アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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 シンシューの団結は成った。だが時すでに遅く、南北からシンシューは激しく侵略されている…


♪68 すべての前線で戦えⅠ 陥落、ロクショウタウン!

ー*ー

 

 2人のアリアが歌う「シンシューの国」…シンシュー中を巻き込んだ大合唱が終わった瞬間、ロクショウジムジムリーダーのマルスは、惚けていた家臣たちへと叫んだ。

 

 「これにてしまいだァ!

 

 シンシューの団結は成ったァ!城に火を放てッ!これよりコウジタウンまで撤退するゥ!」

 

ー*ー

 

 「ええい!まだ城は陥ちんのか!」

 

 コーシュー地方の若き主は怒鳴る。

 

 「だいたいなんだ!先ほど城から聞こえてきた歌は!シンシューの国だと!?笑わせる!」

 

 「し、しかしあの歌から、謀反人どもの士気がいっそう高く…!」

 

 「くそっ!ならば空襲だ!次の空襲とともに攻め寄せよ!巻き添えを厭うな!」

 

 「はっ…!」

 

 側仕えが、ムクバードの脚に文をくくりつけて放つ。

 

 「若!空軍でございます!」

 

 南の空から現れた大群を指さし、家来の1人が伝える。

 

 「余が飛ばしておらぬということは戦略空軍か!よし!あの小癪な城を灰にしてしまえ!」

 

 空襲とともに陸からも攻め込むぞ…ロクショウジムめがけ、コーシュー軍近衛方面軍が、焼け野原になったロクショウ市街を進撃する。

 

 だいもんじが、かみなりが、いわなだれが、ロクショウタウンへまんべんなく降り注ぐ。

 

 「巻き添えを厭うなとは言ったが、狙いをつけるなとは言っていないぞ!」

 

 「と、殿!ジャグランス様に空襲の礼を送ったところ、ロクショウには空襲する予定はないはず、と…!」

 

 「なぁにぃ!?で、ではあの空襲は…」

 

 良く見れば、ロクショウタウンのあちこちに攻撃が加えられているものの、ジムには攻撃がないしジムからの迎撃もないではないか。

 

 「て、敵、城から打って出たもよう!」

 

 「ロ、ロクショウジムに煙が!」

 

 「奴ら城に火を放ち逃げるつもりだ!逃がすな追え!」

 

 「はっ!全軍、目標を城から敵部隊へ変更、追撃戦に移行します!」

 

 「制空隊出撃!追い散らせっ!」

 

ー*ー

 

 ロクショウジムを守っていたマルス麾下の軍は、元はと言えばコーシュー軍の所属である。近隣の山奥に隠匿していたひこうポケモンを、あたかもコーシュー空軍かのように偽装することなど、そう難しくはなかった。

 

 味方だと思っていた空襲隊にさんざん攻撃され混乱するコーシュー軍。その混乱に乗じ、ロクショウジムに籠城していた軍勢は、水堀に橋を渡して一気に飛び出していく。

 

 あっという間にもぬけの殻となるロクショウジム。大手門の前で、マルスは立ち止まる。

 

 「殿、どうされました?」

 

 「いやァ…

 

 …偉大な亡き殿に比べられて侮られちゃいたが、若様は馬鹿じゃねェ。

 

 すぐに追撃が来る。だからァ…

 

 俺様自らがしんがりだァ!者共!蛮勇を誇りたい奴はここに残れィ!」

 

 サムライたちが次々とライドポケモンを降り、大手門へ立つ。

 

 「狼煙!

 

 奥方様、嫡男様、すでに市街を抜けられたもよう!」

 

 もはや城を出てくる者もない…そして、すぐそばに、敵のポケモンが迫っている。

 

 「おとなしく首をよこせ裏切り者がぁっ!」

 

 「…若が自ら突撃してくる、か。血の気が多いなァ。

 

 ウルガモス!」

 

 【ウルガモスGXの だいねっぱGX!】

 

 陽光のようなポケモンが、水堀へふわりと降り、翅を一扇ぎ…熱風が、水堀を干し上げた。

  

 湯気がもうもうと立ち込める中、続けてマグカルゴGXとМ(メガ)バグーダGXが堀の中へ飛び降りる。

 

 【マグカルゴGXの マッグバンGX!】

 

 М(メガ)バグーダGXの マグマイラプション!】

 

 堀を満たしていく、真っ赤に輝くドロドロのマグマ。

 

 「よォし戻れマグカルゴ、バグーダ。

 

 敵はマグマに叩き落としてやれ!えいえい!」

 

 「「「「「おう!!!!!」」」」」

 

ー*ー

 

 カントーやコーシューへ通ずる街道の宿場町としてかつて栄えたロクショウタウンも、もはや見る影もなく焦土と化している。

 

 焼け野原となった街並みの中、堀1つ隔て唯一焼け残っていた、巨大な石垣造りのロクショウジム…それもまた、湯気と噴煙に包まれながら焼け落ちていた。

 

 そこかしこから煙がくすぶる中、コーシュー軍の総大将はと言えば、バンバドロに乗って戦場を駆けている。伴のサムライたちも付いていくのがやっとなほどだった。

 

 「見えたりマルス…!この手で葬ってくれるわっ!

 

 バンバドロ!すなじごぐ!

 

 征け、カビゴンっ!」

 

 大手門のそば、数十人の家来を従えた隻腕の男…マルスめがけ、彼はボールを投げつける。

 

 「バシャーモ、砂を踏み固めろィ!」

 

 カビゴンは、ボールから飛び出してマルスの顔を見るなり、のっそりと立ち上がった。同時にGXマーカーが額へ投げつけられる。

 

 【カビゴンGXの ほんきをだすこうげきGX!】

 

 ドシドシドシ!ーカビゴンGXの460キロの巨体が、焼け跡を踏み砕きながらマルスめがけ疾走する。

 

 「リザードン!バシャーモォ!迎えうてィ!」

 

 М(メガ)リザードンXGXとМ(メガ)バシャーモGXが、両手両足に破裂しそうなほどの力こぶを作ってカビゴンGXの突撃を受け止める…だが、カビゴンGXは止まらない。ズルズル、少しずつだがマルスの2体が地面を後ろに滑っていく。

 

 「さすが若様のポケモンだァ…だが…」

 

 敵の背後に、突如さす影。

 

 【М(メガ)ヘルガーGXの ふいうち!】

 

 鋭い爪が、若きコーシューの主君の首筋に迫る…

 

 …その時、焼け焦げた家を蹴倒すように、それは現れた。

 

 【ヤレユータンGXの カウンター!】

 

 バシっ!大きな音がして、ヤレユータンGXの手に持つ扇が、М(メガ)ヘルガーGXを叩き返す。

 

 【ナゲツケサルGXの きあいだま!】

 

 宙を舞うМ(メガ)ヘルガーGX、そこへ叩き込まれるきあいだま…ひとたまりもなくヘルガーが倒れ伏す。

 

 「戻れヘルガァーッ!」

 

 「させるかっ!ギャラドスっ!」

 

 マルスの持つモンスターボールからの回収光線を、ギャラドスGXが防ぐ。そしてギャラドスGXの大口から放たれる、圧倒的水流。

 

 「殿のポケモンを取り戻せッ!キュウコンッ!」

 

 「デカヌチャン、若様を援護しろっ!」

  

 お互いの家来のポケモンたちがぶつかり合う。

 

 【キュウコンGXの サイコキネシス!】

 

 ヘルガーをサイコパワーで持ち上げ、ギャラドスGXの身体をかわしてボールへ回収させることに成功…したそばから、デカヌチャンGXのデカハンマーがキュウコンGXをトレーナーもろとも吹き飛ばし。

 

 「エースバーン!お返ししろッ!」

 

 「ドンファン!受け止めろ!」

 

 エースバーンGXが、かえんボールにデカヌチャンGXを巻き込んで蹴り飛ばし…ドンファンGXがそれを受け止め、足を踏みしめ「じしん」を引き起こす。

 

 「たけなわって感じだなァ…

 

 こっちもそろそろ…ヤバいかァ?」

 

 カビゴンGXはズルズルとМ(メガ)リザードンXGXとМ(メガ)バシャーモGXを押しており、また奥の方からは続々と敵のポケモンが迫ってくる。逃げ遅れては皆討ち死にだ。

 

 「やりたかねェが…バクーダ!もう一度出番だァ!

 

 マグマイラプション!」

 

 「殿に加勢しろッ!コータス、ふんえん!」「エンニュート、スモッグッ!」

 

 噴き上がるマグマ、そして毒を含む猛煙。これにはさしものカビゴンGXも耐えかね、М(メガ)リザードンXGXとМ(メガ)バシャーモGXを振りほどいて引き返す。

 

 振りほどかれた2体とて、見逃しはしない。噴煙を巻き上げながら疾駆、カビゴンGXへ猛追する…が、そこへナゲツケサルGXが、頭ほどもある岩をなげつける。

 

 「ちィッ…ここで深手は負わせられねェかァ…

 

 引き際だァ!リザードン、グレンダイブゥ!」

 

 М(メガ)リザードンXGXの グレンダイブ!」

 

 真っ赤な業火の塊となり突っ込んでくるМ(メガ)リザードンXGX。「若様をお守りせねば!」と家来たちが「まもる」を指示するのを制し、若き総大将は叫ぶ。

 

 「ヤレユータン!ナゲツケサル!タッグチームGXだっ!」

 

 【ヤレユータンGXと ナゲツケサルGXの 可能性が 重複している…!】

 

 目前に迫る、業火の大翼。

 

 【ヤレユータン&ナゲツケサルTagteamGXの エクセレントスローGX!】

 

 ヤレユータンが短く何かを告げ、ナゲツケサルが腕に力を込め…そして、焔に身を包んだМ(メガ)リザードンXGXを掴み、勢い良く投げ飛ばした。

 

 ヤレユータンが扇を扇ぐや、風の力もあってМ(メガ)リザードンXGXは遠く飛ばされていく。

 

 果たしてマルスは…薄く、笑った。

 

 マルスの家来のポケモンのうち1体が、口を空へ向け開き、吠える。

 

 【セキタンザンGXの ねっとう!】

 

 沸騰寸前の熱湯。それは、一分の狂いもなく、飛ばされていくМ(メガ)リザードンXGXへ命中し…そして、灼熱の業火が熱湯を一挙に沸騰させた。

 

 水蒸気爆発。火傷しそうな湯気の爆風が吹き寄せる中、М(メガ)バクーダGXがさらなる噴煙を噴き上げる。

 

 煙の中に、マルスと家来たちの姿は消えていった。

 

 「逃がしてなるかっ!突撃せよっ!」

 

 「若様っ!大やけどいたしますぞっ!」「罠があるやもしれませぬっ!」「おい!若様をお押さえしろっ!」

 

 取り押さえられる総大将、その様子を何とも言えない目で見つめるカビゴンGXたち。

 

 「くそっ、くそっ…

 

 …次に会うた時は、必ず…!」

 

ー*ー

 

 ロクショウタウンからコウジタウンへ抜ける街道をあえて避け、マルスと数十人の家来はヤツガタケ山麓の高原を逃げている。街道を逃げる主力軍勢と妻子への追手を減らしつつ、敵に見つかりにくくするためだ。

 

 「止まれィ!」

 

 数十のライドポケモンが、マルスが手を挙げるとともに一斉に停止する。

 

 「殿、どうかされましたか?」

 

 敵でも見たのか?家来たちが周りを見回す中。

 

 「いやァ…」 

 

 マルスは、振り返って、木々の隙間を指さした。

 

 焼け落ちた街、焼け落ちた城、ひしめく敵軍。

 

 「しかと、目に焼き付けておきとうなった。

 

 占領軍ったって、8年もいればふるさと同然よなァ…」

 

 「殿…」

 

 「この屈辱は必ず晴らす。必ず、なァ…!」




 6月5日日没直前、ロクショウジム・ロクショウタウン、全焼。

 ほのおタイプを知り尽くしたジムリーダーにより放たれし火は、3日3晩燃え続けたという。
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