アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜 作:十二の子
キョダイマルヤクデGX(コーシュー軍総大将)VSデュアルメガディアンシー&グレイシア(フロックス姉妹)の次の対戦カードは...?
ー*ー
ジンザモシティ南東の平原。
「そなたら、皆無事だったか。」
「若様も男を上げたようで。」
マルヤクデをフロックス姉妹にやられた若きコーシュー軍総大将は、ちりぢりになっていた攻城部隊をここに集めた。そこへ、敗北した四天王3人が率いる地下要塞攻め部隊が合流したわけである。
二正面作戦が失敗した被害は大きく、コーシュー軍は今や7万まで人数を減らし、そこかしこで懸命にポケモンを回復させていた。…だが、寡兵あるいは弱兵のユキコシ軍やシンシュー軍も疲弊しているらしく、コーシュー軍はなんとか陣形を組み直す余裕があった。
「人は城、ポケモンは石垣…そう簡単に余らの防御が破られることはあるまい。
だが、懸念があるとすれば…」
「アオバ・フロックスとアリア・カナサシ、でござりまするな、若様。」
アオバ・フロックスのデュアルメガディアンシーは時を操り、アリア・カナサシの歌声は敵味方に絶大なバフデバフを与えさらに龍神レックウザを召喚する。どちらも、あらゆる防御戦術を無意味とする特記戦力だ。
「マルヤクデやられし今、おそれながら、若様の奥の手しかござらぬでしょう。」
「ゼクロムとレシラム…フロックスとカナサシの二手に分けるのが上策かと!」
「難点はどちらもフェアリータイプを中核とすることにござるが…」
若き総大将は、四天王3人の提案に、首を横に振る。
「フロックスなどしょせんお公家様の軍隊、余が対処すべきは、王たる者が超えるべきは…
余はカナサシの現人神を潰す!そなたらは雑兵を抑えよ!
再突撃だ!今度こそ勝つ!余は、父上の無念を晴らし…
ゼクロム、レシラム…ッ!」
ー*ー
ジンザモシティを守る土塁の上。
「…は?」
アリア・カナサシは、呆然とそれを見上げた。
炎を腕に纏わせるゼクロム。
雷を脚に纏わせるレシラム。
「バックレアから話には聞いていたけど、タッグチームGXの頂点…」
ジンザモシティの全軍で以て、コーシュー軍の攻城部隊を追い散らし包囲網を消滅させ…その矢先にこれだ。2体の伝説のポケモンが、みるみるうちに迫ってくる。
【ゼクロム&レシラムTagteamGXの クロスサンダー!】
十字に閃くは雷…神鳴り。晴天にあってその電光は太陽よりもはるかに輝き、雷鳴は鼓膜をつんざかんほど。
「メタグロス、ナットレイ、ラスターカノン!」
クロレラが、とっさに迎え撃つよう指示を出す。
白銀のビームが、雷と衝突し、呑み込まれ…
減衰した様子など微塵もなく、雷はアリア・カナサシめがけて落ち、そして土塁が爆砕される。メタグロスGXとナットレイGXはひとたまりもなく戦闘不能となった。
「これは…歌姫様にしか、手に負えない相手ですね。」
当然クロレラはまだ4体のポケモンを持っている…だが彼ははがねタイプのエキスパートなのだ。ゼクロムはともかくレシラムへの相性が悪い。…潮時である。
「いや、いやいやいや…
マルヤクデでも龍神と伯仲したのだ。それを越える伝説ポケモンを、龍神抜きで?
「…やるしかないわね。
オーバーラップよ、サーナイト、ニンフィア、アマルルガ、ワタシラガ、キュウコン、そしてメロエッタ!」
ー*ー
【ゼクロム&レシラムTagteamGX(呪歌)の らいげき&あおいほのお!】
蒼炎と紫電でできた巨大な剣が、アリア・カナサシめがけ投げつけられる。
まさに神罰のような一撃…が、迎え撃つ彼女もまた神の依代たる存在だ。
「共振、エコーボイス!」
6体のポケモンからのエコーボイス…それも、伝播の方向、波長、周波数、音量そのすべてを適切に調整された、龍神の祝福を受けた音波。それが、神罰の巨剣を揺さぶった。
ポケモンのワザであろうとも、それが熱と電気で構成されるからには媒介が必要…音波の振動は、媒介たる空気を的確にかき乱し、2つのワザの調和を崩壊させる。
大爆発ーその爆風を斬り裂くように、2体の伝説ポケモンが突っ込んでくる。
「アマルルガ、キュウコン、こおりのつぶて!ワタシラガ、コットンガード!」
先制で氷弾を打ち込みつつ、攻撃をクッションする…アリア・カナサシの「龍神の祝詞」によるバフデバフがかかっている今、これで防ぎきれないことなど万に1つもない。
膨れ上がった綿毛に引っかかる、ゼクロムとレシラムの爪。2体の顔に叩き込まれる数十の氷弾。
「たたみかけるわよ!サーナイト、ニンフィア、ムーンフォース!メロエッタ、いにしえのうた!」
「6体相手では衆寡敵せず…というわけか。なればもとより減らすしかあるまいな。」
ゼクロムから焔が溢れ出し、レシラムから雷が弾ける。
「攻撃を抑え込んで!さらにコットンガード!」
攻撃も敵本体も、綿毛の中へ包みこんでしまえ…そういうわけである。
「ゼクロム、レシラム…
…それしきがそなたらの可能性ではあるまい!」
【ゼクロム&レシラムTagteamGX(呪歌)の…】
霜が降りる。
(…は?)
相手は明らかにこおりタイプではないはずだーそんなアリア・カナサシの当惑。彼女は知る由もない…
【フリーズボルト&コールドフレア!】
…ゼクロムとレシラムは、ブラックキュレムとホワイトキュレムという可能性を宿しているのだと。
綿毛が凍りつき、そして紫電と蒼炎が氷の中を奔り抜ける。
たった一撃、それを分厚い綿毛で受け止めることができず、ワタシラガは戦闘不能に追い込まれた。
「続けるとするか、ゼクロム、レシラム!」
「ワタシラガ、戻って!
…一発でも受けられないわ。気を引き締めるわよ!」
ー*ー
高みの見物…ユキコシ地方シンシュー介入軍はこの戦争で、そういう役回りになりがちだ。
着実に北シンシューへ侵攻し支配を広げるユキコシ軍と、電撃侵攻を重ねながら破壊と略奪を尽くすコーシュー軍…ということでもシンシュー側の戦闘は対コーシューに偏りがちだったし、ジンザモを巡る包囲戦でもユキコシ軍が布陣した北側では睨み合いに終始した…国際的な体面もあるが、それ以上にユキコシ軍は漁夫の利を狙っていた。
…だから。
やるのなら、今なのだ。
しかけるなら、今なのだ。
「全軍、攻め手を緩めないでくださる!?」
「ワカナエシティ隊、ホープ団海軍隊、前へ!ジャグランスに回復の隙を与えないで!」
フロックスの姉妹の指揮の下、休息と回復を済ませたユキコシ軍は今こそ全力を出していた。
ジンザモシティと地下要塞のシンシュー軍により弱体化したコーシュー軍…今こそ、総決戦の時なのだ。打撃からコーシュー軍が回復するより早く、シンシュー軍がゼクロムとレシラムに決着するよりも早く。…混乱と疲弊に乗じて、コーシュー軍の大軍勢を粉砕する。
「…お姉ちゃん、どっちが勝つと思う?」
ゼクロム&レシラムTagteamGX、それに相対するは龍神歌姫アリア・カナサシ…みな気にしないようにしているが、決戦の背後でこんな神々のスペクタクルをされては気もそぞろになるというものである。
「決まってますわ。」
「ふうん?どっち?」
「どっちでもいいですわ。勝ったほうがわたくしたちの敵になるだけ、いえわたくしたちの獲物になるだけ、そうではなくって?」
周りで聞いていたトレーナーたちが爆笑する…アオバ・フロックスが迎え撃つというのなら、神威天罰いずれも負けはしない…そういう、実績に裏打ちされた評価が、彼らの中にはあった。
(とはいえ、アリア・カナサシが直接レックウザを出してこないのは、わたくしたちへの奥の手ということなのでしょうが…)「気を抜いてはいけませんわよ。この時間を少しでも活かしコーシュー軍を攻めるのですわ!」
ー*ー
【
フェアリーエネルギーで構成された数十の矢が、ゼクロムとレシラムめがけて飛ぶ。
「避けろ。」
2体の神は空を飛び矢から逃れようと…しかし矢は折り返し、ホーミング飛行をしてみせた。
「避けられぬか…ならば、らいげき、あおいほのお!」
【ゼクロム&レシラムTagteamGX(呪歌)の らいげき&あおいほのお!】
フェアリーエネルギーの矢が衝突するその瞬間、ゼクロムとレシラムは全身を蒼炎と紫電で覆い、矢を焼き尽くした。
「攻撃の隙を与えないで!アマルルガ、キュウコン、ゆきなだれっ!」「突っ込め、ゼクロム、レシラム!」
ゼクロムとレシラムの頭上に雪雲が発生し、勢い良く崩壊する…が2体は、雪崩に呑み込まれながらアマルルガGXとシンシューキュウコンGXへ突進した。
4体まとめて雪崩に呑まれ…らいげきはともかく、あおいほのおはこおりタイプのシンシューキュウコンGXにとって効果抜群である。
ゆきなだれが作り出した雪盛りが、ごそごそと崩れる。ボロボロのアマルルガGXが身体から雪をふるい落とし…そして、ゴツい白の腕が雪の中から出て、一薙ぎにそれを吹き飛ばした。
「戻ってアマルルガ、キュウコン!」
雪盛りから姿を現す、ゼクロムとレシラムの偉容…けれど、起き上がるこのタイミングこそ絶好の集中攻撃チャンス。
【
【ニンフィアGX(祈歌)の ハイパーボイス!】
【メロエッタGX(祈歌)の インファイト!】
矢が、歌が浴びせかけられ、そして華麗なステップで殴る蹴る。
「小癪な。
すべて破壊しろっ!」
コーシューの若き総大将が叫び…それに、ゼクロムとレシラムが雄叫びで応えながら、降りかかる攻撃を振り払う。
「っ、メロエッタ離れてっ!
GXワザが来る!」
【ゼクロム&レシラムTagteamGX(呪歌)の…!】
異様な雰囲気…そして、龍神レックウザの力を宿す依代であるアリア・カナサシですら畏敬の念を覚えひれ伏しそうになるほどの、神威のプレッシャー。
2体の神の腕が、蒼く燃え、紫に帯電し、そして空気の分子を破壊するバチバチバリバリという音とともに、蒼炎と紫電の輝きが白く染まっていく。
(通常攻撃より、どう見ても段違いの威力…!相殺するのは無理…!)
「サーナイト、メロエッタ、サイコキネシスで逸らすわよ!ニンフィアもようせいのかぜで援護!」
「やれ。」
【ゼクロム&レシラムTagteamGX(呪歌)の クロスブレイクGX!】
白く眩い巨大なクロスマークが、大地と大気をつんざき絶叫を奏でながら放たれ…
サイコキネシスによる誘導、ようせいのかぜによる吹き飛ばし、いずれも絶大なエネルギーと運動量に対してなんら意味をなさず…
超高温と超高電圧が、歌姫のポケモンたち、そして歌姫自身を襲い…
…ポケモンたちは咄嗟に避けようと動くが、トレーナーはそれほど素早く動けず…
(まずっ、巻き込まれ…っ!)
両腕で顔だけでも守ろうとして、閃光に目を閉じて…そしてアリア・カナサシは、何かがぶつかる衝撃で突き倒され地面を大きく滑った。
(な、にが…)
直後、炙るような暑さと、著しい痺れ…けれど、それで済んだ。
済むはずがない…自分が無事で済むはずがない…アリア・カナサシはおそるおそる目を開け…
自分に覆いかぶさっていたナニカを除け…そして、それが何であるかを理解した。
「ニンフィア…ッ!」
黒焦げボロボロで、他人が見ればニンフィアであるかどころかポケモンであるかもわからなかっただろう…ただ、ニンフィアとの絆ゆえにわかってしまう…それがニンフィアであることも、このままでは十分と保たず息絶えてしまうであろうことも。
「ちっ…仕留め損ねたか。ゼクロム、レシラム!」
ニンフィアをボールに戻す。…けれど、そのボールをポケモンドクターへ持って行く余裕が、狙われている彼女自身にありそうには思えない。
「メロエッタ、クロレラのところへこのボールをお願い。」
なんとか先程の攻撃を回避していたらしいメロエッタGXへ、モンスターボールを投げる。
「メロエッタを逃がすなっ!」
【ゼクロム&レシラムTagteamGXの クロスサンダー&クロスフレイム!】
モンスターボールを託され走り出すメロエッタGX、その後ろを、ゼクロムとレシラムが低空飛行で追いすがる。
…けれど、アリア・カナサシのポケモンはまだ1体、持ち堪えている。
【
まともに受ければ絶死の威力を持つ光線。それが、ゼクロムの横っ面を張り飛ばす。…タッグチームGXとしてレシラムとリンクしていなければこの一撃でゼクロムはやられていたが、あいにくそうではない。
「この余が、メガサーナイトごときに長く煩わされるとでも?
死体にしてやれ、らいげき、あおいほのお!」
【ゼクロム&レシラムTagteamGX(呪歌)の らいげき&あおいほのお!】
紫電と蒼炎が、複雑に絡み合いながら降り注ぎ。
「サーナイトッ!」
フェアリーエネルギーの矢ごときでは防ぐことは叶わず。
しかし紫電と蒼炎は、大気ごと削り取られ、はるか地平線の山肌へと吹き飛ばされた。
【
空高くから舞い降りる龍神、そしてその背から飛び降りる、シンシューの本当のリーダー。
「間に合ったわね…コトホギさん!」
「なんとか間に合わせましたよ、歌姫さん!」
同時に東の方から、鬨の声が聞こえてきた。
「「「「「シンシュー地方、万歳!」」」」」
~次回の「転生ポケモンアイドル」は~
ゼクロム&レシラムTagteamGXという絶大な存在は、なんとか立ち向かったアリア・カナサシを翻弄し、ついには
そこへ現れた、フジナドシティからのシンシュー軍援軍。そして言祝アリアが龍神の背から降り立ち、対コーシュー決戦はいよいよ大詰めへ…!
次回「ゆえに完全で絶対の偶像」
「こりゃ対処はうちのアイドル様と歌姫様しかねェ…というか、そこが狙い、だよなァ…」
みんなもポケモン、オンステージ!