アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜 作:十二の子
絶対に噴火は止めなければならない…2人のアリアはヤツガタケ山頂へ…!
ー*ー
ポケモンが存在しようとしなかろうと、人間が考えることなどそう大差はない。
8つの峰からなる雄大な連峰…どちらの世界でも人々はそれを「やつがたけ」と呼んだ。
ヤツガタケ噴火によるコーシュー地方・カントー地方の無力化…マルスの目的を考えれば、8つの峰のうちどこが噴火地点かはすぐにわかる。東向きの風がもっとも強く吹き、北に並ぶ峰々がロクショウタウン方面への降灰を遮蔽する、最高峰2899m地点。
「/Outputあれは…機械…?End」
「ヤツガタケ頂上って山荘があったはずだけれど…」
銀色に光る金属でできたプラント。そびえ立つ煙突からは、硫黄臭い煙が上がっている。そしてプラントの周囲を、6体のポケモンGXが、徘徊していた。
リザードンGX。
バシャーモGX。
バクーダGX。
ヘルガーGX。
マグカルゴGX。
ウルガモスGX。
GXオーバーラップがもたらすパワーアップによって、6体が纏う熱気が陽炎を起こしている。
「マルスは…いなさそう、ね。
…コトホギさん、端末を貸して。」
チルタリスの背から乗り出しながら、アリア・カナサシはタブレット端末のカメラをプラントに向けた。
プラントの一部分が、ズームされて映し出される。煙突に貼り付いている、電光掲示板。
言祝アリアが息を呑む。
1秒ごとに数字が減っていく電光掲示板。映し出されている数字は「08:56」。
「マルスが立ち去るわけだわ。」
あと10分、わずか10分足らずで、ヤツガタケは、カントー・コーシュー・シンシューを衰亡させるほどの大噴火を起こさせられる…
「たかが2曲分、されど2曲分です…フルユニットでオンステージ!」
「古代から、天災は神の領域って決まってるのよ…巫女ここに現人神たるを示さん、踊り舞うべし!」
11のモンスターボールと12のGXマーカーが高山に舞い、そしてとびっきりの魅力を振りまくアイドルと至天よ神力を帯びる依代歌姫がチルタリスの背を飛び降りた。
「ここからは私のコンサートです!」
「ここからは私の神楽よ!」
ー*ー
【リザードンGX(呪歌)の だいもんじ!】
【アシレーヌGX(祝歌)(祈声)の うたかたのアリア!】
業火を、音圧で吹き晴らす。
【ヘルガーGX(呪歌)の ふいうち!】
【キュウコンGX(祝歌)(祈声)の ゆきなだれ!】
【チラチーノGX(祝歌)(祈声)の スイープビンタ!】
後方からの奇襲に、雪雲を打ち返して殴打をたたき込む。
【ウルガモスGX(呪歌)の むしのさざめき!】
【メロエッタGX(祝歌)(祈声)の いにしえのうた!】
羽虫の羽音を、澄み切った音色がかき消す。
(ダメです…もっと押し押しでいかないと…!いけるはずなのに…!)
龍神歌姫アリア・カナサシによる
「コトホギさん、6分ないわ!
キュウコン、ムーンフォース!アマルルガ、いわなだれ!」
(時間がないのはわかってる…わかってます…!
種族値は大差ない、ワザも効いているはず、いったいどこに問題が…?!)「/Outputハイパーボイス!End」
6体の敵ほのおタイプの業火を、音波で吹き散らさせる。
(音が…弱く聞こえる…?
喉…いや、むしろ肺…!?)
「歌姫さん、ムーンフォースじゃないです!冷やさないと!
ラプラス、イワパレス、ふぶき!チラチーノ、トリプルアクセル!」
ふぶきが、かえんほうしゃに蒸発させられながらも、山頂を吹き荒れていく。
マグマを噴くマグカルゴGXへ蹴りを入れたチラチーノGXが、ヘルガーGXにふいうちされ山肌を転がり落ちる。
「こおりワザ!?でもほのおタイプ相手じゃ効果は」「早く!後4分です!」「…キュウコン、アマルルガ、ふぶきよ!」
いくらバフデバフを積んだところで、こおりはほのおに敵わない。それでも、冷気が標高2899mを急速冷却し、火勢が弱まる。肌を焼くような熱気が消える。
「…まさか...!?」
アリア・カナサシは目を見開き、大きく冷気を吸い込み、もう一度祝詞を一から謳い始めた。その声は先ほどよりずっと大きく、高く、しっかりしている。
(...やはり、高山病だったんですね私たち。)
飛行してきたことによる急激な高度上昇、炎熱による代謝増加、そして炎による酸素消費...それらによってポケモンたちは弱体化していたし、2人のアリアも肺にダメージを受けていた...だから気温を下げれば多少なりとも改善したのだ。
(そうと決まれば...!)
言祝アリアが、左のかかとを上げる。
「みなさん私にあわせてください!
りんしょうッ!」
カツン!森林限界はるか上のステージで、アイドルは仕切り直しの靴音を響かせた。
ー*ー
天空へとそびえたつような山岳のてっぺん、歌声が朗々と響き渡る。
先ほどとは打って変わり、歌声の音圧は瞬く間に業火を消し飛ばした。リザードンGXの尻尾の炎がほとんど消え、ウルガモスGXが撃墜される。
歌声に共鳴して振動し始めた山の石が、ガラガラと山肌を転がり落ち始め、ヤツガタケのあちこちで落石がなだれ打つ。
(...残りは3分、それに何より私もポケモン達もそんなに声が続かない…これで決めます…!)
歌声に押されていてばかりでは、そう思ったのだろう6体のほのおポケモンがニトロチャージで突撃してくる。
誰も、敵から目をそらさない。
イーブイGXとメロエッタGXが、主をかばって突撃を受け止め、山肌を突き落とされる。
アシレーヌGXとニンフィアGXが、歌声を止めてムーンフォースで敵を迎え撃つ。ヘルガーGXが耐えきれずに倒れ伏し、マグカルゴGXの遅々とした歩みが完全に停止する。
(あと2分...!)
音圧に耐えながら低空を突撃するリザードンGXとウルガモスGXへ、チルタリスGXからのりゅうせいぐんが降り落ちる。
ひときわ速く突撃してきたバシャーモGXを、サーナイトGXが受け止め、そのままもんどりうって山肌を転がり落ちる。
多くの滑落を出しながら、響き重なるりんしょうは止まらない。
バグーダGXが足元を踏み砕き、じわれが尾根を裂く。ラプラスGXとアマルルガGXがぜったいれいどでじわれを凍結させ止める。
(あと1分...!)
言祝アリアはチルタリスGXの背に飛び乗った。
山肌に踏みとどまるほのおポケモンたちが、噴火プラントの前に立ちはだかるほのおポケモンたちが満身創痍ながら吐きかける火炎を、羽毛と肌を焼きながらチルタリスGXは突っ切る。
(あと40秒...!)(コトホギさん、信じていたわ!)「「ハイパーボイスッ!」」
言祝アリアが、チルタリスGXの背から飛び降りてプラントの操作パネルに触れ。
(あと32秒よ!)
最強の音ワザが、ついにほのおポケモンGX6体の体力を奪いきり。
(あと20秒弱でしょう...!)
ゴウゴウと熱を放ち震えるプラントを前に、焦りながら言祝アリアは目を凝らす。
(あと9秒...コトホギさん...!)(停止ボタン的なものは...!どこですか…!?)
操作パネルのどこにも、プラントを停止できそうなボタンや表示は...いや。
(あと3秒...!?)(これ、ですか!?)
一か八か…言祝アリアは、操作パネルの横に刺さっていた、鍵らしきものを引き抜いた。
ピー…警告音が鳴り。
「はぁ、はぁ…」「止まった...」
電光掲示板の表示は、「00:01」。
ー*ー
「コトホギさん、よくやったわね。」
滑落したポケモンたちを、尾根の上からモンスターボールへ回収しながら。
アリア・カナサシは、完全に運転を停止した運転プラントへ近寄り、そして言祝アリアを褒め...彼女が微妙な顔をしているのに気付いた。
「/Outputこれが、プラントの起動キーとかだったら、喜べるんですEnd」
プラントから引き抜いた鍵らしきもの、それを言祝アリアが投げ渡す。
「キーとかだったら…って…
…え...!?」
機械の起動キーには見えない、むしろ、装飾がなされたそれは、そう。
「/OutputジムバッジですEnd」
なぜ、ヤツガタケ山頂にジムバッジがあったのか?
どこへ、ヤツガタケ山頂を去ったマルスが向かったのか?
なにが、マルスの本当の狙いなのか?
転生ポケモンアイドル第59話「祭火再燃のロクショウタウン」
その時、歴史は動いていた...!