アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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♪9 転生元アイドルと遁世元歌姫

ー*ー

 

 【イーブイ(グレイシア)GXの ゆきなだれ!」

 

 雪雲が崩落し、CC:パオジアンEXを呑み込む。

 

 「待たせたわね。」

 

 「/Output歌姫さん、大丈夫なんですか!?End」

 

 CC:パオジアンEXが雪を振り払うのには目もくれず、言祝アリアは真横、立ち上がったばかりの美声の主に目を向けた。

 

 「大丈夫だけど、一つ違うわ、アリア・コトホギ。

 

 歌姫じゃないわ。元歌姫よ。

 

 人として現れたる神(現人神)、カナサシおみや龍神のよりしろさま(依代様)アリア・カナサシ…ここに見参よ!」

 

 虹色に輝くディスクーEXエディッションプレートが、元歌姫アリア・カナサシの指上を躍り出た。

 

ー*-

 

 かつて、湖岸の地には神様がいました。

 

 無限の光を放つ、石の神様。この地に君臨していたモリヤ氏はこの神様とともにあり、神様を「おひだりさま」と呼んでいました。それは、モリヤ氏の「神の右隣、神と対等な者となって世界を照らす」という意志の現れだったのです。

 

 けれど、おひだりさまの正体は、宇宙の光を奪う簒奪者、バケモノでした。

 

 西からやってきた龍神が、おひだりさまを相手に戦い、おひだりさまを湖底に沈めました。しかし龍神様もまた、この簒奪のおひだりさまを鎮めきることはできず、重しとしてともに湖底に沈むことになったのです。

 

 おひだりさまも、そのかわりの龍神様も湖底に消え、神威の下にあることを誇りにしていた湖岸の民は途方に暮れました。その時、龍神様はその力を、ある人の子に託されたのです。

 

 龍神を代行して湖岸を治めるカナサシ氏を、10豪の一人であるモリヤ氏が祀る…この街の独特な統治体制は、この時始まったと言われています。

 

 (「カナサシタウンの歴史」第一章「2神争い、現人神生まれるのこと」より)

 

ー*-

 

 「メロエッタ、オーバーラップ!」

 

 茶色のスカートが裾を引いて拡がる。

 

 額の宝石が、オパールのごとく七色に輝く。

 

 五線譜のような茶色の髪から、これも譜面のような黄緑のサイドテールが垂れた。音符のかんざしが髪を止める。

 

 【メロエッタは メロエッタEXへ オーバーラップした!】

 

 ボイスフォルムとステップフォルム、2つの可能性を併せ持つ、旋律ポケモンの究極の姿ーメロエッタEX。その口が、ゆっくりと開かれ…

 

 「歌って、メロエッタ」

 

 【メロエッタEXの シャイニーボイス!】

 

 【CC:パオジアンEXは ねむってしまった!】

 

 「なんと!特殊状態をひっかぶってしまうなんて!

 

 …と、驚くとでも!?あいにくCCシリーズはスペックの完全再現こそできていませんが人造機械!すなわちブルースクリーンでなければ打つ手はあるんですよ!

 

 コマンド!ウェイクアップ!」

 

 大げさに、ウルトラマッドサイエンティストが叫ぶ。

 

 【CC:パオジアンEXは 再起動した!】

 

 「さあやれっ、ヘイルブレード!」

 

 【CC:パオジアンGXの CC:ヘイルブレード!】

 

 再び、数えきれないほどの氷剣が出現ーいや、氷剣の数が、少ない。

 

 「/Outputイーブイ、こおりのつぶて!End」「メロエッタ、サイコキネシス!」

 

 サイコパワーで空中に縛り付けられた氷剣に、氷弾がひとつまたひとつと着弾していく。

 

 氷剣は、そのすべてがいとも容易く破壊された。

 

 「予想外!出力値が低すぎます!再実験しなくては!」

 

 【CC:パオジアンGXの CC:ヘイルブレード!】

 

 繰り返せども、結果は同じ。

 

 【グレイシアGX 特性:いてつくひとみ

 

 相手のポケモンEX・GXの特性は全てなくなる。】

 

 もはや、CC:パオジアンEXの強さを絶対的なものに高める敵弱体化特性「わざわいのつるぎ」も、EX化によって得られたエネルギー供給特性「わななくれいき」も、無効。そこにいるのは、ただ合計種族値1140のポケモンの8割再現レプリカでしかない。

 

 「打つ手があるからなんだって?私たち2人のバトル(合唱)は、チューニング済みよ!」

 

 「興味!深い(Interesting)!」

 

 科学の狂人は、そんなことではうろたえない。

 

 「そうそう!歌姫殿!あなたがたの弱点なら!よーく!研究しましたよ!

 

 じごくづき!」

 

 【CC:パオジアンEXの じごくづき!】

 

 剥き出しの剣歯が、メロエッタEXめがけ迫るー

 

 イーブイ(グレイシア)GXの ポーラースピアGX!】

 

 ー膨大な地脈のエネルギーをまとった氷槍が、CC:パオジアンEXを、メロエッタEXの眼前で横へ吹き飛ばした。

 

 氷槍が爆発し、氷霧の中からCC:パオジアンEXはすぐには立ち上がれない。

 

 「やっぱり私たち、相性がいいわね。

 

 メロエッタ!」

 

 【メロエッタEXの ハイパーボイス!】

 

 木々の葉が粉々になるほどの強烈な音波。CC:パオジアンEXは、ネジやクギをまき散らして吹き飛び、大破した。

 

ー*-

 

 「…予備実験は失敗、と…

 

 …また、本実験の時に会いましょう...」

 

 ひらひらと手を振って、恰幅の良い白衣の男は去っていく。

 

 「/Output追わなくて、いいんですか?End」

 

 「…ウルトラマッドサイエンティストを捕まえようとしたって政治的に面倒なことになるだけよ。」

 

 シンシューの10豪どころか、カナサシ・エクリプスタウンの神秘(おみや)科学(マッドサイエンティスト)をまとめることすらできない…アリア・カナサシは無力感に臍をかんだ。

 

ー*-

 

 「そなたを認めるつもりはまだない...が、そなたに資質があることもまた確かじゃろうて。

 

 よかろう、その神器はそなたに預ける。ジムバッジをいくつか集めたあかつきには、またこのおみやに挑みに来るがよい。」

 

 「/Outputありがとうございます、ツクバネジムリーダー。End」

 

 「…ところでモリヤの婆っちゃん、どこで私たちの戦いを見ていたの?力を貸してくれればよかったのに。」

 

 「いろいろあったんじゃよ。」

 

 「…ふーん...」

 

 「…

 

 …大将はどっしりと動かんもんじゃぞえ、アリア様。」

 

 「なんか、言った?」「気のせいじゃろ。」

 

ー*-

 

 「/Output私すごい方の力を借りているんですねEnd」

 

 「そう?」

 

 「/Outputだって、龍神様の依代様って…現人神って…End」

 

 湖底に眠る伝説ポケモン、その力を託された、神威の代行者ーまぎれもなく、歌姫アリア・カナサシこそは、伝説の存在そのものなのだ。

 

 「…そんな業の深い役回り、二度とやらないわよ。

 

 私は隠遁の元歌姫。それ以下にはなれないけど、それ以上にもならない。

 

 それに貴女だって、私のことをわかる、私の(対等な位置)に立てるはずよ。」

 

 言祝アリアは首を傾げた。神様と同等?とても彼女には、そうとは思えなかったからだ。

 

 「龍神様から力を託されて、人々の信仰の核になる現人神も。

 

 人々の歓声を集めて、舞台を唯一無二の神話へと昇華するアイドルも。」

 

 -私たちは偶像、そうでしょう?

 

 「…貴女なんて、最初から私に、偶像(アイドル)として接してるじゃない。」

 

 そんなことはーとっさに否定しようとして、しかし言祝アリアは出力ボタンを押せなかった。

 

 「アリア・コトホギー『言祝ぎ』なんて、それこそ神性と神聖の漂う名前よね。本名とは思えない。

 

 貴女、声を出すのも怖いと言うけれど、アイドルである自分は嫌いではないんじゃない?」

 

 アリア・カナサシが、偶像(現人神)として戦った自分のことを嫌い名前を名乗らなかったのとは逆に。

 

 言祝アリアは偶像(アイドル)としての自分を大切に想っているから、転生してもなおその芸名を名乗るのではないか-アリア・カナサシはそう問うた。

 

 「そんなにも偶像としての自分を大切にしている貴女だからこそ、私と分かり合ったりぶつかり合ったりできるのかもしれない。通じ合えるのかもしれない。そう思っているから、私は貴女に力を貸すわ。」

 

 言祝アリアは、タッチペンから手を離し、端末を持つ手を下ろした。

 

 「ねえアリア・コトホギ。

 

 貴女の本名を、一度くらい聞かせてくれても、いいんじゃない?」

 

 唇が震える。そして、小さく開かれる。

 

 「…初めまして、私は大三輪(おおみわ)(はるか)。言祝アリアって名前で、アイドルやってます。」

 

ー*-

 

 かつて日本で一世を風靡した、あるアイドルがいた。

 

 その歌声は万人を魅了し、発表のたびに日経平均株価が上下する、神にも例えられる偶像(アイドル)…名を、言祝アリア。

 

 かつてポケモン世界の長野県で戦乱を生き抜いた、ある歌姫がいた。

 

 その歌声は一騎をまさに当千とし、出陣のたびに前線が移動する、伝説のポケモンの依代たる偶像(現人神)…名を、アリア・カナサシ。

 

 騒乱への不穏が漂うシンシュー=コーシューの地、転生元アイドルと遁世元歌姫の第二の人生は、旅だったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー*-

 

 「なぜ、コーシュー人が、シンシューの神の力を持っているのでしょうね。

 

 …いえ、答えは明白。対立が絶えなくてもシンシュー=コーシューとひとくくりで名乗ってきたのは、地政学的合理などではなくもっと根源的なメカニズムだった...ということでしょう。

 

 伝説のポケモンの正体も、なぜ『可能性』を研究の題材にすることによって権能の再現に成功したのかも、見えてきますね。…それに、どうして『アリア』が2人も現れたのかも。

 

 それより、GXマーカーをアリア・コトホギに預けてよかったのですか?モリヤだいぐうじ。」

 

 「GXマーカーを小娘に預けてよかったのか?

 

 問題はあるまいて。

 

 石板ひとつふたつで弱まるおひだりさまでもなかろうかえな。

 

 そうじゃろ、な、バックレア。」

 

 恰幅の良い白衣の男は、何ら返事を返さなかった。




 現人神アリア・カナサシ

 だいぐうじモリヤ氏に祀られるカナサシ氏の、当代の現人神。カナサシおみやが崇めるカナサシ湖底の伝説ポケモンの力を宿している(アリアの場合、声に神の力を宿すことで味方を強化することができる)。

 4年前の戦乱終結以後、その力を振るったことはない。

 元ネタは諏訪大社の大祝諏訪家です。諏訪氏が自らを「神が依代とする現人神」として信仰を集め、武士団として諏訪地方を統治したことになぞらえて、カナサシおみやは「伝説ポケモンをカナサシ家に宿らせて信仰を集め恩寵を与える」側面と「戦闘集団として街を守り治め、バトルを鍛えるジム」の側面を持っています。

 メロエッタEX (ノーマル/かくとう/エスパー) 特性:てんのめぐみ/プレッシャー

  
HP攻撃特攻防御特防すばやさ
メロエッタ(ボイスフォルム)100771287712890600
メロエッタ(ステップフォルム)100128779077128600
メロエッタEX1102352351502352351200


 ポケモンEXの「可能性重複の原理」と「合計種族値2倍則」の両方を受けているため、ボイスフォルム・ステップフォルム両方の特徴を併せ持ちつつ圧倒的な能力を手にした姿。現人神アリア・カナサシの歌声に籠る神力を浴びながら歌い踊り続けてきたことも相まって、破滅的な強さを誇る。

 EXワザ:シャイニーボイス

 もとになったワザはチャームボイス。必中ではないが、命中時50%でねむり、50%でこんらんにする。
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