アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜 作:十二の子
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2人のアリアが歌う「シンシューの国」…シンシュー中を巻き込んだ大合唱が終わった瞬間、ロクショウジムジムリーダーのマルスは、惚けていた家臣たちへと叫んだ。
「これにてしまいだァ!
シンシューの団結は成ったァ!城に火を放てッ!これよりコウジタウンまで撤退するゥ!」
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「ええい!まだ城は陥ちんのか!」
コーシュー地方の若き主は怒鳴る。
「だいたいなんだ!先ほど城から聞こえてきた歌は!シンシューの国だと!?笑わせる!」
「し、しかしあの歌から、謀反人どもの士気がいっそう高く…!」
「くそっ!ならば空襲だ!次の空襲とともに攻め寄せよ!巻き添えを厭うな!」
「はっ…!」
側仕えが、ムクバードの脚に文をくくりつけて放つ。
「若!空軍でございます!」
南の空から現れた大群を指さし、家来の1人が伝える。
「余が飛ばしておらぬということは戦略空軍か!よし!あの小癪な城を灰にしてしまえ!」
空襲とともに陸からも攻め込むぞ…ロクショウジムめがけ、コーシュー軍近衛方面軍が、焼け野原になったロクショウ市街を進撃する。
だいもんじが、かみなりが、いわなだれが、ロクショウタウンへまんべんなく降り注ぐ。
「巻き添えを厭うなとは言ったが、狙いをつけるなとは言っていないぞ!」
「と、殿!ジャグランス様に空襲の礼を送ったところ、ロクショウには空襲する予定はないはず、と…!」
「なぁにぃ!?で、ではあの空襲は…」
良く見れば、ロクショウタウンのあちこちに攻撃が加えられているものの、ジムには攻撃がないしジムからの迎撃もないではないか。
「て、敵、城から打って出たもよう!」
「ロ、ロクショウジムに煙が!」
「奴ら城に火を放ち逃げるつもりだ!逃がすな追え!」
「はっ!全軍、目標を城から敵部隊へ変更、追撃戦に移行します!」
「制空隊出撃!追い散らせっ!」
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ロクショウジムを守っていたマルス麾下の軍は、元はと言えばコーシュー軍の所属である。近隣の山奥に隠匿していたひこうポケモンを、あたかもコーシュー空軍かのように偽装することなど、そう難しくはなかった。
味方だと思っていた空襲隊にさんざん攻撃され混乱するコーシュー軍。その混乱に乗じ、ロクショウジムに籠城していた軍勢は、水堀に橋を渡して一気に飛び出していく。
あっという間にもぬけの殻となるロクショウジム。大手門の前で、マルスは立ち止まる。
「殿、どうされました?」
「いやァ…
…偉大な亡き殿に比べられて侮られちゃいたが、若様は馬鹿じゃねェ。
すぐに追撃が来る。だからァ…
俺様自らがしんがりだァ!者共!蛮勇を誇りたい奴はここに残れィ!」
サムライたちが次々とライドポケモンを降り、大手門へ立つ。
「狼煙!
奥方様、嫡男様、すでに市街を抜けられたもよう!」
もはや城を出てくる者もない…そして、すぐそばに、敵のポケモンが迫っている。
「おとなしく首をよこせ裏切り者がぁっ!」
「…若が自ら突撃してくる、か。血の気が多いなァ。
ウルガモス!」
【ウルガモスGXの だいねっぱGX!】
陽光のようなポケモンが、水堀へふわりと降り、翅を一扇ぎ…熱風が、水堀を干し上げた。
湯気がもうもうと立ち込める中、続けてマグカルゴGXと
【マグカルゴGXの マッグバンGX!】
【
堀を満たしていく、真っ赤に輝くドロドロのマグマ。
「よォし戻れマグカルゴ、バグーダ。
敵はマグマに叩き落としてやれ!えいえい!」
「「「「「おう!!!!!」」」」」
ー*ー
カントーやコーシューへ通ずる街道の宿場町としてかつて栄えたロクショウタウンも、もはや見る影もなく焦土と化している。
焼け野原となった街並みの中、堀1つ隔て唯一焼け残っていた、巨大な石垣造りのロクショウジム…それもまた、湯気と噴煙に包まれながら焼け落ちていた。
そこかしこから煙がくすぶる中、コーシュー軍の総大将はと言えば、バンバドロに乗って戦場を駆けている。伴のサムライたちも付いていくのがやっとなほどだった。
「見えたりマルス…!この手で葬ってくれるわっ!
バンバドロ!すなじごぐ!
征け、カビゴンっ!」
大手門のそば、数十人の家来を従えた隻腕の男…マルスめがけ、彼はボールを投げつける。
「バシャーモ、砂を踏み固めろィ!」
カビゴンは、ボールから飛び出してマルスの顔を見るなり、のっそりと立ち上がった。同時にGXマーカーが額へ投げつけられる。
【カビゴンGXの ほんきをだすこうげきGX!】
ドシドシドシ!ーカビゴンGXの460キロの巨体が、焼け跡を踏み砕きながらマルスめがけ疾走する。
「リザードン!バシャーモォ!迎えうてィ!」
「さすが若様のポケモンだァ…だが…」
敵の背後に、突如さす影。
【
鋭い爪が、若きコーシューの主君の首筋に迫る…
…その時、焼け焦げた家を蹴倒すように、それは現れた。
【ヤレユータンGXの カウンター!】
バシっ!大きな音がして、ヤレユータンGXの手に持つ扇が、
【ナゲツケサルGXの きあいだま!】
宙を舞う
「戻れヘルガァーッ!」
「させるかっ!ギャラドスっ!」
マルスの持つモンスターボールからの回収光線を、ギャラドスGXが防ぐ。そしてギャラドスGXの大口から放たれる、圧倒的水流。
「殿のポケモンを取り戻せッ!キュウコンッ!」
「デカヌチャン、若様を援護しろっ!」
お互いの家来のポケモンたちがぶつかり合う。
【キュウコンGXの サイコキネシス!】
ヘルガーをサイコパワーで持ち上げ、ギャラドスGXの身体をかわしてボールへ回収させることに成功…したそばから、デカヌチャンGXのデカハンマーがキュウコンGXをトレーナーもろとも吹き飛ばし。
「エースバーン!お返ししろッ!」
「ドンファン!受け止めろ!」
エースバーンGXが、かえんボールにデカヌチャンGXを巻き込んで蹴り飛ばし…ドンファンGXがそれを受け止め、足を踏みしめ「じしん」を引き起こす。
「たけなわって感じだなァ…
こっちもそろそろ…ヤバいかァ?」
カビゴンGXはズルズルと
「やりたかねェが…バクーダ!もう一度出番だァ!
マグマイラプション!」
「殿に加勢しろッ!コータス、ふんえん!」「エンニュート、スモッグッ!」
噴き上がるマグマ、そして毒を含む猛煙。これにはさしものカビゴンGXも耐えかね、
振りほどかれた2体とて、見逃しはしない。噴煙を巻き上げながら疾駆、カビゴンGXへ猛追する…が、そこへナゲツケサルGXが、頭ほどもある岩をなげつける。
「ちィッ…ここで深手は負わせられねェかァ…
引き際だァ!リザードン、グレンダイブゥ!」
「
真っ赤な業火の塊となり突っ込んでくる
「ヤレユータン!ナゲツケサル!タッグチームGXだっ!」
【ヤレユータンGXと ナゲツケサルGXの 可能性が 重複している…!】
目前に迫る、業火の大翼。
【ヤレユータン&ナゲツケサルTagteamGXの エクセレントスローGX!】
ヤレユータンが短く何かを告げ、ナゲツケサルが腕に力を込め…そして、焔に身を包んだ
ヤレユータンが扇を扇ぐや、風の力もあって
果たしてマルスは…薄く、笑った。
マルスの家来のポケモンのうち1体が、口を空へ向け開き、吠える。
【セキタンザンGXの ねっとう!】
沸騰寸前の熱湯。それは、一分の狂いもなく、飛ばされていく
水蒸気爆発。火傷しそうな湯気の爆風が吹き寄せる中、
煙の中に、マルスと家来たちの姿は消えていった。
「逃がしてなるかっ!突撃せよっ!」
「若様っ!大やけどいたしますぞっ!」「罠があるやもしれませぬっ!」「おい!若様をお押さえしろっ!」
取り押さえられる総大将、その様子を何とも言えない目で見つめるカビゴンGXたち。
「くそっ、くそっ…
…次に会うた時は、必ず…!」
ー*ー
ロクショウタウンからコウジタウンへ抜ける街道をあえて避け、マルスと数十人の家来はヤツガタケ山麓の高原を逃げている。街道を逃げる主力軍勢と妻子への追手を減らしつつ、敵に見つかりにくくするためだ。
「止まれィ!」
数十のライドポケモンが、マルスが手を挙げるとともに一斉に停止する。
「殿、どうかされましたか?」
敵でも見たのか?家来たちが周りを見回す中。
「いやァ…」
マルスは、振り返って、木々の隙間を指さした。
焼け落ちた街、焼け落ちた城、ひしめく敵軍。
「しかと、目に焼き付けておきとうなった。
占領軍ったって、8年もいればふるさと同然よなァ…」
「殿…」
「この屈辱は必ず晴らす。必ず、なァ…!」
6月5日日没直前、ロクショウジム・ロクショウタウン、全焼。
ほのおタイプを知り尽くしたジムリーダーにより放たれし火は、3日3晩燃え続けたという。