アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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 この作品のタグに「架空戦記」が含まれている理由は、こういうわけがあるからです(あるいは、この話があるからです)。それはそうとして話ごとの字数調整を完全にミスってるなまあいっか… 

 キナリタウンジムリーダーの名前をシャジクからコヒガンに変更したのを忘れていましたので、修正しました。また人物の口調にも軽微な修正。


ー*ー

~言祝アリアのメモ書き~

 シンシュー地方は10の地域に別れている。たぶん、日本の長野県10広域と同じ。うろ覚えだけどこんな感じ。

 エクリプスタウン(旧カナサシタウン):諏訪市(諏訪地域)

        ジムリーダー:ツクバネ・モリヤだいぐうじ(でんきタイプ、旧豪)

 キナリタウン:            伊那市(上伊那地域)

 ウスモエタウン:           飯田市(南信地域)

 ワスレナタウン:           木曽町(木曽地域)

 フジナドシティ:           松本市(松本地域)

 シラアイタウン:           大町市(北アルプス地域)

 コウジタウン:            上田市(上田地域)

 ロクショウタウン:          佐久市(佐久地域)

 ジンザモシティコミューン:      長野市(長野地域)

 ウコンタウン:            栄村 (北信地域)

 それぞれの地域を、10豪っていう殿様みたいな土着勢力が治めていたけど、リーグ制導入に盛大にもめて、今は戦前の豪族がジムリーダーを兼任していたり、豪族を倒して新たにジムリーダーの下でまとまってたりするみたいです。


♪8 ミミロル追いしあの山、コイキング釣りしかの川

ー*ー

 

 ー御柱で囲まれた、小さなお堂。カナサシおみやの広大な境内の隅にあるそこで、幼い巫女服の少女が、シワだらけの婆と向かい合っていた。

 

 「モリヤの婆っちゃん、なんのよう…?」

 

 「御子様、そなたももう10歳じゃろ?カナサシの務めを、果たす時じゃ。」

 

 ーこれは、のちに歌姫と呼ばれることになる英雄の、始まりの記憶。

 

 「お父様とお母様は、そんなに急ぐことはないって…」

 

 ー厳粛な面持ちでツクバネ・モリヤだいぐうじは首を横に振り、そして、彼女の命運が定まった。

 

 「このシンシューの地は日に日に騒々しくなっとる。神威の代行者は必要じゃ。一刻も早うの。

 

 そなたのお父君とお母君の許しは得ておる。」

 

 ー少女の父母…7年後に言祝アリアと出会うとっくの前に、戦死してその声を聴くことはもはやできない。

 

 「カナサシのつとめって、なに?」

 

 「湖底に眠る神様の代わりに、あまねく人の世に神の意と威をもたらすのじゃ。

 

 そうさのう、アリア様、そなたなら、その歌、踊りこそ、神の領域に達して人とポケモンをしろしめすにふさわしかろ。」

 

 「我が神を、おみやを、神の右側にて、守ってたもれ。」

 

 ー神の右…神と対等な者として神を代行し世の中を守る、そんなドキドキと義務感に押されて、少女は頷いた。

 

ー*ー

 

 「この地にはもともと土着の神様…今でいうのなら伝説のポケモンがいたんじゃ。そいつはずいぶん暴れん坊でな。それを、西から来た龍神様と、そなたの祖先が力を合わせて収めた。

 

 じゃがの…龍神様が眠られておる今、カナサシにはまつろわぬものどもを鎮める神威が足らぬ。そしてシンシューには、暴れ狼藉者があまりに多すぎる。

 

 歌姫アリア様、そなたこそは、神の名に於いてシンシューを再び収める、神威の代行者じゃぞえ。」

 

ー*-

 

 「リザードン多数!迎撃間に合いません!」「く、空挺!?」「地上戦用意だ!」「く、来るぞ!」

 

 「ガッハッハ、この街はコーシュー四天王が一人、この俺、マルス様がいただく!

 

 やれリザードン、バクーダ、バシャーモ、ヘルガー、メガシンカァ!」

 

 「「「「「は!?」」」」」

 

 【メガリザードンYEXの だいもんじ!】

 

 【メガバクーダEXの だいもんじ!】

 

 【メガバシャーモEXの だいもんじ!】

 

 【メガヘルガーEXの だいもんじ!】

 

ー*ー

 

 「ええい、こちらはカナサシ軍なのだぞ!」

 

 「知らん!我々コウジタウンの方針に変わりはない!

 

 村を譲ってもらおうか…行け、バンギラス!」

 

 「なっ!?裏切り者がっ…

 

 退けっ!退けっ!敵わん!」

 

 「し、しかし退路もすでに!ロクショウタウンからの連絡はもう…!」

 

 【メガバンギラスEXの デストロイヤーキング!】

 

ー*ー

 

 「わ、私がジムリーダー、ですか!?」

 

 「はっきり言って、いくつもの村が陥落した今でもキナリ地域が寄り合い所帯なのは問題なのだ。」「貴様は強い。儂らが束になっても敵わんほど強い。」「しかも儂らにはおぼつかぬ空での戦闘ができる。」「吾らが認めたその武勇、もっと誇りたまえよ。」「このキナリタウンを救えるのは貴様だけだ、頼んだぞコヒガン君!」

 

 「はっはい!私、ジムリーダー、拝命させていただきます!」

 

 「ではジムリーダー様、御下知を!」

 

 「ま、まず、救援を!豪族の皆さんでは戦力が足りません!

 

 カナサシの歌姫様の力を借りるしか!」

 

ー*ー

 

 「歌姫様にだいぐうじ様!

 

 空挺部隊によってロクショウタウンが陥落、コウジタウンの裏切りによって我が援軍が敵中に孤立、キナリタウンからも救援要請が!」

 

 「…やれるぞな?」

 

 「…すぐに飛ぶわ。タイカイデンを出して!」

 

ー*ー

 

 「やった!やったぞ!」「歌姫様万歳!」「生きて帰れるな、ライボルト…」

 

 「さすが私の娘ね…」

 

 「…ああ、あの歌声さえ聞ければ、ポケモンEXなしでも、敵のポケモンEXに立ち向かえる。いや、根っこが同じなのかもしれないが…」

 

 (…良かった、駆け付けて。父上と母上を助けられて。)

 

 「父上、母上、油断するには早いわ。マルスが立て直す前にロクショウ地域を抜けるわよ。」

 

 「…私の娘とは思えないほど大人ね…ほんと…」

 

ー*ー

 

 「敵襲!敵襲!」「総員起こせ!」「行けマルマインっ!」

 

 「このマルス様の心に火をつけるたあやるじゃねえかァ。そんじゃあ、リベンジやらせてもらうぜェ。リザードン!」

 

 【メガリザードンXEXの グレンダイブ!】

 

 (なんて業火!?)

 

 「ぐわぁ!」「だ、誰か水を!」「しっかりしてくれ、デンリュウ!目を、目を開けてくれ!」

 

 「なんで、こんなところに敵が…!?」「歌姫様、先遣支隊及び第3大隊との連絡取れません!」

 

 (父上と母上が見当たらない!?もしかして、先に動いて…私も戦わなきゃ!)

 

 「燃やせ、全部燃やせ、バクーダァ!」

 

 【MバクーダEXの マグマイラプション!】

 

 「…父上と母上は?」「支隊の救援へ行かれております。」「なら私は第3大隊を救援するわ。まずは目の前のあの男を、倒すわよ。

 

 サーナイト、メガシンカ!」

 

 「…このマルス様を前哨くらいに思ってやがるなァ?

 

 のめせ、バシャーモ。」

 

 「…サーナイト、私の歌声を、聞いて。」

 

 【メガサーナイトは 祝歌状態になった!】【メガバシャーモEXは 呪歌状態になった!」

 

 【メガサーナイトの すべての能力が さいだいまであがった!】【メガバシャーモEXの すべての能力が がくーんとさがった!】

 

 「…その歌声、まさか、貴様がカナサシの…!」

 

 【メガバシャーモEX(呪歌)の ムーンサルトブレイズ!】

 

 【メガサーナイト(祝歌)の チャームボイス!】

 

ー*ー

 

 「御二方は、殿で我々をかばわれて…」

 

 「…ありがとう支隊長補佐。遺体を収容できただけでも、僥倖、だわ...

 

 …ポケモン達も、同じ墓所に眠らせてあげて。…回収できたらだけど…」

 

 「は、はい。…えっ!?歌姫様が葬儀をなされるのでは!?」

 

 「いえ、私はロクショウタウンに向かうから、葬儀には出られない。

 

 きっと、それが父上と母上への手向けになるから。

 

 (父上、母上…!

 

 油断するなと言っておきながら、私が、油断したせいで…!

 

 せめて、仇は、取って見せるわ。)

 

ー*ー

 

 「戦略物資を奪いに来たようだがご苦労だなァ。ここで決着をつけようぜェ。」

 

 「残念だけど、キーストーンもメガストーンもすべて、この手にあるわ。」

 

 (そして、貴方の命も。)

 

 「ま、まさか、貴様ァ...最初からこのマルス様をおびき出すつもりで…っ!?」

 

 「殺し尽くしなさい。サーナイト!」

 

 【メガサーナイトEX(祝歌)の ディスペアーレイ!】

 

ー*ー

 

 「ジョウトからの支援は!?」「ボールを買えと言ったのはお前だろう!軍資金はお前が出せ!」「南部3村、離村を申し出てきました!」「ああ!?カナサシ!?俺たちウスモエは俺たちだけで戦う!」「なぜ糧食が足りない!?誰か盗んだなっ!?」

 

 「歌姫様、コイツらまとまる気あるんですかね?」「籠城してるとは思えないんだけど…」

 

 「…やる気のない友軍は不要だわ。明朝、ついてこれた者だけで出撃、包囲網を粉砕するわよ。」

 

 (誰かが上に立ってまとめなきゃ、この地方はいつまでも、争いから抜け出せないし発展できないわ...!)

 

 「聞いて、私の歌を。」

 

ー*ー

 

 「せめて、ポケモンたちだけでも…」

 

 「…いえ、生き残らせたら、いずれ復讐に来るのでしょう?

 

 私のような子どもを誰も生まないために、死んでもらうわ。

 

 踏み潰せ、アマルルガ。」

 

 (私は、私で…独唱(アリア)で、すべてを終わらせる。)

 

ー*ー

 

 「アナタの旋律は優しいですね。」

 

 「…どこが?」

 

 「いっそ人を救うことを諦め人を嘆いてフラダリ主義に目覚めたっていいのに、アナタはまだ、人を救うために人を殺している。

 

 誰かのための音楽を諦めない。荒々しいけど、優しいですね。」

 

ー*ー

 

 「やりすぎだ、と申し上げたのであります。」

 

 「やりすぎ…?

 

 シラアイジムにだけは言われたくない言葉よ。そうよね、シラアイジムジムリーダー…

 

 …ホープ団糧秣軍大将、モロコシ閣下?

 

 貴方方ゲリラはユキコシ地方への復讐と全土の奪還のために2000年を費やした。しかも聞いたところじゃ全部無駄だったそうじゃない。挙句の果てに、ユキコシが混乱したせいで抑止力を失ってシンシューが戦乱に逆戻りしてしまった。

 

 シンシュー地方の寄生虫の分際で、よくもまあ言えたものね。」

 

 「だからこそ、言うのであります。我らは、同じ修羅の道を辿る者を助けられない。

 

 今のあなたの、コーシュー排撃・シンシュー統合計画には賛同できない。これは占領軍としてのホープ団の意思でありシラアイジムの意思でありますが、同時に、シラアイ地域の総意でもあります。」

 

 「それでも私は、シンシューをまとめたい。

 

 それが父上と母上の意思、龍神様の神意なのだから。」

 

ー*ー

 

 「コミューンとしては、シンシュー連合案に従うつもりはありませんな。

 

 ジンザモ市民は好きにやらせてもらう。」

 

 「とっくに独自市防は破綻してる!コーシューの賊とフロックス家の綱引き会場の有様じゃない!」

 

 (議員の何割が買収されてるかもわからないのに、正気!?)

 

 「資本によって売国されるなら、それすらも、民意です。

 

 ジンザモシティは常に民意を貫く。進路を神に委ねたりはしない。」

 

 (…説得を…

 

 …でも、どうすれば…!

 

 戦ってきただけの、神威を背景にしてきただけの(12歳の少女)に、何が…!?)

 

ー*ー

 

 「おひいさまは、お会いになられぬと仰せです。

 

 偉大にして由緒正しきウコンタウンは、カナサシおみやとの交渉をする気もその必要もない、と。」

 

ー*ー

 

 「コーシューとユキコシが決戦をするとしたら、ここになるわ。」

 

 「歌姫様は、どちらが勝つと思われますか?

 

 下馬評は、やはり、内陸の辺境の賊であるコーシュー軍が、世界的財閥フロックス家をバックにし動乱で鍛えられたユキコシ介入軍を退けることはできない…というものですが…」

 

 「…いえ、試されるのはむしろユキコシでしょう。

 

 ユキコシ地方のトレーナーは厳しい自然に鍛えられて強い…けれど、カントーやジョウト、ホウエンのリーグで成果を収められない。ユキコシ特有のBREAKワザ・BREAK進化に頼っているから…

 

 …BREAK現象がなく、ポケモンEXがあるこのシンシュー=コーシュー地方で、平和維持部隊のつもりの小勢がどこまでやれるか…」

 

 「…逆に、そこに吾らの勝機がある、と。」

 

 「ええ...

 

 …ユキコシ介入軍を退けたコーシュー軍を急襲し、ユキコシ地方に恩を売りつつシンシュー地方に武勇をとどろかせる。そうすれば、きっとシンシューは、まとまることができる。」

 

ー*ー

 

 「ワカナエおみや、コンジキおみや、いずれも敗退!ウコンタウン方面へ撤退していきます!」

 

 「ユキコシ介入軍の殿は!?」

 

 「…ええと…芝桜の旗!フロックス本家、アオバ嬢です!」

 

 「…今よ!カナサシ全軍、突撃、前線へ!」

 

ー*ー

 

 (あ、あれ?私たちが到着するころにはもう、フロックス本家も潰走してると思ってたけど…)

 

 ー「カグヤ、厳しいですわね。」

 

 ー「そだねお姉ちゃん。縛りプレイに命は賭けらんないよ。...ズルしても、いいんじゃないかな?」

 

 (...ま、まさかフロックス本家は、手を抜いていたと…追い詰められても隠し玉があるとでも...!?)

 

 ー「アオバちゃん。このままじゃ死人が出る。/ええ、わたくしたち悪役(チート)令嬢の本領発揮の時ですわね。」

 

 (...そんな、ここまで戦死者0だとでも、そんな...!?

 

 じゃあ私たちカナサシの、シンシューの流した血には、意味がなかったとでも...!?)

 

 ー「さあ、誇り高き俺らの燦然、誰にも超えられはしないさ!

 

 /あら、直視せざること能わざる高貴なる輝きに、ひれ伏すのですわ!」

 

 【ディアンシーは デュアルメガディアンシーに デュアルメガシンカした!】

 

 ー「一撃、一撃だ/それ以上はレギュレーション違反ですわね。」

 

 【デュアルメガディアンシーの ダイヤストーム・アクセラレーション!】

 

ー*ー

 

 歌姫には、何もできなかった。

 

 シンシューをまとめる力も言葉も権威もなく...そして早熟ゆえに否応なく理解できてしまったーこの先研鑽を重ねようと、あのユキコシの令嬢が見せたピンクのダイヤとそのカリスマを超えることなどできないのだと。

 

 神の領域に達したと誰もが認めるその歌声で戦場を塗り替えるたび、少女の両手は血にまみれていて。そして3年の疾走から立ち止まってしまった今、気づけば少女の足元も血にまみれていた。

 

 少女は、ただただ立ち尽くした。

 

 歌声が、涙声と入れ替わる。

 

ー*ー

 

 「講和!?荒くれ者どもとかえ!?

 

 そなたが神の意と威を代行しておるというのにかえ!?

 

 お父君とお母君の無念は、神の意志は、どうなるのじゃ?」

 

 「私はもう、疲れたわ。モリヤぐうじ。」

 

ー*ー

 

 そうだった…歌姫は、痛む頭で見た夢に、吐き気を覚えて。

 

 あまりの吐き気に、目を開けた。

 

ー*ー

 

 「五分待ってあげましたよ!

 

 さあさあどうする!?私の!未来の!マテリアルさん!」

 

 「/Output…私は抗います。

 

 歌姫さんにも、おみやにも、手出しはさせません!End」

 

 「ふぅむ?ハッハッハ!戯れを!

 

 自分の身柄も歌姫の身柄も譲らない、私たちには退けと言う!そんなのはガキのわがままです!」

 

 「/Outputあいにく私はまだ17歳だし、アイドルは誰だって永遠の17歳!子供のわがままくらい許してくれませんか?

 

 イーブイ、GXオーバーラップ!End」

 

 【イーブイは イーブイGXへ 重複(オーバーラップ)した!】

 

 【イーブイGXの かくせいDNA!】

 

 「いいえ!科学者はもっとわがままです!異世界転生者も!歌姫殿も!おみやも!すべて!すべてを!いただきましょう!実験材料に!接収です!

 

 やれ、パオジアン!」

 

 【CC:パオジアンGXの CC:ヘイルブレード!】

 

 【イーブイGXは グレイシアGXへ 進化した!】

 

 「/Outputイーブイ、かわしてゆきなだれです!End」

 

ー*ー

 

 (このままじゃ、アリア・コトホギは死んでしまうわ…!

 

 あのウルトラマッドサイエンティストに、旅立ちもしてない素人がかなうわけない...!)

 

 ーだからって、貴女は、またその歌声を奏でる気?その武勇をとどろかせる気?

 

 (そうしないと…メガサーナイトが即落ちした以上、もう...)

 

 ー神を降ろした者として、神威を代行する歌姫として、また、その神の歌声で悲劇を招こうと言うのね?

 

 (...私は、ただ、私がたまたま出会って目を掛けてしまったアイドルを、助けたいだけで...)

 

 ーその結果、そのアイドルが死にかけてる、でしょ?

 

 貴女()は誰も救えない。ただ敵を倒して血を降らせるだけで、(未来)にも(過去)にも進めない。

 

 (それは、だけど...

 

 だけど...!やるしかないわ!)

 

 ー神の力を借りてなお何もなしえなかった貴女が、伝説ポケモンを再現してしまったマッドサイエンティスト相手に、どうやって?また封印した歌声でも振るうの?

 

 (...私はもう、神の力には頼らないし、誰のためにも歌わない!)

 

 その心は、4年前、終戦の日から変わらないーけれど。

 

 (この身に宿す力と、返り血まみれの私と仲間たちの…過ぎたるこの力を使うべき時を、もう間違えはしない!)

 

ー*ー

 

 「ブ、ブイ!?」

 

 かわせば、自分のパートナーである言祝アリアにぶつかってしまう…迫る無数の氷剣を前に、イーブイ(グレイシア)GXは逡巡した。

 

 けれど、言祝アリアの頭脳は、とっくに敵の出方も、その時どうすればいいのかも導き出し、書き込み終えていた。すなわち、

 

 「/Outputイーブイ、そのままっ!End」

 

 自分のことは気にせず、CC:パオジアンEXへ逆襲しろ...氷剣が1つでも当たればどうなるか、気絶した歌姫を見て理解していながら、言祝アリアは賭けたのだ。

 

 (一か八か、前世でレッスンで鍛えた私の身体能力で...!)

 

 ひらり、くるり...歌うことができなくても、声すらできなくたって、芸は身を助けた。鋭い氷剣を1本ずつ見切り、2本3本と殺到する間を器用にすり抜けていく。

 

 けれど4本、5本と避けたところで、言祝アリアは賭けに負けたことを悟ったーかわしたはずの氷剣が、引き返して飛んでくる!

 

 (よけ切れな...!やられ…!?)

 

 「ハイパーボイス!」

 

 凛として響き渡るその声に、言祝アリアはつい、ダンスステップを止めてしまったー6本の氷剣が、彼女の脳髄を砕こうと全方位より迫る。

 

 (あ、私、死)

 

 【メロエッタの ハイパーボイス!】

 

 暴力的に美麗な歌声が、浮かぶ氷剣を瞬時かつ同時に、爆砕した。




 正統続編なので、過去回想回で蒼玻/アオバ・フロックスが好き勝手に暴れまわることもありますね(世界を3回救ってるチート主人公令嬢が出張ったら反則なんよ)
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