なりきり転生したらご本人が登場した所為で前作主人公みたいになってる 作:ゆらんず
成り切り転生とは、言葉の通り転生して成り切る事である。
もうちょっと分かりやすく言うと、好きなキャラクターの外見や能力を手に入れ来世を歩み出す事を言う。
そして、転生する機会があるのならばどのような転生をしたいのかというのはそれこそ人それぞれであるだろうが、俺の場合だとそれは「推しキャラになってみたい」だったのである。
俺の好きな推しキャラというのは『ライブラリーライフ』というゲームに登場する美少女、リンネだった。
桜色の瞳に白い長髪を持つ彼女はありていに言ってしまえばそのゲームの主人公であった。
個人的には「ヒロインより主人公が一番可愛いゲーム」だと思っていたし、だからこそ俺もその子の事を「推しキャラ」として推していた。
グッズを沢山買い漁っていたし、二次創作として絵を描いたり収集したりしてもいた。
本当に大好きだったし、一度リアルで会ってみたいとも本気で思っていたりした。
しかし現実はそう上手くはいかないだろうし、そしていざ転生する機会が訪れたとしても、俺はまず「そもそも創作物の世界は存在しない」という現実を理解していたのである。
だからこそ、成り切り転生である。
つまり「推しキャラが現実にいないのならば俺がなるしかないよね?」って事だ。
TSとか性転換とか関係ない、推しキャラが存在しないこの世に絶望すらしていたし、彼女が現実に存在する世界というのはとても素晴らしいと思ったのだ。
だから、成った。
俺は彼女、リンネとして来世の世界に転生したのだ。
そこはいわゆるファンタジー「中世」な世界であり、王道なファンタジーよろしく剣と魔法の世界だった。
素晴らしい、この世界ならば俺は『ライブラリーライフ』における彼女のように振舞える。
……そんな俺は、だからこの世界で本当の『リンネ』になるべく努力をしていった。
剣術を学び、魔術を学び、座学として知識も吸収していった。
完璧な彼女になる為に、俺――いや、『私』としてこの世界にリンネを刻み込むために。
そしていつしか私は伝説の勇者『ライブラリーライフ』の称号を得ていていたのである。
やったね!
………………
…………
……
…………ん、あれ?
「なんで勇者の称号が『ライブラリーライフ』なんだ……?」
首を傾げつつ書類の整理を行う。
勇者となった今、私は前線に立ち魔物と戦う機会は滅法減り、代わりに大人としてヒヨッコ達の教育を任される事が多くなった。
私は、冒険者ギルド『黄金の鴉』のギルドリーダーとして仕事をしつつ、なんだか最近嫌な予感をむんむん感じていた。
勇者の勘は当たるぜ、なんて。
そんな事を呟くまでもなく。
ふっつーに、その嫌な予感は的中する事となったのである。
「ほ、本当に私とそっくりだ……」
なん、で……リンネ本人が目の前にいるんすかねぇ――?
ていうか、今更ながら思う。
彼女、そして彼女の仲間がいる手前大声で叫ぶ訳にはいかないので心の中でのたうち回っているが、しかしやはり叫びたかった。
「この世界、やっぱ『ライブラリーライフ』の世界じゃん!!!!」、と。
創作物の世界、存在しているんかい!?
ずっとそんなものは存在しないと思ってたわ!!
いや、ていうかそれなら普通に推しキャラ『リンネ』と結婚する未来……いや、それは流石に烏滸がましいので、ただの壁として彼女を見守る役割をしたいなー、なんて。
現実逃避を、する。
「それに、名前も私と同じ……リンネ」
「え、ええ。そうですね」
私はひやひやと背筋に冷たいモノが流れていくのを感じた。
一応、私はどうやら目の前の『リンネ』よりも年上であり、更に言うと最近の私はもっぱら『勇者様』だの『ライブラリーライフ』だのと呼ばれているので、名前という点でややこしくはならないだろう。
ただ、どうして彼女と私はそっくりな外見、そして同じ名前を持っているのか。
その疑問を抱く者は確実にいる。
ていうか何なら、その疑問を抱いたからこそ私は彼女とこうして会う事になったのだから。
なんかそっくりな子が来てますけど、もしかして親戚とか家族の方ですか、と。
……ていうか、私が拠点としている街の隣にあるのが『シルバーウィン』だった時点でおかしいと気づくべきだったかもしれない。
しかし今までの私は「推しキャラリンネの冒険の舞台と同じ名前、素敵っ」としか思ってこなかったし、違和感なんて一つもなかったのである。
ああ。
今ならおかしいと思うし、思った時点でいろいろと調べに行くべきだった。
ナンテコッタイ。
もう助からないぞ!
「えーっと」
「……すみません、えと。リンネ様」
「リンネ様!!??」
いきなり様付けされた彼女は目を丸くする。
やっべ、推しキャラだからつい「様」つけちゃった。
「もとい、リンネさん」
「は、はあ……?」
「単刀直入に尋ねますが、何故この街のこのギルドを訪ねに?」
「それは勿論」
彼女は元気よく答えてくれた。
「私の憧れ、『ライブラリーライフ』様の下で頑張りたいって思ったからです!」
OH、おおう、WOU……