アイドル、ポケモン世界を歌う! 〜ポケットモンスターTen Colors〜   作:十二の子

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 言祝アリアとアリア・カナサシのシンシュー地方の旅は、コーシュー地方・ユキコシ地方からの軍事侵攻の撃退という劇的結末を迎えた。

 …そして、まもなくして、コーシュー地方は崩壊した...

 これよりはじまるは、すべての始まりを、忘れられた神を、迎える物語。


転生ポケモン令嬢アンコール 「解呪 コーシュー地方」
♪84 コーシュー地方の正体


ー*ー

 

 シンシュー終戦、講和条約…それから1週間も経たぬうちの、コーシュー地方の無政府化。

 

 侵略を国是としていたのだから、侵略失敗と賠償金とリーダーシップ喪失のトリプルパンチをくらえば当然の帰結…とはいえ、隣接3地方にとってみれば迷惑千万である。侵略の対象と明言されていたカントー地方とジョウト地方は不機嫌を極めた声明を出したし…戦災の補償と復興の資金源として賠償金が必要だったシンシュー地方にしてみればとんでもない話。

 

 今度の軍事介入は、ほとんど国際社会から非難されなかった。カグヤ・フロックスがイッシュ地方で演説した「歴史的・地理的区分に過ぎず、実力者が群雄割拠して覇を競っているようなものでしかありません。地方という体制ではなく地方という領域です」という言葉は今のコーシューに対して詭弁とならなかった。

 

 シンシュー軍とユキコシ軍は合同でコーシュー地方へ進駐。ユキコシ地方が用意していた有り余るほどの物資が両軍を支え…これに対し、コーシュー各地の軍事勢力は先の戦争で兵糧を使い果たしており、新興で団結力もなく…各個に撃破され武装解除され。

 

 瞬く間に、コーシュー全土は陥落、合同進駐部隊の保証占領下に置かれた。

 

ー*ー

 

 「…いくらなんでも、これは。」

 

 「/Outputごめんなさい、想像の百倍ですEnd」

 

 中橋蒼玻は前世、乱読型、つまみ食い型のオタクであった。山梨県甲府市の風景はともかく、ある程度の地方都市であるくらいは知っている。

 

 言祝アリアは前世、日本いや世界に誇るアイドルであった。ライブツアーや番組で山梨県甲府市を訪れたこともある。

 

 その2人が揃って、悲鳴にも近い反応…それほど、コーシュー地方ナデシコシティは、悲惨だった。

 

 荒れ果てた盆地の中央、枯れかけの水田が広がる中、時代劇でもそうそう見ないようなボロ長屋や、戦後闇市そのもののバラックが乱立する…舗装のほの字もないガラガラの道の上、人もポケモンもガリガリに痩せ、幽鬼のような有様で徘徊していた。

 

 確かに終戦後の一揆内乱はあったが、1週間で鎮圧した…だからこのナデシコシティの惨状は、一揆以前、いや戦前からのものだ。

 

 「航空写真である程度はわかっていましたわ、それでも…

 

 …コーシューは、世界一酷い地方ですわね…

 

 /ソマリアでもずっとマシだろ…武田軍そのものの侵攻をしてくるんだから戦国甲斐なみだと思ってたがマジか…」

 

 シンシュー・ユキコシ合同進駐部隊も、あまりの惨状にナデシコシティ市内へ展開できずにいた。飢えた餓鬼そのものの市民・ポケモンを恐れてでもあるが、そもそも数万人のポケモンを支えるインフラなどありはしないのだ。病気にもなりそうである。

 

 今にも崩れ落ちそうな襤褸切れの街…ナデシコシティの景色は、進軍中に見てきたコーシュー各地の風景とも共通したものだった。

 

 「よく、この状況でシンシューに戦争しかけて、席巻できたわね…」

 

 アリア・カナサシはそう語るが、しかし同時に不思議なこととは思っていなかった…コーシュー中で見られる飢えた者の瞳の異様な力強さ、それに勝つのは並大抵のことではない。

 

 「お姉ちゃん、あちこちの田畑の様子をまとめてきた…今年の収穫は絶望的だよ。

 

 それから病院にも話を聞いてきた…けど、死体を道端に放置してるくらいだからみんな諦めちゃってて、医療が富裕層限定になってる。なのに、富裕層でもボロボロで…」

 

 コーシューでの富裕層と言っても、四天王からして「食後のフルーツが贅沢」という水準で、毎日アフタヌーンティーで毎週晩餐会のフロックス家には想像もつかない。

 

 「元四天王のマルスが言ってたわ。嫡男を病気で亡くしたって。侵攻軍から接収したポケモン薬も、軍需物資なのにシンシューの民用のものの数世代前…」

 

 「軍事侵攻しかなくなるまでのプロセスが見えたな。

 

 医療も公衆衛生も破綻して有病率が高く、体力がないから耕作が成立しない。しかもただでさえ水はけが良すぎて土地が荒れてる。

 

 耕作が成立しないから体力がつかず免疫も低下して、ますます有病率が悪化する。

 

 /いいえ、蒼玻くんの仮説には穴がありますわ。

 

 今でこそ捕虜ですけれど、軍事侵攻には堅強なポケモンを用意できた…コーシュー地方は悲惨ですけれど、健康な者は健康で、それを鍛えるだけの物資は用意できたはずではないかしら…戦争により失われる前は、あるところにはあり、いるところにはいたのですわ。」

 

 「/Outputでも格差が激しかったわけじゃない…四天王ですら贅沢できないし子を亡くすんですから…

 

 …不気味ですね。もう少し調べてみる必要がありますがEnd」

 

 荒れた大地、やせ衰えた人とポケモン達、崩れ落ちそうなナデシコシティ。

 

 格差があるわけでもないのに、健康な者と病んだ者に大きく別れている…

 

 嫌な予感、そうとしかいえないものが、この上なく共有される。

 

 「…待てよ…

 

 カグヤちゃん、ありえないことだと、あってはならないことだと思うから念のためだけど…

 

 コーシュー軍に参加した各勢力の出身地域を、マッピングできるか?」

 

 「やってみるけど…なんで?」

 

 「…軍事侵攻には健康な人とポケモンを動員したはずだ…人口のわりに軍勢を出していない地域があれば、そこは病に深く侵された地域…ってことになる。」

 

 「待ちなさいアオバ・フロックス。つまりそれは、コーシューの人々の不健康さは、貧しさのせいだけじゃない、と!?」

 

 「蒼玻くんはそう考えてますわ。

 

 シンシュー侵攻の原因は貧しさ、貧しさの原因は蔓延る病と水はけ、けれど、蔓延る病の原因は貧しさだけではない、と。」

 

 「/Outputむしろ、有病率の高い地域があるのなら、軍事侵攻の理由も貧しさだけではなくて…

 

 病のない新天地を求めて、じゃありませんか?End」

 

 コーシュー地方の正体が、明らかになろうとしていた。

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