アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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 いつか起きると言われていた、コーシュー地方による第二次シンシュー地方侵攻。それはロクショウタウンの占領離脱によって突然に発生した。

 時計の針は戻らない。戦国メンタルを現代まで持つコーシュー地方は、シンシュー地方のすべてを得るべく猪突猛進する。

 戦争の行方は、如何に...


♪60 甲号作戦第一段、発火

ー*ー

 

 「沈鬱の擬人化みたいね、コトホギさん。」

 

 言祝アリアは、応えることなく、画面をスクロールし続ける。

 

ー*ー

 

 「コーシュー地方大本営、全軍を総動員

 

 コーシュー地方の最高司令機関、通称『大本営』は、ロクショウタウン離反に対し、懲罰戦争を宣言し総動員を発令した。

 

 衛星解析によればコーシュー軍の侵攻の兆候はシンシュー地方領境4方面すべてに見られ、5年ぶりのシンシュー全土侵攻が発生するものと思われる。

 

 (カントー新聞電子版、6月1日16時24分)」

 

 「離反者のマルス、これに与する慮外者を、草の根わけても根絶やしにしなければならない。

 

 マルスを受け入れたるシンシューの身の程知らずどもを、屍山血河で思い知らせなければならない。

 

 これはコーシュー地方が肥沃と富貴を手にするための聖戦であり、侵略、略奪、併合を妨害するものならばカントー・ユキコシ・ジョウトに平和ボケのツケを支払わせなければならない。

 

 風の如く速やかに、火の如く激しく攻め立てよ!ここに対シンシュー全面侵攻『甲号作戦』を発動する!

 

 (コーシュー地方大本営通達、6月1日15時49分)」

 

 「ロクショウジム独立本営は街の不可侵たるを絶対的に防衛、徹底抗戦せん。ロクショウ万歳、シンシュー万歳、一所懸命!

 

 (ロクショウジム発表、6月1日15時50分)」

 

 「シンシュー併呑の悲願を果たせ!

 

 カナサシおみやを焼き尽くせ!

 

 全軍前進、越境!

 

 (エクリプスタウン東方、コーシュー方面監視カメラより、6月1日16時20分)」

 

 「裏切り者を吊るせ!進撃!

 

 (ロクショウタウン南方、コーシュー軍従軍記者が撮影、6月1日18時00分)」

 

 「コーシュー軍、すでに領境を侵犯か。領境各地の通信途絶。

 

 (シンシュー中央新聞電子版、19時05分)」

 

 「ケース・レッド4(外患非常事態)発令。

 

 エクリプスタウン市役所、全管区に避難命令を拡大。領空に飛行禁止区域を設定。カナサシおみやと協同し、迎撃と疎開の態勢へ。

 

 (エクリプスタウン早期警戒システム、18時03分)」

 

 「本日20時過ぎ、キナリタウン防空隊はコーシュー空軍と戦闘状態に突入しました。管区全市民は空爆からの避難及び敵空挺の警戒を厳としてください。

 

 (キナリジムから市民への一斉送信メール、6月1日20時32分)」

 

 「それでは、カントーリーグ並びにジョウトリーグの見解としては、コーシュー=シンシュー地方は完全な戦時状態にあると言う事ですか?

 

 (緊急記者会見にて記者、6月1日21時14分)

 

 その通りです。コーシュー軍は公称兵力10万騎、空軍が保有するひこうタイプポケモンは1万に及ぶとみられ、シンシュー側の現有戦力では総力を以て押し返せる程度であり、現在の統一なきシンシューは電撃的侵攻に耐えられず、やがて全土失陥に至ると考えています。そのため、リーグとしては国際社会と連帯しシンシュー地方に制裁を含む厳重な働きかけを行うとともに、カントー・ジョウト住民とポケモンの生命を守るため、全土退避を呼びかけるものです。

 

 (緊急記者会見にてカントーリーグ広報官、6月1日21時17分)」

 

 「シンシュー政情を眺めてきた1人のヲタとして

 

 今日のコーシュー地方によるシンシュー地方侵攻は、突然ではあったが唐突ではない。

 

 コーシュー大本営はロクショウジムジムリーダー(元コーシュー四天王)マルスの裏切りへの懲罰を口実としている。だがシンシュー戦乱の裏には『まとまりなき虚弱なシンシューと、貧しいがため外の富地を求め鍛えるコーシュー』という背景が常にあり、コーシュー軍はシンシュー全土併合まで止まる気はないと思われる。

 

 8年前のシンシュー全面侵攻が巧遅ゆえに継戦能力が枯渇し失敗したことから、次回侵攻は拙速に基づくと前々から言われてきた。今回の開戦は、4方面及び空からの電撃侵攻を行う『甲号作戦』の軍事的予察通り遂行されるだろう。ただし実情は計画的な発動ではなく、マルスによる『発火』と言うべきだが。

 

 (呟き型SNSの匿名投稿、6月1日23時11分)」

 

 「アタシたちワスレナタウンは、偉大な大将軍の末裔として、シンシューのすべての戦士たちと闘う。

 

 (ジムリーダーリンダウ会見、6月2日05時00分)」

 

 「フジナド大学自治会は本日未明、オンライン総会を開いた。総会では、昨日より始まったコーシュー軍との戦闘配備に対して許諾を発し、昨日18時に遡ってコーシュー地方へ宣戦することが可決された。

 

 (フジナド学生新聞電子版、6月2日08時00分)」

 

 「発 ウスモエジムジムリーダーホンミツ

 

 宛 コーシュー=シンシューの主要要人各位

 

 ウスモエ川湊、コーシュー軍により空襲を受け、停泊中の川船5隻及び港湾設備の一部を損失せり。

 

 本空襲についてウスモエタウンは、ジョウト地方ワカバタウンにてコーシュー側と接触し、コーシュー地方に深く抗議、河川権益に関し再度の損害あらば対コーシュー宣戦布告を辞さずと伝達するも、コーシュー側はこれを一蹴せり。

 

 従って、本文書の送達を以てウスモエタウンは対コーシュー宣戦布告を宣言す。

 

 (ウスモエタウンからの電子メール、6月2日12時00分)」

 

 「コーシュー=シンシュー再開戦へ。隣接するカントー・ジョウト・ユキコシ3地方の株価大幅下落も、フロックス・デボン両グループが買い支え。

 

 ユキコシの軍需関連株は今だ好調。

 

 (列島経済、6月2日朝刊)」

 

 「シンオウ、キタカミ、カントー、ユキコシ、ジョウト、ホウエン合同して抗議するも、コーシュー地方はカントー代表を恫喝せり。説得は不可能であり、コーシュー側への制裁、シンシュー側への人道支援、及び軍事介入の検討を乞う。

 

 (カントー地方外務部、6月2日9時44分)」

 

 「コーシュー軍の昨夜の侵攻の全貌判明か。

 

 コーシュー軍、すでに領境4都市管区へ侵入。ロクショウ・エクリプス2市街を目前としているとみられる。

 

 6月1日夕方に惹起した第二次シンシュー戦争は、開戦劈頭からのコーシュー軍の電撃的な侵攻・空襲、さらに情報の錯綜により情報が混乱した状態となっていた。本紙は地域に密着した取材により、昨夜の侵攻状況を明らかにした。

 

 (中略)

 

 各戦線は厳しい戦いが続いており、特にコーシュー側にシンシュー寝返りの恨みがあるロクショウ戦線と、昨年のカナサシ湖邪神復活事件から回復していないカナサシ戦線では、シンシュー側は都市失陥も数日のうちと見られている。また、空戦能力の統一した指揮系統がなく、戦力的にも劣るシンシュー側は、シンシュー地方の制空権を確保する能力がなく、各都市への空襲を退けることは困難であろう。

 

 (デイリーフジナド号外、6月2日昼)」

 

 「インターネット上の偽情報に注意!

 

 『シンシューにいる親戚を助けたい』『シンシュー難民義援金募集』はすべて詐欺です!

 

 ユキコシ・シンシュー国境は開戦とともに封鎖状態にあり、人、ポケモンならびに付随する貨物の移動は介入軍の許可下のみでしか行えません。また義援金はユキコシ地方及びフロックス家のもののみが有効となります。

 

 (ユキコシ地方公式アカウント、6月2日11時47分)」

 

 「ジンザモシティ、空襲を受く。ただちにコミューンは臨時大評議会を招集。

 

 (シンシュー中央新聞SNSアカウント投稿、6月2日12時14分)」

 

 「【速報】

 

 シンシュー地方ロクショウタウン、激しい空襲を受け炎上しているもよう

 

 (ポケートニク電子版、6月2日夕刊海外面)」

 

ー*ー

 

 シンシュー地方は、わずか1日にして戦争の坩堝へ放り込まれていた。

 

 2人がいるコウジタウンも、既に空襲警報が何度か発令されているし、1日前まで滞在していたロクショウタウンの方角からは煙が上っている。

 

 幸いにして常在戦場の心構えを持ち、言祝アリアの襲撃によって一足早い戦時体制に移行していたコウジタウンは爆撃を退けた...しかし、シンシュー10都市のうちエクリプス(旧カナサシ)(諏訪)ロクショウ(佐久)キナリ(上伊那)ウスモエ(飯田)の4領境すべてに陸上侵攻を受け2都市は陥落寸前、さらに秘境ウコンタウンと遠隔のシラアイタウンを除く8都市すべてに空襲が襲来している。シンシュー地方はコーシュー軍という暴風に吹き飛ばされる間近だ。

 

 「/Output私、少し調子に乗っていたのかもしれませんEnd」

 

 「コトホギさん?」

 

 「/Output絶世のアイドル、世界を虜にする、もはや異能の域に迫るアイドル力…そんなことを言われて、調子に乗っていたのかもしれませんEnd」

 

 「前世の、話ね?」

 

 「/Outputこれでも私、数億人の大戦争を止めたことだってあるんです。

 

 国境線のこっち、真冬の凍土の上で私たちはコンサートをして。集まってきた歌声に、大統領はついに一発も発砲できなかった。

 

 だから、私は、大戦争だって止められるアイドルだって、自惚れていたのかもしれませんEnd」

 

 この戦争、いわば第二次シンシュー戦争に於いて、それはもはや不可能だ。コーシュー軍は複数の地域と空からシンシュー地方へ侵入し、1人のアイドル、1つのライブでは前線の数に対して足りなさすぎる。

 

 「…戦争は止められなかった。でもこれはいつか起きるとわかっていたことよ。シンシューは不安定すぎたから。

 

 でも敗北は、蹂躙は止められる。そのためにコトホギさん、私は貴女と旅をしてきたし、貴方が、必要なの。」

 

 「/Outputそう、ですね。

 

 歌姫さん、シンシューを纏めるのに、シンシューを守るのにもっとも行くべき場所へ、連れて行ってくださいEnd」

 

 「わかったわ。

 

 行きましょう、37万の民意の混沌、マネーとディールの街、ジンザモシティへ。」

 

 

ー*ー

 

 「我、ホープ団及ウコンジムカラノ緊急要請ヲ受諾。コーシュー軍ノシンシュー地方侵犯ヲ全土侵攻ノ挙兵ト断定セリ。

 

 (フロックス家からシラアイ・ウコン両都市への極秘電、6月1日16時07分)」

 

 「シンシュー介入軍準備委員会、全会一致でコーシュー軍挙兵を深刻な人道危機と認定。介入を断行。

 

 (ユキコシ地方公式プレスリリース、6月1日16時08分)」

 

 「シンシュー介入軍総司令官アオバ・フロックス嬢(26)コメント『侵略の企図をかねてより鮮明としてきたコーシュー地方は、そのすべてが悪の組織というべきである。かかる悪逆を地上から排除すべく、我々はコーシュー地方の軍事作戦遂行能力を完全に喪失させるまで前進しなければならない。』

 

 (対シンシュー軍事介入の発表記者会見にて、6月1日16時18分)」

 

 「コーシュー地方大本営発表『ユキコシ地方が介入するというのならシンシューもろとも粉砕し、山脈の向こうワカナエ港を手に入れるまで進撃せん』

 

 (ジョウト日日新聞電子版、6月1日19時49分)」

 

 「シンシュー介入軍、すでにウコンタウン市街へ進駐。またシラアイタウン駐留のホープ団もユキコシ地方への帰属を表明。

 

 (ユキコシ地方シンシュー介入軍総司令部プレスリリース、6月2日00時00分)」

 

 「シンシュー介入軍、ジンザモシティの防空陣地を無力化、さらにフジナドシティ上空で在地勢力と戦闘状態に突入。

 

 (ユキコシ地方シンシュー介入軍総司令部プレスリリース、6月2日20時00分)」

 

 「先ほどからの総司令部プレスリリースを見る限り、介入軍の行動は事前に綿密に計画されたものでしょうか?シンシュー進駐は計画的な軍事行動だったのでしょうか?

 

 (ガラルTV記者質問、6月2日21時36分)

 

 軍事的にはその通りです。我が軍は昨年よりあらゆる可能性をシミュレーションしてまいりました。その結果俎上に存在した1つのプランに基づく進駐作戦を遂行し、定時連絡の結果作戦計画通りの結果を確認、そのままプレスリリースしているものであります。

 

 (介入軍総司令部広報官、6月2日21時38分)」

 

 「ユキコシ地方、北部シンシューの制空権を掌握しつつあり。

 

 (ユキコシ地方シンシュー介入軍総司令部プレスリリース、6月3日8時00分)」

 

 「情報筋によれば、すでにジンザモシティにユキコシ地方からの工作員が侵入し…(後略)

 

 (シンシュー中央新聞、6月3日朝刊)」

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