アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜 作:十二の子
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ホルビーが地面に穴を開け、金属質の杭を差し込んだのち、ドッコラーが周りをつき固め、チョンチーが杭へ電力を供給する。
シラアイタウンの外れに、金色の粒子が舞い上がった。
「『オーラピラー』、8基目敷設完了!」
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シンシュー地方シラアイタウン。この街はかつてにも、ユキコシ地方からの介入を要請している。
7年前、シンシュー戦争の中で高揚したナショナリズムを背景にシンシュー最大都市のジンザモシティの市民が蜂起…市民たちからなるコミューンを宣言し豪族を排除、ジムを設置…したまでは良かったが、隣接したシラアイタウンのことを衛星都市と考えていた彼らは当然のようにシラアイを占領、あまつさえジンザモの内紛にシラアイを巻き込んだ。
ジンザモなどこりごり、シラアイタウンの人々はそう考え、ユキコシ地方の元悪の組織「ホープ団」に介入を要請した。ユキコシ奪還の悲願は大義を失い、目指す故郷もない元ゲリラが暇を持て余していたのだ…傭兵としてはちょうどよかったのだろう。
ホープ団をジムリーダーに擁し、6年…ホープ団は再びのシンシュー戦争に際し、本国たるユキコシ地方に助けを求めた。いや求めさせられたというのが水面下の実情ではあったが。なにしろホープ団はユキコシ地方に頭が上がらないのだ。
そういうわけでシラアイジムにはユキコシ地方の旗が立ち、市街にはサンゴジュ・コンジキ・ウスベニおみやのジムトレーナーが警邏に歩き、プレハブ仮設ではあるがポケモンセンターまでも建設されている。
上空には数体のフワライドが電波設備を抱えて浮かび、テレビ放送・ラジオ放送に割り込みをかけていた。見れる天気予報が、アテにならないシンシュー放送から、やたら精度のいいユキコシ放送の北シンシューを組み込んだ天気予報に変わっている。
フワライド部隊を守るように飛ぶのは、オオスバメとクロバットからなる防空隊。シラアイタウン上空は全域が飛行禁止区域に設定され、ユキコシ側でないひこうポケモンが進入した場合はたとえ野生であろうと追い払われている。
交通も、道路標識をすべてシンシュー31ばんどうろからユキコシ148ばんどうろに付け替えられ、バス路線はジンザモ・フジナドとの領境で検問…急速な「ユキコシ化」が推し進められていた。
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放送と交通のインフラの掌握、外との行き来の検問と遮断、ユキコシ側による警邏、そして翻る旗…急速なユキコシ化は、山奥の寒村ウコンタウンでも行われている。
「これが、オーラピラーですか…?」
ウコンジムの庭に突き立てられた金属杭をつつき、ウコンジムジムリーダー(の影武者)カタクリは首を傾げる。
「何かの不思議な力が籠もっているようにも、感じられませんが…」
「これほどオカルトなメカもないんだがね…」
コンジキおみやぐうじ、カクミガシ博士は、苦笑を返した。
「概念的なユキコシ化、でしたか…」
「私たちユキコシのポケモントレーナーが、鍛えている割に他の地方で弱いのは、ユキコシ特有のBREAK進化やBREAKワザが使えないから、だからね。
ホープ団の…元はと言えばラスト団の疑似力場展開技術に、一手間加えさせてもらった。」
「北シンシューは実験台、というわけですか?」
カクミガシは答えない。ただ、否定もしないことが答えだった。
BREAKワザ・進化のためのBREAKオーラ、そしてそれを存在させるBREAK力場…それらはユキコシ地方に特有のものであり、そしてこの力場・オーラは概念的なシロモノである。ユキコシ地方が善や良心の概念を欠いていたから、それらを外装するために伝説のポケモンが付与したのがBREAK力場…だから、この力場の範囲はユキコシ地方の範囲とピタリと一致する。
「北シンシューはユキコシ地方である、そう示され、多くの人とポケモンがそう認識する…北シンシューをユキコシ地方という概念に組み込めば、ユキコシ地方という概念に紐付けられている概念力場であるBREAK力場もまた付いてくる…良く、考えたものです。」
オーラピラーには簡易的な疑似力場装置が収められているが、それはバトルコート一つ分ほどの出力しかない。重要なのは共に収められている、捏造された古文書や書類…「北シンシューはユキコシに含まれると主張する品々」のほうであった。
「これが同化政策である、そう思ってくれているのならそれでいいんだ。
北シンシューはユキコシでなければならない。少なくとも、決戦までは。」
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「アオバ総司令官、シラアイ、ウコンともに管区全域を掌握しました。」
「承知ですわ。オーラピラーのほうは如何かしら?」
「ユキコシ化、円滑に滞りなく進んでおります。」
「制空権は?」
「ユキコシ本土はまったく平常であります。また北シンシューの制空は優勢であり、南シンシューに関しても戦術的な制空優勢は...2回の決戦へのエアカバーの提供までは息切れせず可能でしょう。」
「補給線の確立と遂行は?」
「シラアイ戦線、ウコン戦線ともに1か月は戦えます。」
「増員、第二次派兵については?」
「義勇軍、傭兵いずれもすでにワカナエ及びサンゴジュへ。いささか徴募の達成率が悪いですが。」
「コーシュー軍の状況は?」
「南シンシュー4都市は陥落間近。山脈越えがあるワスレナを放置して、コウジ、フジナド、そしてその先のジンザモへ2日以内に向かうでしょう。」
「シンシューの抵抗状況は?」
「4都市は各所で漸減要撃を繰り返しながら擦り切れています。コウジは籠城の構え、ワスレナ、フジナドはあわせて5万もの軍勢を引っ張り出したようです。最大勢力のジンザモは未だ揺れており、大評議会を招集するも決まらないようで。」
「そうなれば、シンシューは適度にコーシュー軍とつぶし合ってくれるわね。漁夫の利を得るのに遅すぎては、介入の大義が失われてしまう…早すぎたとしてもどちらもいなせる程度の目星はないではない…ベストタイミングではないけれど、ベタータイミングとみなして良いのではなくって?
世論は...カグヤが派手にやっていることだし、抑えきれるかしら。ひとまずこれも1か月...短期決戦ですわね。
いいのではないかしら。
ここにシラアイ・ウコン2都市進駐・シンシュー制圧準備作戦『積雪計画』の完了を確認し、シンシュー・コーシュー地方の一挙制圧作戦『深雪計画』の発動、そのための北シンシュー全域の制圧及び対コーシュー軍決戦準備の開始を宣言しますわ!」