アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜 作:十二の子
シンシュー地方に転生したポケモン大好きアイドル、言祝アリアは、カナサシおみやの龍神歌姫アリア・カナサシとともにシンシュー地方を旅してきた。
かつての戦乱で「裏切りすぎ者」として知られていた、コウジタウンジムリーダー、オシロイ。彼は言祝アリアへの服属を表明し、ロクショウタウンにてたくらみがあることを告げる。そして赴いた先、ロクショウジムリーダーにしてロクショウタウンを占領するコーシュー地方四天王マルスは、生首を2人のアリアへ見せ...
ー*ー
「死人が出たら、後戻りできなくなるわよマルスっ!」
自らも敵を殺したことがあるアリア・カナサシは、すぐに衝撃から立ち直って、怒鳴った。
だが、マルスは悪びれたふうもない。
「そうだなァ。でっけェ戦になるかもしれねェ。
…だが、それがどうした?」
「どうした…って」
「全部勝てば、なんの問題がある?
このシンシューでマルス様に勝てる奴なんざ、歌姫、オマエくらいだよ。そのオマエも、戦時中に殺すつもりで俺様の片腕が精一杯だったんだ、躊躇いを学んだ今、片耳くらいが関の山だろう?
1人死のうが、皆殺しにしようが、大した違いなんざねェ。」
こんな話を、戦争の最暗部を、言祝アリアに長々と聞かせるべきではない…アリア・カナサシはそう思いながらも、話を変えるつもりになれない。
「…異論はあるけど仮にそうだとして、それでも。
勝手に開戦して、火山噴火まで目論んで、第一の家臣は誅殺して…そんな身勝手、貴方の背後のコーシュー本軍が許さないでしょ?他の四天王3人、その上の総大将、どうするの?
さらに言えば、またシンシュー戦争になればユキコシもカントーも今度はすぐに介入してくるわ。」
「おいおいそりゃ能天気な発想ってもんだぜ歌姫さんよォ?
介入できねェほどの噴火を巻き起こせば問題なんかなんもねェよ。
今年は偏西風が強いらしいしなァ。」
「…貴方!」
シンシュー・コーシュー境界のヤツガタケが破局噴火を起こした場合、偏西風に乗ってほとんどの火山灰は東へ流れ、カントー地方は機能不全、それどころか滅亡の危機に瀕する。そして境界線上が噴火地帯となってシンシュー・コーシュー間の連絡は消失する。
「ここいら一帯の火山を、地下のマグマだまりから吹き飛ばす!そうすりゃ、シンシューはコーシューから、いや全世界から途絶するって寸法よ!
俺様は自由に生きていく!もうコーシュー本軍にも、シンシューの雑魚どもにも、カントーやユキコシの横槍にも口は挟ませねェ!」
ガッハッハ、「炎のマルス」は傍若無人に唾を飛ばして大笑いし...
…そこで、生首の凄惨さに失神していた言祝アリアが、目を覚ました。
「/Output戦争どころじゃなくなってしまいますよ。
国境が途絶して、カントー地方が機能不全を起こすような大噴火...放出された火山灰が空を覆って、列島全体、いえ北半球が『火山灰の冬』に見舞われてしまいます。
何もかも、滅ぼすつもりですか?End」
言祝アリアが言うまでもない…そもそもこのロクショウタウンとて風上ではあるがヤツガタケ山麓、大噴火が起きれば大惨事である。
「ンー...
俺様がこの街の太守、ジムリーダーの自覚を持ってたら、こんなこと思いつかなかったかもしれねェなァ。
悪ィ、俺様たち、占領軍で、侵略者なんだワ。」
噴火でロクショウタウンが衰退するのなら、弱った他のシンシュー各都市を併呑し、収奪すればいいーそういうことだ。純粋悪という他ない発想に、さしもの2人のアリアも絶句するしかない。
「話が通じないのなら、仕方ありません。
止めます、あなたを、絶対に!
オンステージ&オーバーラップ、アシレーヌ!」
言祝アリアの、アイドルとしての魅了力を込めた肉声...だが、マルスは動じる様子など見せず、モンスターボールを取り出した。
「オウ、やれるもんならやってみりャァ。
マグカルゴ!オーバーァラァップ!」
地脈のエネルギーが、イーブイとマグカルゴに共鳴し、2体から力があふれ出す…同時に、ロクショウジム全体が足元からグラグラと揺れ始めた。
「…!?いけない!メロエッタ、即刻しとめるわよ!オーバーラップ!」
「おっと歌姫、オマエの相手はコイツだぜェ、リザードン、オーバーァラァップッ!」
メロエッタとリザードンまでもがポケモンGXへとオーバーラップする...あふれかえる可能性に軋みを上げるかのように、ロクショウジムが不気味に鳴動し。
【マグカルゴGXの マッグバンGX!】
畳を突き破って、マグマが噴き出した。
水蒸気、硫化水素と二酸化硫黄、二酸化炭素を主体とする火山ガスの煙、そして赤い噴流...バトルどころではとてもない。
2人のアリアが、咄嗟に口元をふさぐ。
噴煙を噴き散らしながら、リザードンGXが屋根を突き破って逃げていくのが見える...直後、押し寄せる噴煙が大広間を埋め尽くし、イーブイGXとメロエッタGXを引き連れて2人のアリアはコウジジムを逃げ出した。
ー*ー
「/Outputチルタリス、どうでしたか?End」
チルタリスはぶんぶんと首を横に振り、咥えたスマホを差し出した。アリア・カナサシが、撮影された動画を確認する。
「…GXワザと言ってもしょせんはポケモンのワザ、噴火もすぐにとまって鎮火したみたいだけど...
マルスはいないみたいね。家臣たちが殿様探して右往左往してるわ。」
「/Outputリザードンに乗って逃げましたか…
でも、どこに?End」
ー早くマルスを探し、ヤツガタケ噴火の目論見を粉砕しなければならない。
「いえ、行き先はわかっているわ。
ユキコシもカントーも前の戦時中は介入を渋ってきた...けれどそれは、あくまで害がないから。ヤツガタケの大噴火で滅亡の危機が迫るとなれば、カントーリーグは噴火を阻止すべく総力を挙げてヤツガタケに進駐してくるはずよ。だからマルスは」
阻止されるより先に噴火を決行すべく、標高2899m、ヤツガタケ山頂にまっすぐ飛んでいくはず。
「急ぐわよ、コトホギさん!」「/Outputチルタリス、すみません、私たちを乗せてもうひとっとびお願いします!End」
別地方の侵略者系ジムリーダーによる火山噴火のたくらみで、唐突に危機に瀕するカントー地方...