アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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 食中毒でダウンしました、作者です


♪55 愛と真実で悪を貫け

ー*ー

 

 相打ち…いや相打ちに等しい敗北か?オシロイは、自らの家臣たちが静まり返る中、最初に静寂を破った。

 

 「敗北、すなわち降参じゃ。

 

 これよりコウジタウンは、アリア・コトホギ、其の方の臣下となりましょう。」

 

 ゾロアークとゲッコウガをボールへ戻し、傍らの側近へ渡す。側近がうろたえながら去っていくのを見ながら、アリア・カナサシを縛る縄をほどいた。 

 

 解放されるやいなや、アリア・カナサシは小走りに言祝アリアへと駆け寄り、そしてその第一声は。

 

 「アイツの忠誠なんて銭六文くらいの価値しかないわよ。

 

 コトホギさん、あんな奴の言葉、真に受けちゃダメだから。」

 

 「六文銭なら三途の川の渡し賃、儂一人の命くらいはかけられましょうぞ。」

 

 「命がけっつったって、命を懸けて従うんじゃなくて、命を賭けて博打するだけでしょ。

 

 そもそも、最初からこれが目的、そうよね?」

 

 「/Output歌姫さんも、そう思っていたんですね?End」

 

 「あら、わかってたのね?」

 

ー*ー

 

 「/OutputタッグチームGXの幻影の攻略法…ゾロアークとゲッコウガが駆け回るなり、ひとまとまりになるなりしたらわかりませんでしたよ。

 

 ヒントを与えていたんですよね?

 

 考えてみればいくつか、心当たりがあります。ここに来るまでの私への歓迎も、一線を感じますし。幹部1人ずつでも苦戦したんですから、全戦力を三ノ丸あたりに結集させて更地になるまで叩かれたら、どうにもなりませんでしたよ?End」

 

 かつて数万の軍勢を跳ね返したコウジタウンが、いくら絶世のアイドルとはいえたった1人に敗北を喫するわけがないのだ。

 

 「/Output私が、本気で命をとりに来ている人々を超えられるか。

 

 私が、命がけで歌姫さんを助けに来るか。

 

 私が、あなたを超える強さを示せるか。

 

 私に対して自分とコウジタウンをぶつけて、試してみる…そういったところですよね?End」

 

 家臣たちがどよめくのにもかまわず、オシロイは呵呵、大笑を返した。

 

 「全部お見通しというわけか!おもしろい!おもしろいのう!」

 

 「と、殿!なぜそのようなことを!?」

 

 詰め寄らんばかりの家臣に、オシロイはパチンと扇子を開く。

 

 「…おぬしならわかろうよ。儂らが、このシンシューの乱世で生き抜くためには、拠って立つものが必要であると。それを見極めねばならぬと。

 

 儂はコウジタウン20万人の太守!人として間違っておっても、殿様としては過ちまかりならんのよ!」

 

 扇子には「勝者こそ正義!」と書かれてあった。

 

 「…私からも聞くわ。オシロイ、貴方はそのために、裏切りを繰り返したの?」

 

 「蔓が樹を選ぶようなものじゃ。

 

 我が武士団は精鋭なれども、シンシューを10で割った1つに過ぎん。儂ら自身のみでは何事もなせぬし、手段を選ぶことなど許されん。」

 

 コウジタウンは、コーシュー地方、カントー地方、シンシュー地方最大都市ジンザモシティ、ユキコシ地方のいずれからも近く、あまつさえ街道でつながっている。この街のリーダーとして安寧に責任を持つとは、パワーバランスの重心の舵取りの意味を持つのだ。

 

 「武力(コーシュー軍)資本(ユキコシ地方)権威(カントーリーグ)正統性(シンシュー地方)…某にはそれが必要だった。この地を、一族郎党を、民を守るために!

 

 裏切りで守れるものがあるのなら、儂は何度だってそうしてやるわい。」

 

 卑怯者はあまりにもあっけらかんと、重荷を下ろせたかのように言い放つ。

 

 「最初から其方に目を付けておった。某は、アリア・カナサシからアリア・コトホギ、其方に乗り換えるつもりじゃったのよ。」

 

 「/Outputえっ…でも私と歌姫さんは、旅の仲間で…End」

 

 「…コトホギさん、私はシンシューを一度まとめようとした歌姫よ?

 

 コイツの鞍替えは、シンシューからの離脱、もっと言えば、貴女を旗印にした新勢力の意味だわ。」

 

 コーシュー勢力、ユキコシ勢力、ジョウト勢力、シンシュー統合勢力(カナサシおみや派・ジンザモコミューン派)…これらに大別される勢力の睨み合いに、いわば「コトホギ勢力」を立ち上げ参戦しよう…オシロイの発想は突飛なようで慧眼でもあった。なにしろ言祝アリアは前の世界で全世界を魅了し惹きつけたアイドル、本気を出した時の求心力はチンケな地方的ナショナリズムを優に上回る。

 

 「シンシュー大戦で、私は10の勢力…今のジムリーダーたちの過半数に認められ交渉をまとめ上げることができずに、統合も和平も不完全に終わった。

 

 ここを含めて7人のジムリーダーに認められて、おまけに魅了の能力を持つ貴女が上に立つのなら、このシンシュー地方のパワーバランスを掌握できるかもしれない。

 

 コトホギさん、貴女は、私が見込んだ通り、シンシューの新たな軸に、希望になりえるのよ。」

 

 (シンシュー地方のジャンヌダルクというわけですか…)「/Outputそれで、あなたは私を、どう見たんですか?End」

 

 「…ここで野垂れ死ぬならそれまでと思うておったが、やるものじゃわい。

 

 其方は、儂らの拠り所になれる。なれどもはや裏切りは要らんようじゃのう。

 

 其方らの絆、旅は道連れと本当に信じておること、それを見てとったわい。

 

 儂は其方ら2人に希望を見い出した。道を同じくできると思うた。ゆえにこそ、臣下となろうと言うたのじゃ。」

 

 「/Output…話を戻します。それを受け止めて受け入れる理由が、私たちにあるんですか?End」

 

 オシロイはくっくと笑い、畳んだ書類を投げ渡した。

 

ー*ー

 

 オシロイ様へ  

 

 ロクショウジム、マルス様が一番の家臣、ドメスティカにございます。此度は喫緊の次第にて手簡申し上げます。

 

 我が主マルス様が御乱心にて、ヤツガタケを噴火させようとしておいでです。

 

 つきましてはオシロイ様に、我が主をお諌めすべく助太刀願いたい所存であります。

 

ー*-

 

 「儂が返すのはこの情報じゃ。其方らが儂の忠誠を受け入れることの見返りにな。」

 

 オシロイの言葉は、アリア・カナサシの意識を上滑りしていた。

 

 「/Output八ヶ岳ってそのままヤツガタケなんですね。…八ヶ岳を噴火?End」

 

 未だこの世界の…というよりポケモン原作にないシンシュー地方の地理に疎い言祝アリアが、長野県の地図とシンシュー地方の地図を脳内で重ね合わせ、顔色を変える。

 

 長野県・山梨県の境に広がる八ヶ岳連峰、その麓には諏訪湖がある…すなわちヤツガタケとは、シンシュー地方とコーシュー地方の境目にして、カナサシ湖のすぐそば。

 

 ヤツガタケが噴火すれば2つの地方は大きな被害を受け、特に直下のカナサシおみや・エクリプスタウンは壊滅する。

 

 「…コトホギさん、ごめんなさい。」

 

 「/Output謝る必要はないです。

 

 ジムリーダーオシロイ、この言祝アリアが、あなたの臣従を受けましょうEnd」




 次章予告

 ロクショウタウンを占領しジムリーダーを名乗る、コーシュー地方四天王、マルス。彼がヤツガタケを噴火させるつもりだという通報を受け、2人のアリアはロクショウジムへ向かう。

 「悪ィ、俺様たち、占領軍で、侵略者なんだワ。」

 相手は最凶最悪のジムリーダー、タイムリミットは10分足らず、掛かるはカントーからジョウトまで一円の命運…

 転生ポケモンアイドル第10祝、「甲号作戦、発火」…乞うご期待!

 「俺の祭に、付き合ってもらうぜ!」
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