲で拭いつつ、視線を上に向け...その目に、屋根から飛び掛かる人影が映り込んだ。
「我はサスケ!忍び頭が一人!
お命頂戴仕る!」
言祝アリアは、目を大きく見開いた。
(トレーナーの私が、本命…!?)
視界いっぱいに、凶刃がきらめく。もはや、ポケモンたちがどう動こうが言祝アリアを助けることはできない。
絶体絶命の窮地。言祝アリアはあえて、意識して、表情から恐怖を抜いた。
(信じるしかありません!私自身を!アイドル言祝アリアを!)
ー*ー
忍者の頭領の1人、サスケは、屋根から飛び降りながら、ターゲットの顔を見つめていた。
尊敬する殿、オシロイのために、アリア・コトホギは殺さなければならない。ここで仕留め損ねるわけにはいかないのだ。
ゲッコウガにできないのなら、手ずからやるしかない…正眼に構えた刀を、ターゲットの顔へと振り下ろし…
見つめていたターゲットの顔の、驚いた、恐怖に満ちた表情が、安らいでいく。それとともに、美しいぬばたまの瞳が引力を帯びた。
吸い込まれそうな瞳。
何者にも傷つけてはならない、そう畏怖そして神性を感じさせる瞳。
(この美しい顔を、斬ることなど、拙者ごときには許されないのではないか…!?)
サスケは咄嗟に、空中で刀を持ち直し、ターゲットの顔をすれすれで刀の軌道から外し…しかしもはやその軌道では、首を落とすどころか、袈裟斬りに身体を斬ることもできない。
ターゲットのポケモンに邪魔される前にターゲットを斬り捨てる方法は残りただ一つ…心臓を一撃で突く!
着地の勢いもそのままに、サスケは刀を突き出した。
ガツン!ー刀の先端から、金属質の衝撃が伝わった。
(胸の前に…タブレット端末…!?心臓への狙いの変更を予測された!?
だが拙者の刀が貫けぬはず…よもやエクリプスタウンの超硬合金製!?
…そもそもなぜタブレット端末に気づかず…顔に見惚れていたからか…なぜ拙者ともあろうものが斯様な手抜かりを…)
「/Outputイーブイ、スピードスターEnd」
刀を受け止めていたタブレット端末が、ショートカットコマンドでイーブイの指示を音声出力する。言祝アリアの声を防ぐため耳栓をしていたサスケは、それに気づけずに思索の中断が遅れ…
…殺到した星屑が、彼を昏倒させた。
ー*ー
「我が名はセイカイ!そなた、世に二つとなき剛の者とお見受けする!
いざ尋常に、勝負!」
コウジジムの石垣が見えてきたその手前、大通りの中央で、巨躯が仁王立ちしていた。
どうせ耳栓で聞こえていないだろうと思いつつ、言祝アリアは名乗りを返す。
「私はアリア・コトホギ!コウジジムチャレンジャーとして、このバトル、受けましょう!」
「いざゆけ、ゴロンダ!」
「サシで行きましょうか。イワパレス!」
「アームハンマー!」「シザークロスです!」
腕を振り上げたゴロンダGXの突進を、腕を掲げたイワパレスGXが受け止める。衝撃が大通りの路面を砕いた。
「バレットパンチ!」「むしのさざめきです!」
至近距離での、ステゴロの闘い。サムライたちが遠巻きに見守る中、ゴロンダGXは繰り返し殴りかかり、イワパレスGXは迎え撃って痛打を返す。
「ドレインパンチ!」「がんせきふうじで防いで!」
剛腕が、岩塊を爆砕する。爆発と見間違うほどのインパクトに、言祝アリアも苦笑するしかない。
…それでも、イワパレスGXはまだ、決定的な打撃を受けていない。右から左から繰り出されるゴロンダGXのラッシュに対し、じりじりと引き下がりながらもカウンター攻撃を返している。
「むむっ…そなたらなかなかやりおる!
いざ、我が至極の一撃を見せようではないか!」
セイカイが叫ぶとともに、ゴロンダGXはタッタッタと後ろへステップを踏んで下がり、そして両腕を高く掲げた。
(…GXワザ、来ますか…!)
破裂せんばかりの力こぶが、ゴロンダGXの両腕に盛り上がっていく。
【ゴロンダGXの…】
「イワパレス、今ッ!」
イワパレスGXが何らかの構えをとった次の瞬間、ゴロンダGXは大きく踏み込み、イワパレスGXへと飛びかかった。
【ノックアウトハンマーGX!】
ゴロンダGXの両腕の筋肉がうなり、音速の壁を叩き壊された破裂音が空気に響き、余波で周りの家々がビリビリ震える。
イワパレスGXの籠もる岩の棲家は、砕け散って風に消えた。中身もろとも。
「…むっ…!?」
「…助かりましたよ。『からをやぶる』を覚えさせていなくても、そちらから殻を破らせてもらえたんですから。『こらえる』を覚えさせておいたかいがありました…
…イワパレス、シザークロス!」
太陽を背に落下してくるそれに、ゴロンダGXは反応しきれなかった。
【イワパレスGX(祈声)の シザークロス!】
「我の、負けということか…
かくなる上は、殿の御為、悪く思うなよ!皆の衆、かかれっ!」
セイカイの呼びかけに応えるサムライは、1人としていない。
「サシの勝負で5体浮かせてもらって、それを遊ばせているわけもないでしょうに…」
大通りの両脇にもたれかかるように伏せっている数多のサムライやポケモンたちを見て、セイカイは「いつの間に…」と呆気にとられ…そして、モンスターボールを取り出すまでもなく、6体からのハイパーボイスによって卒倒させられた。
ー*ー
コウジタウンの中心、かつてジムリーダーオシロイの先祖が、川堀に囲まれた堅固な城を築いたそこは、コウジジムと名を変えた今も、盆地にそびえる要害たり続けている。
戦時中にはコーシュー軍数万騎の包囲を跳ね返したそれへ、アイドルはたった1人、突撃した。
橋が落とされた川堀を、フリーズドライで凍りつかせて突破し。
キツい傾斜がつけられた石垣を、りゅうせいぐんによって突き崩し。
あらゆる方向からの侵入者を全方位から集中攻撃できる配置の城壁、櫓、矢来へ、アイドルならではのすべての照明・音響をアピールに活かす緻密な把握能力で撃ち返させ。
そうして、内堀にかかる橋までたどり着いた一行を、たった1人で待ち受ける者がいた。
「俺はジンパチ。サムライ大将として、本丸へは通せねぇ。」
鎧兜に身を包んだその男は、右手で槍を持ち、左手では指の間にモンスターボールを1つずつ計5つも持ち、城門に仁王立ちしている。
(…兜の脇についているのは…ヘッドホン?耳栓をしているのに?いったい何を…)
「者ども、かかれぇっ!」
投じられたボールから登場したポケモンたちを見て、言祝アリアはジンパチの狙いを理解した。
バクオングGX、ココロモリGX、オンバーンGX、ジャラランガGX、ストリンダーGX…ジンパチのポケモンたちが構えるとともに、本丸の城壁から多数の進化前たちが姿を見せる。
「いいでしょう、そちらがその気なら…」
「ばくおんぱ、ちょうおんぱ、ばくおんぱ、スケイルノイズ、オーバードライブ!」
一斉に、音波エネルギーが空気を満たした。震動は大気を介してあらゆる物体をシェイクし、水堀は波打ち城壁と瓦はガラガラ揺れ地面から埃が舞う。
「…私たちにライブバトルを挑むということがどういうことか…この喧嘩、高くつきますよ?」
言祝アリアのその呟きは、激烈な騒音にかき消された。
ー*ー
ジンパチは勝利を確信している。
5体のポケモンGXと数十体の進化前ポケモンからの爆音攻撃は、自分ですら耳栓だけで余波を耐えられる自信がないほどだ。集中攻撃を受けている言祝アリアとその6体など、すぐにでも鼓膜から血を吹き脳震盪でひっくり返るはず。
それに爆音下だ。言祝アリアのポケモンの特徴と言えばハイパーボイスなど音ワザ攻撃ーだがあらゆる周波数の音波が爆音を響かせる今、生半可な音ワザなどかき消えてしまうだろう。そもそもポケモンへの指示が聞こえない。
言祝アリアが左のかかとを上げ、地面に勢いよくぶつけてすら、ジンパチは何も思わなかった。ボディランゲージによる指示は合理的なチョイスだが、複雑な指示は出せないからだ。
だからかもしれない…彼が、それは指示であるとともに怒りであると見抜けなかったのは。だからといって、もう、どうになるものでもない。
言祝アリアは、ポケモンたちとともに口を開き。
【イーブイGX(祈声)の…】
【アシレーヌGX(祈声)の…】
【チルタリスGX(祈声)の…】
【ラプラスGX(祈声)の…】
【チラチーノGX(祈声)の…】
【シンシューイワパレスGX(祈声)の…】
【【【【【【ハイパーボイス!】】】】】】
均質にそろった音圧が、乱雑なノイズを圧殺した。
(なぜ!?
なぜ我々の爆音を耐えた!?
なぜ爆音下で音が揃った!?
なぜたかが6体の音に圧倒されている…!?
マズい…音を止めさせねぇと…)
「オンバーン、GXワザにして音を上げろ!
出でよマニューラ、じごくづぎ!」
オンバーンGXへ、並行するいくつもの可能性が併存し重複し収束していく。発せられる音波は、短時間だが、あらゆる周波数の可能性を併せ持つシロモノとなった。
【オンバーンGXの ばくおんぱGX!】
有害で打ち消せず指向性のある音波…そんな可能性が現出し、言祝アリアらの身体へダイレクトにダメージを与える。そして、そこへすかさず、マニューラGXが襲いかかった。
鼓膜を爆音に破られかける痛みに顔をしかめつつ、言祝アリアは目配せを。
【ラプラスGX(祈声)の れいとうビームGX!】
喉元に迫る寸前で、マニューラGXが凍りつく。…けれどそれすら、ジンパチの予想通り…
「今だッ、ジャラランガッ!」
ジャラランガGXが、右腕を振り上げ飛び上がる。
【ジャラランガGXの ゲキアッパーGX!】
マニューラへ皆の視線が向いた、致命的な隙…そこへ、ジャラランガGXは全力を以て落下した。
衝撃波が、コウジジムを吹き抜けた。
ー*ー
コウジジムの最奥で、オシロイは杯片手に中継を見守っている。
「こりゃ勝負あったかの?」
衝撃波で建物が震えるのに構う様子もないオシロイへ、未だ縛られたままのアリア・カナサシは笑みを浮かべて見せた。
「こんなことで輝きを失うようなら、私もここまで彼女に惹かれはしなかったわよ。」
ー*ー
静寂。
粉々に砕けた地面に半ば埋まる6体のポケモン、姿の見えない言祝アリア、そして残心の構えをとるジャラランガGX…それらを、ジンパチは何の感慨もなく見つめ。
そして、ピクリと眉を震わせ、叫んだ。
「まだ終わってねぇ!ジャラランガッ」
ジャラランガGXが反応する…前に、6体のポケモンたちが起き上がり。
「いいえこれで終わりです!ハイパーボイス!」
土の下から聞こえた声、そして、静寂の中に6体のハイパーボイスが響き渡る。
今度こそ邪魔な雑音のないハイパーボイスは、速やかにジンパチとそのポケモンたちを昏倒させた。
土にうずもれていた言祝アリアが、ふらりと立ち上がり、アシレーヌのアクアリングで快復される。その手からは、パラパラと「げんきのかけら」の破片がこぼれ落ちていた。
「皆さんがとっさに私を庇ってくれなければ、私に寄り添ってくれなければ、無事に皆さんを回復することはできませんでした。
ありがとう。」
きずぐすりを取り出しながら、言祝アリアは感謝を告げ、そして本丸の門を指差し…
…6体のポケモンGXからの集中砲火を受け、コウジジム本丸城門は、隠れ潜む数人のサムライともどもあっけなく吹き飛ばされた。
ー*ー
忍者がぞろぞろと出てきたのがこのコウジタウンの戦い、当然、その本拠地は忍者屋敷であろう…言祝アリアは体を張るバラエティタイプのアイドルではないので、わざわざ罠に嵌まりに行ったりはしない。
「イーブイ、GXワザです。」
【
屋敷内のトラップを、祈りを込めた妖精のそよ風が吹き散らしていく。さらにラプラスGXがこおりのつぶてを構え、待ち伏せに対して先制攻撃を放っていく。
だから。
最後の敵幹部は、罠も待ち伏せもなく、堂々と廊下に座り込んでいた…それもなぜか、鎧兜ではなくヘルメットとゴーグルを身に着けて。
(…少年?)
「やあ、ここまで良く来たね。
ボクはロクロウ。最後の番人だよ。」
【ジムトレーナーの ロクロウは ガラルマタドガスGXを 繰り出した!】
「先制っ、こおりのつぶて!」
ラプラスGXが、浮遊させていた氷礫をガラルマタドガスGXめがけ発射する。だがそれより先に、廊下の隅々までも、ミストフィールドに覆われた。
(特性「ミストメイカー」?「かがくへんかガス」型ではなく…?)
ダメージを受けふらつくガラルマタドガスGX。その身体が、ガスを噴き出しながらどんどん膨らみ。
「殿のため、ここで爆死してもらうよ。」
【ガラルマタドガスGXの ミストバースト!】
「なっ…チラチーノまもる!」
【チラチーノGX(祈声)の まもる!】
爆風を、チラチーノGXが展開したバリアが防ぐ。狭い廊下であることが幸いし、チラチーノGXの後ろに隠れた言祝アリアとポケモンたちは爆発のエネルギーを受けずに済んだ。
爆発とともに吹き飛ぶ天井、ボロボロに砕け散る廊下壁面、大きく陥没した床、漂う煤…そして、気絶したガラルマタドガスの横にいる、膨らみ始めたマホイップ。
「…まさか!?
もう一度まもるっ!」
【マホイップGXの ミストバースト!】
【チラチーノGX(祈声)の まもる!】
爆風が吹き抜ける。廊下の風の残骸はどこかへ飛ばされ、直下の床はなくなり基礎が覗いている。
爆風が晴れていく…と同時に、トリックルームがあたりを包んだ。
「ボクの記憶が正しければ、『まもる』は連続発動ごとに成功率が1/3になっていくはず。
そのチラチーノ以外が『まもる』を使えればわからなかったけど、そうじゃないみたいだし…わざマシンで新たに覚えさせるような隙は与えないよ。
3度目の『まもる』は無理じゃないかな?」
言祝アリアは、ロクロウの狙いを理解したー残り4体、ロクロウは爆発系のワザを使ってくるつもりなのだ。
「ああ、ポケモンをボールに戻すのもいいかもしれない。でもその場合は、ポケモンを守ってキミが死ぬんだね。」
ドータクンGXを先に倒すのも、トリックルームのせいで間に合わないー言祝アリアは臍を噛む。
(1回『まもる』なしで耐えれば次は『まもる』を…!)「チルタリス、コットンガード!アシレーヌ、アクアリング!イワパレス、がんせきふうじで盾!」
「ドータクン、だいばくはつ。」
水のリングが6体と1人を包み、綿毛と岩塊が堅固な盾となる…直後、再び爆発が炸裂した。
しゃがみ、なんとか爆風から耐え抜く言祝アリア…その足元に、不快な震動が伝わる。
【アローラゴローニャGXの あなをほる!】
(まさかさっきまでの2回の爆発は、『まもる』の成功率を下げるためだけじゃなくて、床を吹き飛ばすことで地中へのアプローチをわからなくするため…っ!?)
地中から突き上げたその攻撃は、チラチーノGXを空高く吹き飛ばし…
【アローラゴローニャGXの ヘビーロックGX!】
遥か上空から突如出現した岩礫が、チラチーノGXを地上へと叩きつけた。
ここに「まもる」要因は倒され…そして、がんせきふうじとコットンガードの盾がない直上で、アローラゴローニャGXは高い攻撃能力と特性「エレキスキン」の恩恵を目いっぱいに受けた自爆攻撃を解き放つ。
【アローラゴローニャGXの だいばくはつ!】
とっさにチルタリスが羽を広げ、羽毛を膨れ上がらせながら、仲間たちに覆いかぶさった。
【チルタリスGX(祈声)の コットンガード!】
爆風。
焼け焦げた羽毛がちらちらと漂う中、チルタリスがどさりと墜落する。残り4体も満身創痍…
…そして、まだ、ロクロウは爆発要員を持っていた。
「ネンドール、フォレトスそろそろトドメと行こうか。
だいばくはつ!」
【ネンドールGXの だいばくはつ!】
【フォレトスGXの だいばくはつ!】
閃光、轟音、衝撃波、猛火。
武家屋敷全体が大きく鳴動し、爆心地の周りの部屋は吹き抜けにされてしまった。
ボロボロに焼け焦げたイワパレスの岩家のみが、崩落した床の上に転がっている。
「…勝った、か。」
剥き出しの基礎の上に立ち、ロクロウは両手を合わせ。
「えいっ!」
股間への一撃を後ろからくらい、悶絶した。
倒れ込んだロクロウのヘルメットを、何者かがもぎ取る。それから、耳栓も。
「…ポケモンは『だいばくはつ』からボールで守れても、私自身を守るポケモンがいなくちゃおしまい...って思い出させてくれたのはありがたかったですよ。
逆もまた然り、ポケモンを戻して、私が戦ってもいいんですから。」
耳栓なしに直で言祝アリアの声を聞き、煤まみれとはいえ彼女を直視したロクロウに、もはや言祝アリアを攻撃する意思を持つことなどできない。...が、ショタと言ってもこのコウジジムの幹部格、口答えすることもできないというわけではなかった。
「…どうやって、ボクのポケモンから逃れたんだい...?」
「イワパレスが本当にやられたなら、岩は残らないはずですよ。そうなるのは、からをやぶってボールに戻った時だけですよね。
周りの床を吹き飛ばしてくれて助かりました。イワパレスの特性が『がんじょう』とは言えど中身のない岩に人が隠れて生き残れるかは賭けでしたが、そこから床下へ移動してあなたの背後へ回り込むのは、舞台袖の移動に比べたら大したものでもありませんし。」
まして、相手が耳栓で物音に気付けないのなら...
「さて、だいたいあたりはついていますが、ジムリーダーと歌姫さんはどこなのか、教えていただけますか?」
次回、コウジジム、討ち入り!